「結婚しよう」

まひる

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第五章

7.俺の腕を拒否するのか【2】

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「義手のメンテナンス、ベンダーツさんがされるのですね」

「あぁ。こいつは知識だけは幅広いからな」

「失礼ですが、知識だけはないです。使える能力がないのであれば、知識は宝の持ち腐れですからね。だいたい、勝手に腕を捨てるような真似をしてからに……っ。俺が義手技術を持っていたから良かったものの、どうするつもりだったんだ。簡単に国を出るとか抜かすし、馬鹿も休み休み言えってんだ」

 ヴォルと私の会話に続くようにベンダーツさんが口を開きました。
 ですが片眼鏡モノクルを掛けているのに、ベンダーツさんが何だか黒いです。ヴォルは聞こえない振りのようですが、私は戦々恐々なのですよ。

 とはいえ私達は二頭のウマウマさんを縦列させながら進行していますが、行く宛は決まっているのか分かりませんでした。──って言うかそれよりも、いつも喧嘩腰なのはやめてほしいです。空気が重いですよ。
 私はわずかに挙動不審になりながらも、背後にいるヴォルに問い掛けます。

「あ、あの……行く先は決まっているのですか?」

「決まっていない」

 ──はい?私のオドオドを返してください。
 私の問いに対してきっぱりと答えたヴォルに、思わず唖然としてしまいました。

「前に魔力の坩堝るつぼを探すと言っていただろう」

「あ、はい。魔物の生まれる場所とか……」

「あぁ。あれを壊しに行く」

 サラリと答えてくれましたが、何処にあるかも分からない魔力の坩堝るつぼです。
 そう簡単に見つかる筈もないと思いますが、あまりにも軽く告げられて思わず納得しそうになってしまいました。──でも待ってください。

「その為に腕を魔法石にしたのですか」

 ベンダーツさんの言葉を、私は初めて理解しました。何となくは分かっていたのですが、怖くて聞けなかったのです。

「そうだ。あの結界の維持の為だ」

「……それで駄目なら、足でも切り落とすおつもりでしたか?」

 ヴォルへの嫌味を言葉にのせたベンダーツさんですが、ヴォルは何処吹く風。何故そうまでして結界を維持させなくてはならないのでしょうか。
 魔力を持った方々が他にもいるのですから、全てをヴォルに負担させるのは間違っていると思います。

 ヴォルがその場にいるだけで事足りる結界も、魔力持ちが何人も取り掛かってなら維持する事が出来ると聞きました。つまりは、ヴォルでなくても良い筈です。

「十年間誤魔化してきたが、城内にあった魔法石が枯渇し始めた時から一度や二度ではなく話が出ていたのだ。次の魔法石に、とな」

「……今回の騒ぎに便乗した皇妃様方の側近が、ヴォルティ様を亡き者にしようと魔法石話を再び持ち出した訳ですか」

 他人事のように頭上で交わされる言葉でした。
 しかもあの皇妃様──ペルさん事件の後から更に声高こわだかに叫び出していて、それはガルシアさんからも聞いていたのですよ。

「そんなところだ。それらを父上の方で抑えが効かなくなっていたのも事実」

「でもそれでヴォルが傷を負うなんて、私は納得出来ませんからね。今度同じ事をしたら、本っ当~に私は怒りますよっ?」

 小さく苦笑するヴォルに、悲愴感は見られません。あの左腕をなくした時のヴォルを思い出し、私はゾッとしました。
 もうあんな思いなんて嫌です。

「メルになら怒られたいかもな」

「っ?!」

「……私がいる事を忘れないで下さい」

 ヴォルのストレート発言にまた真っ赤になる私と、そんな私達を見てうんざりとした表情をするベンダーツさんでした。
 すみません。こういった甘い発言に対する咄嗟の対応が取れないのですよ。
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