とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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決勝戦第一試合の流れ

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 エリザの発光現象で、相手もエリザが上にいると気が付く。武舞台に突き刺さった両手斧は放置し、槍を手に取った相手は上空にいるエリザに対して突きを見舞う。が、この突きをエリザは空中でひらりと回避して見せる。その後複数回の突き攻撃をエリザはすべて回避した後に、ゆっくりと地面に降り立った。

 地面に降り立ったエリザは、何と自分が持っている杖を武舞台の上に突き刺してしまった。魔法使いにとって命ともいえる杖を何故手放す? 当然マッスル側の方からもエリザの意図が読めず動揺している雰囲気が伝わってくる。しかし、そんな雰囲気など知ったことではないとばかりに──エリザは相手にゆっくりと歩を進めていく。

「自棄になったのか? ここまで素晴らしい戦いをしてきたというのに」「自棄、ですって?」

 相手からの言葉に、エリザが怒気を放ち始めた。相手を貫くような視線を向けながら、エリザの言葉は続く。

「必要だからこうしたまでの事ですわ……私、貴方に勝つつもりですの。下馬評では私は一切何もできずに負けるだろう、なんて言われているようですが……舐めるんじゃありませんわ!」

 一気にエリザの体から何らかの圧が噴出したかのように感じられる。自分の木のせいではない、武舞台にいる相手はもちろん、ブルーカラーやマッスル側でものけ反っている人がいる。ここに居る誰もが、エリザが発している何かに押されていた。

「私達の初期ギルドメンバーが集まって一つの事に挑むのは、これが最後。明日からは各々がこの塔を上ろうと努力している方々の支援に回ることになるでしょう。だからこそ、この大会は勝って終わりたい。貴方方ももちろん何らかの目標があって参加し、ここまで勝ち昇って来た事は分かりますわ。ですが……勝つのは私達ですわ! どんな手段を使っても、勝たせていただきますわ!」

 エリザが自分の感情をむき出しにしている。その言葉に、相手が一歩後ろに下がった。だが相手も気合を入れなおした様だ。表情が変わり口を開く。

「いいや、俺達が勝つ! 俺達はここで終わらない! 俺達は今後六英雄がやると発表した賞金をかけての戦いの世界に身を投じるんだ! ここで最後なそちらと、先を見据えているこちらでは決定的な差がある! 勝ちに対する執念が強いのは、俺達の方だ!」

 ああ、マッスルが出場して優勝を狙う理由はそれか。マッスルはワンモアが終わってもその先にあるプロゲーマーとしての道を進むためにここで成果をあげたいのだろう。だからこそ、負けられない。何せその先の生活が懸かっているのだから。だから執念が強いのは俺達だと口にするのは分かる。分かるが──

「先がある? それがどうかいたしました? こちらは最後なのですわ! 後にも先にもこれっきり、だからこそ勝つという気持ちが強くなるのですわ! そちらの執念ごと、飲み込んであげますわ!」

 喋り終えたエリザが、なんと相手の前に真っすぐ突っ込んでいく。魔法使いの選択肢としては一番あり得ない行動だが、エリザのどんな手段を使っても勝つという発言がある以上、自棄を起こして無策で突っ込んだとは思えない。相手はそんなエリザに向かって正確な突きを放つ。が。

「な、魔法使いが俺の槍を掴む!?」

 そう、エリザは何と自分に向けて突きを放ってきた槍を右手一本で掴んで止めてしまったのだ。それだけにとどまらず、左足による蹴りが相手へと迫る。相手はこの蹴りを回避しようとしたが、エリザの方が早い。相手の太もも付近にエリザの蹴りが命中した。それと同時に相手の表情が明確に歪む。その理由は──

「魔法使いの蹴りが、鎧を貫いた……!?」「今の私の体は光、光を刃と成し、相手を穿ちますの。魔法使いの魔法など対策を取れば取るに足らぬものだと、どこかで慢心していたのではありませんの? ガルさん以外なら、俺達は対処できると」

