消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません

紫楼

文字の大きさ
9 / 14

UMAとかっていないって思ってるからこそのロマンよな

しおりを挟む
 
 それからしばらくは、大学行ったり、敷地内で運転の練習したりの日々だった。

 怖いもので豪邸暮らし、不思議住人、高級品に囲まれた暮らしに慣れてきてる。

 俺は下界に帰らねばならないのに。

 そうそう、後の二人にはいつ会えるのかな?って思ってたら、一人には会えたよ。

 庭でドSに教官してもらって自動車乗ってたら、奥まった場所に離れがあって。

 ドSが「今日なら良いか」とか言って紹介してもらうことになった。

 本邸にいっぱい部屋あるのに何故離れを使うのか?

「雪音さん、起きてるか?」
 和風のお家の引扉を開けるとめっちゃ寒かった。

「あらぁ、響子ちゃん。おひさぁ?」
「雪音さん、この子が舜さまだ」
「まぁ~!蘭ちゃんににてないのねぇ?かーわいい」

 真っ白な着物を来て、真っ白な髪で射干玉色の瞳は俺の心の内を見られそうで怖い気がする。
 透き通るような白い肌をしてて、生命力の塊な姐さんやドSにはない儚さを感じる。

「舜ちゃん、私は雪音。蘭さまにお家を作ってもらって楽隠居な雪女でぇす♡」

 ん?雪女?

「雪女はおとぎ話・・・」
「まぁ~!昔は私以外にもいっぱいいたし、普通に人間と結婚もしてたのよぉ」
 普通に!?
 昔はって貴女はいくつ・・・。

「だから純血種がいなくて絶滅危惧種だけどねぇ」
 コロコロ笑う雪音さんが俺の腕を抱き、イタズラに息を吹きかけてくる。

 ・・・寒い。冷たい。

「うふふ、私は暑いところ苦手だからこのお家は業務用冷凍庫みたいに作ってもらったのよぉ~」
 えーと、マグロとか吊るすようなでかいヤツですか。

「蘭ちゃんのおかげで快適に暮らしてるのよぉ~。だから早く帰ってきてくれると良いわねぇ?」
 そう言いながら俺の頭を抱きしめた。
 役得!の前に凍えそうなんだけど。

「温かい飲み物は出せないからぁ、水風呂入る?」
 なんで!?
「水の中の方が少し温かいとこあるよぉ」
 うそだぁ。

「雪音さん、今日は顔見せに来ただけだから、今度本邸に食事においで」
「あらぁ。そうねぇ、あずきちゃんに会いたいわぁ」

 凍死しちゃいそうになったので秘書置いて先に出た。

 春なのにお別れですか~。
 そんな歌詞が思い浮かぶ。
 あまりの寒さにちょっと魂が空に向かいそう。

「軟弱ですねぇ」
 あの冷気を耐えるのはカニ漁くらいの難易度。行ったことないから比べられないけど。

 冷気にやられてしまった俺は、ドSに「ポンコツ」言われながら助手席に詰め込まれて、屋敷に戻った。

 引きずられて部屋にポイ捨てされた俺に、双子が「あずきちゃんからにゃん」って言ってぜんざいとほうじ茶を持って来てくれた。

 あったまる・・・。

 雪女っているんだね。あんな寒くできるならスキー場とか経営したら儲かりそう。
 最近の雪不足って雪女が絶滅危惧だから??あれ、雪男はいないのか?
 海外だっけ?

 って、そもそも妖怪がいるテイで考えちゃってる。ヤバ。

「雪音ちゃんはねぇ、新潟美人にゃ」
「違うですにゃん!岩手ですにゃ」

 ぽちぽち。検索しちゃう。

「雪女は東京の青梅・・・」
「にゃー!ロマンが砕け散ったにゃ」
「東京も昔じゃ田舎だったですにゃ」

 日本各地に伝承があるから雪女は複数いるのらしい。
 知らず街中で一緒にかき氷とか食ってたりしそう。

 ぜんざいで体があったまったけど、ゆっくり体を温めようと風呂に入ることに。

 でっけぇ風呂を独り占めって気分いいよなぁ。

 生まれたままの姿になって体の汚れをザッと流して湯船に入れば。
 骨まで凍りそうだった体がジュワッと溶ける。

「あー、俺は雪山に住める気がしないなー」
 いつか石垣島とかでのんびりしたい。
 それか、雪と台風がない地域がいい。

 夕食は、鮭の入ったシチューだった。
 基本的に猫な双子が喜ぶ魚がメインで出て来て、たまに俺と秘書にお肉メニューが追加される。 
 ミズメさんはシカや猪を丸ごとだからな。

 雪音さんは何を食べてるんだろう。食事をご一緒できる日は来ない気がする。
 でも昔話では旦那さんと普通に暮らしてたから何か方法はあるのかな。

 双子が俺にドテラを出してくれたので着る。季節的にはすでに初夏だけど今日は芯まで凍ったので気分的に寒い。

 食後に双子とあずきちゃんの接待でお茶を飲んでたら、秘書がタブレットを持って入って来た。

「蘭さまじゃなくて、オオクズから連絡が入りました」
 ん?オオクズって大城戸をもじった?

 親父、ドS秘書にめっちゃ嫌われてるやん。

「行方不明じゃなかったの?」
「ネットがつながる場所にいなかったようで『あー、すまんすまん』と悪びれずに話してます。蘭さまの代わりに舜さまがお相手ください」

 えー!!いきなり十年くらい会ってない親父と何話せって言うの?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

【エリート高から】ありのまま、起こったことを話すぜ【手紙が来た】

一樹
ファンタジー
エリート高から、うちの学校に入りなさいと案内が来た。 迷った主人公は、掲示板を立てて相談することに決めた。

処理中です...