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十七章
十七話 ヤナギ -愛の悲しみ- その五
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「「待て待て待て待て待て!」」
私が少しセクシーに読み上げていたら、獅子王さんたちが止めに入ってきた。
なんで? ここからが盛り上がるのに……私が首をかしげていると、獅子王さんはこめかみを抑えながら話しかけてくる。
「おかしすぎるだろ! 何からツッコんでいいのか分からねえぞ!」
「? 順番は勇者からですよ?」
「そのツッコミじゃねえ! アホかおのれは!」
そ、そんなに怒らなくても……。
涙目になっている私に、古見君が間に入ってくれる。
「まあまあ、一さん怒らないで。伊藤さんが怯えているよ」
「怒るだろ? 全然理解出来ねえよ。どこかで見たことがある設定があったり、ファンタジーなのにロボットが出てきたり、勇者が剣を捨てて拳で殴ろうとしたり……一番おかしいのは、なんで正義が負けるんだよ?」
「力が弱いからじゃないですか? この世は所詮、弱肉強食ですよ?」
「シビアだな、おい」
そうかな? 当たり前の事だと思うんだけど。
ゲームだって、ボスが強かったら負けるし、こっちのレベルがカーストしてたら最速で一ターンでボスを倒せることもあるよね?
「正義が負けることは、まあ納得できるわ。弱いヤツが負けるのは当たり前だよな。だけどな、なんで魔王が勇者を襲うんだ?」
「勇者を説得させるためです。男の子って裸と裸の付き合いが大好きじゃないですか? ほら、ボクシングも試合が終わったら、裸で抱き合っていますしね」
「違うから! お互いの奮闘を称えているだけだから!」
そんなに恥ずかしがることないのに。古見君は奥手だな。仕方ない、こっちが折れてあげるか。
「はいはい。古見君がそう思うんならそうなんでしょう。古見君の中ではね」
「違いますよね、一さん! 僕、間違っていないですよね!」
「ああ、伊藤の頭がおかしいだけだ」
そうだっけ? おかしいな……笑顔で抱きしめ合っているからつい、BLなのかなって思っちゃうんだけどな。もう、ややこしいな!
「いや、誤解する余地なんて全然ないでしょ、伊藤さん?」
「分かりました分かりました! 男の子受けしそうで教訓にもなる物語を書いてみせますから、ちょっと待ってください」
私はカバンからペンとノートを取り出す。
即興で物語を書いて、獅子王さんと古見君に認めさせてやるんだから!
男の子が好きそうな設定とキャラ、作者が伝えたいこと……うん! いける!
ノートにペンをすらすらと走らせる。中学の時、本を読むだけでは物足りなくて、色々な物語を書いてきた。
好きなアニメやドラマ、ゲームを真似たりした。
あの頃は作家になることを夢見たんだっけ。ペンネームも考えたりして……楽しかったな。ちなみにペンネームは井上ミャウ。
鼻歌を歌いながら、私は物語を書いていく。そんな私を、古見君と獅子王さんは雑談を交わしながら見守っている。
窓の外は真っ赤な夕日が空を赤く染め、冷たい風がカーテンを揺らしている。
部活動の駆け声がBGMのように聞こえ、穏やかな時間が過ぎていく。
私はそっと獅子王さん達を見つめる。
三人でこんなふうに集まるのって不思議な気分。ちょっと前まではそんなこと、全然考えられなかった。
最初は私、獅子王さんと敵対していたしね。
私達、いい方向に変われたのかな? 強姦されそうになったり、先輩にフラれたり嫌なことがいっぱいあったけど、それだけが救いだった。
……よし! 書けた! 我ながら傑作! これなら、絶対に認めてくれるはず!
「できました! 私の力作を読んでください!」
私は新たに書きあがった物語を二人に見せた。
私が少しセクシーに読み上げていたら、獅子王さんたちが止めに入ってきた。
なんで? ここからが盛り上がるのに……私が首をかしげていると、獅子王さんはこめかみを抑えながら話しかけてくる。
「おかしすぎるだろ! 何からツッコんでいいのか分からねえぞ!」
「? 順番は勇者からですよ?」
「そのツッコミじゃねえ! アホかおのれは!」
そ、そんなに怒らなくても……。
涙目になっている私に、古見君が間に入ってくれる。
「まあまあ、一さん怒らないで。伊藤さんが怯えているよ」
「怒るだろ? 全然理解出来ねえよ。どこかで見たことがある設定があったり、ファンタジーなのにロボットが出てきたり、勇者が剣を捨てて拳で殴ろうとしたり……一番おかしいのは、なんで正義が負けるんだよ?」
「力が弱いからじゃないですか? この世は所詮、弱肉強食ですよ?」
「シビアだな、おい」
そうかな? 当たり前の事だと思うんだけど。
ゲームだって、ボスが強かったら負けるし、こっちのレベルがカーストしてたら最速で一ターンでボスを倒せることもあるよね?
「正義が負けることは、まあ納得できるわ。弱いヤツが負けるのは当たり前だよな。だけどな、なんで魔王が勇者を襲うんだ?」
「勇者を説得させるためです。男の子って裸と裸の付き合いが大好きじゃないですか? ほら、ボクシングも試合が終わったら、裸で抱き合っていますしね」
「違うから! お互いの奮闘を称えているだけだから!」
そんなに恥ずかしがることないのに。古見君は奥手だな。仕方ない、こっちが折れてあげるか。
「はいはい。古見君がそう思うんならそうなんでしょう。古見君の中ではね」
「違いますよね、一さん! 僕、間違っていないですよね!」
「ああ、伊藤の頭がおかしいだけだ」
そうだっけ? おかしいな……笑顔で抱きしめ合っているからつい、BLなのかなって思っちゃうんだけどな。もう、ややこしいな!
「いや、誤解する余地なんて全然ないでしょ、伊藤さん?」
「分かりました分かりました! 男の子受けしそうで教訓にもなる物語を書いてみせますから、ちょっと待ってください」
私はカバンからペンとノートを取り出す。
即興で物語を書いて、獅子王さんと古見君に認めさせてやるんだから!
男の子が好きそうな設定とキャラ、作者が伝えたいこと……うん! いける!
ノートにペンをすらすらと走らせる。中学の時、本を読むだけでは物足りなくて、色々な物語を書いてきた。
好きなアニメやドラマ、ゲームを真似たりした。
あの頃は作家になることを夢見たんだっけ。ペンネームも考えたりして……楽しかったな。ちなみにペンネームは井上ミャウ。
鼻歌を歌いながら、私は物語を書いていく。そんな私を、古見君と獅子王さんは雑談を交わしながら見守っている。
窓の外は真っ赤な夕日が空を赤く染め、冷たい風がカーテンを揺らしている。
部活動の駆け声がBGMのように聞こえ、穏やかな時間が過ぎていく。
私はそっと獅子王さん達を見つめる。
三人でこんなふうに集まるのって不思議な気分。ちょっと前まではそんなこと、全然考えられなかった。
最初は私、獅子王さんと敵対していたしね。
私達、いい方向に変われたのかな? 強姦されそうになったり、先輩にフラれたり嫌なことがいっぱいあったけど、それだけが救いだった。
……よし! 書けた! 我ながら傑作! これなら、絶対に認めてくれるはず!
「できました! 私の力作を読んでください!」
私は新たに書きあがった物語を二人に見せた。
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