隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世

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出会いは偶然

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「それで…」

「いい加減にしろよ!」

「うわわっ、ななな何?」

「ついてくるなって言ってるだろ!お前、ナメてんのか!?」

「…? アメ食べてないよ」

「こんの…っ!」

「慶(けい)、お腹空いたの?怒りんぼになってる」

「誰のせいだと…!!」

「?」

「このクソ純(じゅん)!」

「な、何だぁ?ケンカ…?どど、どうしよう、聖。止めた方がいいよな?」

「放置して大丈夫」

「えぇっ。滅茶苦茶怒鳴られてるけど…」

「怒鳴られてる男は背が高くて体格いいし、仮に殴りかかられても負けないよ。…いざとなれば力で押さえ付けられるだろ」

「あ、まあ、そうね…。怒鳴ってる子は細いな。ってか、目が怖ぇえ…。顔怪我してるけど、不良かな?」

「そうかもね。顔だけじゃなくて、右足も怪我してるみたいだし」

「へっ?何で分かんの?」

「右足に負担をかけないよう、左足でバランス取りながら歩いてて、動きが全体的に不自然だ。早足や走ることができないから、相手を去らせたくて威嚇してる」

「なるほど…あ」

「て、てめえ!ぶっ殺すぞっ!」

「怪我、早く治るように、安静にしてなきゃダメ」

「下ろせ!バカ!」

「慶、足痛い。だから、純が運ぶ。我慢して」

「覚えてろよ…ぶっ殺してやるからな」

「うわぁ…。お姫様抱っこは、キツいよなぁ…可哀想に…」

「あれが一番(足に)負担かからないんだけどね」

「そういう問題なの?」

「そういう問題なんだろ、運んでる彼にとっては」

「…仮に俺が足怪我したら、聖はどうやって運んでくれるの?いや、支えてくれるのか。それなら大丈夫だな!」

「大輝は体重軽いから、お姫様抱っこしてあげる」

「やめて!俺のライフがゼロになっちゃう!」

「じゃあ、おんぶするよ」

「あ、それなら…まだ、マシ…かも?うん、お姫様抱っこより全然いい!」

「(おんぶも恥ずかしいと思うけど。簡単に引っ掛かったな。…バカな子ほど可愛い、を地で行く大輝が愛しい)」


「ん?あ、姉ちゃんだ。―どうしたの?…うん、聖といるけど。…えー、急だなぁ。…分かったよ、聞いてみるから。でも、断られても知らないよ。…じゃあね」

「美咲(みさき)さん、何だって?」

「久しぶりに聖の顔見たいから、連れて来いって。…母さんと二人で、聖くんの好物を用意してるよ!おいで!なんなら、そのまま泊まればいいからね!とのことです」

「美咲さん、今いるんだ」

「そう。まとまった休みだから、実家でゴロ…のんびりするんだって」

「社会人は大変だね」

「だな。…あのさ、聖」

「うん?」

「大学、もっと良いとこ行けるんだろ?行かなくて、いいの…?」

「ランクは上だけど、県外だから行きたくない。地元がいいんだ」

「…それって、俺のせい?」

「え…?」

「あっ、い、いや、今のナシ!何でもない!」

「…大輝、まだ気にしてるの?何度も言ってるけど、俺は大輝に合わせて高校選んだわけじゃないよ。都合のいい条件が揃ってたから、自分で選んだだけ」

「うん…分かってる、けど…」

「けど?」

「偏差値高い私立とか、余裕で特待生なれるのに、そこそこの公立選んだから…聖、後悔してるかな、って」

「してない。寧ろ、違う高校に行ってたら後悔しただろうね」

「そう…?」

「…誰に何を吹き込まれたのか知らないけど、大輝は何も悪くないよ。だから、気にすることはないし、そういうことを気にして大輝が落ち込んでる方が、俺は辛い」

「ぅ…」

「俺、大輝の笑顔が好きだよ。だから、ね?笑って」

「…あ、あまぁーい」

「ふっ。芸人?懐かしいね。勢いが足りないけど」

