とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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二週目第一回戦

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 二回戦の組み合わせが決定した。一回戦はカザミネVSレイジを倒した騎士剣と片鎌槍を扱うプレイヤー。二回戦が自分VSエリザと戦ったプレイヤー。有座は勝ちこそしなかったが相手を相当に追い詰めていた以上自分は絶対に勝たなければならないだろう。そして最後がツヴァイVSカナさんと戦った相手。相手は片手をカナさんによって折られたことでダメージはそれなりに蓄積しているがツヴァイはそれ以上だ。これは厳しいだろう。

『以上になりました! では一回戦の組み合わせに決まった方は、一分後に武舞台に上がってください!』

 カザミネは大太刀の最終確認をした後に、武舞台に向かった。武舞台に上がる前に一度深く深呼吸をしていたのが見える。少しでも落ち着こうとしているのだろう……カザミネの相手は、レイジとの戦いでレベルアップを果たしてしまっている。厳しい戦いになる事はカザミネが一番良く分かっているはずだ。

 武舞台に二人とも上がり、お互いを見据える。そこにはピリついた緊張感があった。武器はそう、共にまだ収めている状態であるにもかかわらず、むき出しの殺意とでもいうべきものがそこにはあった。

「お前さんとやれるってのは幸運だ。お前さんの振るう大太刀の輝きはなかなかに魅せられるものがあるからな。思う存分やらせてもらうぜ」

 相手はそう言い終えると、ゆっくりと騎士剣を抜き放って構えを取った。

「貴方が強いという事は嫌というほどに思い知らされています。しかし、それでも踏み越えさせていただきます」

 カザミネもゆっくりと大太刀の太刀を抜き放って相手を見据えつつ構えを取った。その動きをもって、戦闘態勢に入ったと判断した運営役のプレイヤーが試合開始を告げた。直後、両者共に距離を詰めての攻撃を放った。

「くっ!?」「おおっと!?」

 カザミネの大太刀と二刀流騎士剣がぶつかり合って相殺が発生した結果は互角。双方弾き飛ばされる形で間合いが強制的に広がった。

「いいねぇ、遠慮なく俺をぶった斬るという気迫がビシッと伝わってきたぜ。やっぱり戦いって奴はそうでないとな!」

 相手はそんな発言をしながら笑みを浮かべた。一方でカザミネは無言で表情を変えずに大太刀を構えて次の一手を考えているようだ。再び両者の間に緊張感が走り──互いの武器が再びぶつかった。が、今度はお互い相殺が発生しても弾き飛ばされるようなことは無く、そこからは剣戟が展開される。

 回転数で勝る相手の二刀流に対して、カザミネは大太刀全体を用いて、弾き、受け流し、反撃、防御を行っている。展開が早く、一瞬でも目を離したらついていけなくなるだろう。時代劇の殺陣を三倍ほど早回ししているような感覚と言った感じだ。火花が無数に生まれ、散り、また生まれる。

「この回転の速度に平然とついてくるのか……、良いな、面白い!」

 相手からはそんな言葉が出る。レイジとの戦いで得た感覚のせいか、その声には余裕が十二分に感じられる。一方でカザミネは無言でただひたすらに大太刀を振るい続けている。しかしその表情は普段通りであり汗も見せていない。お互いにこのスピードでの打ち合いもまだまだ挨拶の範疇を出ていないという事になるのだろうか。

 しばし打ち合った後に、互いに多少の距離を取る両者。前進するアーツの間合い内なので、どちらも油断はしていない。互いに武器をわずかに動かしてフェイントをかけ合っているのが分かる。が、ここでカザミネの大太刀に光が宿る。アーツを放つつもりか?

「《飛翔斬──」

 と、カザミネがここまで口にしたタイミングで、相手が動く。《飛翔斬》は確か大太刀を縦に振るって飛んでいく斬撃を発生させる飛び道具を発生させるアーツだったはずだが、この間合いでは近すぎる。なのにカザミネはそれを選択した……何かしらの理由がある筈だ。当然相手もその性質は理解しているために側面に移動しながら距離を詰めてくる。

「──偽》」

 え? 偽? とたんにカザミネの持つ大太刀からは光が消え失せ、アーツは発動しない。アーツが発動しないという事は、アーツを放った後の強制硬直もない。カザミネは接近してきた相手に対し、横薙ぎの斬撃を見舞う。相手はその攻撃を横にローリングする形で回避しようとしたが、鮮血が飛ぶ。

「直撃させられませんでしたか」

 カザミネの振るった大太刀は、相手の肩付近に命中していたようだ。が、出血量が少ない。多少のダメージにはなっただろうが、軽度である事もまた事実だろう。カザミネがアーツで誘って得た成果としては物足りない。もっとも、アーツを中断する? そもそも偽モーションで誘う事が出来る? 物があるという事で、相手の動揺を誘う事はまだまだできそうだが。

「ち、フェイント系のアーツかよ! お前さんそういう事もやれるタイプだったんだな──いいぜ、それはそれで面白い。もっとやり合おうじゃないか」

 一方で相手さんはますます闘志を燃やして嬉しそうな笑みを浮かべる。相手が強いほど燃えるってタイプなのは想像できていたが、それをますます前面に出してきたな。カザミネが少々気圧されたかのようにも見えたが──大丈夫か。大太刀を構えなおしてしっかりと相手を見ている。

 数秒の間をおいて、再び両者が間合いを詰めたが今度は剣が振るわれず互いの武器の間合い内でのフェイント合戦が展開した。お互いいつでも相手を斬りつけられる間合いのため、武器を振るっていなくても緊張感は嫌でも高まる。フェイントも徐々に本当に武器を振るう直前まで動かして止めるという行動が増加し、より一層緊迫感をあおる。

 そしてそのフェイント合戦の結果、先に武器を振るったのはカザミネだった。振るう方法は突き。素早く突かれた大太刀の切っ先が相手の顔を狙った。が、相手はこの大太刀の突きを騎士剣で受け流して回避。もう片方の騎士剣で相手は反撃を狙ったが、素早く大太刀を引いたカザミネによる突きがもう一度、相手に向かって繰り出された。

 これにはさすがに相手も攻撃を中断して回避行動をとるしかなかった。カザミネの放った二回目の突きは相手の顔をわずかに掠めたかどうか? という程度で軽傷にもならなかったが、相手の反撃を潰すことが目的だったはずだしそれはそれでいいのだろう。実際カザミネの表情に落胆の色はない。

 互いに引っかけるように誘い誘われ、それでも互いの攻撃がまともに当たらない。こうなると先ほどのカザミネによる肩への攻撃が直撃しなかったのが悔やまれるなぁ。あれが直撃していれば相手は二刀流を封じられていたはずだし……実に惜しい。

 両者とも、しばし接近戦でのフェイント合戦を続けたが明確な成果は出ないまま時間だけが過ぎる。が、どちらもこんなものだろうとでもいう感じで焦りの感情だけは全く感じられない。相手を焦らせて、そこに意識外の罠を仕掛けるという感じの戦いになりそうな雰囲気だ。相手をはめられるのは、どっちだ。
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