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第三章
≪Ⅳ≫俺の精霊を一人つけた【1】
しおりを挟む「あ、あのっ?」
一人でワタワタしてしまいます。それに気付いたのか、ヴォルは漸く私を抱き締める力を緩めてくれました。
「護符代わりだ」
「え?」
「……やはり簡単にはいかないな」
何故だか少し難しい表情をしているヴォルです。
何がですかね、意味が分かりません。ヴォルだけ分かっている事があり過ぎますね、色々と。今回のそれは私に本当に関係ない事ですか?
でも気になる事はとりあえず聞いておきましょう。聞かないと教えてもらえませんし。……いえ、教えてくれない事も多々ありますけどね。
「護符って何ですか?」
「俺の精霊を一人つけた」
事も無げに私の問いに答えてくれます。
……ん?何だかサラリと凄い事を言われましたね。精霊って、そんな風に簡単に取ったりつけたり出来る存在なのですか?
「精霊さん、嫌って言ってないですか?」
そんな私の問いに、ヴォルは少しだけ瞳を開きました。あれ?私、おかしな事を聞きました?
「問題ない。……そんなメルだからな」
フッと柔らかく瞳が細められました。
な、何ですか?それって、私に呆れてしまった訳ではないですよね?まぁ……自慢ではないですが、頭は良くないです。知られてますって?
首を傾げる私に、ヴォルは優しく頭を撫でてくれました。子供扱い……なんでしょうか。
「ところでこの後、私はどうすれば良いのですか?」
「変わらない。メルはメルのしたいようにすれば良い」
ガルシアさんに聞きましたが、ヴォルにも問い掛けてみました。
ですがしたいようにって言われましても、それすら分からないのですけれど。
「ヴォルはどうするのですか?」
「俺は研究に戻る」
「研究?」
「…………そうだ。俺は精霊と魔力の研究をしている」
初めて聞きました。いえ、初めて答えてくれたというべきでしょうか。
ヴォルがセントラルでしていた仕事は、研究なのですね。って言うか、『精霊』と『魔力』の?
「難しそうですね」
「好きでしている。俺は皇帝にはなりたくないからな」
私には分からない分野なので、思わず渋い顔をしてしまいました。でもそれに対してヴォルは淡々と答えます。
ん?次期皇帝って、選べるのですか?
「メルはどう思う」
「えっと……、何がですか?」
「俺が……皇帝の息子だと聞いても変わらないだろ」
「まぁ……、ヴォルはヴォルですし」
誰が父親であっても変わらないです。例え悪い人が両親であったとしても、ヴォルはヴォルです。親や環境は人格を形成する時に関係はしますが、全てを統べる訳ではありません。
それにしても。向き合っているので、ヴォルの細かな表情の変化が分かります。今は少し困ったようなお顔ですね。
「……メルだから、か」
はい?何か貶された気がしますが、そう思って見上げたヴォルは意外なくらい穏やかな瞳でした。
誉められた──のですかね?まぁ、先程私も似たような事を言いましたし。お互い様でしょう。
「それより、私も研究を手伝いたいです」
「研究を?」
「はい。あ、実際にはお役に立てるか分からないですけど」
話を戻すように、先程の問い掛けを再度繰り返しました。
そうです。当たり前ですが、お仕事の邪魔をしてはいけません。そんな私の言葉に、ヴォルは暫く考える素振りをします。
「分かった」
ですが、考えていたのは本当に僅かな時間でした。首肯され、逆に驚いてしまいます。
えっと……、本当に良いのですか?断られるかもしれないと思っていましたので、了承して頂けたのが凄く驚きでした。
「ありがとうございますっ」
「近くにいた方が良いだろう」
何故か一瞬、ヴォルの表情に笑みが浮かびます
えっ?今、何か言いましたか?小首を傾げた私に、ヴォルはポンポンと軽く頭を撫でるだけでした。
彼の思惑は分かりませんが、とにかくこれで私のやる事が出来ましたね。
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