とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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二週目第一回戦決着

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 そう思っていたのだが、ここで試合の流れが硬直した。先ほどまでの動きが完全に消え失せ、両者が全く動かなくなったからだ。もはやフェイントすら行っていない──いや、目だけは動いている。相手の隙を見つけようと必死で動いている。そして先に動いたのは相手。手に持っていた騎士剣をカザミネに向けて投擲したのである。

 この投擲に対し、カザミネは回避行動をとるどころか突っ込んだ。そして投擲された騎士剣の下をギリギリくぐる感じでかわした後に突きを放とうとする──しかし、その切っ先の先に相手はいなかった。どこに行ったのかと問われれば、それは空中。《大跳躍》を用いて空に飛びあがり、片鎌槍を手に持ち、カザミネの首を狙って突きを放とうとしている。

(騎士剣投擲は《大跳躍》のためのブラインドか!)

 カザミネに対して警告を送りたいが、声を出すのが間に合わない! もはや相手の槍はカザミネの首を捉える寸前──が、相手の槍による攻撃が外れる。カザミネが突きを放つのを中止して、地面に全力で伏せた為だ。カザミネの一瞬の判断が相手の奇襲を無にしたのだ。しかし、突きの体勢に入っていたところから無理に伏せた事によってカザミネは伏せの状態からすぐには起き上がれない。

「そこだぁ!」

 相手の槍がカザミネに迫る。カザミネもその殺気に反応した──したのだが間に合わなかった。カザミネが回避するよりも相手の槍による突きが一瞬だけだが早かった。槍がカザミネの背中を割くような形で命中し、血が大量に流れだして装備を紅に染める。

「うううううっ!?」

 カザミネの口からこぼれ出る苦悶の声。それでも体を動かし、何とか立ち上がるがダメージの色は濃い。顔色が悪化し、背中から武舞台に落ちる血の量は決して少なくない。相当にまずい状況になったなんの事は、火を見るより明らかだった。それでもカザミネは大太刀を構えなおし、相手をしっかりと見据える。

 相手はここで畳みかける事を選択したようで、両手に一本ずつ持った片鎌槍でカザミネに突きの連打を行う事で休む間もなく攻め立てる。だが、カザミネはこのような状態になってもなお冷静だった。相手が繰り出す突きをひたすらに躱し、そして──突きの一つをはじき返したのである。完璧と言っていいタイミングで弾かれたことによって、相手の右腕が片鎌槍と共に跳ね上がる。

 直後、カザミネの体がぶれた。そして相手の横を駆け抜けた。もちろんただ駆け抜けただけじゃない、大太刀を振り抜いた格好で駆け抜けていたのだ。それが示すことは──相手の胴体に一筋の光が走り、その線から血しぶきが舞う。カザミネの大太刀による一撃が完全に入った事をこれでもかと教えてくれた。

「ぐ、っううっ!?」

 が、カザミネが苦悶の声を上げて、直後に血を吐いた。背中からの出血も止まっておらず、先ほどの攻撃は痛みに耐えて放った一撃である事を周囲に教えていた。そして、ここでカザミネの一撃をまともに受けた相手も血を吐いた。

「ぐ、ほっ!」

 吐血とカザミネによって切られたことで腹部辺りからの出血が発生していたことが合わさって、相手の鎧も見る見るうちに紅に染まっていく。双方ともにダメージが大きいらしく、ここでどちらも膝をついた。が、試合はまだ終わっていない。決着がつくまで戦わなければならない。

「ぐぬうううっ!」「く、ううううっ!!」

 両者が歯を食いしばって立ち上がり、そして互いを見据える。武器を握る手に力が入っていくのが見える──次の一撃を最後にするつもりのようだ、両者共に。互いに出血量が多く、ただ立っているだけでもHPが削られ続けているのだろう。もしこのまま動かなければ、先に出血を引き起こされているカザミネの方が先に力尽きる可能性が高い。

 が、そんな決着は良しとしないのだろう。相手はそんな手段ではなく、己の力で討ち取って勝つと言わんばかりの気迫を前面に出してきている。一方でカザミネも受けて立つとばかりに相手をしっかりと見据えて気迫で押し返そうとしている。両者が徐々に間合いを詰める。互いの間合いに入るまで、あと三歩、二歩、一歩──そして、動く!

 紅の染まったその体のどこにそれだけの動きが出来るだけの力が残っていたのか? そう問いかけたくなるだけの速度で両者が距離を詰めて最後の一撃を放つ。カザミネは袈裟懸けの斬撃を。相手はカザミネの首を狙った一対の突きを。そして、決着がつく。勝ったのは──相手だった。

 カザミネの大太刀による袈裟切りを片方の槍の先端でわずかながら受け流し、もう一方の槍の先端ではなく片鎌槍の鎌の部分でカザミネの首を飛ばしたのである。二本の槍を持つ相手だからこそできた攻撃だった……宙を舞ったカザミネの首が、地面に落ちる。その後にカザミネの体も武舞台の上に倒れて消え去った。

『そこまで! 二種目第一試合はマッスルの勝利となります!』

 その宣言が出た直後に相手もまた崩れ落ちた。向こうも精神力を総動員しての攻撃だったようだ。膝をついた格好で槍を手放し、武舞台の上で荒い息を吐き出し続けている。マッスル側から彼を武舞台の下に下ろすべく二人ほど上がってきて抱きかかえていく。

「大丈夫か?」「正直、ここまで集中できるとは思わなかった。レイジとの戦いで精神力が研ぎ澄まされていなかったら、最後の攻撃はできなかった……あいつは強かった、ここまで追い詰められるほどに」

 そんなやり取りを耳が拾った。カザミネの最後の一太刀をギリギリ当たらない最小限の受け流しを決めて見せた相手の精神力はすさまじかった。ミスれば体を一刀両断されていたのだから……故に、それを成したことに対しては素直に敬服するほかない。敵ながら見事、という奴だ。

(しかし、カザミネが落とされてしまったのはとても痛い。これで残るは自分とツヴァイだけか。そしてツヴァイは一週目で多大なダメージを受けてしまっている……が、先の事を考えるのは次の試合に勝ってからだ。エリザが追い込んだ相手は、使える手段をすべて使って死に物狂いでこちらを倒そうとしてくるはず。忘れるな、死兵ほど怖い物はないという事を)

 向こうは相打ち上等なのだ、何せ人数差が大きくあるのだから。こちらは残り二人しかいない。勝つためには相打ちに持ち込まれてはいけない。かといって相手を恐れすぎてもいけない、という難しい塩梅を迫られることになる。

(それでも、ブルーカラーの最後を華々しく飾ってあげたい。ならば勝つしかないだろうが。気合を入れ直せ、自分)

 軽く領の頬を叩いてから深呼吸をして気合を込め直してから武舞台に向かって歩き出す。それと同時に進行役のプレイヤーからも『二週目第二試合を始めます、選手は武舞台の上に上がってください!』という指示が飛ぶ。ゆっくりと武舞台の上に立った自分は武舞台を見渡す。

(大丈夫、武舞台が変に小さく見えたり大きく見えたりと言った錯覚はない。落ち着いている状態だ、ならばあとは全力で当たるのみ)

 相手も武舞台に上がってきたが、やはりエリザによって受けたダメージは隠しきれない。これで負けたらエリザになんと言われるか分かったものじゃないな。落ち着いて変に力まず、相手をしっかりと見て勝つ。それを忘れないように心がけてやり合えばいい。試合開始だ。
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