隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世

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俺の強くて弱い幼なじみ『聖』

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俺には強くて弱い幼なじみがいる。

何も知らない人間は、大輝を弱い人間だと決め付ける。

勉強が苦手で、怖がりで、消極的。

もしくは、物事を深く考えない、楽観的な人間。

そう思う人間が多いことを、俺は―いや、本人も知っている。

[本当のことだから、いいんだよ。…ほら、俺ってば、普通の人間だし]

大輝は笑っていた。

[大輝が気にしないなら、いいけど…でも俺は、嫌だ。大輝の強さも優しさも、何も知らない人間が、そんな簡単に決め付けるなんて、許せない]

大輝のおおらかなところも好きだけど…本当は傷付いてることに、気にしない振りをしているのにも、俺は気付いていた。

俺が怒ると、大輝は目を瞬かせて、

[あ、ありがと]

照れたように笑った。

その笑顔を見た時、俺は大輝を守りたいと思った。

何も知らないくせに―知ろうともしないくせに、心ないことを言う奴らから。

何気なく―悪気がない分余計に質の悪い、大輝を傷付ける奴らから。

守りたいと思ったんだ。

(…そうか。俺が大輝を守ればいいんだ。大輝が俺を守ってくれたみたいに)


―小学二年生の時、父親の仕事の都合で引っ越してきた俺は、ある日の放課後、三人組に虐められていた。

小さい頃は引っ込み思案の大人しい性格で、言いたいことを言えなかった。

幼いとはいえ、女の子は早熟だ。

転校生という響きも良かったのか、勉強ができて、カッコいい聖くん、と女子は色めきたっていた。

逆に、勉強ができて、顔がいいだけの、つまらない奴だと男子は俺を嫌った。

まあ確かに、下品なことは嫌いだから、男子の好きな下ネタにはノリが合わせられなかったし、積極的に遊びに混じることもできなかった。

そして、異性には好かれるが、同性には嫌われる、という結果になった。


[悔しかったら取り返してみろ!]

[お前暗いんだよ!]

[何とか言え!]

虐めっ子に手提げ鞄を取られた僕は、黙って俯いていた。

どうせ取り返せないし、三人に囲まれて怖かった。

[こらぁ!お前らっ!何してんだよ!!]

自分でも酷いと思うけど、まず最初に思ったことは、誰?だった。

突然現れた男の子を知らないのは僕だけみたいで、三人は逃げ腰になっていた。

[だ、大輝…]

[カッコ悪いことすんなよ!]

[で、でも、そいつが悪いんだよ…]

[ふーん。俺には三人で一人をイジメてるようにしか見えないんだけど?]

[…大輝には関係ないだろ!]

[そうだそうだ!]

[あるよ!めっちゃある!お前らのせいで、この街嫌いになってほしくないもん!]

[うっ…]

[それに俺、お前ら好きだし。またサッカーとかドッジボールとかしたいのにさ、こんなことするんだったら、一緒にいたくないよ。そう思うのは、俺だけじゃないかも。そしたら、お前ら、みんなと遊べなくなるぞ!そんなのイヤだろ?]

[大輝…]

[そ、そうだよな…]

[みんなと遊べなくなるの、俺ヤダよ…]

[ほら、カバン返して。あと、ごめんなさいしなきゃ]

[…カバン返す。ごめんな]

[ご、ごめん]

[ごめんね]

[…いいよ]

虐めっ子たちは気まずそうな顔で謝ると、去っていった。

[えっと…転校生、ごめんな。あいつら、悪い奴じゃないんだよ。あ、いや、したことは悪いけど。お前にヤキモチ焼いて、酷いことしちゃったみたい]

[…ヤキモチ?]

[うん。その、お前のクラスにさ、深雪ちゃんっているだろ?あいつら、深雪ちゃんのことが好きなんだよ。…深雪ちゃんがお前とよく話してるから、ヤキモチ焼いたんだと思う]

[深雪ちゃん…]

…ああ、あの子か。

可愛らしい女の子だった。

興味ないけど。

[…?]

ふと、震える足が見えた。

足の持ち主は一人。

僕じゃないから、だいきくんだろう。

じっと見ていると、視線に気付いた彼が、苦笑いした。

[あ、あはは…。ホントは怖かったんだ。カッコ悪いよなぁ]

[そんなことない。格好良かった]

[へ…?足震えてたのに?実はずっと震えてたんだよ?]

[それなら、もっと凄いよ]

[そう、かな…?]

[うん。だって、怖くないものより、怖いものに立ち向かう方が、勇気が必要だから。…僕、怖くて、何も言い返せなかった]

[そりゃ、三人に囲まれたら、何も言えないのが普通じゃん。俺だったら泣いてるよ、きっと]

さっきまでおちゃらけていた、だいきくんが、急に真面目な顔でそんなことを言うから、

[ふっ]

思わず吹き出すと、

[あぁっ!笑ったなー!この、このー]

僕を肘でつついてきて、

[あはははっ]

何故か分からないけど、もっと楽しくなった。

[ぷっ。あははっ!]

僕につられたのか、だいきくんも笑い出して、二人で笑った。

ひとしきり笑い合うと、

[だいきくん。僕、神谷 聖(かみや ひじり)だよ。だいきくんは一組じゃないよね?]

僕からだいきくんに話し掛けていた。

[うん。二組だよ。俺は、岡本 大輝(おかもと だいき)。なぁ、聖って呼んでもいい?]

[いいよ。僕も大輝って呼んでいい?]

[うんっ!…あのさ、聖、お昼休みとか、放課後、一緒に遊ばない?俺、聖と仲良くなりたいんだ!]

[ありがとう!嬉しいよ]


今思えば、あの日からずっと、俺は大輝に恋をしているんだと思う。

自覚したのは中学一年だけど、誰よりも大切で、何よりも大事にしてきた。それは昔も今も、大輝だけだ。

強くて弱い、幼なじみ。

可愛くて、愛おしい、大輝。

…気が狂ってしまうほど、

愛情を注いでいる人…。

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