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犬の散歩
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「いやー、最高だったわね。亜人の生を感じたわ」
……。
……はっ!
ヤバい、意識が朦朧としていた。思い出せるのは、二つの山が……僕の顔を擂り潰そうと跳ね回るのと、壮絶な笑顔と、立ち込める花の匂い。口の中がベステルタの匂いで一杯だ……。あと杭打ちマシンが目の前で終日稼働していた。
ていうかなんだよ亜人の生って。
風呂上がりのおじさんみたいにふぃーと息を吐くつやつやしているベステルタ。なんか毛並みめちゃくちゃよくなってない? さっきも十分綺麗だったけど今は更にすごい。まさに王者の貫禄だ。紫の体毛が光輝き、角にはビリビリと見えない力が迸っているように見える。
うーん、解釈するなら欠乏状態だったところに栄養が行き渡ったからとか? やばいな。
「ベステルタ……」
一人で満足している彼女を睨み付ける。ビクッとして目を逸らす。一応罪悪感とかあるみたいだ。
「ご、ごめんなさい。ケイの意志を聞かなかったのは謝罪するわ。種さえもらえれば、わたしのことは好きにしてかまわない。亜人の皮は高く売れるらしいから皮を剥いでもいいわ」
そんな悲壮な覚悟を表明されても。大体僕メンタル5だよ? そんなエグい拷問みたいなことできるわけないじゃないか。僕が言いたいのはそういうことではなくて。
「……今度からコス茶なんて盛らなくていいから。言ってくれればちゃんと受け入れるから」
「えっ」
むしろ僕も動きたい。あれじゃただの給油機みたいなもんだよ。杭打ちも好きだけど、犬の散歩もしたいんだよ。いや、たまにはいいと思うけど。なんかに目覚めたけど。
「ベステルタ、僕は守備範囲が広いんだよ」
「ふぅん……。なんかよくわからないけど協力してくれるってこと? 事後確認であれだけど、わたしたち亜人よ? いくら異世界から来たといっても全員がそういう訳じゃないでしょ?」
マジで? って顔で見てくる。
まあ、確かにニッチな趣味かもしれない。でも全く問題ない。
それに、協力っていうか僕にとってはただのご褒美なんだけどね。こんな剛毛筋肉スーパーモデル亜人お姉さんとハッスルできるなんて、地球じゃどんなにお金出しても出来ないよ。
「このままじゃ、僕もじり貧だからね。特に代案もないし。宜しくお願いするよ」
「そう……ありがとう。感謝するわ。約束通りあなたはこの『序列無き獣』ベステルタが保護してあげる。契約者ケイ」
えっと、契約者って言葉は初耳なんだけど。あとそんな二つ名みたいのあったの? ちょっとかっこいいんだけど? うーん、ベステルタってちょっと説明足らないときあるよね。あー、なんか元の世界を思い出すよ。新しい仕事するときに、こっちはぜんぜん業務のこと知らないのに「こんなの当然だろ?」と説明省く人。僕もそれで苦労したな。
……いや止めよう。僕は異世界に来たんだ。前の世界のことなんて考えるのは不毛だ。目の前のことに集中しよう。ベステルタは僕と常識がものすごく異なっているけど、悪いやつじゃないはず。お人好しな考えかな?
うーん、もしかして契約者ってこの世界前提の知識なのだろうか。そう言われても分からないものは分からないよ。突っ込んだ方がいいかな。ここで言わないと機会を逸する気がする。よし言おう。
「……ごめん、契約者って何?」
「あっ、忘れてたわ」
うっかりしてたわね、と呟く。
こんなに悩んでた僕が馬鹿みたいだよ。いや、実際馬鹿か。こっちが気にしていることを相手は意外と何にも思ってないものだよね。
「亜人は種をもらう人を契約者として認めるのよ。そうすると魔力的なパスが繋がって、色々便利なの」
「たとえば?」
『こうやって声に出さずとも話せたり「うわっ!」』
びっくりした。直接脳内に話しかけてくるなんて。ファミ○キ持ってるときにやってもらおうかな。無理だけど。
「あなたがどこにいるかも分かりやすくなるし、亜人の力が少し契約者に渡るわね。力が強くなったり、足が速くなったり。ちなみに逆も然りよ」
文字通り紐付きだな。そしてお互いにメリットがあると。なるほど、かつての亜人はこうやって双方にメリットを提示して社会に溶け込んでいたんだな。うん、ステータスの向上はかなり嬉しいな。この状況で生存率が上がるのは頼もしい。
「あと、契約者は離れていても契約した亜人を呼び出せるわ」
それはやばいな。戦力持ち込み放題じゃないか。召喚獣だな。サモナーとテイマー合わせた感じか。
「あら、召喚獣が分かるのね。なら話は早いわ。人の世界でも召喚術はあるんだけど、それは亜人の技術を応用したものなのよ?」
すごいでしょ? と胸を張る。ドヤ胸だ。でも実際すごいよな。もし、人の町に行くことがあったら心強い存在になりそうだし、とりあえず言い訳も立ちそうだ。
「ちなみに契約の条件って?」
「種をもらった時よ」
文字通り『契り』ってことか。それならベステルタを裏切らないようにしないとな。
「そっか。ならベステルタ一筋だね。種をあげられるように頑張るよ」
「? 勘違いしているようだけど、契約は複数可能よ」
「えっ、そ、そうなの? でもいいのかな。貞操観念的に」
「貞操守って絶滅してたら世話ないわ」
正論だ。ぐうの音も出ない。
「あなたの貞操観念を変えてしまうのは申し訳無いんだけど、こっちも種族の絶滅がかかってて必死なの。嫌かもしれないけど我慢してちょうだい」
嫌だとは言ってない。ていうか、そんなに都合良くていいんですかー!と叫びたい。海に向かって山に向かって叫びたい。
「どうしたのいきなり拳を掲げて。気持ち悪いわよ」
「気にしないでくれベステルタ。僕は今喜びを噛み締めているんだ。ちなみに叫んでもいい?」
「うーん、魔獣が寄ってくるから止めてほしいわね」
冷静に返すベステルタさん。うう、このテンションの差がつらい。ていうかそりゃそうだ。ごめんなさい。
「とにかくケイは亜人たちに種を撒けるだけ撒いて? あと、わたしたち授かりにくいから数こなして欲しいわ。大変だろうけどそれだけやってくれたら、他はわたしたちでなんとかするし、あなたを守るから」
やだイケメン。凛々しいベステルタさんの横顔に惚れそう。一応、男の矜持として女の子は守らなきゃ、という気持ちもあるけど、ここじゃ通用しなさそうだ。それ、絶死の森で言えんの? って感じだ。僕がベステルタを守るより、逆の方が遥かに効率が良い。
「ありがとうベステルタ。ちなみに、守ってくれるのは本当に嬉しいんだけど、ベステルタってどのくらい強いのかな」
そう言えば確認して無かったな。人間よりずっと強いって言ってたから、まあ強いんだろう。うーん、理性のある猛獣ってとこか? 昔熊が戦う動画を見てたんだけど、あいつらめちゃくちゃ速いからね。時速60キロで走るし、マイクロバスに轢かれても簡単に跳ね退けて脱出するみたいだし。あれが理性持ってさらに強いとなるとめちゃくちゃすごいな。ふふ、男として強いことには興味ある。
「それもそうね。少し待ってて。……ちょっと小さいけどあそこに岩山が見えるわね?」
……小さい岩山は見えない。五階建てのビルくらいの岩山ならあるけど。彼女には僕に見えないものが見えているのだろうか。
「あれくらいなら、造作もなく消し炭にできるわ」
えっ、嘘だよね?
「ついでだから見せてあげるわ。ふんっ」
意外と可愛らしい掛け声と共に、目の前にあった岩ビルの三分の二が音も立てず……消えた。唖然とする僕の顔にパラパラと細かい砂がかかる。どうやら岩は砂にジョブチェンジしたらしい。
「ど、どうやったの?」
「拳を振り抜いたのよ」
ぷらぷらと拳を振る。
獣のとかそんなチャチなもんじゃない。戦車とか、そういうレベルだ。恐怖の片鱗を味わったよ。
「ちなみに今は魔力がほとんど籠って無い素振りみたいなものだけど、あなたがたくさん種を撒いて強くなってくれたら本来の力を取り戻せるわ」
どうやらチートは僕じゃなく、ベステルタのようだった。えっ、ていうかそんな亜人が百人いるの? えっ、人類大丈夫なの? っていうか人類馬鹿なんじゃないか。なんで共生の道歩めなかったんだよ。その無神経さ怖すぎるよ。
「いやー、久しぶりに力を出したからちょっと制御甘かったわねー」
つらいわー、寝れてないからつらいわー、という大学生みたいな言い分を極大スケールでのたまう。あかん、怒らせないようにしよう。
「ん……? どうしたのさっきあんなにしたのにまだ足りないの?」
おうふ、生命の危機を覚えて反応してしまったようだ。途端にベステルタに抱きすくめられがっちりホールドされる。あわわわわ。
「どうする? ここで繁殖しちゃう?」
ちろり、と赤い舌を出して笑う。ズギューン。
宜しくお願いしまーーーーーす!
次は犬の散歩もさせてもらった。後ろからベステルタの散歩風景を眺めるのは最高でした。ここが桃源郷か……。
……。
……はっ!
