「結婚しよう」

まひる

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第八章

1.異変が起きている【2】

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「それは……、ヴォルも……ですか?」

 彼の為に言葉に不安を隠し切れずに問い掛けました。
 私は魔力を持っていないから分からないだけで、もしかしたらヴォルに大変な事が起きているかもしれません。
 そんな事を考えつつ、震える声で問い返します。

「今のところは問題ない」

 淡々とした返答が返ってきました。
 彼は私にはつきませんが、隠し事・・・をしない訳ではありません。しかしながらそれを確認しようと闇に慣れてきた瞳を凝らしても、ヴォルの表情の変化は読みとれませんでした。

「だが、今回の旅では魔物の行動に違和感を感じていた。以前よりも凶暴性が増し、魔力に対して過剰なまでの反応を示すのだ」

「魔力を……必要としている為にですか?」

「そうかもな。魔力の流れが狂った事で魔物が飢えている。強ければ強い程、魔物はより多くの魔力を必要とするからだろう」

「本当に本当に、ヴォルに変わった事は何もないのですね?」

 ヴォルの言葉を信じない訳ではないですが、確実な答えを聞かなくては安心出来ません。
 暗い中だから出来るのですが、私は正面からヴォルを問い詰めていました。

 でも今は入浴中でして、当たり前ながら何も身に付けていないのです。
 この時はすっかり忘れていましたが、わずかにヴォルが困った様子なのはその為だと後で気付いてもだえました。

「……それが理由かは分からないが、消費魔力が増加している」

 私の必死の追求に、ヴォルが溜め息と共に告げます。
 魔力や魔法に詳しいヴォルでも、確証出来る原因の分からない事が起きているようでした。

 私はその言葉の意味を噛み砕きます。
 同時に、消費魔力が増加している事で起こりうる弊害を考えました。
 今まで息をするように魔法を使っていたヴォルです。精霊さんにも普段から常に魔力を分けているので、つまりは彼自身にもたくさんの魔力が必要という結論に至りました。

「ただそれだけだ。俺はメルにれれば魔力の回復が早まる。問題ない」

 真剣に頭を悩ませる私に、ヴォルは事も無げに言い放ちます。
 ──私にれる、と?

 思い返せば大きな魔法を使った後、何故だかヴォルがたくさん甘えん坊になっていました。
 ──あれって、私に触れて魔力を回復していたのですか?……昨日も……っ?!

「私……は、ヴォルの……役に立っていますか?」

 判明した新事実に、私は困惑を隠せません。
 そして胸の奥で何かがつっかえたように、とても苦しく感じました。

「あぁ。……服を着よう。そろそろマークが来る頃だ」

「はい……」

 その後、いつものようにヴォルは温かい風で身体を乾かしてくれます。
 ほのかな灯りをつけてくれたので、服の場所も分かりました。

 お風呂に入ると身体は勿論ですが、気持ちもスッキリするのです。──でも今回は違いました。
 先程の不安とは違う何かが心に引っ掛かっています。ヴォルはいつもの通りなのに、私はどうしてしまったのでしょうか。

「どうした、メル」

「……い、いえ。何でもないです」

 外と同じ明るさになった事で私の様子がいつもと違う事に気付いたのか、ヴォルが俯く私の顔を覗き込んできました。
 でも私としてもどう説明して良いのかすら分かりません。ただ首を横に振る事しか出来なかったのでした。
 自分の心の状態も分かっていないのに、それを口で説明なんて無理です。

「そうか」

 私の返答に、ヴォルはそれ以上追求しては来ませんでした。
 でもいったい私、どうしてしまったのでしょうか。何故こんなにも心の内側がモヤモヤとしているのか、本当に分かりませんでした。
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