298 / 515
第六章
9.見なくて良い【5】
しおりを挟む
「ありがとうございます。何から何まで……」
「問題ない。町の結界を張れる者はいるのか」
「は、はい。先の魔物の襲撃で負傷した者もおりますが、結界を張る事は出来るかと」
何やらオドオドとした様子の町長さんでしたが、ヴォルは用件を話終わると直ぐ様席を立ち上がりました。
私はアワアワとそれに倣います。
「あ、報酬の方は只今用意しておりますので……あの、今暫くお待ち下さい」
「分かった」
部屋を出る前に慌てた様子で引き留められ、町長さんが冷や汗を浮かべながら告げました。それに対してもヴォルは無表情で一言だけ返し、私の手を引いて屋敷を出ます。
私達を取り巻くように侍女さんのような方々が周囲にいましたが、周りに目もくれず颯爽と歩いていくヴォルに声を掛ける人はいませんでした。
「良かったのですか?何だか皆さん、何か言いたそうでしたけど……」
「……あの様な空気は好きではない」
心配になって問い掛けます。でも思いも寄らず不機嫌そうな声でヴォルが答えました。
まぁ、確かに雰囲気からお城を連想させますけれど。
「あの、ベ……マークさんが帰って来ませんね」
話を変えようと、私は周囲を見回しながら告げます。
そう言えば、特にこの町ではベンダーツさんと呼んではいけないのでした。危なかったです。
しかしながらここは比較的大きな町でした。ベンダーツさんも買い出しだと言っていたので、すぐに戻って来なくても私達の行った商店以外に見所があるかもしれません。
「アイツも面倒な奴だ」
小さく溜め息を吐くヴォルでした。──はい?
私は彼の言わんとする事が分からず、思い切り首を傾げます。私の問いに対する答えではないような気もしました。
「腹の探り合いは好かん。地位と権力にしがみつく輩は大概腹黒い」
それでもヴォルは、私の頭を撫でながら言葉を続けます。
──まぁ、ベンダーツさんは色々と考えていそうですけど。
でも何だかんだで、結構ヴォル優先で考えて行動している気がする私でした。
「だから危険な目にも合う」
「え?」
サラリと続けられたヴォルの言葉に、私は思い切り彼を見上げます。
危険──って、ベンダーツさんに何かあったのですか?
「今はまだ動く時ではない」
焦りだした私に気付いてか、ヴォルが優しく頬を撫でてくれました。
これ、気分がフワッてなりますね。──って、そうではなくてですよっ。しかもここは普通に道の往来ですし。
「マークさんの危険が分かるのですか?」
「……あぁ。音が鳴る」
──音?
小首を傾げた私に、然り気無く右手を上げて見せてくれたヴォルです。
私と繋いでいる側のその親指には、銀色に輝く主従のリングがありました。勿論手首には私と一緒の既婚の腕輪があるのですが。
「音……ですか」
「耳鳴りのような高い音だ。今はまだ微かに聞こえる程度。危険度はそれほど高くはない。……それに白昼堂々と押し入って良いのならばそうするが、アイツも子供ではない。夜までは様子を見ようと思う」
再び溜め息を吐くヴォルです。
ベンダーツさんを心配していない訳ではなく、かといって今は行動に移すべきではないといった感じのようでした。何だか二人の間で色々と取り決めがありそうです。
それでも私は、ヴォルの言う『危険度』が気になりました。
そうかといって町を救った冒険者を襲うなんて事は、普通は誰であっても多くの町民達の反感を買いそうです。それに何をしているのかは分かりませんが、下手に私が動いたらベンダーツさんのプライドも傷付きそうでした。
──そっちの方が後々怖いですよね。
「問題ない。町の結界を張れる者はいるのか」
「は、はい。先の魔物の襲撃で負傷した者もおりますが、結界を張る事は出来るかと」
何やらオドオドとした様子の町長さんでしたが、ヴォルは用件を話終わると直ぐ様席を立ち上がりました。
私はアワアワとそれに倣います。
「あ、報酬の方は只今用意しておりますので……あの、今暫くお待ち下さい」
「分かった」
部屋を出る前に慌てた様子で引き留められ、町長さんが冷や汗を浮かべながら告げました。それに対してもヴォルは無表情で一言だけ返し、私の手を引いて屋敷を出ます。
私達を取り巻くように侍女さんのような方々が周囲にいましたが、周りに目もくれず颯爽と歩いていくヴォルに声を掛ける人はいませんでした。
「良かったのですか?何だか皆さん、何か言いたそうでしたけど……」
「……あの様な空気は好きではない」
心配になって問い掛けます。でも思いも寄らず不機嫌そうな声でヴォルが答えました。
まぁ、確かに雰囲気からお城を連想させますけれど。
「あの、ベ……マークさんが帰って来ませんね」
話を変えようと、私は周囲を見回しながら告げます。
そう言えば、特にこの町ではベンダーツさんと呼んではいけないのでした。危なかったです。
しかしながらここは比較的大きな町でした。ベンダーツさんも買い出しだと言っていたので、すぐに戻って来なくても私達の行った商店以外に見所があるかもしれません。
「アイツも面倒な奴だ」
小さく溜め息を吐くヴォルでした。──はい?
私は彼の言わんとする事が分からず、思い切り首を傾げます。私の問いに対する答えではないような気もしました。
「腹の探り合いは好かん。地位と権力にしがみつく輩は大概腹黒い」
それでもヴォルは、私の頭を撫でながら言葉を続けます。
──まぁ、ベンダーツさんは色々と考えていそうですけど。
でも何だかんだで、結構ヴォル優先で考えて行動している気がする私でした。
「だから危険な目にも合う」
「え?」
サラリと続けられたヴォルの言葉に、私は思い切り彼を見上げます。
危険──って、ベンダーツさんに何かあったのですか?
「今はまだ動く時ではない」
焦りだした私に気付いてか、ヴォルが優しく頬を撫でてくれました。
これ、気分がフワッてなりますね。──って、そうではなくてですよっ。しかもここは普通に道の往来ですし。
「マークさんの危険が分かるのですか?」
「……あぁ。音が鳴る」
──音?
小首を傾げた私に、然り気無く右手を上げて見せてくれたヴォルです。
私と繋いでいる側のその親指には、銀色に輝く主従のリングがありました。勿論手首には私と一緒の既婚の腕輪があるのですが。
「音……ですか」
「耳鳴りのような高い音だ。今はまだ微かに聞こえる程度。危険度はそれほど高くはない。……それに白昼堂々と押し入って良いのならばそうするが、アイツも子供ではない。夜までは様子を見ようと思う」
再び溜め息を吐くヴォルです。
ベンダーツさんを心配していない訳ではなく、かといって今は行動に移すべきではないといった感じのようでした。何だか二人の間で色々と取り決めがありそうです。
それでも私は、ヴォルの言う『危険度』が気になりました。
そうかといって町を救った冒険者を襲うなんて事は、普通は誰であっても多くの町民達の反感を買いそうです。それに何をしているのかは分かりませんが、下手に私が動いたらベンダーツさんのプライドも傷付きそうでした。
──そっちの方が後々怖いですよね。
0
あなたにおすすめの小説
さよなら、私の初恋の人
キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。
破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。
出会いは10歳。
世話係に任命されたのも10歳。
それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。
そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。
だけどいつまでも子供のままではいられない。
ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。
いつもながらの完全ご都合主義。
作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。
直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。
※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』
誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。
小説家になろうさんでも時差投稿します。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜
大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。
みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。
「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」
婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。
「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。
年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる