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世界で一番好きな人
しおりを挟む「大樹、話があるんだけど」
「え、何…なんか怖いんですけど」
「ふざけないで。…あんたって、鈍感バカなのに、こういう時は勘いいよね」
「うっわ、シンプルな悪口」
「ほら、座りなさい」
「あ、はい。了解です、お姉様」
「えーと…で?姉ちゃん、話って何?」
「大樹、聖くんのこと、好きでしょ」
「ふぇ!?ななな、なに、何言ってんのさ!?別に、す、好きじゃないしっ」
「分かりやすいわね。―私、どういう種類の好きか、なんて言ってないけど」
「そ、それは!姉ちゃんが真面目な顔して言うから、誤解しちゃっただけで…」
「好きなんでしょう。もう気付いてるの。今更隠しても遅いわ」
「うぐっ…」
「はぁ…。きっかけさえなければ、ずっと気付かないと思っていたのに」
「どういう意味?」
「今だから言うけど、あんたの気持ちは、とっくに知ってたの。大樹が自覚するより、もっと前に」
「ええ…。マジで?」
「嘘言ってどうするのよ。私、意味がないことは嫌いだわ」
「あ、うん、知ってる…でも、えええ…」
「ああ、大丈夫。お母さんとお父さんは、今も昔も、全く気が付いてないから、安心しなさい」
「そうなんだ…」
「さて。本題よ。大樹のことだから、卒業式に告白しようと思ってるんじゃない?」
「う、うん…」
「大樹。聖くんに告白するのは、やめなさい」
「えっ」
「聞こえなかった?聖くんに告白するな、って言ったのよ」
「…何で?」
「あんたが考え無しだから」
「考えてるよ。ちゃんと考えたから、決めたんだ」
「ごめん、言い方が悪かったわ。…大樹の考えは足りない」
「足りない…?」
「あんた、上手くいかなかった時のことは考えてるけど、上手くいった時のことは、一切考えてないでしょ」
「ぇ…あー、うん…。上手くいきっこないし」
「だから、駄目なのよ…」
「ん~?…どゆこと?」
「振られたら、大樹と聖くん、二人の問題よ。友情が壊れて疎遠になるかもしれないし、良くて友達付き合いね」
「っ。…うん…」
「でも、両思いで付き合うことになったら「つ、付き合う?!」なによ、その反応。…まさか、考えてなかったわけ?」
「だ、だって…、そんな、付き合うとか、ええ!?」
「それすら考えてなかったのは、考え無しと言われても仕方ないわね。違う?」
「…違いません」
「大輝。告白がゴールじゃないのよ。相手に好きだと告白したら、返事は当たり前なの。寧ろ好きですだけ言われても困るわ。自分とどうなりたいのかを教えてもらわないと、どうしようもないもの」
「うぅう…はい」
「で。考えてなかったみたいだけど…大輝は聖くんとどうなりたいの?」
「ずっと一緒にいたいし、…俺のことも好きになってほしい」
「友達では駄目?」
「…うん…俺、付き合うとか考えてなかったけど…聖がいい」
「私は同性愛に偏見はないわ。でも、周りの人は分からない。聖くんと付き合うことになって、カミングアウトしなくても周囲にバレたら、あんたや聖くんが傷付くこともあるだろうし、お父さんやお母さん、私、聖くんのご家族にも、少なからず影響が出ると思う。そもそも、お父さんとお母さんがどういう反応をするのかも分からないわ。泣くかもしれないし、怒るかもしれない。…最悪勘当されるかもしれないのよ」
「っ」
「そういうこと、考えてなかったでしょうけど…ちゃんと考えて。…何かを失うことになっても、聖くんに告白するの?大輝には、その覚悟がある?」
「……」
「ちゃんと考えて、大輝が出した答えなら…私は応援するよ。でも、これだけは忘れないで。後悔してほしくないの。どっちを選んでも、傷付くことはあるだろうから…せめて、後悔だけはしないで」
「…姉ちゃん。ありがとう。…俺、ちゃんと考えてみる。軽い気持ちで告白するつもりじゃなかったけど…どっか現実味なくて、家族とか、周りのこととか、全然考えてなかった…。覚悟が足りないままじゃ、告白なんて、しちゃダメだね」
「…追い討ちをかけるようなことは言いたくないけど、聖くんと付き合うことになったら、お父さんとお母さんに言うのよ」
「…う…」
「意地悪してるわけじゃないの。あんた、大学の寮に入るでしょ。四年もあれば、二人も落ち着くだろうし、お互い整理がつくわ。二人に同性愛の偏見はないけど、当事者の親になる覚悟はないの。いきなり同性の親友と恋人になりました、なんて言われても、すぐに受け入れられないわよ」
「そう、だよね…」
「ずっと隠すのは無理よ。大輝、分かりやすいもの。それに、何も知らないお母さんにお見合いセッティングされたら困るでしょう。…聖くんが怒り狂うわ」
「うん…」
「ないとは思うけど、大学卒業する前に勘当されたら、私が学費出してあげる。流石に生活費までは厳しいから、アルバイトは続けなさい。勿論、あんたが就職して、ある程度稼げるようになったら、学費は返してもらうわよ」
「姉ちゃん、大丈夫なの?俺、別に大学行かなくてもいいよ。勘当されたら就職する」
