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第五章
8.己が手のように【3】
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「ヴォルティ様。お止めになられるようにご忠告差し上げましたが」
ベンダーツさんがハラリと落ちた手袋を一瞥した後、魔物と対峙しながらも冷たく告げてきます。
まだ実戦初日にして、早くもヴォルは義手用の保護手袋を焼失させてしまいました。確か、これもかなり精度の高い魔道具だった筈です。
「試さなくては分からないだろ」
それでもヴォルは大して気にもせず、掌を広げたり閉じたりしていました。──動きの心配はないようですが。
義手自体が高度な技術を必要とする魔道具ですが、更に魔力持ち用となると稀少も良いところだとか。
ベンダーツさんが義手技術を会得していたのは恐らく偶然でも何でもなく、ヴォルが強い魔力を持っていると分かったからではないかと推測しました。──いずれ来る魔法石へのクッション効果として、今回のように肉体を一部提供させる事でヴォルを守ろうとしていたのではないかと思います。
「感覚がないから分からない。焦げてはいないが」
「その素材自体が微量の魔力を放っている特殊な木材です。簡単に燃えたり凍ったりはしないと思われますが、あくまでも義手です」
自分の手ではないと言いたいのでしょうか。冷たい口調とは裏腹の、心配性なベンダーツさんなのです。
──まぁ、それを表に出さないのはヴォルと一緒ですね。
「己が手のように使えなくては意味がないだろう」
ヴォルの方にベンダーツさんの意見が伝わっている様子はなく、あくまでも自分の感覚を見極めようとしているようでした。
義手は魔力を通していると聞いたので、魔法として放つ魔力とは別の微調整が必要なのでしょう。そこは使用者の感覚が物を言いそうです。
でもそこはさすがというべきでしょうか。
その後幾度も魔法を放っている間にその感覚を掴んできたらしく、ヴォルが放つ魔法の精度と威力が増してきたように見えました。
そして目に見えて魔物の数が減ってきています。
「昔から実践で身に付くタイプなのですよね。……後で義手をメンテナンスしなくてはなりません」
小声で呟いたベンダーツさんです。──本当にヴォルの事を良く分かっていますね。
何だかんだと、二人は良い関係を築いているようです。──羨ましいくらいですよ。
「……終わりだ」
「はい、こちらも終わりました」
二人が魔物の掃討を終え、私の方を振り向きました。
何だか──、あれだけの魔物の討伐も全く苦ではないようです。凄いとしか言いようがありません。
たぶんですけど、通常の冒険者なら少人数では魔物の勢いに負けてしまいそうでした。
「お、お疲れ様でした」
私は戻ってきた二人にペコリと頭を下げます。
勿論、辺り一面に魔物の肉片がこれでもかという程散乱していました。それでも何もしていない私は、いつまでも気分を悪くしていられる立場ではありません。
「……大丈夫か、メル。無理はするな」
「魔物の死体等に気分を悪くされるようでは、共に討伐の旅などお辛いだけではありませんか」
心配そうに声を掛けてくれるヴォルの後ろから、細められたベンダーツさんからの視線が痛いです。
うっ──、言われてしまいました。強がっていても、既に顔色が悪いのかもしれません。
「す……」
「問題ない。メルは俺が守る」
謝罪しようとした私の言葉を遮り、ヴォルが後ろから抱き締めてくれました。不安に思っている事が見抜かれてしまっているかもです。──でもこうしているととても安心出来ました。
こんなんじゃ、本当にベンダーツさんの言うように足手まといです。
「何かお手伝い出来る事はありませんか?」
討伐に参加は出来ませんが、薬草の知識はベンダーツさんから教わりました。──って言っても、当然ヴォルも知っているのでしょうけど。
あれ?私って、本当に足手まといなだけですか。
ベンダーツさんがハラリと落ちた手袋を一瞥した後、魔物と対峙しながらも冷たく告げてきます。
まだ実戦初日にして、早くもヴォルは義手用の保護手袋を焼失させてしまいました。確か、これもかなり精度の高い魔道具だった筈です。
「試さなくては分からないだろ」
それでもヴォルは大して気にもせず、掌を広げたり閉じたりしていました。──動きの心配はないようですが。
義手自体が高度な技術を必要とする魔道具ですが、更に魔力持ち用となると稀少も良いところだとか。
ベンダーツさんが義手技術を会得していたのは恐らく偶然でも何でもなく、ヴォルが強い魔力を持っていると分かったからではないかと推測しました。──いずれ来る魔法石へのクッション効果として、今回のように肉体を一部提供させる事でヴォルを守ろうとしていたのではないかと思います。
「感覚がないから分からない。焦げてはいないが」
「その素材自体が微量の魔力を放っている特殊な木材です。簡単に燃えたり凍ったりはしないと思われますが、あくまでも義手です」
自分の手ではないと言いたいのでしょうか。冷たい口調とは裏腹の、心配性なベンダーツさんなのです。
──まぁ、それを表に出さないのはヴォルと一緒ですね。
「己が手のように使えなくては意味がないだろう」
ヴォルの方にベンダーツさんの意見が伝わっている様子はなく、あくまでも自分の感覚を見極めようとしているようでした。
義手は魔力を通していると聞いたので、魔法として放つ魔力とは別の微調整が必要なのでしょう。そこは使用者の感覚が物を言いそうです。
でもそこはさすがというべきでしょうか。
その後幾度も魔法を放っている間にその感覚を掴んできたらしく、ヴォルが放つ魔法の精度と威力が増してきたように見えました。
そして目に見えて魔物の数が減ってきています。
「昔から実践で身に付くタイプなのですよね。……後で義手をメンテナンスしなくてはなりません」
小声で呟いたベンダーツさんです。──本当にヴォルの事を良く分かっていますね。
何だかんだと、二人は良い関係を築いているようです。──羨ましいくらいですよ。
「……終わりだ」
「はい、こちらも終わりました」
二人が魔物の掃討を終え、私の方を振り向きました。
何だか──、あれだけの魔物の討伐も全く苦ではないようです。凄いとしか言いようがありません。
たぶんですけど、通常の冒険者なら少人数では魔物の勢いに負けてしまいそうでした。
「お、お疲れ様でした」
私は戻ってきた二人にペコリと頭を下げます。
勿論、辺り一面に魔物の肉片がこれでもかという程散乱していました。それでも何もしていない私は、いつまでも気分を悪くしていられる立場ではありません。
「……大丈夫か、メル。無理はするな」
「魔物の死体等に気分を悪くされるようでは、共に討伐の旅などお辛いだけではありませんか」
心配そうに声を掛けてくれるヴォルの後ろから、細められたベンダーツさんからの視線が痛いです。
うっ──、言われてしまいました。強がっていても、既に顔色が悪いのかもしれません。
「す……」
「問題ない。メルは俺が守る」
謝罪しようとした私の言葉を遮り、ヴォルが後ろから抱き締めてくれました。不安に思っている事が見抜かれてしまっているかもです。──でもこうしているととても安心出来ました。
こんなんじゃ、本当にベンダーツさんの言うように足手まといです。
「何かお手伝い出来る事はありませんか?」
討伐に参加は出来ませんが、薬草の知識はベンダーツさんから教わりました。──って言っても、当然ヴォルも知っているのでしょうけど。
あれ?私って、本当に足手まといなだけですか。
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