我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜

文字の大きさ
211 / 276

211 (第三者視点2)

しおりを挟む
「そう言えばアンリエット、仕事の方は引き継ぎしなくても大丈夫か?」

 ロバートは仕方なく話題を切り替えた。

「今んとこ問題ないわ。私が兄さんに引き継いだ時とあんま変わってないもの」

「そうか」

「なんかあったら聞くから、兄さんは少し休んでなさい」

「いや、さすがにそんな訳には...」

 ロバートは申し訳無さそうな顔で呟いた。

「いいから私に任せなさい。そして鏡を見なさい。ミイラみたいな姿になってるわよ?」

「あぅ...」

「やり過ぎ...サルじゃないんだから...少しは控えなさい...」

「おぅ...」

 ロバートは小さく縮まってしまった。

「エリザベートの性欲と体力にマトモに付き合ってたら、骨の髄までしゃぶられるわよ? サキュバスみたいに」

「はぅ...」

 ロバートは言葉もなかった。


◇◇◇


「フゥ...さすがに疲れたわね...」

 ロバートを部屋に戻した後も仕事に精を出していたアンリエットは、凝り固まった肩をグルグルと回して解していた。

「お嬢様、少しお休みになって下さい」

 そこにセバスチャンがお茶を入れて持って来た。

「ありがとう」

 アンリエットは仕事の手を休めてお茶を一口飲んだ。

「あまり無理をなさらないで下さいませ。お嬢様はまだ病み上がりなのですから」

「フフフ、兄妹揃ってお疲れじゃ世話ないわよね」

 アンリエットは自嘲気味に苦笑した。

「お嬢様...」

「分かってるわよ。一区切り付けたら少し休むわ。だから心配しないで?」

「くれぐれもお体を労って下さいませ...」

 まだ心配そうにしているセバスチャンを下げさせてから、アンリエットは窓の外を見やった。

 まだアラン達は元ヘンダーソン領には着いていないだろう。早くても明日だ。

 どのような結末を迎えることになるのか分からないが、マックスのためにもより良い未来になることを切に願わずにはいられなかった。


◇◇◇


 一方その頃、馬車を走らせていたアランとパトリックは、

「今日はこの町に泊まろう」

 夕方になったので今日の馬車の旅はここまでとした。

「分かった」

 その後、宿を探していたのだが、アランが一軒のホテルの前で足を止めた。

「ここ懐かしいな」

「前に泊まったことがあるのか?」

「あぁ、お嬢と領地に向かう時にな。そこでマーガレットを同伴しているウィリアムに初めて会ったんだよ」

「なるほど...そういうことか...」

 パトリックは微妙な表情を浮かべた。やはりまだウィリアムとマーガレットの関係には釈然としない感情が渦巻く。

「今日はここに泊まろう」

「あぁ...」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~

糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」 「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」 第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。 皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する! 規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい

麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。 しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。 しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。 第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

【完結】知らないですか、仏の顔も三度まででしてよ?

詩河とんぼ
恋愛
 侯爵令嬢のレイラ・ローニャは、筆頭公爵家子息のブラント・ガルシアと婚約を結んだ関係で仲も良好であった。しかし、二人が学園に入学して一年たったころ突如としてその関係は終わりを告げる。  ティアラ・ナルフィン男爵令嬢はブラントだけでなく沢山の生徒•教師を味方にし、まるで学園の女王様のようになっていた。  レイラはそれを第二王子のルシウス・ハインリッヒと一緒に解決しようと試みる。    沢山のお気に入り登録、ありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡  小説家になろう様でも投稿させていただいております。

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

王子の転落 ~僕が婚約破棄した公爵令嬢は優秀で人望もあった~

今川幸乃
恋愛
ベルガルド王国の王子カールにはアシュリーという婚約者がいた。 しかしカールは自分より有能で周囲の評判もよく、常に自分の先回りをして世話をしてくるアシュリーのことを嫉妬していた。 そんな時、カールはカミラという伯爵令嬢と出会う。 彼女と過ごす時間はアシュリーと一緒の時間と違って楽しく、気楽だった。 こんな日々が続けばいいのに、と思ったカールはアシュリーとの婚約破棄を宣言する。 しかしアシュリーはカールが思っていた以上に優秀で、家臣や貴族たちの人望も高かった。 そのため、婚約破棄後にカールは思った以上の非難にさらされることになる。 ※王子視点多めの予定

処理中です...