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第五章
2.そんな生活があった【2】
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「あの……、ヴォル?」
「どうした、メル」
「私も作ってみて良いですか?」
一応、控え目に聞いてみます。
自信がないのは当たり前で──このお城の料理に舌が慣れているヴォルにとって、私が作る庶民的な料理の味が合うのかすら分からないのですよ。
「作ってくれるのか……?」
不思議そうに瞳を見開くヴォルでした。
──あれ?何だか、物凄く驚かれているような気がします。もしかして、出来ないと思われてます?
「あ、あの……大したものは作れませんが、何とか食べられるものなら……」
それでも返す言葉は少し後ろ向きになってしまいます。
だって変に期待されても困りますし、本当に家庭料理の……農村の味しか出せませんが。
「頼む」
ふわりとした笑みを浮かべ、ヴォルが了承してくれました。
でも──想像以上に期待されていませんか?こんなキラキラしたヴォルの目は初めて見たような……。
とにかく少しでも期待に添えるようにと、私は腕を奮ってみる事にします。
「はい」
返事が固くなってしまいましたが、私は拳を握る勢いで首肯しました。
──などと意気込んだまでは良かったのですが、久し振りも久し振りな調理で。しかも道具も高価すぎて使い勝手が──いえ、そもそも大きいので四苦八苦しましたよ。
そんなこんなで何とか五品程作り終え、やっとの事でテーブルの上に並べました。
ヴォルはといえば、私が調理する間ずっと横で見ていたのです。変なものを入れないか心配されているという感じではなかったのですが、『期待を込めた視線』というのを初めて受けました。
「ど、どうぞお召し上がりください」
緊張の一瞬です。ヴォルのフォークがお肉を捕まえ、彼の口に運んで行きます。
──え?ジロジロ見すぎです?だって、ドキドキなんですからっ。
「…………美味しい」
驚いたような表情でポツリと告げられた言葉です。
見た目からしてお城の料理人さんが作った食事達と比べ物になりませんが、何度も味見をしたので不味くはないと自分でも思っていました。
「何て言う料理なんだ?」
「え?名前ですか?!わ、分かりません。でも村でお母さんが……、私が幼い頃から食べていた味なのです」
そうですよね。料理名なんて、家庭料理には存在しません。あるとすれば、素材の名前と調理方法です。
村で一人暮らしをしていた頃、当たり前のように自炊していました。勿論金銭的な問題からですが──有り合わせの材料やその日の安い食材を使って、気分の向く調理方法で作る味。
それをヴォルが美味しいと言ってくれたのは、お世辞でも凄く嬉しいです。──あ、勿論材料はお城の食材なので逸品揃いなのですが。
「……そうか。俺も幼い頃……まだここに来る前、母親が料理をしている姿を見るのが好きだった」
ポツリと呟くように話し始めてくれたヴォル。私が初めて聞くお話でした。
私の料理を食べ、思い出しながら話してくれているようです。私もそれに倣い、食事をしながらヴォルの話に耳を傾ける事にしました。
「俺がここに来たのは五歳の頃だ。城下町の隅で母親と二人で暮らしていて……、突然兵士が迎えに来たんだ」
少しだけ苦い表情を浮かべるヴォルでした。
裕福ではないとはいえども、幸せに暮らす母子二人に屈強な兵士は恐怖以外の何物でもないでしょう。
しかも逆らう事も出来ず、強制的に城に住まわされる事になってしまったなんて。
「母親は……ここに来てから二年程で病に倒れた」
新たな一口を咀嚼し終わると、過去を思い出すように動きを止めるヴォル。
それから本格的に始まった、ヴォルの次期皇帝としての教育でした。──それは11歳になって皇妃様のお子が産まれるまでずっとです。
そしてその頃には既に、ヴォルは後継ぎとしての公務に携わっていたそうです。
「どうした、メル」
「私も作ってみて良いですか?」
一応、控え目に聞いてみます。
自信がないのは当たり前で──このお城の料理に舌が慣れているヴォルにとって、私が作る庶民的な料理の味が合うのかすら分からないのですよ。
「作ってくれるのか……?」
不思議そうに瞳を見開くヴォルでした。
──あれ?何だか、物凄く驚かれているような気がします。もしかして、出来ないと思われてます?
「あ、あの……大したものは作れませんが、何とか食べられるものなら……」
それでも返す言葉は少し後ろ向きになってしまいます。
だって変に期待されても困りますし、本当に家庭料理の……農村の味しか出せませんが。
「頼む」
ふわりとした笑みを浮かべ、ヴォルが了承してくれました。
でも──想像以上に期待されていませんか?こんなキラキラしたヴォルの目は初めて見たような……。
とにかく少しでも期待に添えるようにと、私は腕を奮ってみる事にします。
「はい」
返事が固くなってしまいましたが、私は拳を握る勢いで首肯しました。
──などと意気込んだまでは良かったのですが、久し振りも久し振りな調理で。しかも道具も高価すぎて使い勝手が──いえ、そもそも大きいので四苦八苦しましたよ。
そんなこんなで何とか五品程作り終え、やっとの事でテーブルの上に並べました。
ヴォルはといえば、私が調理する間ずっと横で見ていたのです。変なものを入れないか心配されているという感じではなかったのですが、『期待を込めた視線』というのを初めて受けました。
「ど、どうぞお召し上がりください」
緊張の一瞬です。ヴォルのフォークがお肉を捕まえ、彼の口に運んで行きます。
──え?ジロジロ見すぎです?だって、ドキドキなんですからっ。
「…………美味しい」
驚いたような表情でポツリと告げられた言葉です。
見た目からしてお城の料理人さんが作った食事達と比べ物になりませんが、何度も味見をしたので不味くはないと自分でも思っていました。
「何て言う料理なんだ?」
「え?名前ですか?!わ、分かりません。でも村でお母さんが……、私が幼い頃から食べていた味なのです」
そうですよね。料理名なんて、家庭料理には存在しません。あるとすれば、素材の名前と調理方法です。
村で一人暮らしをしていた頃、当たり前のように自炊していました。勿論金銭的な問題からですが──有り合わせの材料やその日の安い食材を使って、気分の向く調理方法で作る味。
それをヴォルが美味しいと言ってくれたのは、お世辞でも凄く嬉しいです。──あ、勿論材料はお城の食材なので逸品揃いなのですが。
「……そうか。俺も幼い頃……まだここに来る前、母親が料理をしている姿を見るのが好きだった」
ポツリと呟くように話し始めてくれたヴォル。私が初めて聞くお話でした。
私の料理を食べ、思い出しながら話してくれているようです。私もそれに倣い、食事をしながらヴォルの話に耳を傾ける事にしました。
「俺がここに来たのは五歳の頃だ。城下町の隅で母親と二人で暮らしていて……、突然兵士が迎えに来たんだ」
少しだけ苦い表情を浮かべるヴォルでした。
裕福ではないとはいえども、幸せに暮らす母子二人に屈強な兵士は恐怖以外の何物でもないでしょう。
しかも逆らう事も出来ず、強制的に城に住まわされる事になってしまったなんて。
「母親は……ここに来てから二年程で病に倒れた」
新たな一口を咀嚼し終わると、過去を思い出すように動きを止めるヴォル。
それから本格的に始まった、ヴォルの次期皇帝としての教育でした。──それは11歳になって皇妃様のお子が産まれるまでずっとです。
そしてその頃には既に、ヴォルは後継ぎとしての公務に携わっていたそうです。
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