「ぐぬぬ…。イケメン怖い。俺が女の子だったら、コロッと落ちてた」

「大輝。こっち向いて」

「ヤダ!(顔超熱いから、絶対真っ赤になってるもん)」

「…可愛い」

「なっ…」

「口パクパクさせて、金魚みたいになってるよ。…顔、やっと見せてくれた」

「ちょ」

「顔が真っ赤。可愛いよ、大輝」

「お、おまっ、な、な、何言ってんの!?」

「思ったことを、そのまま言ってる」

「くっ…!こ、こういうことをさらっと言えるから、モテモテなのか!?聖、恐ろしい子…!」

「…大輝にしか言わないのに。他の人間なんて興味ない」

「ん?」

「…何でもないよ」

「?(あれ、機嫌悪い…?)」

「制服着替えてから行くって、美樹(みき)さんと美咲さんに伝えて」

「う、うん(気のせい?)」

「じゃあ、また後で」

「また後で」


「聖くん、いらっしゃい」

「こんばんは。お邪魔します、美樹さん」

「聖くん、久しぶり!相変わらず、イケメンね~。目の保養になるわ」

「ご無沙汰してます。美咲さんも相変わらず綺麗ですよ」

「ふふっ。お世辞が上手になったわね。ねえ、覚えてる?昔、[聖くん!私、可愛い?]って聞いたら[可愛いです。大輝が一番可愛いですけど]って言ったの」

「…すみません。昔から、美咲さんは綺麗で、大輝は可愛いので」

「ふふ、いいのよ。懐かしいと思っただけで、気にしていないから」

「あの、大輝は?」

「お風呂よ」

「聖くんも入ったら?お料理、もう少しかかりそうなの」

「お母さん…。もう子どもじゃないんだから、昔みたいに一緒に入ったりしないわよ。ごめんね、聖くん。大輝の部屋で待ってて」

「いえ」


「いやぁ、聖くん、話が分かるね。是非お婿さんに来てほしいよ。美咲はどうだ?」

「ちょっとお父さん。飲み過ぎじゃないの」

「そうねぇ。聖くんがお婿さんになってくれたら、素敵だわ」

「母さん…えっ、母さん、酔ってる!?姉ちゃん、母さんに酒渡したの!?」

「渡してないわよ。…お父さんね」

「あ、あはは…。美咲がいるし、後片付けしてくれるだろうから、たまにはと思ってな」

「それは別にいいけど…。お母さん、酔うと余計なことを言うから…」

「大輝が女の子だったら良かったのかしら」

「ほら言った」

「母さん、息子の性別否定しないでよ…」

「ああでも、聖くんがお嫁さんでも良いわね」

「ダメね、聞いてないわ」

「聖、俺の部屋行くぞ」

「お先に失礼します」

「おやすみ」


「…なぁ、聖」

「何?」

「父さんと母さんが言ったこと、気にすんなよ。あんなの冗談だから。…あ、聖が姉ちゃんと結婚したいなら、反対しないよ」

「…誰とも結婚するつもりないよ」

「そうなの?まあ、一人が気楽でいいよなぁ。結婚とか、全く想像できないや。…そもそも、彼女いないし!」

「大輝はやっぱり彼女欲しいの?」

「欲しいよ。…でも、好きな人いないから」

「そうか」

「つーか、俺、彼女が欲しいんじゃなくて、好きな人が欲しいんだよ」

「好きな人…」

「そ。俺のことが一番好きで、俺もその人のことが一番好き…そういうの、いいなぁ、って。リア充になりたいんじゃないんだ。愛し愛されっていう関係に憧れてる」

「……」

「…聖?」

「それなら、」

「ん?」

「(それなら…、俺でいいじゃないか)…見つかるといいね」

「…ありがと。聖じゃなかったら、童貞臭いって馬鹿にされてたかも。やっぱ、聖って良い奴だなぁ」

「そんなことないよ(良い奴は、好きな人の幸せを願えるよ。…少なくとも、好きな人の相手を八つ裂きにしたいなんて思わない)」

「聖も、見つかるといいな…。俺、聖に幸せになってほしいんだ」

「…ありがとう(大輝は…優しくて、残酷だね。そんなところさえ好きでたまらないんだから、どうしようもないな)」


この日は、人生の転機だった。

大輝がそれを知るのは、ずっと後。

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