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第六試合
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さて、過去を振り返るのはこれぐらいにして今は試合を見守ろう。ノーラが武舞台に上がって、相手も準備を整えたところだ。互いに構えて、試合開始の声がかかる。それと同時に前に向かって猛然とダッシュしたノーラ。当然だ、彼女の獲物は短剣。距離を開ける理由がない。もちろん水魔法も使えるが、メインの攻撃方法は短剣だ。
が、ノーラの行動は想定範囲とばかりに相手の槍使いはノーラのダッシュしている先に槍の穂先を置くことでノーラをけん制。そのまま突っ込めば自分から槍に刺さることになるので、ノーラは横に飛んで回避するが──これで試合開始直後に距離を詰めて一気に押そうとしていたであろうノーラの考えは潰されたことになる。
今度はこちらの番とばかりに相手の槍がノーラに向かって伸びてくる。ノーラはこの攻撃を短剣で受け流すが、間合いが一切詰められない。このままでは、ノーラは自分の間合いに入る事は叶いそうもない。ノーラも同じことを思ったのか、水魔法を発動した。
「《アクア・テラバレット》!」
小さく圧縮された水の弾が相手に飛ぶ。形は小さいが、水を相当圧縮しているとされている子の魔法はガードしてもかなりの衝撃を受けると効いている。なのでこれを足掛かりに相手の手を封じて自分の間合いにもっていく──というのがノーラが書いた予定だろう。が、ここで相手の防御方法が想定だったがゆえにノーラの予定は崩される。
「え!?」
ノーラがそんな声を上げるのも無理はない。相手に向かって飛んで行った《アクア・テラバレット》が、途中で突如きれいに霧散してしまったのだから。それはまるで、ロスト・ロスの不可視の防具の様にそこに球体の障壁があるかのようであった。子の魔法の無産を見て、相手が口を開く。
「どうやら、あなたの魔法のレベルは一定レベル以下のようですね。私の魔法抵抗力を抜くことは叶わないでしょう」
そういうスキルなのか、鎧の効果なのかは分からないが──どうやら、相手は魔法に対する何らかの防御力が高いんだろう。だからノーラの魔法は霧散させられてしまったと……これは一気に辛い話になったぞ。ノーラの戦い方は短剣と水魔法を用いて立ち回る。その片方の翼をいきなりもがれた形となる。
「それは、厄介な話ね!」
しかし、ノーラの表情に絶望感はない。今度は左手に投擲用のダガーを三本持ったかと思えば、瞬時に相手に向かって投げつけた。鋭く飛んでいくダガーであったが、相手はこのダガーに対して槍を盾にするかのように縦回転させることで容易く弾いてしまった。しかし、このダガー投擲はあくまで牽制に過ぎなかったのだろう。ノーラが一気に距離を詰めて相手に襲い掛かる。
が、距離を詰めて短剣の刺突を繰り出そうとしたノーラの腹に相手の槍の石突き部分による突きが深々と刺さっていた。石突き部分なので体を貫かれることは無かったが、ノーラはお腹を抑えながら倒れこんでしまう。突撃したことによる勢いが乗っていたことで、カウンターとして停滞ダメージを貰ってしまった事は予想に難くない。当然相手は、ノーラを倒すべく少し引いて槍の間合いにしながらノーラの首めがけて穂先を振り下ろしてくる。
その攻撃をノーラは何とか地面を転がって回避──し切れていない! ノーラの首あたりから大量の鮮血が舞う。頸動脈を切られたか!? あの出血量では、あっという間にHPが尽きるぞ。ノーラは地面に転がったまま水魔法を発動、回復魔法を唱えたようだ。すると首からの出血が止まる。
「ちょっと、これはきついわね」
何とか立ち上がったノーラだが、その顔色は芳しくない。試合が始まってまだ数分なのに、ノーラはかなりのダメージ、相手はノーダメージ。旗色が悪いどころの話ではない、最悪パーフェクト負けを喫してしまうぞ。もちろん相手はノーラに休む時間など与えてはくれない。遠慮などなくノーラに対して突きを無数に繰り出してくる。
ノーラも直撃は受けないが、反撃が一切できていない。このままでは、ずるずると負けに向かって進むだけだ──なんてことは戦っているノーラが一番良く分かっているだろう。だが、打開策がない。短剣と槍では間合いが違いすぎるし、攻撃を受け流す合間にノーラが放つ水魔法はすべて霧散して無効化されてしまっている。
