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さて、両手剣使いは重鎧、格闘スタイルは軽鎧と防具はワンモアの中では一般的な装備だな。細かい所までは見てられないけど……使う武器で大体の行動予測は立てられる。向こうもそれは同じはずだから、後は裏をいかにかけるかって感じだ。が、こっちは遠距離攻撃手段が豊富なのに対して向こうは近接メインとなる訳で……
(そりゃ最初は距離を詰めてくるよね)
遠距離戦ならこちらが圧倒的に優位だから、当然の行動だ。そして──両手剣使いが自分に突っ込み、格闘主体がエリザに向かおうとしている。やっぱり開始前の会話はフェイクだった訳だ。あまりにも堂々と戦闘前に言うから、引っかかっていたんだよね。
「そらぁ!」
両手剣使いの横薙ぎの攻撃が自分に向かって振られる。が、受ける理由なんか一切ないのでタイミングを見計らって身を沈めてから、両手剣の横っ面を下から思いっきり伸びあがるような感じで叩きつける。そうなれば当然、重量のある両手剣と言えど上に向かって跳ね上げられる。使い手の体勢も崩れる。そこに──蹴りを一撃。格闘スタイルの奴めがけて両手剣使いを突き飛ばした。
「うお!?」
予想外だったのだろう。格闘主体のプレイヤーが驚愕の声を漏らす。そこにやってくるのはエリザの魔法。強烈な風が開いて二人を派手に空中へと吹き飛ばし──そして重力によって落下させた。これは確か、《ゲイル・ストリーム》という魔法だったかな? 風属性の魔法で、詠唱時間が短く、魔法その物の威力は低いが相手をかなり大きく吹き飛ばすので距離を取ったり相手を打ち上げて落とす事による落下ダメージを狙う魔法だ。
距離が開いたのでこちらも八岐の月を構えて遠距離攻撃を行う。アーツは使わず、矢はツイスター。二、三回ほど射撃したが、軽鎧のプレイヤーには矢が全て突き刺さりダメージをそれなりに与えたと思う。一方で重鎧の方はツイスターアローでも貫く事は出来なかった。あの重鎧、普通の防具じゃないな。並の防具なら、八岐の月とツイスターアローの組み合わせなら容易く貫くのに。
「ち、やっぱりあの異様な弓はおかしい! 放置できねえ!」
と、叫んだ体勢を整えた両手剣使いが再び自分に迫ってくる。今度は両手剣を突きの形で構えて突っ込んできている、が……速度に最初の時のような勢いがない。恐らくこれはぎりぎりで停止して此方のカウンター行動を外させ、その隙にぶった切るカウンターをカウンターする動きをするためだろう。
もちろん格闘スタイルの方も再びエリザに迫ろうとしているが、最初の失敗を鑑みてか自分と両手剣使いとの距離をかなり取っている。そりゃそうするよね、自分だって距離を取るわ。でも、その分大回りになる訳で……それはつまり、エリザの詠唱時間が取れると言う事に他ならない。
と、まずはこっちの対処だな。相手のフェイントにあえて乗るように動き、相手に上手く行っていると思わせる。こちらの予想通りにぎりぎりで足を止め、こちらの攻撃の空振りを誘う両手剣使い。注文通りに空振りをした──と思わせるため全然力を入れていない攻撃をわざと繰り出して空振りする。そこに待ってましたとばかりに大上段から振り下ろされる必殺の両手剣による一撃だが──
「あらよっと」「はぁ!?」
その振り下ろされた両手剣を自分は回避する。向こうとしてはカウンターを外させて隙だらけにしたつもりだっただけに、避けられるのは想定外。ついだしてしまったという感じの「はぁ!?」がまさにそれを証明している。そして重い両手剣を大上段から振り下ろせば、どう頑張っても数秒の隙が生まれる。
