とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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二週目第二試合決着、三試合前のやり取り

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 ハイキックを叩き込まれた相手は、前にゆっくりと数歩歩いた。そして倒れかかったのだが、とっさに両手斧を支えにして堪えた。それだけに留まらず、弾かれたかのように一瞬で上空に飛び上がって構え、自分に向けて両手斧を振り下ろしてきた。自分はこれを左に飛んで回避したが、両手斧が叩きつけられた武舞台の箇所には小さなクレーターが出来上がっていた。

(流石は両手斧。その重量が最大限に生きる振り下ろしによる一撃は全てを押しつぶし、断ち切る。あれは受ければ、一発で状況がひっくり返ってしまう)

 モーションが大きい事を考えても、それ以上の魅力があるのが両手斧の一撃。この一撃で、どんな不利も逆境も切り裂いてしまうのだ。味方にいると頼もしいが、敵に回すと恐ろしい武器。だからこそ、決着がつく前に油断をするのは阿呆のする事なのである。相手を見据えて構えなおすと、相手の出血がやや減っているように見受けられた。

(もしかして、何らかの自然治癒を促進するスキル、もしくは装備を持っている可能性がある、か? 攻めを躊躇して時間を浪費するのは悪手のようだ)

 攻めを継続する事を決定し、再び間合いを詰める。が、次に使う武器はレガリオンでも八岐の月でもない。こちらの突撃に合わせて対応しようとした相手の心の隙間を突いて──装備している小盾に仕込んでいるスネークソードを展開。相手が身構え終わる前の首を狙う。一対の小盾に仕込まれたスネークソードが伸びながら横薙ぎの刃で相手の首に襲い掛かる。

 だが、相手もとっさにブリッジのような動きをすることでこれを回避するという行動に出た。しかし完全回避には至らず、顔の頬の下部あたりにスネークソードの刃が食い込んだ。スネークソードの刃に紅が乗る。そしてXの様な血の跡が宙に一瞬描かれた。だが手ごたえはあまりない、攻撃は浅く相手の皮を斬っただけのようだ。

 が、相手も無理な態勢移行で次の行動に素早く移れないはず。両手斧を振らせる前に自分は次の行動に出る。ブリッジしている相手の体を目がけて《スライディングチャージ》を仕掛ける。この攻撃は直撃し、相手から苦悶の声が漏れた。そこから更に《ハイパワーフルシュート》で追撃、相手の体を無理やり空中に打ち上げた。これで相手に攻撃のターンを回さない。

「なっ!?」

 自分の体を宙に飛ばされるのは想定外だったのか、相手の口からは驚愕の声が漏れていた。もちろん無防備に宙を舞う事になった相手にさらなる追撃を行う。こちらも相手の体を《大跳躍》で追いかけ、レガリオンと八岐の月を用いた連撃で攻撃。相手の体に次々と傷をつけ出血を強いる。そこから更に《フライ》を使って態勢を整えた後に相手の胴体のど真ん中に踵落としを叩きこんで急降下させる。

(まだまだ!)

 急降下していく相手の体に、レガリオンを一旦手放してから《ツイスターアロー》《ツインファングアロー》の連続射撃を叩き込み、相手の体を地面に叩きつけながら縫い留める。そこに《ガトリングアロー》で無数の矢を相手にぶち込んで蜂の巣にした。最後にレガリオンを掴みなおしてから相手の胸辺りに落下の勢いを乗せた蹴りを叩き込んだ。

「──!!!!?」

 相手は声にならない声を上げて苦痛の表情を浮かべたのち、光の粒子となって飛散。HPが尽きたようだ。しかし、普通のプレイヤーならガトリングを放つ前に決着がつくレベルだったんだが、結局蹴りまで叩き込んでやっとか……相手のタフさは想像以上だという事を再認識。なんにせよ、勝てたことは大きい。これで次に繋がる。

『そこまで! この試合はブルーカラーの勝利となります!』

 勝利宣言も貰ったので武舞台を降りる。相手を空中に打ち上げてからの追撃、エリアル攻撃を行ったのは久々だったが問題なく行えたな。一度染みついた行為はやっぱり体が忘れない。これでまた一枚相手に手札を見せたが、まだ見せていない手札はある。次の試合からは親方たちと作ったあの二つの盾を使う事にしよう。

「ナイスだ、アース!」「ありがとう、でもあいつは一週目の戦いでエリザによって大ダメージを被っていたからな。多少回復してもさすがにそこはカバーしきれなかったという感じだったが」

 声をかけてくれたレイジにそう返す。むろんエリザにも聞こえるように。エリザも自分の言葉を聞いて少しは気分を良くしたのか「ま、まあ私も勝利に少しは貢献できたようで何よりですわ」と小声でぼそっと呟いていた。自分の耳はそれも遠慮なく拾ってしまったが、あえて何も言わない。伝えるべき所は伝わった、それでいいのだから。

「しかし──ツヴァイ、本当に大丈夫ですか? 多少の休息で回復するダメージじゃないんです、ギブアップしても誰も文句は言いませんよ?」

 しかし、次の出場者であるツヴァイはかなり苦しそうだった。普通の冒険中なら回復魔法を受けて回復できるダメージだが、今回のルールでは一周ごとに一定の回復しか受けられない。なので、ツヴァイは頭部の痛みに苦しんでいる状態が続いているはずだ。ある程度痛みは引いているだろうが、それでもかなり苦しいはずだ。だが、ツヴァイはカザミネの言葉に首を振る。

「お前だって、アースだってちゃんと戦ったんだ。ギルマスの俺が少々きついからって簡単にギブアップしたら、情けないにもほどがあるって奴だろう」

 よろよろと、しかし立ち上がったツヴァイは武舞台へと歩を進めていく。明らかに、ダメージが残っているなんて生易しいものではない。事実、ツヴァイの武器である両手剣を持たずに引きずるようにして運んでいる。眼も普段のような元気がない。ギブアップするように忠告する理由なんか、これだけで十分だ。しかし──自分は武舞台へとやってくるツヴァイの肩に軽く手を置いた。

「目いっぱい、やってきてくれ」

 そう告げた。ツヴァイにだって意地がある。ギルマスとして、そして助っ人である自分に頼りきりになる事への嫌悪感もあるだろう。ならば、ここはギブアップを勧めるよりも思いっきり本人にやらせる方がいい。ここでもし自分が止めれば、ツヴァイは自信を失ってしまうかもしれない。だからこそここは引き止めるのではなく、背中を押す。

「ああ、期待には応えるさ」

 ツヴァイが笑った。それはまるで、清々しい風のような笑みだった。今までツヴァイとは長く付き合ってきたが、こんな笑みを見たのは初めてだった。直後、ツヴァイは引きずっていた両手剣をしっかりと握りしめ、肩に担ぐ形で持ち上げた。ツヴァイの目に、気力が戻った。いや、みなぎってきたかのように先ほどまでなかった輝きがある。これならば──

 先ほどまでの疲労困憊、歩くのも辛い姿を見せていたツヴァイが突如、普段通りに歩き始めて武舞台に上がっていく姿を見て、ブルーカラーの面々は驚きの表情を見せていた。いや、マッスルウォーリアーズの面々も驚いているのがわかる。そんな両ギルドの驚きの感情が飛び交う中、ツヴァイが武舞台の上に堂々と立った。自分は見守るだけだ、気力を取り戻したツヴァイの姿を。

 相手も武舞台の上に上がってきた。さて二週目最後の試合だ……ツヴァイ、頑張れよ。きついだろうけど、ギルマスの意地を相手に見せつけてやるんだ。
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