我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

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「そうよ。覚えておきなさい? 貴族ってのはなによりも体面を重んじるもんなんだから。身内が仕出かした不祥事はひた隠しにするのが常識なのよ。それが自分達で処理できる範囲内であることっていう但し書きは付くけどね」

「なるほど~ 今回の件は公爵家内部の出来事として内密に処理したいってことか~」

「そういうことよ。だからアラン、あんたも他所でペラペラ喋るんじゃないわよ? このことは胸の内に仕舞っておきなさい」

「了解~」

「お嬢様」

 そこへハンスが戻って来た。両手に一杯の真っ赤なバラの花束を抱えて。

「あぁ、ハンスご苦労様。ちゃんと帰って貰った?...って、ど、どうしたのそれ!?」

「クリフトファー殿からの贈り物です。ちなみにまだまだ沢山玄関に届いてます。それと伝言です」

『今日のところは帰るが、また来るから今度こそ会って欲しい』

「とのことです。居留守使っているのはバレバレだったみたいですね」

 私は噎せ返るようなバラの香りに包まれながら頭を抱えていた。

 赤いバラの花言葉。

『あなたを愛しています』


◇◇◇


 次の日から私は毎日、城下町に出掛けることにした。また居留守を使うのが心苦しかったのと、引き継ぎが一段落したらどっちみち、領地を自分の目で見て回る予定ではあったから、それを少し前倒ししたということにして自分を納得させた。ちなみにクリフトファー様は、あれから毎日やって来ては大量の赤いバラの花束を置いて行く。我が家はその内、花屋を開けるかも知れない...

 久し振りに庶民の暮らす町中を歩いていると、活気ある市場の賑わいやあちこちの露店から立ち上る美味しそうな匂いなどに当てられ、なんだか新鮮な気分を味わっていた。視察という目的を忘れる程に。

 そして今日もまたアランと二人で町中をブラブラしている。

「領民達がみんな元気そうで良かったわ。景気も悪く無さそうね」

「そうだね~ 特に今年は近年稀に見る豊作の年だったみたいだし~」

「そうだったのね。喜ばしいことだわ」

 そんなことを話しながら裏通りを抜け、もう少しで町の繁華街に差し掛かかるという時だった。

「あっ! 痛っ!」

 前から歩いて来たガラの悪い三人組の一人と肩がぶつかった。

「痛ってぇ! おうおう、姉ちゃん! どこ見て歩いてんだよ! 痛てぇじゃねぇか!」

「おい、大丈夫か!? あぁ、酷ぇ! こりゃあ間違いなく怪我しちまったなぁ! 治療代を請求しねぇとなぁ!」

「おい、姉ちゃん! 金を払えないってなら体で払って貰ってもいいんだぜ~! ゲヒャヒャヒャ!」

 あぁ、こういった輩はどこにでも居るもんなんだな...ゴキブリのように...私はため息を吐きながら、後は任せたと言わんばかりにアランの方を向いた。
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