その両手剣使いが動けない所に、自分の上段回し蹴りが相手の頭部に刺さる。これは流石に効いたようで、両手剣使いが数歩後ろに下がりながらたたらを踏む。あの重鎧は、刺突耐性は高いが衝撃は一般的なやつと大差ないのかもしれない。と、格闘スタイルの奴はどうした? 動きを確認すると、エリザの後方から迫ってきていた。だが、それだけ襲い掛かるのに時間をかければ、エリザの魔法詠唱の時間は十分にある。
「《イリュージョン・メイズ》!」
エリザの次の手は、光と水の複合魔法。かけた相手に鏡の迷路みたいな視認を起こさせて術者がどこにいるのかを分かりずらくする魔法だ。ただし、術者以外は普通に見えるので仲間である自分に対してはそう言った視認妨害の影響はない。エリザがこれを使ったのは、自分なら二人同時相手でもそれなりにやり合えるだろうという信頼からくるのだろう。
「ち、面倒なやつを……」
格闘スタイルが舌打ちを打つ。エリザを狙いたくても、《イリュージョン・メイズ》中はかなりつらいだろうからねえ。自分がかけられたら? 目を閉じて相手位置を感覚把握してから八岐の月で攻撃するだけです。雨龍師匠、砂龍師匠から受けた訓練は伊達じゃない。
「こうなったら先にレンジャーを落とすぞ! 多少の魔法のダメージは受け入れるしかねえ!」
素早く切り替えた両手剣使いの声に格闘スタイルも同意したのだろう。自分に向かって攻撃を仕掛けて来た。うん、望む所だ。自分が時間を稼ぎ、エリザの魔法で一気に勝負を決める方がスムーズな流れだろうからね。当然そんな事は向こうだって分かっている。だからこそ、速攻で自分を沈めてエリザに圧を掛けたい。二対二の戦いなら、どちらかが一になった瞬間均衡が破れそのまま決着となりやすい。
(だから、《イリュージョン・メイズ》で居場所が分かりにくいエリザを無視するのは理に適っている。あの魔法は維持するだけでMPを常時消費するし、一定レベル以上の魔法を詠唱しはじめると勝手に解けるという制限もある)
自分から見て左側から両手剣使いが、右側に格闘スタイルが陣取り、そこから攻撃を仕掛けてきている。が、こちらも対複数戦は身に染みるほど経験している。防御を重視して回避とパーリング中心に動くが、合間合間に反撃の刃を相手の腕に入れていく。八岐の月にレガリオンの刃が時々、相手の血を舞わせていくのだ。
「なんだよこいつ!?」「挟み撃ちにしてんのに、なんでこうも対処できる!? 反撃してくる? 一体何が見えてるんだよ、狂ってるぞ!」
なんてお言葉を頂くが、こちとらソロで長々と戦ってきたんだ。それに言っちゃ悪いが、ロスト・ロスとの戦いに比べれば楽としか言いようがない。理不尽なシールドもなく、吹っ飛んだ攻撃もない。確かにこの塔の中に要るだけあって攻撃のレベルは相応の物を持っているが──驚かされるレベルじゃない。
(まあ、そう言う意味では自分は正しく狂っているんだろうね。あのロスト・ロスとの一件で、ますますそれが酷くなっちゃったんだろう。こんな不利な状況で戦っているのに、楽って言葉が出てくる時点でそれが証明されちゃってるよな)
不意降ろされる両手剣の攻撃も、ラッシュを仕掛けてくる格闘も、全て自分の操る八岐の月とレガリオン、そして両腕に装備しているシールドに阻まれて一切自分の体に届かない。それを現在進行形で味わっている対戦相手の二人からしてみたら、理不尽ってものを感じている真っ最中かもな……でも、容赦はしない。この二人は、少し痛い目を見ないとダメだから。
(後はエリザ次第だが……出来るだけエリザの魔法で決めたいんだよな。この二人に絡まれていた女性を庇っていたのはエリザなんだし、彼女がぶっ飛ばす方が色々と絵になる。彼女自身が自らの手で灸を据えたいと思っているだろうし、な)
自分に夢中になってしまった二人は気が付いていない様だが、エリザはとっくに少し離れた場所で《イリュージョン・メイズ》を解除している。恐らく次の一手で決めにかかる魔法を放つはずだ……さあ、派手にやっちゃってくれ!
