「結婚しよう」

まひる

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第六章

5.魔の性質を帯びる【4】

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「毎回邪魔をする」

「何が邪魔なんだ。ってか、俺が悪いのか?だいたいお前達は、俺が少し目を離すとすぐにイチャイチャしてるだろう。今は遺体の火葬をしているんだ。時と場所をわきまえられないのか」

 不機嫌を隠さないヴォルに、あきれを多分に含んだ視線を向けてくるベンダーツさんでした。
 しかしながら、良く考えなくても確かにそうです。そう感じて私が慌てて手を放そうとしましたが、ヴォルには逆に強く握られてしまいました。

「手を繋いでいて何が悪い。抱き付いている訳ではないだろ。お前は少し頭が固い。それに何故あの商団をサガルットに送っていく必要があるのか。何が目的だ」

「分かってて言ってる?言っただろ、恩恵があるって」

 ムッとしたままのヴォルは、その勢いでベンダーツさんに噛み付きます。
 恩恵?『金蔓かねづる』と言っていたのは記憶していますが、まさかその意味だったとは思いませんでした。
 それに商団の護衛の事を、ヴォルに前以まえもって説明していた訳ではないのですね。

「くだらない」

「おいおい、そりゃないだろ。ヴォルの立場を上げる為なら、俺は何でもするぜ?今はかなり危ないんだ。それくらい分かっているだろう」

「俺の立場などどうでも良い事だ」

「良くないんだよ」

 吐き捨てるように拒絶をみせるヴォルでした。言いつのるベンダーツさんの思いは伝わらず、ヴォルは顔を見る事もしないです。
 でも、ベンダーツさんの言葉を聞く限りではヴォルの事を思っての行動のようでした。

「いつまでメルを連れ歩いて旅をするつもりだ?怪我や病気をしたらどうするつもりだ?子供でも出来たらどうするつもりだ?残してきた腕の力が切れたらどうするつもりだ?」

 立て続けにベンダーツさんが問い掛けてきます。
 そしてその全てが、私の中で常に不安を感じている事でもありました。

「今が良ければ関係ない・・・・で済ますつもりか?良いか、問題を先送りするな。何のつもりで城を出たんだ。それすら逃避行のつもりか?」

 掴み掛からんばかりのベンダーツさんの迫力です。
 それまで無言で外方そっぽを向いていたヴォルでしたが、その勢いに押されてかポツリと口を開きました。

「……魔力の坩堝るつぼを探す為だ」

「それが見つからなかったらどうするつもりだ?今まで一度も、発見したと言う報告を聞いていないんだ」

 ベンダーツさんは更なるダメ出しをします。
 これは終わりの見えない旅でした。目的も明確な形がなく、自分達の身を守るすべといえば己の力のみです。
 そして更には、その中で圧倒的非力な役立たずの私。このまま連れ歩いて先を見ろと言うのは、本当に酷な話でした。

「だから探している」

「だからそれをいつまで続けるんだって言っているんだよ。大陸の広さを分かってはいるんだろう?しらみ潰しなんてアホな事を考えているのか?砂の大地で指輪を探すものだぞっ」

 怒鳴り散らすベンダーツさんに、向こうの方で待機しているサガルットの商団の方々の視線が集まります。
 距離的に話までは聞こえないでしょうが、明らかに揉めている雰囲気は伝わりますよね。

「……だからこそ、恩を売っておいた方が得策だろう。何もアイツ等から金をむしりとろうなんて思っちゃいないんだ。何かあった時、身を寄せる場所を幾つも確保しておいた方が良い」

 背後からの視線に気付いたベンダーツさんは、少しだけ声のトーンを落としました。
 この人って言い方はキツいですけど、本当にヴォルの事を思ってくれています。常に将来さきを見ているようでした。
 『何かあった時』なんてのは勿論ない方が良いのですが、それでもかくまってくれそうな相手を見つけておいた方が確実ですよね。
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