絶死の森で絶滅寸前の人外お姉さんと自由な異世界繁殖生活 転移後は自分のために生きるよ~【R18版】

萩原繁殖

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模擬戦①

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 ギルド併設の訓練所で戦闘訓練したよ。若い冒険者を適当にあしらっていたらそばかす娘に唾を吐かれた。ベステルタがブチキレタになってちょっぴりヤンデレタ。そばかす娘の顔面を地面に擦ってやすりにかけたよ。ラーズさんの仲介(脅迫)で場は収まったけど周りにドン引きされた。

「じゃあ場も暖まったってことで、いっちょ模擬戦やってもらうか。ケイ、紫姉ちゃん。出番だぞ」

 冒険者たちがざわつく。ターク君も顔が治ってきたパメラ? だっけ。彼女を抱えてこっちを睨んでいる。学ばねえな。
 
 ていうかやっぱりやるのか。ラーズさん、何か企んでいるのかな。

「ケイ、あの獣人なんて言っているの?」

 きょとんとする紫姉ちゃん。
 あーん、さっきとのギャップが大きすぎるでござる。この子自分の世界に生きてんな。当たり前か。

「彼の名前はラーズね。言い忘れていたんだけど、僕とベステルタで模擬戦をするように頼まれていたんだよ。早い内に実力を示した方がいいって」

「ふーん? なかなか面白いこと考えるじゃない。いいわね。乗ったわ。ケイ、やりましょう?」

 ワクワクしながら獰猛な笑みを浮かべるベステルタ。ああ……こういう時の彼女はもう止められないんだよな。やるのも模擬戦じゃなければ一晩中でもお突き合いするんだけどね。

…………

……

「これから実力者同士の模擬戦を行う。亜人の星、前に出ろ」

 さっきとは比にならないくらいのざわめきと視線。実力者は余計だって。

(あ、亜人? やつら亜人なのか?)

(そんな訳無いだろ。亜人に男はいないはずだし、絶死の森に引きこもっているはずだ)

(まさか目立つためにやっているのか?)

(さあ……でも有望株のタークやパメラをあっという間にぼこぼこにしていたし、実力はあるだろ)

(ぼこぼこなんて生易しいもんじゃなかったぞ)

 なにやら噂されている。やっぱりこのパーティー名良くも悪くもかなり目立つな。

「両者、構えな」

 訓練所の中央で僕とベステルタは対峙する。

「当たり前だが殺しは無しだ。このあとダンジョンに潜るからほどほどに。合図をしたら開始だ」

 ベステルタにも伝え、彼女はにやりと頷く。そっか、このあとダンジョンにも潜るんだよね。今日はイベント盛りだくさんだな。

「ふふ……ケイとこうして戦うのって初めてだわ」  

「たまに手合わせはしてたけど?」

 森にいる時、空いた時間で稽古つけてもらうことはあった。
 
「あれは稽古。勝負じゃない。これからわたしとケイで勝ち負けが決まるのよ。衆人の前で。何だか楽しくなってきたわ。こんなこと、森にいたら味わえなかった」
  
 高揚したベステルタからライダースーツを突き抜けて濃密な気配が漏れ出ている。そのお漏らしはしないで欲しかったよ。

「まあベステルタに勝つとか夢みたいなこと思ってないよ。でも僕も少し強くならなきゃなって思っていたんだ」

 作戦も……無くはないしね。

「へぇ……。それは楽しみね」

 ベステルタの瞳が金色に輝き、紫雷が迸る。ちょ、バレるバレる。

 僕は訓練用の大きな鉄斧を構えた。もちろん刃引きしてある。ベステルタの前で木刀なんて爪楊枝より頼りないからね。彼女の体毛、普通に刃物くらい弾くし。ちなみに一番大きな物を用意してもらった。それでもフランチェスカの半分ちょっとくらいだね。念のため、壊してしまうであろうことも伝えてある。

「えっ? これは訓練でしょ? 鉄斧なんて怪我するわよ」

「いや、あの紫の獣人、相当やるぜ。手合わせしたが何されたのか分からなかった」

「つーかあの兄ちゃん、見かけの割りに力あるな」

 ギャラリーはこそこそ話を止め、普通に話し始めている。

「けっ……亜人の星なんてふざけた名前しやがって」

「まあいいじゃねえか、話の種にはなるぜ?」

 他の冒険者たちもぽつぽつ集まってきている。相変わらずこのパーティー名は不評みたいだ。

「ふふ……」

 僕たちは対峙してラーズさんの合図を待つ。

 ベステルタが不敵に笑って腕組みしている。余裕だな、くそう。実際余裕なんだろうけどさ。どうせぼこぼこにされるだろうけど、その代わりに夜はこっちがぼこぼこにしてやるし。ぱんぱんのぬこぬこのぐっちゅっぐっちゅだ。あー、早く夜にならないかなぁ。

「よし、それじゃ両者……」

 ラーズさんが手を掲げて振り下ろす。

 ここだっ!