(そりゃ最初は距離を詰めてくるよね)
遠距離戦ならこちらが圧倒的に優位だから、当然の行動だ。そして──両手剣使いが自分に突っ込み、格闘主体がエリザに向かおうとしている。やっぱり開始前の会話はフェイクだった訳だ。あまりにも堂々と戦闘前に言うから、引っかかっていたんだよね。
「そらぁ!」
両手剣使いの横薙ぎの攻撃が自分に向かって振られる。が、受ける理由なんか一切ないのでタイミングを見計らって身を沈めてから、両手剣の横っ面を下から思いっきり伸びあがるような感じで叩きつける。そうなれば当然、重量のある両手剣と言えど上に向かって跳ね上げられる。使い手の体勢も崩れる。そこに──蹴りを一撃。格闘スタイルの奴めがけて両手剣使いを突き飛ばした。
「うお!?」
予想外だったのだろう。格闘主体のプレイヤーが驚愕の声を漏らす。そこにやってくるのはエリザの魔法。強烈な風が開いて二人を派手に空中へと吹き飛ばし──そして重力によって落下させた。これは確か、《ゲイル・ストリーム》という魔法だったかな? 風属性の魔法で、詠唱時間が短く、魔法その物の威力は低いが相手をかなり大きく吹き飛ばすので距離を取ったり相手を打ち上げて落とす事による落下ダメージを狙う魔法だ。
距離が開いたのでこちらも八岐の月を構えて遠距離攻撃を行う。アーツは使わず、矢はツイスター。二、三回ほど射撃したが、軽鎧のプレイヤーには矢が全て突き刺さりダメージをそれなりに与えたと思う。一方で重鎧の方はツイスターアローでも貫く事は出来なかった。あの重鎧、普通の防具じゃないな。並の防具なら、八岐の月とツイスターアローの組み合わせなら容易く貫くのに。
「ち、やっぱりあの異様な弓はおかしい! 放置できねえ!」
と、叫んだ体勢を整えた両手剣使いが再び自分に迫ってくる。今度は両手剣を突きの形で構えて突っ込んできている、が……速度に最初の時のような勢いがない。恐らくこれはぎりぎりで停止して此方のカウンター行動を外させ、その隙にぶった切るカウンターをカウンターする動きをするためだろう。
もちろん格闘スタイルの方も再びエリザに迫ろうとしているが、最初の失敗を鑑みてか自分と両手剣使いとの距離をかなり取っている。そりゃそうするよね、自分だって距離を取るわ。でも、その分大回りになる訳で……それはつまり、エリザの詠唱時間が取れると言う事に他ならない。
と、まずはこっちの対処だな。相手のフェイントにあえて乗るように動き、相手に上手く行っていると思わせる。こちらの予想通りにぎりぎりで足を止め、こちらの攻撃の空振りを誘う両手剣使い。注文通りに空振りをした──と思わせるため全然力を入れていない攻撃をわざと繰り出して空振りする。そこに待ってましたとばかりに大上段から振り下ろされる必殺の両手剣による一撃だが──
「あらよっと」「はぁ!?」
その振り下ろされた両手剣を自分は回避する。向こうとしてはカウンターを外させて隙だらけにしたつもりだっただけに、避けられるのは想定外。ついだしてしまったという感じの「はぁ!?」がまさにそれを証明している。そして重い両手剣を大上段から振り下ろせば、どう頑張っても数秒の隙が生まれる。
その両手剣使いが動けない所に、自分の上段回し蹴りが相手の頭部に刺さる。これは流石に効いたようで、両手剣使いが数歩後ろに下がりながらたたらを踏む。あの重鎧は、刺突耐性は高いが衝撃は一般的なやつと大差ないのかもしれない。と、格闘スタイルの奴はどうした? 動きを確認すると、エリザの後方から迫ってきていた。だが、それだけ襲い掛かるのに時間をかければ、エリザの魔法詠唱の時間は十分にある。
「《イリュージョン・メイズ》!」