ヤバい、意識が朦朧としていた。思い出せるのは、二つの山が……僕の顔を擂り潰そうと跳ね回るのと、壮絶な笑顔と、立ち込める花の匂い。口の中がベステルタの匂いで一杯だ……。あと杭打ちマシンが目の前で終日稼働していた。
ていうかなんだよ亜人の生って。
風呂上がりのおじさんみたいにふぃーと息を吐くつやつやしているベステルタ。なんか毛並みめちゃくちゃよくなってない? さっきも十分綺麗だったけど今は更にすごい。まさに王者の貫禄だ。紫の体毛が光輝き、角にはビリビリと見えない力が迸っているように見える。
うーん、解釈するなら欠乏状態だったところに栄養が行き渡ったからとか? やばいな。
「ベステルタ……」
一人で満足している彼女を睨み付ける。ビクッとして目を逸らす。一応罪悪感とかあるみたいだ。
「ご、ごめんなさい。ケイの意志を聞かなかったのは謝罪するわ。種さえもらえれば、わたしのことは好きにしてかまわない。亜人の皮は高く売れるらしいから皮を剥いでもいいわ」
そんな悲壮な覚悟を表明されても。大体僕メンタル5だよ? そんなエグい拷問みたいなことできるわけないじゃないか。僕が言いたいのはそういうことではなくて。
「……今度からコス茶なんて盛らなくていいから。言ってくれればちゃんと受け入れるから」
「えっ」
むしろ僕も動きたい。あれじゃただの給油機みたいなもんだよ。杭打ちも好きだけど、犬の散歩もしたいんだよ。いや、たまにはいいと思うけど。なんかに目覚めたけど。
「ベステルタ、僕は守備範囲が広いんだよ」
「ふぅん……。なんかよくわからないけど協力してくれるってこと? 事後確認であれだけど、わたしたち亜人よ? いくら異世界から来たといっても全員がそういう訳じゃないでしょ?」
マジで? って顔で見てくる。
まあ、確かにニッチな趣味かもしれない。でも全く問題ない。
それに、協力っていうか僕にとってはただのご褒美なんだけどね。こんな剛毛筋肉スーパーモデル亜人お姉さんとハッスルできるなんて、地球じゃどんなにお金出しても出来ないよ。
「このままじゃ、僕もじり貧だからね。特に代案もないし。宜しくお願いするよ」
「そう……ありがとう。感謝するわ。約束通りあなたはこの『序列無き獣』ベステルタが保護してあげる。契約者ケイ」
えっと、契約者って言葉は初耳なんだけど。あとそんな二つ名みたいのあったの? ちょっとかっこいいんだけど? うーん、ベステルタってちょっと説明足らないときあるよね。あー、なんか元の世界を思い出すよ。新しい仕事するときに、こっちはぜんぜん業務のこと知らないのに「こんなの当然だろ?」と説明省く人。僕もそれで苦労したな。
……いや止めよう。僕は異世界に来たんだ。前の世界のことなんて考えるのは不毛だ。目の前のことに集中しよう。ベステルタは僕と常識がものすごく異なっているけど、悪いやつじゃないはず。お人好しな考えかな?
うーん、もしかして契約者ってこの世界前提の知識なのだろうか。そう言われても分からないものは分からないよ。突っ込んだ方がいいかな。ここで言わないと機会を逸する気がする。よし言おう。
「……ごめん、契約者って何?」
「あっ、忘れてたわ」
うっかりしてたわね、と呟く。
こんなに悩んでた僕が馬鹿みたいだよ。いや、実際馬鹿か。こっちが気にしていることを相手は意外と何にも思ってないものだよね。
「亜人は種をもらう人を契約者として認めるのよ。そうすると魔力的なパスが繋がって、色々便利なの」
「たとえば?」
『こうやって声に出さずとも話せたり「うわっ!」』
びっくりした。直接脳内に話しかけてくるなんて。ファミ○キ持ってるときにやってもらおうかな。無理だけど。
「あなたがどこにいるかも分かりやすくなるし、亜人の力が少し契約者に渡るわね。力が強くなったり、足が速くなったり。ちなみに逆も然りよ」
文字通り紐付きだな。そしてお互いにメリットがあると。なるほど、かつての亜人はこうやって双方にメリットを提示して社会に溶け込んでいたんだな。うん、ステータスの向上はかなり嬉しいな。この状況で生存率が上がるのは頼もしい。
「あと、契約者は離れていても契約した亜人を呼び出せるわ」
それはやばいな。戦力持ち込み放題じゃないか。召喚獣だな。サモナーとテイマー合わせた感じか。
「あら、召喚獣が分かるのね。なら話は早いわ。人の世界でも召喚術はあるんだけど、それは亜人の技術を応用したものなのよ?」
