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第七章
5.何の権限が【4】
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ふわ~……、スッキリしました。って言うか、こんな魔法があるなら早く教えて欲しかったです。
今まで幾度となく、羞恥で死んでしまえるのではないかという思いをしながらヴォルとの入浴をしていたというのにでした。──あ、違いますね。一回か二回くらいあった気もします。
内心の葛藤はどうであれ、私はヴォルから清浄の魔法をかけてもらってとても清々しい気持ちで満足していました。
「うん、サッパリしたな。さすがヴォルだ、魔力所持者最高!」
同じく大喜びのベンダーツさんです。
初めの頃は魔法を使う事にあまり良い反応を返さなかったベンダーツさんですが、今ではこんな感じでした。更に今回の清浄の魔法を受けた対応で、非情に現金な人だと思ったのは私だけではない筈です。
だってヴォルも胡乱な視線を向けてますから。
「風と水の魔力を使った。良かったか、メル」
「はい、とてもすっきりしました。ありがとうございます、ヴォル」
「それは良かった」
ヴォルは私に清浄の魔法を説明してくれました。これは服を脱ぐ事なく全身洗濯したような感じになるので、私は満面の笑顔で今の気持ちを伝えます。
するとヴォルの雰囲気がふわりと和らぎ、何だか照れたような嬉しそうな──そんな柔らかい瞳をしてくれました。
「あ~……何だか良い雰囲気だねぇ、お二人さん。でもさぁ、何だかこれ以上はゆっくりさせてくれないみたいだよ?朝食くらい食べさせてほしいよねぇ」
私達へからかいの言葉を向けていたベンダーツさんでしたが、僅かに緊張をはらんで続けられた声に一瞬にしてヴォルの周囲の空気が変わります。──警戒、でしょうか。
そして私の視界の先に、近付いてくる狂気が見えました。
町から出てくる多くの影を見た途端、私はゾワリと背筋を逆撫でされように肌が粟立ちます。気配に疎くとも、さすがに良くない感じは伝わってきました。
「反撃といったところかな?」
軽い口調のベンダーツさんは、言葉とは裏腹に既に剣を鞘から抜き放っています。
まさに敵襲でした。そして今回は人だけではなく、魔物混在という異常事態です。
「ヴォル、正当防衛は認められるよな?」
「……人間はダメだ。俺が動きを止める。魔物は好きにしろ」
「了解~。さてと、メルは俺達の働きを見守っていてね?」
作戦と呼べる程ではありませんが、ヴォルとベンダーツさんが短く言葉を交わして方針を決めました。
その笑みを残して結界に手を触れたベンダーツさんは、そのまま何の問題もなく壁をすり抜けます。ヴォルの意思があれば通れるようでした。
「行ってくる、メル」
「気をつけてください……」
ヴォルも私に振り返り、そう告げます。
でも私は緊張と恐怖に押し潰されそうで、やっと絞り出せた言葉はただそれだけでした。それでもヴォルは結界に手を触れ、再び私に柔らかい瞳を向けてくれます。
「待ってます」
「あぁ」
短い言葉ですが、今度は互いの気持ちが伝わったような気がしました。必ず帰ってきて、と言う音にしない思いです。
そんな私の言葉にヴォルは力強く答え、そして結界から出ていきました。
戦いに向かうヴォルの背中を見つめながらも、相変わらず私はただ待つ事しか出来ないのだと思い知らされました。それでも不安や寂しさに押し潰されたりしないように、しっかりと彼の帰る場所を守らなくてはならないのです。
「ヴォル……、私はここにいますから」
思わず呟いてしまった独り言に、自分でも驚いてしまいました。でもきちんとここにいると言えた先程の私に安堵します。
私は私の役割として出来る事をするだけでした。
待つ事の辛さは、待つ側でないと分からないのです。同じく、戦う側の辛さもそうでした。