 エリザがけった左足を戻すと、その左足からは光の刃が伸びていた。その刃はすぐにエリザの左足へと戻っていく。エリザの切り札は変身系? なんにせよ、普通ではない。様々な返信がワンモアには存在していたが、斧が体を属性そのものに変化させるなんて物は今まで聞いたことがなかった。

 続いてエリザが左手を手刀にして相手の槍の中ほどに叩きつけた。すると、槍があっさりと切断されてしまった。切断されたことで掴んでいる理由がなくなった槍の先をエリザは手放し、穂先を武舞台の下へと蹴り落した。

「光が生み出す魔法の刃、まさに全身凶器という奴か」「そう思っていただいて構いませんわ」

 相手ももはや槍ではなく棒になってしまった残骸を武舞台に外に投げ捨てた後にエリザを見据える。エリザも、機会を見つければいつでも仕掛けられるようにしているのが伺えるな。

「だが、それほどの変身を行えば、相当な負担があるはずだ」「それこそ、どうでもいい事でしょう? 私は宣言いたしましたよ? どんな手段を使っても勝つと。たかがゲームだのなんだのなんて考えはありませんの、この勝負は本気の決闘をしている心構えでやらせてもらっていますわ。この身を焼くような痛みがあろうが、勝てるのであれば安い物ですわ」

 ああ、やっぱりそういう反動はあるのか。エリザの言葉を聞いた相手がにやりと笑う。

「ならば時間を稼げば勝てるわけだ」「ええ、そうでしょうね。もっとも──」

 相手の言葉にエリザが少しだけ話をした後に切って……一瞬で相手の目の前に迫る。

「その時間を稼ぎ切られる前に、貴方を切り伏せるだけですわ」

 エリザの手刀が、相手の首へと迫る。しかしさすがに相手も首は最大限警戒していたようでエリザの手刀は外れた。しかし、僅かながら相手の喉から鮮血が舞う。おしい、後わずかに相手の反応が遅れていれば首を飛ばせていた。

「くっ!? なんという速度!」「流石に首を飛ばしての一撃必殺は、カザミネさんのようにはいきませんわね。ですが何度でも喰らいついて引き裂くだけですわ!」

 再び迫るエリザに、相手は腰の騎士剣を引き抜いてエリザの手刀を何とか止める。しかし、今度はエリザも両手の手刀を振るえる──だけでなく、蹴りでも攻撃する事が出来る。エリザの猛攻に相手の鎧と体は確実に傷を増やしていた。しかし相手だってやられっぱなしではない。何度もエリザの体や頭部を狙って騎士剣を振るう。

 エリザも光に変身しているとはいえ、完全では内容で相手からの攻撃を受ければダメージを受ける様だ。故に頭部や首、心臓付近への攻撃はしっかりと回避している。そんな両者のぶつかり合いだが、徐々に速度が落ち始めた。エリザはおそらく……変身の限界が近いのではないだろうか。呼吸が明確に荒くなってきており、表情は苦痛に歪んで戻らない。

 一方で相手はエリザの光の刃によって全身傷だらけ、それに加えて出血もしており、動くのがつらくなってきているのが分かる。決着はそろそろつくだろう……後はどちらが勝つかだ。すでにエリザも相手も一言もしゃべらない。それでもお互いに戦う意思だけは無くさない。互いに速度はあきらめて一撃を振るう事に移行した戦いとなっており、どちらかの攻撃が命中したらそれが決着に繋がるだろう。

 何度も光の刃と騎士剣がぶつかり合い、最終的につばぜり合いになった。エリザの両手の光の刃と相手の騎士剣同士が押し合い、刺し貫かんと競り合う。両者の顔には滝のように汗が流れている。お互い最後の力を振り絞っているようだ。このつばぜり合いの勝者がそのままこの戦いの勝者となりそうだ。

 つばぜり合いはかなり長時間にわたって行われたが、ついに一方が明確に相手を押して崩した。崩したのは──マッスル側の相手だった。エリザにつばぜり合いに押し勝ったまま押しつぶさんとする騎士剣の刃が迫っていく。
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