更に、先ほど水魔法で回復して防いだはずの首から血が再び流れ出し始めている。もしかすると先ほどの水魔法は一時的に怪我を防ぐレベルのモノだったのかもしれない。詠唱時間も短かったしな……短時間の詠唱で完全回復させる魔法なんて都合のいい物はワンモアにはあまりない。
確か光魔法を回復重視で進めるとあるんだったかな? ただしその魔法はクールタイムが長めなので連発が出来ない緊急措置のための魔法だったと記憶している。治癒、HP回復量で言えば水魔法も優秀なのだが、やっぱりある程度の詠唱時間は必要となる。そして今、この状況ではその詠唱時間を稼ぐ余裕がノーラにはない。
「粘りますね」「容易く負けるなんてわけにはいかないでしょー?」
そんな短いやり取りを交えつつ戦いは続いている。しかし両者の姿は対照的だ。血に染まっていくノーラの姿と無傷の相手。ノーラも何とか詠唱時間の短い水魔法で己を癒しながら持たせているけれど、それはあくまで現状の維持だ。相手に対して反撃という流れに移る事が出来ていない。
相手の槍の手数が多すぎて、ダガーを投擲する事すらノーラはできていない。ノーラは鞭も使えるし、腰にも鉄製の鞭を下げているのだが短剣を手放して鞭に持ち帰る余裕すらすでに失われている。ノーラの顔にはいくつもの汗が流れ、首元からは出血が再発している。その血がノーラの鎧を汚し、ノーラの鎧が赤黒く染まっていっている。
「く……」「かなりの出血量ですね。意識を保つのは相当辛いはずですが──流石はブルーカラーの出場者です。並の人とは精神力が全く違いますね」
相手の言う通り、ノーラはかなり辛いはずだ。あれだけ血を流せば、意識がかなり薄れてブラックアウトする寸前までいっているかもしれない。だがノーラはひたすら相手の突きに短剣で対処し続けている。回復魔法も合間合間に挟んで何とか回復して意識を取り戻そうとしている様子がうかがえるが、相手の槍がそれを許してはくれない。
「か、はっ!?」「まだ倒れないのですか!」
ノーラの左脇あたりに、相手の槍による薙ぎ払いが直撃した。吹っ飛んだノーラだったが、ダウンすることなく受け身を取ってすぐさま立ち上がる。間合いが開いたことで水魔法を詠唱し、また一定量のHPを回復した。ひたすら粘り続けるノーラだが、相手は一切の反撃をノーラに許さない。
槍の間合いを常に保ち、相手に必要以上の接近を許さず徹底的にノーラの接近を拒みながら的確にノーラの体に対して突きを見舞い続ける。その精密さに、ついにノーラが受け流しきれなくなってきた。もちろん出血による意識の低下もあるのだろうが……相手の突きがノーラの足や腕を捕らえるようになってきてしまったのだ。
「ノーラ!?」「く、手助けできない歯がゆさだな。見ている事しかできないのが……」
ロナちゃんの声とレイジの呟き。ノーラはまだ耐えているが、もはや時間の問題か。被弾する回数が明確に増えてきている。それによってますます紅に染まるノーラの姿。普通ならとっくに出血死しているはずだが、水魔法による回復で持ちこたえてしまう。
「素晴らしい精神力です、ですがこれ以上こちらも負ける事はできません! 遠慮も容赦も致しません!」
確かに、ここまでブルーカラーの方が勝利を多く収めている。ヴァルキュリアスとしてはこれ以上負けて、ブルーカラーに流れをもっていかれてはたまらないだろう。まさにその通りだと言わんばかりに、相手の攻撃が激しくなり、ノーラの体を穿つ。だと言うのに、まだノーラは立っていた。もはやなぜ立っていられるのかが分からない。そう思ったその時だった、試合の終了が告げられたのは。
『そこまで、試合終了です! ノーラ選手はまだ立っていますが、力尽きています! 次の試合に移りますので、ノーラ選手を外に移動させていただきます!』
なんとノーラは、弁慶の仁王立ちのような形で力尽きていた。武舞台の外に移動させられたノーラは、ゆっくりと地面に倒れこんだ。それと同時にノーラから弱弱しい声が聞こえてきた。
「ごめん、何もできなかったわ……いい流れを私が壊しちゃったわ」
