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第九章
8.こんな物……【3】
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私がこういった実力行使をする場合、大概何も考えていないのです。
そして今思っている事は、ヴォルに食事を取ってもらいたいとの一念でした。
「はい、あ~ん」
普通に自分が今まで食べていた匙で、ヴォルの口に薬草粥を運びます。
他に何も考えていないので、ヴォルやベンダーツさんの反応を気にもしていませんでした。それこそ見てもいなかったです。
「こんな物……っ」
僅かに抵抗したヴォルでした。
けれども私は口が開いたのを良い事に、そのまま手にしていた匙を滑り込ませます。
ヴォルはこの時、もしかした要らないと言おうとしたのかもしれませんでした。それでも『食べさせる』事に集中していた私は、真意に気付く事なく強引な行動をとっていたのです。
そして当たり前というか、驚いたように目を見開いたままその一口は呑み込まれてしまいました。
「ちゃんと噛まないとダメですよ。はい、もう一度です」
有無を言わさず、再度匙を口へ運びます。
今度はキチンと咀嚼してくれました。いくらお粥でも、全く噛まないのはお腹に悪そうです。
「ね?美味しいですよね」
「あ……、あぁ……」
半ば無理矢理ヴォルに答えさせたようなものですが、私はその返答が嬉しくて微笑みました。
自分が美味しいと思うものを好きな人も美味しいと言ってくれるのは、思った以上に嬉しかったのです。
「……あ」
ほくほくした気持ちで自分が横になっていたベッドに戻り、残りのお粥を食べようとして気付きました。──はい、今更です。
私、自分の食べていた食器をそのままヴォルに使いました。しかも食べ掛けを無理矢理──食べさせてしま、キャーッ!!
後悔先に立たずです。良く良く考えて行動しましょう。
しかしながら今の私は羞恥による混乱のあまり、真っ赤になったであろう顔をさらしていました。
「……驚いたなぁ。ヴォルが薬草粥を嫌いなのは知ってたけど、さすがのメル攻撃には鉄壁の防御も崩れるか。いやぁ~……茫然自失の状態とはいえ、自主的に食べてくれて助かる。うん、うん」
感心するようなベンダーツさんの声に振り向くと、ボンヤリとしたままヴォルが自ら薬草粥を食べています。
上手いタイミングでベンダーツさんから差し出された粥を、自動人形のようにではありましたが口に運んでいました。
何だか非常に様子がおかしくはありますが、嫌いだとか言われていたわりにきちんと咀嚼して食べているようです。
「あ……あの……」
「ん?さっきのはまぁ、メルだから出来た事だな。助かったよ、ありがとう」
怖々と声をかけると、ベンダーツさんにお礼を言われてしまいました。
「い、いえっ!私は……っ!」
「だってさぁ。ヴォルは子供の頃から薬草粥が嫌いでさ……あ、マトトも嫌いなんだけど、これは知ってるよね」
顔を勢い良く横に振りつつも戸惑っていると、然り気無くヴォルの情報を漏らしてくれます。
そうですか、小さい頃ではこの味は少し癖があるのでお気に召さないのも分からなくはありませんでした。
「精霊のおかげか酷く体調を崩す事は少なかったけど、それでも長く生きていれば何度かあるでしょ?体力も抵抗力も落ちた時に食べるのは、これが一番効くんだよ。それでも頑として受け入れた事はなくてね。そりゃもう、何度無理矢理口を抉じ開けて押し込んだ事かぁ……。それでも吐き戻そうとするもんだから、大変だったんだよねぇ」
染々と語るベンダーツさんですが、内容はかなり怖い事を言われています。
そして予想通り、本当に無理に食べさせられるようでした。──思えば先程の私も、大して変わらないかもしれません。
そして今思っている事は、ヴォルに食事を取ってもらいたいとの一念でした。
「はい、あ~ん」
普通に自分が今まで食べていた匙で、ヴォルの口に薬草粥を運びます。
他に何も考えていないので、ヴォルやベンダーツさんの反応を気にもしていませんでした。それこそ見てもいなかったです。
「こんな物……っ」
僅かに抵抗したヴォルでした。
けれども私は口が開いたのを良い事に、そのまま手にしていた匙を滑り込ませます。
ヴォルはこの時、もしかした要らないと言おうとしたのかもしれませんでした。それでも『食べさせる』事に集中していた私は、真意に気付く事なく強引な行動をとっていたのです。
そして当たり前というか、驚いたように目を見開いたままその一口は呑み込まれてしまいました。
「ちゃんと噛まないとダメですよ。はい、もう一度です」
有無を言わさず、再度匙を口へ運びます。
今度はキチンと咀嚼してくれました。いくらお粥でも、全く噛まないのはお腹に悪そうです。
「ね?美味しいですよね」
「あ……、あぁ……」
半ば無理矢理ヴォルに答えさせたようなものですが、私はその返答が嬉しくて微笑みました。
自分が美味しいと思うものを好きな人も美味しいと言ってくれるのは、思った以上に嬉しかったのです。
「……あ」
ほくほくした気持ちで自分が横になっていたベッドに戻り、残りのお粥を食べようとして気付きました。──はい、今更です。
私、自分の食べていた食器をそのままヴォルに使いました。しかも食べ掛けを無理矢理──食べさせてしま、キャーッ!!
後悔先に立たずです。良く良く考えて行動しましょう。
しかしながら今の私は羞恥による混乱のあまり、真っ赤になったであろう顔をさらしていました。
「……驚いたなぁ。ヴォルが薬草粥を嫌いなのは知ってたけど、さすがのメル攻撃には鉄壁の防御も崩れるか。いやぁ~……茫然自失の状態とはいえ、自主的に食べてくれて助かる。うん、うん」
感心するようなベンダーツさんの声に振り向くと、ボンヤリとしたままヴォルが自ら薬草粥を食べています。
上手いタイミングでベンダーツさんから差し出された粥を、自動人形のようにではありましたが口に運んでいました。
何だか非常に様子がおかしくはありますが、嫌いだとか言われていたわりにきちんと咀嚼して食べているようです。
「あ……あの……」
「ん?さっきのはまぁ、メルだから出来た事だな。助かったよ、ありがとう」
怖々と声をかけると、ベンダーツさんにお礼を言われてしまいました。
「い、いえっ!私は……っ!」
「だってさぁ。ヴォルは子供の頃から薬草粥が嫌いでさ……あ、マトトも嫌いなんだけど、これは知ってるよね」
顔を勢い良く横に振りつつも戸惑っていると、然り気無くヴォルの情報を漏らしてくれます。
そうですか、小さい頃ではこの味は少し癖があるのでお気に召さないのも分からなくはありませんでした。
「精霊のおかげか酷く体調を崩す事は少なかったけど、それでも長く生きていれば何度かあるでしょ?体力も抵抗力も落ちた時に食べるのは、これが一番効くんだよ。それでも頑として受け入れた事はなくてね。そりゃもう、何度無理矢理口を抉じ開けて押し込んだ事かぁ……。それでも吐き戻そうとするもんだから、大変だったんだよねぇ」
染々と語るベンダーツさんですが、内容はかなり怖い事を言われています。
そして予想通り、本当に無理に食べさせられるようでした。──思えば先程の私も、大して変わらないかもしれません。
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