「結婚しよう」

まひる

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第九章

3.魔力の質は個性【2】

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「それで、ヴォルは今から何をするのですか?」

「今日は休む。その間精霊に周囲を見回ってもらうが、今は俺自身の動く必要がない」

 私の質問に、ヴォルはベッドに身体を横たえて答えます。
 ゆっくり出来るのは良い事でした。更には町にいる時でも気は抜けないのですが、少しでも精神的に穏やかでいれるならば良いです。──けれど魔物と遭遇しなくても、ここにはたくさんセントラルの方々がいますから要注意ではありました。

「メルは気になっているのだろ」

 そんな自分の思考に入っている私でしたが、不意にヴォルの声で意識を引き戻されます。
 しかしながら唐突な問いでした。
 突然問い掛けられ、私は意図が分からずまばたきを繰り返します。

「マヌサワ村の事だ」

「あ……、はい。…………でも、ヴォルが足を運んでくれますから」

 私の態度を見て、ヴォルが次の言葉を足してくれました。ようやく問い掛けの意味が分かった私です。
 私は今思っている事を素直に答えました。それに考えているだけではどうしようもない事です。
 実際にの当たりにしてみないとその時の自分の感情は分かりませんが、今はおかしなくらい落ち着いていました。

「魔力感知のみでは知り得ない事がある。事実を己の目で見て判断する方が良い」

 楽観的な言い方はしませんが、ヴォルは私をなぐさめるような言葉を選んでくれます。
 話を聞いた時は混乱していましたが、確かに言われてみて自分の目で確認したいのだと気付きました。そして普通なら何にも出来ないのでしょうけど、私にはヴォルがいてくれます。
 更には補佐官として優秀なベンダーツさんも手伝ってくれますからね──たぶんですが。

「はい」

 私はそれまでは村の事を思って泣かないと決めました。
 人伝ひとづたえの情報で不安に押し潰されたところで、それは本当ではないかもしれないからです。実際にありもしない、自分では知りもしない事で不安になっても仕方がありませんでした。
 開き直りと言ってくれても良いです。

「アイツが戻るまで時間がある。メルもゆっくり休め」

「はい」

 ヴォルがベッドから手を伸ばして告げました。私は引き寄せられるように彼に歩み寄ります。
 ──特に疲れている訳ではないのですが……って、あれ?
 ヴォルの腕に包まれてベッドに転がった私は、いつの間にか深い夢の中に沈んでいっていました。自分で思っていたより、身体の方は疲れていたようです。
 寝付きの良さで競ったら、一等を取れるかも的な私でした。



「……戻ったのか」

「はい」

 静かに近付く気配に、俺は視線を向ける事なく告げる。
 気を使ってか、ベンダーツが部屋の外──扉の前に立っていたのだ。
 返答をしてから扉を開けたベンダーツだが、既に日は沈んでいる。遅くまで情報収集をしてくれたようだ。

「遅くなりました」

「問題ない」

「結論から申し上げますと、船は三日後……二週に一回のマグドリア大陸からの定期便以外にないようです」

 予想通りではあったが、思ったより早いタイミングで大陸を渡れそうである。
 しかしながら、やはり入港制限をしているようだ。

「近くの民も調べましたが広範囲の魔法石化現象であったらしく、周囲の小さな集落にも生物が存在していませんでした」

「そうか」

 淡々と報告をするベンダーツ。
 周辺の集落へ足を運んでいたとなると、この時間に戻ってくるのは大変だったと推測される。

「小型の船はありますが、港の入出港を監視されています」

「三日後の定期便を待つしかないようだな」

 ベンダーツの調査により結論が出た。元より漁船などの不安定な足を使うつもりもない。
 メルは船に不馴れだ。小型船では彼女の体調が心配である。

「そうおっしゃるかと思い、定期便での出港手配を済ませております」

「さすがだな」

「おほめめに預かり光栄でございます」

 胸に手をあて、深く頭を下げるベンダーツ。
 これが立場上は普通なのだろうが、ヤケに疲れる気がするのは何故だ。──鼻につくというのか。

「お前も休め」

「はい。では、外で……」

「ここで良い。メルが心配する」

「……はい」

 ベンダーツはに落ちないような返答をする。
 だが、これ以上メルを不安にさせたくはなかった。──気丈に振る舞ってはいるがな。
 そうかと言って正直、ベンダーツも部屋を共にするのは俺もに落ちない。立場ではなく、メルの寝顔を見せたくない一心いっしんだ。
 ──俺自身も変わったな。
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