エリザの次の手は、光と水の複合魔法。かけた相手に鏡の迷路みたいな視認を起こさせて術者がどこにいるのかを分かりずらくする魔法だ。ただし、術者以外は普通に見えるので仲間である自分に対してはそう言った視認妨害の影響はない。エリザがこれを使ったのは、自分なら二人同時相手でもそれなりにやり合えるだろうという信頼からくるのだろう。
「ち、面倒なやつを……」
格闘スタイルが舌打ちを打つ。エリザを狙いたくても、《イリュージョン・メイズ》中はかなりつらいだろうからねえ。自分がかけられたら? 目を閉じて相手位置を感覚把握してから八岐の月で攻撃するだけです。雨龍師匠、砂龍師匠から受けた訓練は伊達じゃない。
「こうなったら先にレンジャーを落とすぞ! 多少の魔法のダメージは受け入れるしかねえ!」
素早く切り替えた両手剣使いの声に格闘スタイルも同意したのだろう。自分に向かって攻撃を仕掛けて来た。うん、望む所だ。自分が時間を稼ぎ、エリザの魔法で一気に勝負を決める方がスムーズな流れだろうからね。当然そんな事は向こうだって分かっている。だからこそ、速攻で自分を沈めてエリザに圧を掛けたい。二対二の戦いなら、どちらかが一になった瞬間均衡が破れそのまま決着となりやすい。
(だから、《イリュージョン・メイズ》で居場所が分かりにくいエリザを無視するのは理に適っている。あの魔法は維持するだけでMPを常時消費するし、一定レベル以上の魔法を詠唱しはじめると勝手に解けるという制限もある)
自分から見て左側から両手剣使いが、右側に格闘スタイルが陣取り、そこから攻撃を仕掛けてきている。が、こちらも対複数戦は身に染みるほど経験している。防御を重視して回避とパーリング中心に動くが、合間合間に反撃の刃を相手の腕に入れていく。八岐の月にレガリオンの刃が時々、相手の血を舞わせていくのだ。
「なんだよこいつ!?」「挟み撃ちにしてんのに、なんでこうも対処できる!? 反撃してくる? 一体何が見えてるんだよ、狂ってるぞ!」
なんてお言葉を頂くが、こちとらソロで長々と戦ってきたんだ。それに言っちゃ悪いが、ロスト・ロスとの戦いに比べれば楽としか言いようがない。理不尽なシールドもなく、吹っ飛んだ攻撃もない。確かにこの塔の中に要るだけあって攻撃のレベルは相応の物を持っているが──驚かされるレベルじゃない。
(まあ、そう言う意味では自分は正しく狂っているんだろうね。あのロスト・ロスとの一件で、ますますそれが酷くなっちゃったんだろう。こんな不利な状況で戦っているのに、楽って言葉が出てくる時点でそれが証明されちゃってるよな)
不意降ろされる両手剣の攻撃も、ラッシュを仕掛けてくる格闘も、全て自分の操る八岐の月とレガリオン、そして両腕に装備しているシールドに阻まれて一切自分の体に届かない。それを現在進行形で味わっている対戦相手の二人からしてみたら、理不尽ってものを感じている真っ最中かもな……でも、容赦はしない。この二人は、少し痛い目を見ないとダメだから。
(後はエリザ次第だが……出来るだけエリザの魔法で決めたいんだよな。この二人に絡まれていた女性を庇っていたのはエリザなんだし、彼女がぶっ飛ばす方が色々と絵になる。彼女自身が自らの手で灸を据えたいと思っているだろうし、な)
自分に夢中になってしまった二人は気が付いていない様だが、エリザはとっくに少し離れた場所で《イリュージョン・メイズ》を解除している。恐らく次の一手で決めにかかる魔法を放つはずだ……さあ、派手にやっちゃってくれ!
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