絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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ep222 手遅れかも

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「シュレア、絶死の森の近くに海ってあるの?」

「近くにはないですね」

「かなり遠いな。私の翼でも五日はかかるぞ」

 うえっ!?
 プテュエラ航空マッハ便でも十日?
 それは……めちゃくちゃ遠いね。

「でもシュレアの樹渡りなら一瞬なんじゃない? トリスと一緒に樹渡りできないかな?」

「シュレアは海の近くの樹木たちと交流してないので不可能です。相変わらずケイの脳みそはダークエイプ以下ですね」

「ひどいよぉ」

「仮に樹渡りできたとして、トリスを抱えながら転移はできないでしょう。物理的に樹に入りません」

 そりゃそっか。トリス、見た目の大きさで言えば知ってる亜人の中で一番大きいもん。次にラミアルカかな。ただ、霧にしまってるムカデくんを含めたらサンドリアが一番大きいんだろうね。

「そっか……プテュエラはどう?」

「ふーむ。どうだろうか。トリス、ちょっと浮かせてみてもいいか?」

「もちろんだぜぃ」

 プテュエラは殲滅魔法を行使し、トリスを空中に浮遊させる。

「おっ、おっ。浮かんだ。プっち~、良い魔力制御だなぁ。手前っちを少しでも浮かせるのはよぉ、お前さんの母親にはできなかったんだぜぃ」

「そうか……でも、ここまでだ」

 そう言ってプテュエラはトリスをゆっくり地面に下ろした。その後、ゆっくり息を吐いてしんどそうな表情をする。

「すまん……私には無理だな」

「いいんだぜぃ。手前っちは特別重いのさぁ……それに、表面の粘液には魔力を受け流す効果があるからなぁ~」

 確かにトリスの巨大な蛸足にはめちゃくちゃ筋肉詰まってるし、見た目以上に重いんだと思う。

「そういうことか。魔力で捉えようにもぬるぬる滑ってしまって、捕まえられなかったんだ」

 フレイムベアの魔力減衰フィールドと似たようなものかな? でもその性質が違いそうだ。

 じゃあトリスを抱えて海まで運ぶのは無理か……って、ちょっと待てよ。

「いや、契約してから現地でトリスを召喚して呼び出せばいいんじゃない?」

「…………あ、忘れてたんだぜぃ」

 ポカンとした表情を浮かべたあと、恥ずかしそうに顔を伏せた。このロリおばちゃんかわいいな。

「亜人召喚かぁ~手前っちにはもう縁が無いものと思って、考えてもみなかったぜぃ。確かにその方法ならいけるかもなぁ」

「おそらく大丈夫でしょう。ただし距離的に相当遠いので、万が一ということがあります」

「ああ。ここからあの海まで亜人召喚した人間などいないだろうからな。私とシュレアで近くまで運べたら、と思っていたんだが」

「……みんな、そこまで考えてたの?」

「……ケイは別にそこまで考えていたわけではなく、トリスと同じように忘れていただけだったんですね」

「全部考えたうえで、私たちに可能か訊いているのかと思ったぞ」

 しらー、っとした二人の目。

 し、仕方ないじゃない。

「アホなのです」

 グサっとくるシュレアの言葉。そうです、わたしがアホな契約者です。

「け、ケイはアホっぽいところが、か、かわいいんだよ!」

 拳をぐっと握ってフォローしてくれるサンドリア。ありがとうね。でも、あんまりフォローになってないからね。

「……そっかぁ、手前っちにも子供ができるかもしれないのかぁ。嬉しいなぁ、嬉しいんだぜぃ。ご先祖様にも、顔向けできるなぁ……」

 ロリ中年はしみじみと遠い目をする。彼女にもいろんな艱難辛苦があったんだろう。

「んじゃあケーくん、手前っちと契約してくれるかぁ?」

「もちろん。トリス、よろしくね」

 よっしゃ! ロリ中年オクトパスからお繁り許可もらったぞ!

「んじゃあ、さっそく……と行きたいところだけどよぉ。その前にお前さん達の用を済ませないとなぁ~。何か手前っちに用があって来たんだろぉ?」

「あ」

 あ、そうだったそうだった。
 それが目的の一つだったんだよな。トリスは古株そうだし、いろいろ話聞けたらいいんだけど。

「実は知り合いのアセンブラ教徒がさ……」

 と、僕はシャロンちゃんとその敬虔なアセンブラ教徒のお母さん、シャロンさんの話をし始める。

………………
…………
……


「……んふぅ~なるほどなぁ~」

 最後まで話し終えると、トリスは難しい顔をしてため息を吐いた。

「なんともまぁ、手前っちの契約者はすんごいやつだったんだなぁ~。そりゃ亜人が何人も侍りもするんだぜぃ」

「おかげさまでね」

 トリスは感心しつつも難しい表情を崩さなかった。

「……体内から歯車みたいな音が音がするアセンブラ教徒かぁ~。ケーくんがジオス神より与えられたスキルでもどうにもできなかったんだよなぁ?」

「うん……一回目は効いたんだけど、二回目は浄火が効かなかったんだ。ベステルタが習得した“影抜き”って技のおかげで事なきを得たんだ」

「うむむ、ベステっちの技がなんで通ったのかはとりあえず横に置いとくんだぜぃ。まず、なぜ神から賜ったスキルが効かなかったか……そりゃ相手にも神由来のスキルが付与されてるからなんだぜぃ」

 うん……言われてみればそうなるか。神の力に対抗するには神の力じゃないとな。

「トリス、そのスキルが何だか分かるのか?」

「んぁ~分かるぜぃ。そりゃアセンブラ教が使う外法スキル、アセンブライズ《刃狂魔化》だなぁ~。まさかもう出現してるとはなぁ~。計算よりも百年早いんだぜぃ」

 あ、アセンブライズ?

