「結婚しよう」

まひる

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第七章

≪Ⅷ≫お前の教育方針には従わない【1】

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「私はヴォルの事、怖くないですよ?」

「メル……」

「アチャ~……、何をあおってるのさっ。メル、それは二人きりの時にしな?」

 顔に手を当てるベンダーツさんです。
 ──え?私、おかしな事を言いました?
 意味が分からず首をかしげる私に、更に大きな溜め息をつくベンダーツさんでした。

「俺は心配になってきたよ、メルが。そんなんで良く今まで無事にいれたね。それともわざと?計算してやってる?…………んな訳ないよね、きみだし。本当に全く……」

 そのまま口をつぐんでしまったベンダーツさんです。
 何だか、物凄く呆れられてしまったような気がしました。けれども言葉の意味が分かりません。説明不足ではないでしょうか。

「ヴォ……ル?」

 そんな思いで見上げた先、ヴォルの様子がおかしいです。
 頬がわずかに赤みを帯びていて、とても苦しそうに目を細めていました。

「どうしたのですかっ?!」

 私は慌ててヴォルの額に触れます。
 熱があるかも知れません、何処か痛いのかも知れません。魔物との戦闘で負傷したのかもと不安になりました。

「……問題ない」

「でも……」

「メルさぁ……。男心を考えて、ここは放っておくべきだよ」

 視線をらすヴォルの顔を覗き込む私に、ベンダーツさんからの助言です。
 男心ですか?私は女なので、男心というものが理解出来ませんでした。でも女心と同じように、独自の思考があるのだという想像は出来ます。

「分かりました。では……えっと、動いた方の紋章は問題がないと言う訳ですね?」

「そう言う事。あそこは元々サガルットの魔法石を封印する為の地下室だったし、この分だとセントラルに没収されるだろうから必要ないよ」

 ヴォルの事が気になりつつも、私は話を戻してベンダーツさんとお話を続ける事にしました。
 しかしながら、魔法石は没収されるのですか。あ、でもそうなると……。
 魔法石は結界のかなめの筈でした。確かに王都の結界に魔法石がたくさん必要でしょうが、各地の守りがおろそかになっては本末転倒です。

「そんな不安な顔をしないでよ。でも、この町の自由はなくなるだろうね。魔法石の管理資格の剥奪、魔法省の介入。それに伴って輸出入の管理から住人の管理までされる事になるだろうな。まぁ、町が潰されないだけマシでしょ。それにこれだけ荒らされたんだから、町の人達だけじゃ復興は難しいね」

「メルを不安にさせるな」

 町の運営自体のルールに詳しいベンダーツさんにとって、それだけ町の魔法石は重要なのだと告げられました。管理も出来ないのであれば、任せられないという事なのでしょう。
 現実を突き付けられてうつむく私を、復活したらしきヴォルが私を庇護ひごしてくれました。

「本当に甘いんだから。別に俺は大袈裟に言ってる訳じゃないし。メルにはもっと世の中の汚いところも教えてあげないと、この先の人生を生きていくのが大変になるよ?」

「メルは俺が守る」

「それは分かっているし、はっきり言って聞きあきたよ。でも俺も何度でも同じ事を言うけど、本人に知識があるのとないのとでは大違いなんだ。選択肢は多くあった方が良い。守られるばかりで、考えられない人間にしてはならない。必要な知識と情報を与え、良し悪しを判別出来るようにしてあげるのが庇護者の努めでもあると俺は思うよ」

 ベンダーツさんが真面目な顔で告げます。
 その考えを元に、ベンダーツさんはヴォルに色々な事を教えたのだと思いました。明らかに皇帝様の息子と言う立場なら必要のない事まで、しっかりと教育されているようですから。
 そしてその知識があってこそ、ヴォルは一人でも私に出会う前の旅をする事が出来たのです。──勿論、魔法が使えるという強さもありますけれどね。
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