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決勝戦第五試合決着
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ノーラは、相手が操っている短剣の動きが鈍ったことに気が付いたのだろう。ここまで防戦一方だった動きから一転し、短剣を構えて相手に突撃する。相手の方も短剣を操る事を諦めたのか、もしくはMPが底をついたのか──大量の短剣を鞘に納めて、手に一対の短剣を持つ形でノーラを迎え撃った。
が、無数の短剣に攻撃され続けたノーラはうっ憤を晴らすかのように相手の周囲を回りながら何度も短剣による攻撃を繰り出す。残像を残しながら、ひたすらに相手に向かって短剣を振り続けるノーラ。相手の体からは複数の血煙が噴き出している。ノーラによる攻撃がヒットしている何よりの証拠だ。
ノーラはそのまま無言でひたすら相手の体を切り刻み続ける。相手も一対の短剣によるガードやパリングを行っているが、スピードはノーラが上回っているようで追い付いていない。だが、それでも体さばきで明確な大ダメージは回避している。ノーラの表情もかなり厳しそうだ──今のスピードはノーラもかなり無理をして出しているのかもしれない。
それからしばしノーラの攻撃が続いたが、相手がノーラの攻撃の一つを見切って大きく弾く。ノーラの体勢が崩れたところにすかさずショルダータックルを仕掛けてノーラを吹っ飛ばした。ノーラは武舞台の上を数回転がってから起き上がり、互いに睨み合っている。それから呼吸を少し整えたノーラが再び突撃した。
この時、ノーラが持っていた短剣には氷の刃が伸びているのが見えた。水魔法で短剣の刃の上からかぶせるように氷を生成してロングソードの長さまで伸ばしたと思われる。そしてノーラは全力の突き攻撃を放ったのだが──ノーラの攻撃は届かなかった。なぜなら、相手は無数の短剣を重ね合わせたいびつな大剣もどきを作り上げ、ノーラよりもリーチを伸ばしての突き攻撃を放ったから。
「それが、本来の姿って奴ね……?」「使うつもりはなかった。だが、使わされた。使わなければ、お前の氷の刃に俺の頭部は貫かれていただろうな」
ノーラの氷の刃の切っ先は相手の頭部直前で止まっていた。相手の言う通り、相手があの短剣を集めた両手剣もどきではなく一対の短剣のままであったなら、ノーラの氷の刃は相手の頭部を貫き鮮血を滴らせていただろう。しかし、現実はノーラの胴体を相手の両手剣もどきが完全に刺し貫いたという結果である。
「一歩、届かなかったかぁ……悔しいなぁ」「こちらも首一枚残して勝ったというだけだ──本当に、ぎりぎりだった」
そんな会話の後、ノーラの体が粒子となって武舞台の上から消失。武舞台の下に倒れた姿で現れる。そして起き上がったノーラは──
「ごめん、負けちゃった」
と一言口にしてから頭を下げつつ手を合わせてきた。とはいえノーラが悪いわけではない。ノーラが真剣に戦っていた事は間違いないし、責める要素はどこにもない。一つ言うなら、運が悪かったというところだろうか? さっきの相手、レイジやカナさんだったら勝てた可能性が高いと思う。短剣の攻撃は厄介ではあったが重装備のレイジやカナさんなら盾を構えつつ確実に距離を詰めて潰すという行動の選択肢があった。
しかしそこまでの防御力を持つ事が出来ないノーラは回避をしなければならない。軽装備で攻撃を受け続けたらあっさりやられてしまうからだ。故にどうしても攻撃が出来るチャンスが少なくなってしまい、相手にペースを握られる形を強いられてしまった。しかし、これをノーラの責任というのはあまりにも酷だ。運が悪かったという言い方をするのが妥当だろう。
「謝る必要はないぞ、後はゆっくり休んでいてくれ」「そうですね~、今は休んでくださいな~。ノーラさんが頑張ったことは、私達はもちろん相手の方だって嫌ってほど分かっていらっしゃると思いますよ~」
と、ノーラを労うツヴァイとミリー。二人の言葉に、自分も頷いた。相手が口にした「本当にぎりぎりだった」という発言は、決してリップサービスではなかっただろう。顔に滴る汗の量もすごかったからな。相手にとっても決して楽な戦いではなかったことは疑いようもない。もしあれが演技だったとしたら、大したもんだとしか言いようがない。
「でも、本音を言えば勝ちたかったのよ。私で一週目の戦いが五試合まで終わったわけだけど、ここまでの結果は、一勝一引き分け三敗でしょ? かなりこっちがやられているのよね……アタシが勝てていたら、二勝一引き分け二敗だったわけで、立て直す勢いという奴が出ただけにね……」
と、ノーラが悔しそうにしながら発言する。確かにノーラの言う通り、こちら側がかなり押されている形だ。もちろん負けたとは言っても少なくないダメージを相手に与えているので意味がない負けを重ねた訳ではないのだが、それでも旗色の悪さは隠しようがない。残りはカナさん、カザミネ、レイジ、ツヴァイの順。
残り四名のうち、最低でも二勝をあげないとこちら側の勝ち目はほぼ消える。自分一人で残りのマッスル全員を倒すのはさすがに無理がある。まだいくつかの隠している手札はあるけれど、全員を倒すまで持たせられるかどうかは怪しい。真同化がもし健在ならばまだ目もあったが、今はもうワイヤー部分を残しているだけであって補助的な使い方が精一杯だ。
「厳しい事は事実ですが、それでもまだまだこれからです。私の出番ですので行ってきますね」
カナさんが武舞台に上がる。マッスル側もほぼ同じタイミングで武舞台の上に上がってきた。そして、これまたなんという組み合わせか……カナさんも、そして相手も大盾を持って片手武器を持つというタンカー同士の勝負になる様だ。いかに盾を使いこなして相手の攻撃を防ぎつつ、タイミングを見て反撃に移れるかという行動を両者が行う事になる。
(さらには、相手には防御無視の攻撃方法がある。カナさんは、どうなんだろうか? 今まで見た中ではそういった系統の技は見せて来なかったが──カナさんの実家は武術の道場でもあるという。ならば鎧通しという技が使える可能性がある、か?)