「初めて聞きました。どのようなスキルなのですか?」

「まぁ~端的に言うと、敬虔なアセンブラ教徒を『増幅装置』にするスキルなんだぜぃ。こいつらが増えるとアセンブラ神の力が強まって、復活しちゃうんだぜぃ」 

 ……。


 は?


 ちょっと待って、アセンブラ神が復活? 


 え、そういう話になってくるの?


「アセンブライズはものすんごーく、高度な技術と、彼の神に対する信仰心、親和性、体力がないと発現しないんだぜぃ。今のアセンブラ教のトップたちは軒並み枯れそうなジジイのはずだから、不可能だと計算結果が出てたんだけどなぁ~……くそぉ~っ」

 トリスが悪態をついて蛸足を振り下ろすと、その可愛らしい見た目とは裏腹に、ズシィンと周囲に局地的な地震でも起きたかのような揺れが走った。

「……取り乱したんだぜぃ。ごめんなぁ。アセンブライズされた敬虔な教徒は、その身の内に『歯車の種』を宿すんだぁ。で、それが育っていくと、その身はだんだんと人ならざるものに変化していくのさぁ~。やがて完全にアセンブライズが進行すると、体内から『きりり』と歯車が軋む音が鳴るようになるのさぁ~」

「……それって、もう、助からないの?」

「助からないぜぃ。神の御業による種族変異だからなぁ~。これを覆すにはより上位の力が必要だが、ジオス神の力は弱くなっちまってるからなぁ……」

 ……シャフナ、さん。
 いや、シャロンちゃん。
 理解が追いつかない。どう、すれば。

「で、でも。ベステルタの影抜きは効果があったよ?」

「んあぁ~。それはほんとにすごいよなぁ。人が織り、亜人が成した技が神の御業に届きうるなんてよぉ~。たぶん、影抜きはアセンブライズによって深いところに生じた『影』を祓ったんだなぁ。
 影は本体と一心同体の存在だからなぁ~。浄火では専門が違うから効果が無かったんだろうなぁ」

「じ、じゃあ」

「でも残念ながら、根本的な解決にはならないんだぜぃ。そのシャフナって信者はもう、完全にアセンブライズされちまってるからなぁ。一度影を祓っても、またすぐに発生するぜぃ」

 僕は返す言葉もなく、黙り込む。

「アセンブラ神が、ふ、復活したら、ど、どうなるの?」

 サンドリアがおそるおそる尋ねた。

「うん、ちょっとそこだけ、待ってくれなぁ~。もうほとんど答えは出てるけど、念の為裏取りしてくるんだぜぃ」

 そう言ってトリスは十三本の蛸足を順番になぞっていく。脚はボウッ……と青白くかすかに発光して、彼女の手を淡く照らした。

「んん~たぶんこの知識だなぁ……」

 彼女はある脚の付け根にしばらく手をかざす。まるで何かを読み取ってるかのようだ。

「シュレア、あれは何をやってるの?」

「記憶から知識を読み取っているのですよ」

 彼女はトリスの邪魔をしないようにそっと答えた。その声には尊敬の色がある。

「トリスカイデイカが長老と呼ばれるのは、亜人随一の記憶力にあります。彼女の一族はその十三本の脚それぞれに、独立した脳を持っています。そこに、先祖から受け継いだ知識や知恵、記憶を溜めることができるんです」

 な、なるほど。ただのフィジカル筋肉オクトパスじゃなかったのか。そう言えば蛸って頭良いって言うもんね。

「また彼女たちはその脳を複雑な演算に用い、未来や厄災に対する方策を講じてくれているんです。過去、それで何人もの亜人が救われました」

 すげー、ガチで長老やん。トリスめっちゃ頭良いんだな……。

「よ~し、裏取りが済んだんだぜぃ。待たせたなぁ」

 ふぃ~と中年蛸JCが長めの息を吐いた。仕草はマジでおっさんなんだよな。

「分かったのか?」

「おぉ~ばっちりなぁ~。
 さあてと、お前さんたちぃ。手前っちが話す前に、心の準備しとけよぉ~冷静になぁ~。平常心で何言われても動じずに受け止めるんだぜぃ」

(そ、そんなこと改めて言われると緊張してしまう)

 口調は相変わらず間延びしているが、その瞳はとても真剣でまさしく亜人の古老といった迫力を感じさせる。

「……ふぅ。問題ありません。話してください」

「私も大丈夫だ」

「あ、あたしも」

「わ、わいちゃんも」

「うっし、じゃあ端的に結論から話すぜぃ~……」

 トリスは肩を竦めるように、おどけた調子で言った。

「ケーくんから聞いた話、十三脳の記憶、そして手前っちがずっと昔から行っていた演算、これらを組み合わせて総合的に判断するとなぁ~……。


 もう、この世界『手遅れ』なんだぜぃ」


 トリスカイデイカの、妙に平静な声が河辺に響いていった。

 
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