我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「え~と...クリフトファー様...お気持ちは大変嬉しいのですが...その...実は私、他の人からも既にプロポーズを受けてましてですね...」

 悩んだ末、私はパトリックを引き合いに出してなんとか身を引いて貰おうと思った。

「な、なんだって!? そ、それは本当なのか!? あ、相手は一体誰なんだ!?」

 クリフトファー様はこの世の終わりみたいな顔して聞いて来る。その表情を見て私の心はちょっと傷んだが、事実であるからしょうがない。

「本当です。プライベートなことなんで相手の名前は明かせませんが」

「そうか...それでその...受けるつもりなのか?」

「まだ考え中です。どうしようか悩んでます」

 本当はとっくに結論は出てるけどね。でもバカ正直にそんなこと言ったりしたら、クリフトファー様は俄然勢い付くだろうからわざと惚けておいた。

「ということは、まだ僕にも希望があると思っていいんだろうか?」

 クリフトファー様は縋るような目で私を見て来る。どうしよう...これってなんて答えるのが正解なんだろう...

「えっと...そうですね?」

 悩んだ挙げ句、口から出たのはなんとも間の抜けた答えだった。というよりなぜか疑問形になってしまっている。

「良かった...アンリエット、僕はしばらくこの町に滞在するつもりだ。結論が出るまでいつまでも待つからこのホテルに連絡して欲しい。それじゃあ今日はこれで。久し振りに会えて嬉しかったよ」

 そう言ってクリフトファー様は、ホテルの名前を書いたメモを残して部屋を後にした。

 気疲れした私は、クリフトファー様の姿が消えるや否やドッとソファーに沈み込んだ。

「お嬢...ヘタレ過ぎ...」

 するとすかさずアランがツッコミを入れて来る。

「うっさい...あんな今にも死にそうな顔されて懇願されたら、誰だってスンナリとは断れないっての...アンタ、私の立場に立ってみろ..」

「それでもヘタレだと思うよ~ あんな希望持たせるようなことを言う方がよっぽど残酷なんじゃないかな~」

「そんなの...言われなくても分かってるわよ...」

 そう、あんなのただの時間稼ぎでしかない。それは自分でも良く分かっている。クリフトファー様とマトモに向き合うのを避けただけだ。

 だがいつまでもそうしている訳にはいかないだろう。パトリックの件も含めてちゃんと結論を出さないと。

 このままズルズルと引き延ばしてもお互いにのためにならない。私はすっかり冷めてしまったお茶を飲みながら、

「アラン、パトリックに連絡を取ってくれる?」

「はいよ~」

 まずは一つずつケリを付けていかないとね。
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