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第十章
7.不得手を狙うしかない【4】
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そして魔物の肉を突き破る感触が手に伝わった。痛みの為か怒りによるものか──俺の身体に、魔物が咆哮を上げていると思われる震動が伝わってくる。
俺は体勢を変えて魔物に足をつけた。そしてその肩口に突き刺さった槍を引き抜き、すぐに蹴り飛ばすように距離をとる。
すると即座に俺がいた場所へ、空気を切って振られる反撃の為の尾。俺も負けじと、その尾目掛けて再び槍を振るった。
竜の咆哮が響き渡る中、長い尾の一部が宙を舞って落ちていく。本体から離れたソレはビクビクと蠢きながらも、意思のない放物線を描いていった。
──っ?!
突如として全身に浴びた黒い気配に目を見開く。その先に見えた竜は、瞳に理性を宿していなかった。──ただあるのは破壊衝動のみ。
怒りが振り切れたようで、空中に停滞したまま大口を開けて一旦停止。そして吐き出された赤い光線は、今までのとは格が違った。
大地が大きく削り取られる。
海が割れる。
空間さえも裂けそうなその光線は、竜が滞空しながら回転する動作に合わせて分裂した。
それはまるで神々の怒りの鉄槌の如く──。
『メルっ?!』
ベンダーツの叫びが脳内に響く。
それにつられるように視線を動かした俺は、有り得ない衝撃を受けた。
上空にいる俺からは、この島の全貌が容易に見て取れる。そして竜が無作為に分断した世界の中に、メルの為に防御結界を張った大地があったのだ。
『な……に……?』
俺の思考が停止する。
見開かれた瞳に、塵となっていく大地が見るともなしに映っていた。
竜は一通り島を破壊すると、その理性なき瞳に次に動く物体を捉える。それは身近に存在する、唯一の生命体である俺だった。
そしてそのまま、ただ闇雲に突進して来る。直撃した俺の結界障壁が悲鳴をあげた。だが、単なる力業では俺の結界は破壊出来ない。
しかしながらそれでも何度も何度も体当りをする事で、漸く一枚の障壁が耐えきれずに砕け散った。
『お、おいっ!ヴォル、何してんだよっ!動けよ、避けろよっ。戦えよっ!』
半ば悲鳴のように聞こえるベンダーツの声。
だが残念ながら俺には届かない。否──耳を貸す余裕はなかった。
「Seirei yo.ore to no keiyaku wa ikite iru ka?」
心ここにあらずの状態の俺から、知らずに言葉が漏れ出る。
現状の自分では音が聞こえない為、どのような声音で口を開いているのかは分からなかった。けれどもこれは俺の本心からの願いでもある。
「Kanojyo wo sukutte kure nai ka?」
それは俺自身を取り囲む精霊達へ、最初で最後の願いだった。
これまでただの一度も、俺は精霊達へ乞う事はなかったのである。それほど執着するものもなかったからだ。
だが精霊への願いにはなくてはならない、対価となる俺が現在保有している魔力の残量は微々たるもの──。
そして現在進行形で、結界壁を通じて魔物の攻撃を受け続ける震動が身体中に伝わってくる。それでも俺は、自らの意思を竜へ向ける事は出来なかった。
『ヴォルっ!』
ベンダーツの叫びと共に、離れた場所から白い氷の矢が幾つも竜目掛けて飛んでいく。
正直、視界に映る周囲の全てが煩かった。
今の俺が重要視するのは精霊との対話。結界にぶつかってくる魔物など、全く気に止めていられない。
──俺の邪魔を……するな。
俺は体勢を変えて魔物に足をつけた。そしてその肩口に突き刺さった槍を引き抜き、すぐに蹴り飛ばすように距離をとる。
すると即座に俺がいた場所へ、空気を切って振られる反撃の為の尾。俺も負けじと、その尾目掛けて再び槍を振るった。
竜の咆哮が響き渡る中、長い尾の一部が宙を舞って落ちていく。本体から離れたソレはビクビクと蠢きながらも、意思のない放物線を描いていった。
──っ?!
突如として全身に浴びた黒い気配に目を見開く。その先に見えた竜は、瞳に理性を宿していなかった。──ただあるのは破壊衝動のみ。
怒りが振り切れたようで、空中に停滞したまま大口を開けて一旦停止。そして吐き出された赤い光線は、今までのとは格が違った。
大地が大きく削り取られる。
海が割れる。
空間さえも裂けそうなその光線は、竜が滞空しながら回転する動作に合わせて分裂した。
それはまるで神々の怒りの鉄槌の如く──。
『メルっ?!』
ベンダーツの叫びが脳内に響く。
それにつられるように視線を動かした俺は、有り得ない衝撃を受けた。
上空にいる俺からは、この島の全貌が容易に見て取れる。そして竜が無作為に分断した世界の中に、メルの為に防御結界を張った大地があったのだ。
『な……に……?』
俺の思考が停止する。
見開かれた瞳に、塵となっていく大地が見るともなしに映っていた。
竜は一通り島を破壊すると、その理性なき瞳に次に動く物体を捉える。それは身近に存在する、唯一の生命体である俺だった。
そしてそのまま、ただ闇雲に突進して来る。直撃した俺の結界障壁が悲鳴をあげた。だが、単なる力業では俺の結界は破壊出来ない。
しかしながらそれでも何度も何度も体当りをする事で、漸く一枚の障壁が耐えきれずに砕け散った。
『お、おいっ!ヴォル、何してんだよっ!動けよ、避けろよっ。戦えよっ!』
半ば悲鳴のように聞こえるベンダーツの声。
だが残念ながら俺には届かない。否──耳を貸す余裕はなかった。
「Seirei yo.ore to no keiyaku wa ikite iru ka?」
心ここにあらずの状態の俺から、知らずに言葉が漏れ出る。
現状の自分では音が聞こえない為、どのような声音で口を開いているのかは分からなかった。けれどもこれは俺の本心からの願いでもある。
「Kanojyo wo sukutte kure nai ka?」
それは俺自身を取り囲む精霊達へ、最初で最後の願いだった。
これまでただの一度も、俺は精霊達へ乞う事はなかったのである。それほど執着するものもなかったからだ。
だが精霊への願いにはなくてはならない、対価となる俺が現在保有している魔力の残量は微々たるもの──。
そして現在進行形で、結界壁を通じて魔物の攻撃を受け続ける震動が身体中に伝わってくる。それでも俺は、自らの意思を竜へ向ける事は出来なかった。
『ヴォルっ!』
ベンダーツの叫びと共に、離れた場所から白い氷の矢が幾つも竜目掛けて飛んでいく。
正直、視界に映る周囲の全てが煩かった。
今の俺が重要視するのは精霊との対話。結界にぶつかってくる魔物など、全く気に止めていられない。
──俺の邪魔を……するな。
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