人と寄り添うという事は、互いが抱える辛さも共有するという事です。自分だけの気持ちを押し付けては意味がないのですから。
今まで幾度となく、羞恥で死んでしまえるのではないかという思いをしながらヴォルとの入浴をしていたというのにでした。──あ、違いますね。一回か二回くらいあった気もします。
内心の葛藤はどうであれ、私はヴォルから清浄の魔法をかけてもらってとても清々しい気持ちで満足していました。
「うん、サッパリしたな。さすがヴォルだ、魔力所持者最高!」
同じく大喜びのベンダーツさんです。
初めの頃は魔法を使う事にあまり良い反応を返さなかったベンダーツさんですが、今ではこんな感じでした。更に今回の清浄の魔法を受けた対応で、非情に現金な人だと思ったのは私だけではない筈です。
だってヴォルも胡乱な視線を向けてますから。
「風と水の魔力を使った。良かったか、メル」
「はい、とてもすっきりしました。ありがとうございます、ヴォル」
「それは良かった」
ヴォルは私に清浄の魔法を説明してくれました。これは服を脱ぐ事なく全身洗濯したような感じになるので、私は満面の笑顔で今の気持ちを伝えます。
するとヴォルの雰囲気がふわりと和らぎ、何だか照れたような嬉しそうな──そんな柔らかい瞳をしてくれました。
「あ~……何だか良い雰囲気だねぇ、お二人さん。でもさぁ、何だかこれ以上はゆっくりさせてくれないみたいだよ?朝食くらい食べさせてほしいよねぇ」
私達へからかいの言葉を向けていたベンダーツさんでしたが、僅かに緊張をはらんで続けられた声に一瞬にしてヴォルの周囲の空気が変わります。──警戒、でしょうか。
そして私の視界の先に、近付いてくる狂気が見えました。
町から出てくる多くの影を見た途端、私はゾワリと背筋を逆撫でされように肌が粟立ちます。気配に疎くとも、さすがに良くない感じは伝わってきました。
「反撃といったところかな?」
軽い口調のベンダーツさんは、言葉とは裏腹に既に剣を鞘から抜き放っています。
まさに敵襲でした。そして今回は人だけではなく、魔物混在という異常事態です。
「ヴォル、正当防衛は認められるよな?」
「……人間はダメだ。俺が動きを止める。魔物は好きにしろ」
「了解~。さてと、メルは俺達の働きを見守っていてね?」
作戦と呼べる程ではありませんが、ヴォルとベンダーツさんが短く言葉を交わして方針を決めました。
その笑みを残して結界に手を触れたベンダーツさんは、そのまま何の問題もなく壁をすり抜けます。ヴォルの意思があれば通れるようでした。
「行ってくる、メル」
「気をつけてください……」
ヴォルも私に振り返り、そう告げます。
でも私は緊張と恐怖に押し潰されそうで、やっと絞り出せた言葉はただそれだけでした。それでもヴォルは結界に手を触れ、再び私に柔らかい瞳を向けてくれます。
「待ってます」
「あぁ」
短い言葉ですが、今度は互いの気持ちが伝わったような気がしました。必ず帰ってきて、と言う音にしない思いです。
そんな私の言葉にヴォルは力強く答え、そして結界から出ていきました。
戦いに向かうヴォルの背中を見つめながらも、相変わらず私はただ待つ事しか出来ないのだと思い知らされました。それでも不安や寂しさに押し潰されたりしないように、しっかりと彼の帰る場所を守らなくてはならないのです。
「ヴォル……、私はここにいますから」
思わず呟いてしまった独り言に、自分でも驚いてしまいました。でもきちんとここにいると言えた先程の私に安堵します。
私は私の役割として出来る事をするだけでした。
待つ事の辛さは、待つ側でないと分からないのです。同じく、戦う側の辛さもそうでした。
人と寄り添うという事は、互いが抱える辛さも共有するという事です。自分だけの気持ちを押し付けては意味がないのですから。
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