そんなことを言うノーラを責める者など当然いるはずもない。ゆっくりとノーラを座らせて落ち着かせることにした。凄まじい戦いだった──相手すら敬意を表するかのように深々と頭を下げていたからな。次に武舞台に上がるのはミリーか……だがもし、さっきの相手の様に魔法に対する抵抗力が高い相手が上がってきたら、ミリーも、そしてエリザも苦しい戦いになる。
(相手の魔法抵抗力を抜ければいいんだが)
やってみなければこればっかりは分からない。ノーラを落ち着かせつつ、ミリーの応援をすることにしよう。
が、ノーラの行動は想定範囲とばかりに相手の槍使いはノーラのダッシュしている先に槍の穂先を置くことでノーラをけん制。そのまま突っ込めば自分から槍に刺さることになるので、ノーラは横に飛んで回避するが──これで試合開始直後に距離を詰めて一気に押そうとしていたであろうノーラの考えは潰されたことになる。
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「《アクア・テラバレット》!」
小さく圧縮された水の弾が相手に飛ぶ。形は小さいが、水を相当圧縮しているとされている子の魔法はガードしてもかなりの衝撃を受けると効いている。なのでこれを足掛かりに相手の手を封じて自分の間合いにもっていく──というのがノーラが書いた予定だろう。が、ここで相手の防御方法が想定だったがゆえにノーラの予定は崩される。
「え!?」
ノーラがそんな声を上げるのも無理はない。相手に向かって飛んで行った《アクア・テラバレット》が、途中で突如きれいに霧散してしまったのだから。それはまるで、ロスト・ロスの不可視の防具の様にそこに球体の障壁があるかのようであった。子の魔法の無産を見て、相手が口を開く。
「どうやら、あなたの魔法のレベルは一定レベル以下のようですね。私の魔法抵抗力を抜くことは叶わないでしょう」
そういうスキルなのか、鎧の効果なのかは分からないが──どうやら、相手は魔法に対する何らかの防御力が高いんだろう。だからノーラの魔法は霧散させられてしまったと……これは一気に辛い話になったぞ。ノーラの戦い方は短剣と水魔法を用いて立ち回る。その片方の翼をいきなりもがれた形となる。
「それは、厄介な話ね!」
しかし、ノーラの表情に絶望感はない。今度は左手に投擲用のダガーを三本持ったかと思えば、瞬時に相手に向かって投げつけた。鋭く飛んでいくダガーであったが、相手はこのダガーに対して槍を盾にするかのように縦回転させることで容易く弾いてしまった。しかし、このダガー投擲はあくまで牽制に過ぎなかったのだろう。ノーラが一気に距離を詰めて相手に襲い掛かる。
が、距離を詰めて短剣の刺突を繰り出そうとしたノーラの腹に相手の槍の石突き部分による突きが深々と刺さっていた。石突き部分なので体を貫かれることは無かったが、ノーラはお腹を抑えながら倒れこんでしまう。突撃したことによる勢いが乗っていたことで、カウンターとして停滞ダメージを貰ってしまった事は予想に難くない。当然相手は、ノーラを倒すべく少し引いて槍の間合いにしながらノーラの首めがけて穂先を振り下ろしてくる。
その攻撃をノーラは何とか地面を転がって回避──し切れていない! ノーラの首あたりから大量の鮮血が舞う。頸動脈を切られたか!? あの出血量では、あっという間にHPが尽きるぞ。ノーラは地面に転がったまま水魔法を発動、回復魔法を唱えたようだ。すると首からの出血が止まる。
「ちょっと、これはきついわね」
何とか立ち上がったノーラだが、その顔色は芳しくない。試合が始まってまだ数分なのに、ノーラはかなりのダメージ、相手はノーダメージ。旗色が悪いどころの話ではない、最悪パーフェクト負けを喫してしまうぞ。もちろん相手はノーラに休む時間など与えてはくれない。遠慮などなくノーラに対して突きを無数に繰り出してくる。
ノーラも直撃は受けないが、反撃が一切できていない。このままでは、ずるずると負けに向かって進むだけだ──なんてことは戦っているノーラが一番良く分かっているだろう。だが、打開策がない。短剣と槍では間合いが違いすぎるし、攻撃を受け流す合間にノーラが放つ水魔法はすべて霧散して無効化されてしまっている。
更に、先ほど水魔法で回復して防いだはずの首から血が再び流れ出し始めている。もしかすると先ほどの水魔法は一時的に怪我を防ぐレベルのモノだったのかもしれない。詠唱時間も短かったしな……短時間の詠唱で完全回復させる魔法なんて都合のいい物はワンモアにはあまりない。
