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第六章
7.もう使えんな【4】
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どうしましょう。夜が更けてくると共に、私の中に不安が募ってきました。
理由は明白で、ユーニキュアさんが戻って来ないからです。
「俺が様子を見てきます」
「ダメですよ」
名前をしらない男の人が私に声を掛けてきましたが、即答で却下しました。
こうして何度も、商団の怪我人の中から声が上がります。私はそれをことごとく拒否していました。だって周囲に様子を伺っている魔物がいるのに、この結界から出たらそれこそどうなるか分かりません。
もぅ──ユーニキュアさん、すぐに戻ってくるって約束したのに。
空の茜は既に藍に変わり、ポツリポツリと白い星まで見えていました。
私達は結界の中で焚き火を囲んでいますが、食事だと手渡された携帯食料に誰も手をつけていません。
結界の外には焚き火に照らされない程度の距離をおいて魔物の光る目が確認出来ました。ヴォルの結界があっても、さすがに夜で光る場所は目立ちますよね。
そして商団の皆さんは私の事を冒険者だと思っているようでした。実際にはヴォル達と冒険をしているのですが、私自身は戦闘に一切参加しません。
いつもウマウマさんの上でヴォルの結界に守られているのでした。これって、『冒険者』だなんて言わないですよね。
「この結界からユーニキュアさん達は出られたのだろ?俺達が出ても大丈夫じゃないか?」
「ごめんなさい。この結界は私の力ではないんです。不必要に揺らせば、いつ弾けてしまうか分かりません。夜が深くなればなるほど魔物が多くなるので、今ここで結界をなくしてしまう事は出来ないのです。本当に申し訳ございません」
深く頭を下げ、言い訳を口にしながら謝罪します。
けれども、もう何度も説明しました。
皆さんがユーニキュアさんを心配なのは分かりますが、実はあの三人が結界を出る時に大分虹色の幕が揺らいだのです。
──この結界、いつまで持つのでしょうか。
「もう我慢出来ないのだ。彼女にもしもの事があれば、このまま自分だけのうのうと生きていく事など出来ない。俺は彼女の両親に頼まれたのだ。……くそっ、この怪我がなければ俺が彼女についていけたのに」
背中に大きな傷を負った男の人が苦しそうに告げました。
確かに同行者を求めた時、ここに残る多くの皆さんが挙手していたのを思い出します。この人だって傷を負いつつも、ユーニキュアさんについていくと言い張っていた一人でした。
「お前はまだ良いだろう。俺は今、彼女の盾になる事すら出来ないのだぞ」
重傷の為に起き上がれない別の男の人が続けます。
盾になるとかやめてくださいと、声を大にして言いたい私でした。そう言ってしまう程、皆さんはユーニキュアさんの事がとても大好きなようです。
「大丈夫ですよ、皆さん。ユーニキュアさんも皆さんが大好きなんです。そんな皆さんを置いて、何処かに行ってしまう訳がないではないですか」
私は精一杯の笑顔を見せました。
ただの強がりでも良いのです。皆さんの心が折れたりしないように、ここで無茶をしてユーニキュアさんが知った時に悲しまないように──そう願いました。
私は一人では何も出来ませんが、せめて励ますくらいはさせてください。
「そりゃ……、そうだろうけど」
「ユーニキュアさんが俺達を置いていく訳ないと思うがなぁ」
「アイツ等二人で大丈夫かが心配で……」
口々に話始めました。でも、先程のような暗い感じは薄れています。
──でも限界が近い事が伝わってきました。口先だけの私の言葉に、いつまで皆さんが従ってくれるのでしょうか。
ヴォル……。
揺れる虹色の幕を見ながら、私は心の中でヴォルに救いを求めていました。
理由は明白で、ユーニキュアさんが戻って来ないからです。
「俺が様子を見てきます」
「ダメですよ」
名前をしらない男の人が私に声を掛けてきましたが、即答で却下しました。
こうして何度も、商団の怪我人の中から声が上がります。私はそれをことごとく拒否していました。だって周囲に様子を伺っている魔物がいるのに、この結界から出たらそれこそどうなるか分かりません。
もぅ──ユーニキュアさん、すぐに戻ってくるって約束したのに。
空の茜は既に藍に変わり、ポツリポツリと白い星まで見えていました。
私達は結界の中で焚き火を囲んでいますが、食事だと手渡された携帯食料に誰も手をつけていません。
結界の外には焚き火に照らされない程度の距離をおいて魔物の光る目が確認出来ました。ヴォルの結界があっても、さすがに夜で光る場所は目立ちますよね。
そして商団の皆さんは私の事を冒険者だと思っているようでした。実際にはヴォル達と冒険をしているのですが、私自身は戦闘に一切参加しません。
いつもウマウマさんの上でヴォルの結界に守られているのでした。これって、『冒険者』だなんて言わないですよね。
「この結界からユーニキュアさん達は出られたのだろ?俺達が出ても大丈夫じゃないか?」
「ごめんなさい。この結界は私の力ではないんです。不必要に揺らせば、いつ弾けてしまうか分かりません。夜が深くなればなるほど魔物が多くなるので、今ここで結界をなくしてしまう事は出来ないのです。本当に申し訳ございません」
深く頭を下げ、言い訳を口にしながら謝罪します。
けれども、もう何度も説明しました。
皆さんがユーニキュアさんを心配なのは分かりますが、実はあの三人が結界を出る時に大分虹色の幕が揺らいだのです。
──この結界、いつまで持つのでしょうか。
「もう我慢出来ないのだ。彼女にもしもの事があれば、このまま自分だけのうのうと生きていく事など出来ない。俺は彼女の両親に頼まれたのだ。……くそっ、この怪我がなければ俺が彼女についていけたのに」
背中に大きな傷を負った男の人が苦しそうに告げました。
確かに同行者を求めた時、ここに残る多くの皆さんが挙手していたのを思い出します。この人だって傷を負いつつも、ユーニキュアさんについていくと言い張っていた一人でした。
「お前はまだ良いだろう。俺は今、彼女の盾になる事すら出来ないのだぞ」
重傷の為に起き上がれない別の男の人が続けます。
盾になるとかやめてくださいと、声を大にして言いたい私でした。そう言ってしまう程、皆さんはユーニキュアさんの事がとても大好きなようです。
「大丈夫ですよ、皆さん。ユーニキュアさんも皆さんが大好きなんです。そんな皆さんを置いて、何処かに行ってしまう訳がないではないですか」
私は精一杯の笑顔を見せました。
ただの強がりでも良いのです。皆さんの心が折れたりしないように、ここで無茶をしてユーニキュアさんが知った時に悲しまないように──そう願いました。
私は一人では何も出来ませんが、せめて励ますくらいはさせてください。
「そりゃ……、そうだろうけど」
「ユーニキュアさんが俺達を置いていく訳ないと思うがなぁ」
「アイツ等二人で大丈夫かが心配で……」
口々に話始めました。でも、先程のような暗い感じは薄れています。
──でも限界が近い事が伝わってきました。口先だけの私の言葉に、いつまで皆さんが従ってくれるのでしょうか。
ヴォル……。
揺れる虹色の幕を見ながら、私は心の中でヴォルに救いを求めていました。
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