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第七章
8.お前の教育方針には従わない【4】
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「遠慮しておくよ。これ以上この町に足止めされたくないからね」
きっぱりとユーニキュアさんの厚意を断ったベンダーツさんです。でも確かに食材を少々消費してはいるものの、旅の準備は既に出来上がっていました。
ここに留まっていたのは、初めは町長さんとユーニキュアさんのお父様からセントラルに護衛を依頼されたからです。勿論それは断りましたが、次は色々とあってゼブルさん捜索に切り替わりました。
他に何事もなく、早く出発出来ると良いです。
「そ……、そうですか」
戸惑ったように俯くユーニキュアさんでした。
拒絶された事に対して困惑している感じにも見えます。
「ところでさ、どうして君はここにいるのかな?」
そんな彼女に、ベンダーツさんが追い打ちのように冷たく問い掛けました。
先程は町長代理になったからであると言われていましたが、それ以上の何かを聞いているかのようです。私は単に魔物討伐のお礼で来たのかと思っていました。あ──でも始まりは違いましたね。
「私は町長代理に……」
「それは聞いたよ。でも、何故拘束を逃れているんだい?サガルットの皆はさ、自警団以外はほら……あそこで固まっているんだけど?」
ベンダーツさんの指差した方向を見ます。町と私達のいる結界の間、町民と魔物の混在でした。
それは私が幽体の頃に見た同じ場所で、その場に留まったまま静かにしています。魔物もいますが、町の皆さん双方とも動けないようで危険はないかもでした。
「……あれは、ヴォル様の魔法で……」
「そうだね、あれはヴォルの魔法。そんな事は分かってるよ。でも君がここにいる理由にはならないんじゃない?」
追求は止みません。
ベンダーツさんが何を言いたいのか、私にも分かりませんでした。
「だいたい、誰が君を町長代理に任命したのさ?自警団じゃないよね、君の事は何一つ言ってなかったし」
問い掛けながらベンダーツさんは瞳を細めます。
どういう事か分からない私は小首を傾げますが、ユーニキュアさんの表情が強張っているようにも見えました。
「分からない?サガルットの民の大半はあの結界の中にいるんだよ?確かに町長とブルーべ侯爵の姿は見えないよね」
「それは……、父の具合が悪くなって……」
ベンダーツさんはユーニキュアさんから視線を外しません。
言われて思い出しましたが、私が町の中をゼブルさんを捜して走り回った時も、他の町の人に全く会いませんでした。まさか魔物と共に閉じ込めているあの結界の中に、大半の町の人々がいるとは思わなかったです。
「じゃあさ、何の為にサガルットの民は結界に入っていると思う?」
「それは……町の外ですから、襲ってくる魔物がいるかもしれないからですわ」
「うん、確かに魔物がいるよね。それも、人の皮を被った」
「な……っ?!」
驚きのあまり、目を見開いているユーニキュアさんでした。そして私も一緒に驚きます。
人の皮を被った魔物というのが、どういう意味か分かりませんでした。だって見た目はどう考えても同じ人間です。
「本当の言の魔法使いはお前だろ」
私を優しく抱き締めたまま、ヴォルが冷たい言葉と視線をユーニキュアさんに向けました。
『言の魔法使い』が何かは分かりません。けれどもヴォルの雰囲気から良い感じはしませんでした。
「ど……、何処に証拠があると言うのです?言い掛かりはよして下さいませ」
「ほら。この石、何か分かる?」
若干後退るユーニキュアさんに、いつの間に持っていたのかベンダーツさんが掌に収まる程の青い石を見せます。
その石はとても綺麗ですが、何故だか不思議な存在感を感じました。
きっぱりとユーニキュアさんの厚意を断ったベンダーツさんです。でも確かに食材を少々消費してはいるものの、旅の準備は既に出来上がっていました。
ここに留まっていたのは、初めは町長さんとユーニキュアさんのお父様からセントラルに護衛を依頼されたからです。勿論それは断りましたが、次は色々とあってゼブルさん捜索に切り替わりました。
他に何事もなく、早く出発出来ると良いです。
「そ……、そうですか」
戸惑ったように俯くユーニキュアさんでした。
拒絶された事に対して困惑している感じにも見えます。
「ところでさ、どうして君はここにいるのかな?」
そんな彼女に、ベンダーツさんが追い打ちのように冷たく問い掛けました。
先程は町長代理になったからであると言われていましたが、それ以上の何かを聞いているかのようです。私は単に魔物討伐のお礼で来たのかと思っていました。あ──でも始まりは違いましたね。
「私は町長代理に……」
「それは聞いたよ。でも、何故拘束を逃れているんだい?サガルットの皆はさ、自警団以外はほら……あそこで固まっているんだけど?」
ベンダーツさんの指差した方向を見ます。町と私達のいる結界の間、町民と魔物の混在でした。
それは私が幽体の頃に見た同じ場所で、その場に留まったまま静かにしています。魔物もいますが、町の皆さん双方とも動けないようで危険はないかもでした。
「……あれは、ヴォル様の魔法で……」
「そうだね、あれはヴォルの魔法。そんな事は分かってるよ。でも君がここにいる理由にはならないんじゃない?」
追求は止みません。
ベンダーツさんが何を言いたいのか、私にも分かりませんでした。
「だいたい、誰が君を町長代理に任命したのさ?自警団じゃないよね、君の事は何一つ言ってなかったし」
問い掛けながらベンダーツさんは瞳を細めます。
どういう事か分からない私は小首を傾げますが、ユーニキュアさんの表情が強張っているようにも見えました。
「分からない?サガルットの民の大半はあの結界の中にいるんだよ?確かに町長とブルーべ侯爵の姿は見えないよね」
「それは……、父の具合が悪くなって……」
ベンダーツさんはユーニキュアさんから視線を外しません。
言われて思い出しましたが、私が町の中をゼブルさんを捜して走り回った時も、他の町の人に全く会いませんでした。まさか魔物と共に閉じ込めているあの結界の中に、大半の町の人々がいるとは思わなかったです。
「じゃあさ、何の為にサガルットの民は結界に入っていると思う?」
「それは……町の外ですから、襲ってくる魔物がいるかもしれないからですわ」
「うん、確かに魔物がいるよね。それも、人の皮を被った」
「な……っ?!」
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私を優しく抱き締めたまま、ヴォルが冷たい言葉と視線をユーニキュアさんに向けました。
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「ど……、何処に証拠があると言うのです?言い掛かりはよして下さいませ」
「ほら。この石、何か分かる?」
若干後退るユーニキュアさんに、いつの間に持っていたのかベンダーツさんが掌に収まる程の青い石を見せます。
その石はとても綺麗ですが、何故だか不思議な存在感を感じました。
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