確か光魔法を回復重視で進めるとあるんだったかな? ただしその魔法はクールタイムが長めなので連発が出来ない緊急措置のための魔法だったと記憶している。治癒、HP回復量で言えば水魔法も優秀なのだが、やっぱりある程度の詠唱時間は必要となる。そして今、この状況ではその詠唱時間を稼ぐ余裕がノーラにはない。
「粘りますね」「容易く負けるなんてわけにはいかないでしょー?」
そんな短いやり取りを交えつつ戦いは続いている。しかし両者の姿は対照的だ。血に染まっていくノーラの姿と無傷の相手。ノーラも何とか詠唱時間の短い水魔法で己を癒しながら持たせているけれど、それはあくまで現状の維持だ。相手に対して反撃という流れに移る事が出来ていない。
相手の槍の手数が多すぎて、ダガーを投擲する事すらノーラはできていない。ノーラは鞭も使えるし、腰にも鉄製の鞭を下げているのだが短剣を手放して鞭に持ち帰る余裕すらすでに失われている。ノーラの顔にはいくつもの汗が流れ、首元からは出血が再発している。その血がノーラの鎧を汚し、ノーラの鎧が赤黒く染まっていっている。
「く……」「かなりの出血量ですね。意識を保つのは相当辛いはずですが──流石はブルーカラーの出場者です。並の人とは精神力が全く違いますね」
相手の言う通り、ノーラはかなり辛いはずだ。あれだけ血を流せば、意識がかなり薄れてブラックアウトする寸前までいっているかもしれない。だがノーラはひたすら相手の突きに短剣で対処し続けている。回復魔法も合間合間に挟んで何とか回復して意識を取り戻そうとしている様子がうかがえるが、相手の槍がそれを許してはくれない。
「か、はっ!?」「まだ倒れないのですか!」
ノーラの左脇あたりに、相手の槍による薙ぎ払いが直撃した。吹っ飛んだノーラだったが、ダウンすることなく受け身を取ってすぐさま立ち上がる。間合いが開いたことで水魔法を詠唱し、また一定量のHPを回復した。ひたすら粘り続けるノーラだが、相手は一切の反撃をノーラに許さない。
槍の間合いを常に保ち、相手に必要以上の接近を許さず徹底的にノーラの接近を拒みながら的確にノーラの体に対して突きを見舞い続ける。その精密さに、ついにノーラが受け流しきれなくなってきた。もちろん出血による意識の低下もあるのだろうが……相手の突きがノーラの足や腕を捕らえるようになってきてしまったのだ。
「ノーラ!?」「く、手助けできない歯がゆさだな。見ている事しかできないのが……」
ロナちゃんの声とレイジの呟き。ノーラはまだ耐えているが、もはや時間の問題か。被弾する回数が明確に増えてきている。それによってますます紅に染まるノーラの姿。普通ならとっくに出血死しているはずだが、水魔法による回復で持ちこたえてしまう。
「素晴らしい精神力です、ですがこれ以上こちらも負ける事はできません! 遠慮も容赦も致しません!」
確かに、ここまでブルーカラーの方が勝利を多く収めている。ヴァルキュリアスとしてはこれ以上負けて、ブルーカラーに流れをもっていかれてはたまらないだろう。まさにその通りだと言わんばかりに、相手の攻撃が激しくなり、ノーラの体を穿つ。だと言うのに、まだノーラは立っていた。もはやなぜ立っていられるのかが分からない。そう思ったその時だった、試合の終了が告げられたのは。
『そこまで、試合終了です! ノーラ選手はまだ立っていますが、力尽きています! 次の試合に移りますので、ノーラ選手を外に移動させていただきます!』
なんとノーラは、弁慶の仁王立ちのような形で力尽きていた。武舞台の外に移動させられたノーラは、ゆっくりと地面に倒れこんだ。それと同時にノーラから弱弱しい声が聞こえてきた。
「ごめん、何もできなかったわ……いい流れを私が壊しちゃったわ」
そんなことを言うノーラを責める者など当然いるはずもない。ゆっくりとノーラを座らせて落ち着かせることにした。凄まじい戦いだった──相手すら敬意を表するかのように深々と頭を下げていたからな。次に武舞台に上がるのはミリーか……だがもし、さっきの相手の様に魔法に対する抵抗力が高い相手が上がってきたら、ミリーも、そしてエリザも苦しい戦いになる。
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