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第三章
2.恐れるな【5】
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「皇帝閣下っ。ヴォルティ様は精霊に好かれた者とは言え、ツヴァイス家を背負って立つお方なのです。それをこの様な農民の、しかも大して綺麗でもない娘を……っ?!」
片眼鏡の言葉が途切れたかと思うと同時に、ガツッて音がしました。気付くと目の前に立っていた筈のヴォルが、いつの間にか片眼鏡の傍に……。
と言うか、何故か片眼鏡が倒れていますね。頬を押さえていて……、えぇっ?!もしかして殴られたのですか?ヴォルにっ?
「ヴォルティ。少しばかり過ぎるぞ」
「……申し訳ございません」
皇帝様に咎められて謝罪を口にしたものの、ヴォルはかなり不満げです。私からは横顔しか見えませんが、青緑の瞳の奥に明らかな怒りが伺えますよ。
「ベンダーツ。言いたい事はそれだけだな」
「……はい」
皇帝様に問われ、拳を握るヴォルを前に片眼鏡は静かに答えます。そして何事もなかったかの様に立ち上がると、深々と一礼をして背を向けました。どうやらこの場は立ち去る事にしたようです。
「謁見はここまでとする。ヴォルティ。後で私の部屋に来るように」
「はい」
何ですか?お説教ですか?……無表情標準装備のヴォルも人の子だったのですねぇ。
けれども、片眼鏡が気になる事を言っていました。『精霊に好かれた者』、とか。まぁ……精霊言語って言うのを人から教わっていない的な事は、ヴォルから以前聞きましたよねぇ。
首を傾げている私の前に、皇帝様に背を向けたヴォルが改めて立ち塞がります。ん?何でしょう。
そしてキョトンとする私の腕をヴォルがとり、そのまま先程入って来た大きな扉の方へ促しました。終了ですか?
「あ、あの……?」
「部屋に案内する」
この場を辞するようです。私は慌ててペコリと皇帝様に頭を下げます。こんな挨拶で良いのかは分かりませんでしたが、引かれる腕に抵抗する事も出来ないのですからすみません。いえ、抵抗する気もないの間違いですね。
バタバタと皇帝様の前を去り、再び磨かれた床を歩きます。先程は気が付きませんでしたが、壁際に適度な間隔で置物がありました。石像だったり、壺だったり様々です。でも全てに共通する、高そうだなと言う印象。当たり前ですが、触ったりなんてしませんけどね。
「ヴォルは皇帝様がお父様なのですか?」
「……そうだ」
「あまり似ていませんでしたが……」
「…………そうか」
廊下を歩きながらではありますが、ヴォルに問い掛けます。
あれ?一瞬言ってはいけない事かと思いましたが、見上げたヴォルの瞳は何故か少しだけ嬉しそうでした。
そして、ここに来た時に一度通された部屋に到着しました。あ、着替えから何からを手伝って下さった方がいらっしゃいます。お母さんみたいな侍女長さんです。
「ガルシア。メルを頼む」
「かしこまりました」
ガルシアと呼ばれた侍女長さんが、ヴォルに深く頭を下げています。あ、私はここで待つのでしょうか。状況が呑み込めていない私に、ヴォルは振り向き様にポンと頭を撫でていきました。
……こういうのは嬉しいですけど、説明は必要だと思います。
片眼鏡の言葉が途切れたかと思うと同時に、ガツッて音がしました。気付くと目の前に立っていた筈のヴォルが、いつの間にか片眼鏡の傍に……。
と言うか、何故か片眼鏡が倒れていますね。頬を押さえていて……、えぇっ?!もしかして殴られたのですか?ヴォルにっ?
「ヴォルティ。少しばかり過ぎるぞ」
「……申し訳ございません」
皇帝様に咎められて謝罪を口にしたものの、ヴォルはかなり不満げです。私からは横顔しか見えませんが、青緑の瞳の奥に明らかな怒りが伺えますよ。
「ベンダーツ。言いたい事はそれだけだな」
「……はい」
皇帝様に問われ、拳を握るヴォルを前に片眼鏡は静かに答えます。そして何事もなかったかの様に立ち上がると、深々と一礼をして背を向けました。どうやらこの場は立ち去る事にしたようです。
「謁見はここまでとする。ヴォルティ。後で私の部屋に来るように」
「はい」
何ですか?お説教ですか?……無表情標準装備のヴォルも人の子だったのですねぇ。
けれども、片眼鏡が気になる事を言っていました。『精霊に好かれた者』、とか。まぁ……精霊言語って言うのを人から教わっていない的な事は、ヴォルから以前聞きましたよねぇ。
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そしてキョトンとする私の腕をヴォルがとり、そのまま先程入って来た大きな扉の方へ促しました。終了ですか?
「あ、あの……?」
「部屋に案内する」
この場を辞するようです。私は慌ててペコリと皇帝様に頭を下げます。こんな挨拶で良いのかは分かりませんでしたが、引かれる腕に抵抗する事も出来ないのですからすみません。いえ、抵抗する気もないの間違いですね。
バタバタと皇帝様の前を去り、再び磨かれた床を歩きます。先程は気が付きませんでしたが、壁際に適度な間隔で置物がありました。石像だったり、壺だったり様々です。でも全てに共通する、高そうだなと言う印象。当たり前ですが、触ったりなんてしませんけどね。
「ヴォルは皇帝様がお父様なのですか?」
「……そうだ」
「あまり似ていませんでしたが……」
「…………そうか」
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あれ?一瞬言ってはいけない事かと思いましたが、見上げたヴォルの瞳は何故か少しだけ嬉しそうでした。
そして、ここに来た時に一度通された部屋に到着しました。あ、着替えから何からを手伝って下さった方がいらっしゃいます。お母さんみたいな侍女長さんです。
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