すごいでしょ? と胸を張る。ドヤ胸だ。でも実際すごいよな。もし、人の町に行くことがあったら心強い存在になりそうだし、とりあえず言い訳も立ちそうだ。
「ちなみに契約の条件って?」
「種をもらった時よ」
文字通り『契り』ってことか。それならベステルタを裏切らないようにしないとな。
「そっか。ならベステルタ一筋だね。種をあげられるように頑張るよ」
「? 勘違いしているようだけど、契約は複数可能よ」
「えっ、そ、そうなの? でもいいのかな。貞操観念的に」
「貞操守って絶滅してたら世話ないわ」
正論だ。ぐうの音も出ない。
「あなたの貞操観念を変えてしまうのは申し訳無いんだけど、こっちも種族の絶滅がかかってて必死なの。嫌かもしれないけど我慢してちょうだい」
嫌だとは言ってない。ていうか、そんなに都合良くていいんですかー!と叫びたい。海に向かって山に向かって叫びたい。
「どうしたのいきなり拳を掲げて。気持ち悪いわよ」
「気にしないでくれベステルタ。僕は今喜びを噛み締めているんだ。ちなみに叫んでもいい?」
「うーん、魔獣が寄ってくるから止めてほしいわね」
冷静に返すベステルタさん。うう、このテンションの差がつらい。ていうかそりゃそうだ。ごめんなさい。
「とにかくケイは亜人たちに種を撒けるだけ撒いて? あと、わたしたち授かりにくいから数こなして欲しいわ。大変だろうけどそれだけやってくれたら、他はわたしたちでなんとかするし、あなたを守るから」
やだイケメン。凛々しいベステルタさんの横顔に惚れそう。一応、男の矜持として女の子は守らなきゃ、という気持ちもあるけど、ここじゃ通用しなさそうだ。それ、絶死の森で言えんの? って感じだ。僕がベステルタを守るより、逆の方が遥かに効率が良い。
「ありがとうベステルタ。ちなみに、守ってくれるのは本当に嬉しいんだけど、ベステルタってどのくらい強いのかな」
そう言えば確認して無かったな。人間よりずっと強いって言ってたから、まあ強いんだろう。うーん、理性のある猛獣ってとこか? 昔熊が戦う動画を見てたんだけど、あいつらめちゃくちゃ速いからね。時速60キロで走るし、マイクロバスに轢かれても簡単に跳ね退けて脱出するみたいだし。あれが理性持ってさらに強いとなるとめちゃくちゃすごいな。ふふ、男として強いことには興味ある。
「それもそうね。少し待ってて。……ちょっと小さいけどあそこに岩山が見えるわね?」
……小さい岩山は見えない。五階建てのビルくらいの岩山ならあるけど。彼女には僕に見えないものが見えているのだろうか。
「あれくらいなら、造作もなく消し炭にできるわ」
えっ、嘘だよね?
「ついでだから見せてあげるわ。ふんっ」
意外と可愛らしい掛け声と共に、目の前にあった岩ビルの三分の二が音も立てず……消えた。唖然とする僕の顔にパラパラと細かい砂がかかる。どうやら岩は砂にジョブチェンジしたらしい。
「ど、どうやったの?」
「拳を振り抜いたのよ」
ぷらぷらと拳を振る。
獣のとかそんなチャチなもんじゃない。戦車とか、そういうレベルだ。恐怖の片鱗を味わったよ。
「ちなみに今は魔力がほとんど籠って無い素振りみたいなものだけど、あなたがたくさん種を撒いて強くなってくれたら本来の力を取り戻せるわ」
どうやらチートは僕じゃなく、ベステルタのようだった。えっ、ていうかそんな亜人が百人いるの? えっ、人類大丈夫なの? っていうか人類馬鹿なんじゃないか。なんで共生の道歩めなかったんだよ。その無神経さ怖すぎるよ。
「いやー、久しぶりに力を出したからちょっと制御甘かったわねー」
つらいわー、寝れてないからつらいわー、という大学生みたいな言い分を極大スケールでのたまう。あかん、怒らせないようにしよう。
「ん……? どうしたのさっきあんなにしたのにまだ足りないの?」
おうふ、生命の危機を覚えて反応してしまったようだ。途端にベステルタに抱きすくめられがっちりホールドされる。あわわわわ。
「どうする? ここで繁殖しちゃう?」
ちろり、と赤い舌を出して笑う。ズギューン。
宜しくお願いしまーーーーーす!
次は犬の散歩もさせてもらった。後ろからベステルタの散歩風景を眺めるのは最高でした。ここが桃源郷か……。
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