「馬鹿。せっかく受かったんだから、通いなさいよ。通いたくても通えない人だっているんだから。…私、折角のチャンスを棒に振る人間は嫌い」
「…はい…」
「今後のことも、よく考えて。色々言ったけど、大輝の人生なんだからね。あんたが好きにすればいいの。私は大輝の味方よ」
「…ありがとう、姉ちゃん」
姉ちゃんが部屋を出ると、俺はベッドに倒れ込んだ。
…姉ちゃんの言う通りだ。
俺、考えなしだった。
自分のことしか考えてなかった…。
どうせフラれるから、聖と俺の問題だと思ってた。
でも、もし上手くいったら、俺たちだけじゃなくなる。
「…何かを失うことになっても、か…」
フラれたら、聖を。
フラれなかったら、親を。
失うかもしれない…。
かも、だから、そうなると決まったわけじゃない。
だけど、覚悟しないといけない…。
何かを失う覚悟だけじゃなくて、何かを得る為の覚悟も。
「おはよう、大輝」
「おはよう、姉ちゃん」
「もう卒業式なのね。時間が経つのは早いわ。あんたも聖くんも、こんなに小さかったのよ。聖くんはとんでもない美少年だったから、将来有望だと思ってたの。予想通り、とんでもない美形に育ったわね」
「ね、姉ちゃん」
「何?早く言いなさいよ。ぐずぐずしてたら、聖くんが迎えに来るわ」
「うぇ、理不尽…」
「何か言った?」
「イイエ。…姉ちゃん、俺、覚悟決めたよ」
「…大輝の顔見たら、気付いたわよ。それでいいのね?」
「うん。俺、聖じゃなきゃダメなんだ。父さんも、母さんも、大切だけど…聖がいい。俺は聖とずっと一緒にいたい」
「そう…。いい?大輝。私は大輝が大切なの。あんたを応援することはできても、守ることは難しいわ。だから、聖くんと支え合って、生きるのよ」
「俺も姉ちゃんが大切だよ。…でもさ、姉ちゃん。フラれないこと前提に話してるけど、フラれたら二人には言わないよ?」
「そうね。フラれたら言う必要ないわ。…結果は目に見えてるけど」
「姉ちゃん?」
「大輝~!聖くんが来てくれたわよ~」
「はーい!すぐ行く~!」
「聖くんで目の保養しなくちゃ」
「…姉ちゃん…俺と聖の扱い違い過ぎ…」
「美形は得よね。同じくらい苦労もしそうだけど」
「うわぁ。さらっとスルーして、置いてかれたよ…」
鞄を持って、玄関に行くと、姉ちゃんと聖が話してた。
母さんとは後で会うけど、姉ちゃんは仕事で会えないからだろうな。
「大輝」
俺に気付いた聖が、優しく微笑んだ。
「うわぁ。流石聖くん。あからさまね」
「そうですか?すみません」
「? どういうこと?」
「何でもないよ。おはよう、大輝」
微笑みかけられて、嬉しいような、照れ臭いような…幸せな気持ちになる。
「お、おはよ、聖」
「……」
なんか急にガン見されてるんだけど。
「な、なに?」
「いや…」
「あー、はいはい。さっさと行きなさい!じゃないと、殴るわよ。大輝を」
「俺ぇ!?」
「聖くんを殴れるわけないでしょ。イケメンは国宝よ」
「殴るなら俺でお願いします。…たとえ美咲さんでも、大輝を殴ったら、許しませんよ」
「聖…」
「だ~か~ら~、さっさと行け!このリア充!」
何故か怒った姉ちゃんに、家から追い出された。
「何怒ってんだろ。変なの」
「女心は複雑だからね」
二人で顔を見合わせて、俺は首を傾げ、聖は肩をすくめた。
「…な、なあ、聖」
「うん?」
「あのさ…お願いがあるんだけど…」
「いいよ。大輝のお願いなら、何でも叶えてあげる」
「…ぁぅ…」
「?」
「イケメン怖い…恐ろしいよ…」
「大輝?」
「はっ! あの、お願い!そう、お願いがある!」
「ん」
「…昔みたいに、手を繋いで学校行きたいなぁ、な~んて…はは、じょうだ「喜んで」ふぇ?」
言いながら、断られるだろうな、と思って「冗談だよ」そう言おうとしたら、そっと手を握られた。
「懐かしい。小学四年生まで、毎日こうして登校してたな」
「う、うん…」
俺、聖と手ぇ繋いでる…。
ちょっ、ちょっと待って!手汗ヤバイかも!
断られる前提だったから、まだ手を拭いてないってば!
「ひ、聖?やっぱり、いいや。ありがと」
「…俺と手を繋ぐのは嫌?」
「い、嫌、じゃない、よ…。ただ!俺の手汗ヤバイから、聖が気持ち悪いだろ?!」
「大輝の汗なら気にしない」
「えぇー?」
「さ、行こう。今日だけは遅刻できないよ」
「…まあ…。聖が気にしないなら、いいけど…」
にっこりと笑う聖が、あまりにも上機嫌で、何も言えなくなった。
手汗は超恥ずかしいけど、聖と手を繋げるのは嬉しいし。
今まで何とも思わなかったことが、聖への恋心を自覚した途端、嬉しくなったり、恥ずかしくなったり、…聖を意識するようになった。
本当に恋してるんだなぁ、俺。
昔から聖のこと大好きだけど、恋をして、もっと好きになってる。
…失恋したって、きっと、気持ちを切り替えるなんてできない。
もしかしたら、ずっと引きずるかもしれない…。
それでも、伝えたいんだ。
傷付いても、何を失っても、俺は聖に告白したい。
「大輝」
目を細めて、柔らかい笑顔を向けてくる聖に、
「聖」
俺は満面の笑みを浮かべた。
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