「結婚しよう」

まひる

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第七章

5.何の権限が【3】

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「ん……」

 朝の気配に意識が戻りました。
 はい、結界内ですが屋外です。旅の野宿と違って唯一良いところは、ちゃんとしたベッドがある事くらいでした。

「起きたのか、メル」

「はい。おはようございます、ヴォル」

 いつものように背後からの挨拶に返事をしながら、私は周囲を見回します。
 空はまだ半分が濃い青色で、ようやく朝の白さが訪れた頃に見えました。昨夜ヴォルとベンダーツさんが話している最中、私は寝てしまったようです。おやすみなさいも言わずに寝落ちとか、お子様じゃないですか──恥ずかしいです。

 そんな事を思いながら見渡すと、ベンダーツさんがもう一つのベッドで休んでいる姿が見えます。
 空から判断するにまだ早い時間なので、こちらから起こすのは悪い気がしました。でもヴォルと私の声が聞こえたのか、ゆっくりとその瞳が開かれます。
 ヴォルもそうですが、気配に敏感ですよね。

「おはようございます、マークさん。昨日は休んだ時間が遅かったのではありませんか?」

「おはよ~。うん、昨夜はあの後も少しヴォルと話してたからね。でも大丈夫、優しいねぇメルは。さすがの俺も、ヴォルとメルが起きてるのに寝てられなくね?ってか、俺も抱き枕がほしくなるよなぁ」

 時間が早い事もあってまだ私は身体を動かす気にはならないのですが、視線が合っては何も言わない訳にもいかないのです。
 そして挨拶と共にした私の問い掛けを答えつつも、従者としての矜持なのか笑顔で返されました。

「俺の許可なくメルに触れたら切り取ってやる」

 低い声で告げるヴォルです。
 ──な、何をでしょうか。
 こういう時のヴォルは怖いです。手は勿論ですけど、指一本だってなくては困りますから、そんな怖い事は止めてくださいね。

「ほら、ヴォルの発言にメルが怯えてるって」

うるさい」

 楽しそうなベンダーツさんと、ピリピリとしたヴォルでした。でもそう言いつつも、私に触れるヴォルの手は優しいのです。
 今もほら、頭に唇を落として──って、恥ずかしいのですけど。物凄くベンダーツさんが見ているではないですか。

「さてと、んじゃ朝食の準備でもするかな。ヴォル、また火と水を頼める?」

「……分かった」

 いつもなら少し渋るヴォルですが、今回はすぐに了承されました。
 これ、昨日のベンダーツさんとのやり取りに原因があるのですよね?

 ヴォルが身体を起こしたので、私もベッドから起き上がります。
 ──そう言えば昨日の私、着替えとかしてなくないですか?臭くないと良いのですが。

「どうした、メル」

 背を向けていた筈のヴォルから問い掛けられました。
 自分の臭いを気にしてクンクンしていたのをヴォルに見られてしまいましたね。

「あの……、臭いを……ですね?」

 自分の行動が見られていた事に、恥ずかしい過ぎて顔が熱くなります。──でも隠しても仕方がないですよね。
 私はポツポツ途切れがちに告げました。

「匂い……、メルは良い匂いだ」

「っ?!」

 ですが返ってきたヴォルの返答は予想外で、私は目を見開いて更に赤面してしまいます。ヴォルの方はその私の反応が不思議だったのか、わずかに小首をかしげました。
 本当にビックリします。これが考えて話してないなんて驚きでした。

「ち、違いますよ……っ。昨日はお風呂に入っていなかったので気になっただけです」

 もう自棄やけになって顔をそむけつつ言い放ちます。
 でも熱い顔は治まる様子がないので、これはこれで恥ずかしいのでした。

「風呂に入りたいのか」

「え……はぁ、まぁ……。でもマークさんがいますし、何だか町の人もおかしいですし」

「分かった。気になるのであれば清浄化の魔法を使う」

 私の態度から怒っている訳ではないと伝わったのか、ヴォルから新たな提案がなされました。
 ──えぇっ?!そんな便利な魔法があるのですか?
 その名前からして、お風呂に入らなくても綺麗になりそうです。いえ、お風呂は好きなのですが時と場所を選ぶので。

「何、それ。お風呂代わりの魔法なら、俺も欲しいんだけど?」

 ベンダーツさんも便乗して手を上げていました。
 本当に魔法は便利です。というか、今までそんな話は一度も出ませんでした。お風呂一択だったと思います。
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