流石に詳しくないが、相手の上から振動を伝える事によってダメージを与える技、なんだったかな? 実際に鎧を抜けるかどうかは分からないが、カナさんならもしかして、という期待はある。もし使えるのであれば、相手の防御が高かろうが通せるのは強みになるし、相手だけが一方的に防御を無視して通せるわけではないとなれば、相手に圧も掛けられる。
「ここからの後半戦、一つでも多く白星をあげなければなりませんね」「それは確かだが、硬くなるなよ? 動きが硬くなって良い事なんて何もない。普段通りに全力を以って戦うしか方法はないんだからな」
カザミネの言葉に、レイジが釘を刺す。レイジが口にしたことは正しい。あまりに緊張して動きが硬くなれば、それはただ隙を晒すだけの体を曝すことになる。これは戦いに限った話じゃないけどな──仕事、受験、研究の発表、スポーツなどなど、適度な緊張感を持つのは必要だが過剰な緊張感は毒になるなんてところは無数にある。
カナさんはそういう事を理解している女性だ。故に武舞台に上がったうえでも落ち着いている姿を見せている。それだけで相手は警戒するからな……マッスルも、そこは変わらない。
『では、両者共に準備はよろしいですか? 決勝戦第六試合、開始します!』
そして始まる第六試合。カナさんが勝つ事を祈るだけだ……
が、無数の短剣に攻撃され続けたノーラはうっ憤を晴らすかのように相手の周囲を回りながら何度も短剣による攻撃を繰り出す。残像を残しながら、ひたすらに相手に向かって短剣を振り続けるノーラ。相手の体からは複数の血煙が噴き出している。ノーラによる攻撃がヒットしている何よりの証拠だ。
ノーラはそのまま無言でひたすら相手の体を切り刻み続ける。相手も一対の短剣によるガードやパリングを行っているが、スピードはノーラが上回っているようで追い付いていない。だが、それでも体さばきで明確な大ダメージは回避している。ノーラの表情もかなり厳しそうだ──今のスピードはノーラもかなり無理をして出しているのかもしれない。
それからしばしノーラの攻撃が続いたが、相手がノーラの攻撃の一つを見切って大きく弾く。ノーラの体勢が崩れたところにすかさずショルダータックルを仕掛けてノーラを吹っ飛ばした。ノーラは武舞台の上を数回転がってから起き上がり、互いに睨み合っている。それから呼吸を少し整えたノーラが再び突撃した。
この時、ノーラが持っていた短剣には氷の刃が伸びているのが見えた。水魔法で短剣の刃の上からかぶせるように氷を生成してロングソードの長さまで伸ばしたと思われる。そしてノーラは全力の突き攻撃を放ったのだが──ノーラの攻撃は届かなかった。なぜなら、相手は無数の短剣を重ね合わせたいびつな大剣もどきを作り上げ、ノーラよりもリーチを伸ばしての突き攻撃を放ったから。
「それが、本来の姿って奴ね……?」「使うつもりはなかった。だが、使わされた。使わなければ、お前の氷の刃に俺の頭部は貫かれていただろうな」
ノーラの氷の刃の切っ先は相手の頭部直前で止まっていた。相手の言う通り、相手があの短剣を集めた両手剣もどきではなく一対の短剣のままであったなら、ノーラの氷の刃は相手の頭部を貫き鮮血を滴らせていただろう。しかし、現実はノーラの胴体を相手の両手剣もどきが完全に刺し貫いたという結果である。
「一歩、届かなかったかぁ……悔しいなぁ」「こちらも首一枚残して勝ったというだけだ──本当に、ぎりぎりだった」
そんな会話の後、ノーラの体が粒子となって武舞台の上から消失。武舞台の下に倒れた姿で現れる。そして起き上がったノーラは──
「ごめん、負けちゃった」
と一言口にしてから頭を下げつつ手を合わせてきた。とはいえノーラが悪いわけではない。ノーラが真剣に戦っていた事は間違いないし、責める要素はどこにもない。一つ言うなら、運が悪かったというところだろうか? さっきの相手、レイジやカナさんだったら勝てた可能性が高いと思う。短剣の攻撃は厄介ではあったが重装備のレイジやカナさんなら盾を構えつつ確実に距離を詰めて潰すという行動の選択肢があった。
しかしそこまでの防御力を持つ事が出来ないノーラは回避をしなければならない。軽装備で攻撃を受け続けたらあっさりやられてしまうからだ。故にどうしても攻撃が出来るチャンスが少なくなってしまい、相手にペースを握られる形を強いられてしまった。しかし、これをノーラの責任というのはあまりにも酷だ。運が悪かったという言い方をするのが妥当だろう。
「謝る必要はないぞ、後はゆっくり休んでいてくれ」「そうですね~、今は休んでくださいな~。ノーラさんが頑張ったことは、私達はもちろん相手の方だって嫌ってほど分かっていらっしゃると思いますよ~」
と、ノーラを労うツヴァイとミリー。二人の言葉に、自分も頷いた。相手が口にした「本当にぎりぎりだった」という発言は、決してリップサービスではなかっただろう。顔に滴る汗の量もすごかったからな。相手にとっても決して楽な戦いではなかったことは疑いようもない。もしあれが演技だったとしたら、大したもんだとしか言いようがない。
「でも、本音を言えば勝ちたかったのよ。私で一週目の戦いが五試合まで終わったわけだけど、ここまでの結果は、一勝一引き分け三敗でしょ? かなりこっちがやられているのよね……アタシが勝てていたら、二勝一引き分け二敗だったわけで、立て直す勢いという奴が出ただけにね……」
と、ノーラが悔しそうにしながら発言する。確かにノーラの言う通り、こちら側がかなり押されている形だ。もちろん負けたとは言っても少なくないダメージを相手に与えているので意味がない負けを重ねた訳ではないのだが、それでも旗色の悪さは隠しようがない。残りはカナさん、カザミネ、レイジ、ツヴァイの順。
残り四名のうち、最低でも二勝をあげないとこちら側の勝ち目はほぼ消える。自分一人で残りのマッスル全員を倒すのはさすがに無理がある。まだいくつかの隠している手札はあるけれど、全員を倒すまで持たせられるかどうかは怪しい。真同化がもし健在ならばまだ目もあったが、今はもうワイヤー部分を残しているだけであって補助的な使い方が精一杯だ。
「厳しい事は事実ですが、それでもまだまだこれからです。私の出番ですので行ってきますね」
カナさんが武舞台に上がる。マッスル側もほぼ同じタイミングで武舞台の上に上がってきた。そして、これまたなんという組み合わせか……カナさんも、そして相手も大盾を持って片手武器を持つというタンカー同士の勝負になる様だ。いかに盾を使いこなして相手の攻撃を防ぎつつ、タイミングを見て反撃に移れるかという行動を両者が行う事になる。
(さらには、相手には防御無視の攻撃方法がある。カナさんは、どうなんだろうか? 今まで見た中ではそういった系統の技は見せて来なかったが──カナさんの実家は武術の道場でもあるという。ならば鎧通しという技が使える可能性がある、か?)
流石に詳しくないが、相手の上から振動を伝える事によってダメージを与える技、なんだったかな? 実際に鎧を抜けるかどうかは分からないが、カナさんならもしかして、という期待はある。もし使えるのであれば、相手の防御が高かろうが通せるのは強みになるし、相手だけが一方的に防御を無視して通せるわけではないとなれば、相手に圧も掛けられる。
「ここからの後半戦、一つでも多く白星をあげなければなりませんね」「それは確かだが、硬くなるなよ? 動きが硬くなって良い事なんて何もない。普段通りに全力を以って戦うしか方法はないんだからな」
カザミネの言葉に、レイジが釘を刺す。レイジが口にしたことは正しい。あまりに緊張して動きが硬くなれば、それはただ隙を晒すだけの体を曝すことになる。これは戦いに限った話じゃないけどな──仕事、受験、研究の発表、スポーツなどなど、適度な緊張感を持つのは必要だが過剰な緊張感は毒になるなんてところは無数にある。
カナさんはそういう事を理解している女性だ。故に武舞台に上がったうえでも落ち着いている姿を見せている。それだけで相手は警戒するからな……マッスルも、そこは変わらない。
『では、両者共に準備はよろしいですか? 決勝戦第六試合、開始します!』
そして始まる第六試合。カナさんが勝つ事を祈るだけだ……
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