我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します！

141 (第三者視点１０)

「アンタ達、大人しく投降しなさい。アンタ達の仲間は既に拘束しているし、雇い主がそんな状態じゃもう指示は出せないでしょ?　それともそんなロクデナシに義理立てして最後まで粘ってみる?」

　エリザベートにそう言われた男達は顔を見合わせ、観念したのか一人また一人と剣を捨てた。

「拘束しなさい」

『分かりました』

　エリザベートに命じられた隠密衆の二人は、手際良く男達を拘束して行った。最後に残った気絶したままのクリフトファーは、エリザベート自らが雁字搦めに拘束し猿轡まで嵌めた。

「フゥ...やっと終わった...」

　一息吐いたエリザベートは、被っていたカツラを脱いだ。帽子とサングラスは馬を走らせていた時にどっかへ飛んで行ってしまったようだ。

「アンリエット、怖い思いさせてゴメンなさい...まさか身代わりがバレるなんて思ってもみなかったわ...」

「そうよねぇ。なんでバレたのかしら?」

　アンリエットもそこが疑問だった。クリフトファーはアンリエットがこっちに居るということを、まるで確信していたかのように待ち伏せしていたのだ。

「本人に聞いてみるしかないわね。おら、とっとと起きやがれ!」

　エリザベートに足蹴にされたクリフトファーは、

「うぅ...」

　と呻きながら目を覚ました。エリザベートは猿轡を外して、

「やい、このバカ兄!　キリキリ白状しやがれ!　どうやって私達の身代わり作戦を見破りやがった!?」

「フフフッ!　それはね、愛の力さ!　僕は拘束された君を見て一目で我が愚妹だと気付いたからね!　我が愛しいアンリエットの神々しいオーラとは比べ物にならない貧相なオーラだったから違いは歴然さ!　僕はね...ムググ...」

　クリフトファーがそこまで言った所でエリザベートは猿轡を嵌め直した。

「もういい!　喋るなこの狂人がぁ!　あと誰が愚妹じゃ!　この愚兄がぁ!　貧相なオーラで悪かったなぁ!」

　エリザベートはもう一度足蹴にした。

「え～と...どこら辺が愛の力なのかしら...」

「お嬢、考えるだけ無駄だと思うよ...」

　アンリエットの独り言に近い呟きに、アランが疲れたように応じた所で今回の件は幕を下ろした。

「アンリエット、本当に迷惑ばっかり掛けてゴメンなさい...この埋め合わせは必ずするからちょっと待っていてちょうだいね?　まずはこのバカ兄を処断しないと...」

「あぁ、うんうん...埋め合わせとかは別にいいから気にしないで...」

「そういう訳にはいかないわよ...」

「いやいや、ホントにいいから。それよりあなた、これからなにかと大変なことになって来るわねぇ...」

「そうね...頭が痛いわ...」