「結婚しよう」

まひる

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第八章

10.俺にも利(り)がある事【3】

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「さあて、なごんだところで……」

「俺は全然なごんでないっつうの!」

 に落ちなさそうなベンダーツさんをよそに、協会長さんはサッサと教会の中に入っていきます。
 都合の悪い部分は先程のスルー能力で回避しているようでした。

「ほれ、話が聞きたいのだろう?いい加減、立ち話も疲れるのでな。あ、君達も通常業務に戻ってくれてかまわないよ。この辺りも浄化されたようだから不調も時期に戻るでしょ」

 前半は私達に声を掛け、後半は魔力協会職員の人へ指示をします。そしてあの一番怒っていた人と数人は協会長さんの護衛と称し、私達に同行するようでした。
 他の人達を引き連れている所を見る限り、彼はお偉いさんの一人のようです。そしてその他の人達はそれぞれの方向へ歩いていきました。町がこんな状況であるにも関わらず、各自の持ち場やお仕事があるようです。
 もしかしたら経過調査等が必要なのかもしれませんでした。
 しかしながらあの黒いもやで体調不良になっていたとは、魔力所持者のかたは結界の中にいても影響を受けてしまうほど繊細なようです。
 足取りがフラフラとしていた男性も、黒いもやが原因だったのかもしれませんでした。──ヴォルが浄化した後は、我に返ったようで状況に戸惑っている様子でしたが。

「さぁ、中に入って。教会だから座る場所だけはたくさんあるからね。好きなところへ腰掛けてくれたまえよ」

 協会長さんはそう私達に声をかけ、御自分も手近な席へ逆向きに腰を下ろしました。
 その近くに腰を下ろしたヴォルと私、その後ろにベンダーツさんが座ります。今は従者仕様ではないようでした。
 そうして少し離れた全体を見渡せる場所に魔力協会職員の人達が立った事で、私達の退路は完全に塞がれます。──別に敵対している訳ではありませんが。

「俺達、まだ警戒されてる?」

「いや、彼等はあれが仕事なのでな。一応、私は協会長の身。君達への信頼等とは関係なく、立場的な問題だよ。我々とて精霊に好かれた者相手と対峙したくはないのだから、気にしないでくれると助かるな。……さて、魔法石化した町の件なのだが」

 向けられる視線を気にするベンダーツさんでしたが、協会長さんは笑顔を向けて早速とばかりに話し始めました。
 そして告げられた町の名前です。
 結論から言えば、二箇所とも私の知らない場所ではありませんでした。一つはグレセシオ大陸ユースピア港、そして──マグドリア大陸マヌサワの農村です。

「……それ、魔法石情報だよね。間違いなんて………………なかったりしない?」

「冗談でもなく、なのだよ。ユースピア港はこのグレセシオ大陸の窓口でもあり、セントラルにとって事態は非常に大きな痛手いたでへと繋がるだろうな。恐らく我々の方へ救援手配が遅れてるのは、セントラル側が混乱している事が大いにあるからだろう」

 ベンダーツさんが固い表情で問いますが、協会長さんは静かに首を振りました。
 ユースピア港は確かに大きい港町です。ヴォルとこの大陸に初めて足を踏み入れた──時は自分で歩いていなかったような気もしますが、とにかく行った事のある町でした。
 そして──ユースピア港も大変だと思いますが、私的に大問題なのは『村』です。

「マヌサワ……」

「何だ、姫は知っているのか?隣のマグドリア大陸の南端にある小さな村なのだが、魔法石情報ではその辺りも大地からの魔力放出現象に見舞われている」

 協会長さんは、思わず声が漏れてしまった私の言葉に反応しました。
 でも私が市井しせい出自しゅつじである事は知っていても、実際に生まれ故郷まで知っている筈はないのです。

魔力放出現象それ、必ず人の集落が発生地点になる訳?」

「さて、そこまで詳しくは分からぬよ。過去の記録も詳細までは明記されてないのだ。現象と場所が記されていただけで、魔力の流れから判断がついたのは我々魔力協会の日々の研究の成果であってこそだ。それでも何処其処どこそこに次の魔法石化現象が起きると予測すら立たぬのだからな」

 ベンダーツさんと協会長さんは、互いに感情を見せないように淡々と質疑応答をしていました。
 でも私は、それをボンヤリとしか聞いていられない状態です。思考がままならず、はっきり言って現実逃避でした。
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