『濃霧!』

 ベステルタの顔に濃い霧がまとわりつく。

「むっ」

 霧越しに若干の動揺が伝わってきた。この隙を逃すわけにはいかない。

「練喚攻・二層!」

 体内の亜人パワーを練り上げ体にまとわりつかせる。

 湧き上がる膨大な力。筋肉を収縮。ばねみたいに蹴り出す!

「せいっ!」

 狙うはベステルタの腹。身体は先端に行くほど避けられやすい。それなら中心だ。その分防御力もあるけど、とにかく当てないことには始まらない。

 ……ィィン……。

 斧が途中で止まる。濃霧も宙に溶けて、ベステルタの不敵な笑顔が現れる。

「ま、まじか」

「ふふふ……」

 僕の渾身の力を込めた一撃は、指でつまんで止められた。しかも小指と薬指。

 まるで花でも摘むように優しく。

 なのに万力に挟まれたみたいに動かない。

「き、きったねぇ」

「堂々とルール破りやがったぞ」

「やっぱ亜人を名乗るだけあって卑怯だわ」

「え、何で斧の勢いが殺されてるの?」

 口々に勝手なことを言う冒険者たち。お前ら実際にやってみろよな。相手は人間サイズに凝縮した怪獣だからな? こんなの卑怯でも何でもないよ。むしろこれくらいハンデ無きゃやってらんない。

「嬉しいわケイ。本気で来てくれるのね……」

 穏やかに微笑むベステルタ。顔がくっつきそうなほど近づいてくる。背筋がぞわぞわする。そりゃそうだ。この距離は彼女の世界。近距離戦。クロスレンジ。

 ぱき……ぱき……。

 何の音かと思ったら、ベステルタが小枝を折るように、斧を先端から折っているのだった。

 パキ、パキ。 

 音が近づくたび、迫る理不尽な暴力の気配。

「いやいや!」

 とっさに離れようとするが、ぐっと残り少ない柄を掴まれギィ、ぎイィ、インとねじ曲げられた。

 ふわっと香るベステルタの匂い。 

「その想いに応えるわ」

 ざ。

 ベステルタが、右足を振りかぶる。

 あ、やべ。

「ベステルキック!」

 なんじゃそりゃ。

 ゴッッッ!!!

 蹴られた、と思った瞬間に肺の空気が全部抜け、景色がものすごい勢いで前方に流れる。

「ぐっはぁ!」

 背中に衝撃。背骨がバキバキに折れていてもおかしくない。何だ何が起きた?

「とっさに斧の柄で受けたのね。偉いわよ」

 ちかちかする視界で、ベステルタが足を高く掲げ、かっこいいポーズで止まっている。残身てやつか? この子武術習ったこと無いよね? 本能で理解しているのか?

 僕はどうやら蹴られて壁に激突したようだ。いや、ここまで差があるか。参ったね。

「それはどうも……ぐっ。でもベステルキックは褒められたもんじゃないな」

 悔しくてつい挑発してしまった。暴走サンドリアと戦っていた時はもうちょいちゃんとした技だったでしょ。

「……何よ。かっこいいじゃないベステルキック……」

 しゅんとしてしまった。な、舐めたい。

『濃霧!』

 ギュン。

 でも今はその隙でさえ見過ごせない。再び彼女の顔に霧が立ち込める。黄金コンボで攻める! 

「なんてね」

 楽し気な彼女の声。眼前に迫る肘。カウンターだ。どうやらさっきのは誘いだったようだ。

「なんてね……っ!」

 しかし、それは僕も予測していた。間一髪スライディングでかわして振り向きざまに、

『濃霧!』

 霧で視界を奪いつつ斧の残骸で薙ぎ払う。
  
「それはさっきも見たわよ?」

 軽く避けられ、足をかけられる。

 ふわっ。

 体が一瞬だけ空中に浮いた。

(よ、よけられな)

「ベステルパンチ!」

 下方から襲う紫の拳が鳩尾に深々と突き刺さる。

「がっ
   はっ!」

「からのベステルエルボー!」

 そのまま恐ろしく硬い肘。冗談じゃない。そんなの喰らったら骨が砕けるよ。この子手加減忘れてないか?

『ぐ、濃霧!』

「む」

 急いで霧を作り出し、少しだけ軌道をずらす。

「くっ」

 何とか斧の残骸でガードするが吹き飛ばされ、地面を何度も転がった。斧も完全にバラバラになり鉄くず状態だ。

 口の中に血の味が滲む。

 圧倒的。戦力差なんてもんじゃない。紙飛行機が戦闘機と勝負しているようなものだよ。

「終わりみたいね? お疲れ様。ケイ。とっても楽しかったわ」

 ベステルタが手を差し伸べる。はー、舐めたい。

「まったく、もっと手加減してほしいよ」

「あはは、でも良い攻めだったわよ? 千霧魔法との連携は結構厄介ね」

 今何回だ? 四回くらいか? いけるか?

「その割には難なく対応してきたけど?」

「まあ気配があるから分かるわよ。わたし五感鋭いし」

 なるほど、五感ね。それなら。

「そのふざけた五感を狂わせる」
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