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第十章
1.思うようにいかない【2】
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「メルは外に行きたいのか」
「あ、はい」
ヴォルに問われ、即座に首肯します。
怖い思いをしたからといって、ずっと部屋に引きこもっているのは嫌なのでした。
でも実際、この考え方はヴォルやベンダーツさんが一緒にいるから思うのでしょう。私一人では恐怖に呑み込まれてしまって、すぐにその場で動けなくなっていそうでした。
「それなら行こう」
「はい」
立ち上がったヴォルに、私も続きます。──と言うか、今から行くようでした。
窓から見える天気からして、今日も心地好い一日になりそうです。さぞ甲板からの景色も良い事と想像されました。
「おいおい、気が早いなぁ。メルが倒れたのは昨夜なんだぞ?もう少しゆっくり休んではどうだ。精神力をかなり削り取られた筈だろう?そこのところはどうなんだよ、ヴォル」
「……メルの精神力はほぼ回復している」
瞳を細めるベンダーツさんです。
何故だか怒ったようなベンダーツさんの質問に、ヴォルが私を見て答えてくれました。
魔力を持つヴォルは、人の精神力も視覚する事が出来るようです。
「そうかよ……ったく、勝手にしろっての」
視線を逸らし、ブツブツと呟くベンダーツさんでした。
その姿を見て、物凄く心配させてしまったのだと今更ながらに気付きます。先程怒ったように見えたのは、単に私の事を思って言って下さったようでした。
「色々とありがとうございます、ベンダーツさん。でも私、この旅が嫌いになりたくはないです。部屋に引き込もってしまっては、船の思い出が辛いだけになってしまいます」
私はにっこりと笑みを浮かべて告げます。
心配性なベンダーツさんを蔑ろにする気持ちなど欠片もなく、それでも自分の気持ちを押し込めるのはダメだと気付いたので言葉にしました。
旅は嫌な──怖い思い出ばかりではありません。魔物を見るのは怖いですが、基本的にヴォルの結界の中にいる私に被害はありませんでした。
船酔いを克服したのです。人に対してでも同じでした。今怖がって外に出なかったなら、船旅の記憶が不快なもので終わってしまいます。
「思うようにいかない、と言っただろ」
ヴォルが溜め息混じりにベンダーツさんへ告げました。
「本当だなぁ。こっちがいくら守ろうとしても、自分から腕の中から出ていっちゃうんだもんな」
「お前の腕の中にはいない」
「あ~、はいはい。言葉の綾だって。本当、メルの事になると細かいんだから。……んだよ、そう怒んなって。話が複雑になるじゃん。分かったよ、気を付けて行ってきな」
ベンダーツさんの困ったような顔が見えます。
言葉通りなのか──背中からヴォルに抱き締められたので、怒っていると言われた彼の表情を確認する事は出来ませんでした。
「行こう、メル。今ならまだ寒くはない」
そしてそのままヴォルに促されます。
この状態では歩きにくいのですが、確かに昨夜は少し寒くてあまり長く外にいられませんでした。
「はい。ありがとうございます、ヴォル」
私は腕を撫でてヴォルに訴え、拘束を緩めてもらいます。そのまま何とか振り返って彼を見上げ、にっこりと微笑み掛けます。
皆がこうして色々気遣ってくれている事に申し訳なく思い、同時にとても嬉しく感じました。
これは良い事かどうか分かりませんが、私はヴォルもベンダーツさんもとても大切な仲間であると強く認識しています。
ベンダーツさんが言っていたように、私は二人のうちどちらかが欠けても平静でいられないと思いました。
「あ、はい」
ヴォルに問われ、即座に首肯します。
怖い思いをしたからといって、ずっと部屋に引きこもっているのは嫌なのでした。
でも実際、この考え方はヴォルやベンダーツさんが一緒にいるから思うのでしょう。私一人では恐怖に呑み込まれてしまって、すぐにその場で動けなくなっていそうでした。
「それなら行こう」
「はい」
立ち上がったヴォルに、私も続きます。──と言うか、今から行くようでした。
窓から見える天気からして、今日も心地好い一日になりそうです。さぞ甲板からの景色も良い事と想像されました。
「おいおい、気が早いなぁ。メルが倒れたのは昨夜なんだぞ?もう少しゆっくり休んではどうだ。精神力をかなり削り取られた筈だろう?そこのところはどうなんだよ、ヴォル」
「……メルの精神力はほぼ回復している」
瞳を細めるベンダーツさんです。
何故だか怒ったようなベンダーツさんの質問に、ヴォルが私を見て答えてくれました。
魔力を持つヴォルは、人の精神力も視覚する事が出来るようです。
「そうかよ……ったく、勝手にしろっての」
視線を逸らし、ブツブツと呟くベンダーツさんでした。
その姿を見て、物凄く心配させてしまったのだと今更ながらに気付きます。先程怒ったように見えたのは、単に私の事を思って言って下さったようでした。
「色々とありがとうございます、ベンダーツさん。でも私、この旅が嫌いになりたくはないです。部屋に引き込もってしまっては、船の思い出が辛いだけになってしまいます」
私はにっこりと笑みを浮かべて告げます。
心配性なベンダーツさんを蔑ろにする気持ちなど欠片もなく、それでも自分の気持ちを押し込めるのはダメだと気付いたので言葉にしました。
旅は嫌な──怖い思い出ばかりではありません。魔物を見るのは怖いですが、基本的にヴォルの結界の中にいる私に被害はありませんでした。
船酔いを克服したのです。人に対してでも同じでした。今怖がって外に出なかったなら、船旅の記憶が不快なもので終わってしまいます。
「思うようにいかない、と言っただろ」
ヴォルが溜め息混じりにベンダーツさんへ告げました。
「本当だなぁ。こっちがいくら守ろうとしても、自分から腕の中から出ていっちゃうんだもんな」
「お前の腕の中にはいない」
「あ~、はいはい。言葉の綾だって。本当、メルの事になると細かいんだから。……んだよ、そう怒んなって。話が複雑になるじゃん。分かったよ、気を付けて行ってきな」
ベンダーツさんの困ったような顔が見えます。
言葉通りなのか──背中からヴォルに抱き締められたので、怒っていると言われた彼の表情を確認する事は出来ませんでした。
「行こう、メル。今ならまだ寒くはない」
そしてそのままヴォルに促されます。
この状態では歩きにくいのですが、確かに昨夜は少し寒くてあまり長く外にいられませんでした。
「はい。ありがとうございます、ヴォル」
私は腕を撫でてヴォルに訴え、拘束を緩めてもらいます。そのまま何とか振り返って彼を見上げ、にっこりと微笑み掛けます。
皆がこうして色々気遣ってくれている事に申し訳なく思い、同時にとても嬉しく感じました。
これは良い事かどうか分かりませんが、私はヴォルもベンダーツさんもとても大切な仲間であると強く認識しています。
ベンダーツさんが言っていたように、私は二人のうちどちらかが欠けても平静でいられないと思いました。
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