1,515 / 1,560
1514 力の秘密
しおりを挟む
「さて、あとはお前一人だな」
背中と首から血を流し、砂の上で倒れている男を一瞥すると、私は深紅のローブを纏った紫色の髪の女、エディスに向き直った。
「・・・・・」
仲間があっさりと倒された事がよほど衝撃だったのか、エディスは口を開かず、ただ立ったまま無表情で、倒れているミルコをじっと見つめていた。
ナイフに付いた血を砂の上に払い落し、エディスに対して構える。
私とエディスの間には7~8メートル程の距離はあった。この程度の距離なら、私は一歩で詰める事ができる。体力型の私と、魔法使いのエディスの身体能力の差は説明するまでもない。まず私の動きに反応すらできないだろう。だからさっさとこの女の首を斬り飛ばせばいいのだが、実際にはそう簡単な話しでもない。
この女、黒魔法使いか?
私が向き合ったまま仕掛けない理由の一つが、この女の魔法系統が分からないからだ。
この女が一人で私の前に来たのなら、黒魔法使いと考えていいだろう。
しかし体力型の男と二人だった事を考えれば、青か白の可能性も十分にある
どの系統かで戦い方は大きく変わるし、もっとも戦闘に向かない白魔法使いだって、魔道具次第では恐ろしい力を発揮する。だからうかつには仕掛ける事ができない。思いもよらぬ反撃を受ける事があるからだ。
そしてこの女の魔力だ。
体力型の私が肌で感じる程の強い魔力。この女が白、黒、青のどの系統の魔法使いであったとしても、相当な使い手である事は間違いないだろう。
しかしいつまでも睨み合っているわけにはいかない。
攻撃と防御のいくつかのパターンを想定し、ジリっと足を前に出して仕掛けようとしたその時、紫色の髪の魔法使いは、口元に左手を当て、私を見つめながらクスクスと笑い出した。
「・・・何がおかしい?」
少しだけ背筋がザワついた。
この女がずっと黙っているのは、目の前で仲間があっさりと殺されたから、ショックを受けているのかと思っていた。
だが違っていたようだ。嘲笑を浮かべるその顔からは、仲間を思いやる気持ちなど微塵も感じられない。
この女はこの状況を楽しんでいるんだ。
「・・・もういい、死ね」
これ以上この女と関わっても不快なだけだ。この女の系統は分からないし魔道具も不明だが、一瞬で首を刎ねて終わらせてやる。
ぐっと足に力を込め、地面を蹴ろうとしたその時、紫色の髪の魔法使いエディスの目がスッ細められ、右手の親指を自分の首に当てた。
「クスクス、何がおかしいって?そんなの決まってるじゃない?・・・あんたの間抜け面よ!」
カッと目を開くと、エディスは首に当てた右手の親指を真横に引いて、首を掻っ切るマネをして叫んだ!
「ッ!?」
直後、背後に感じた殺気に私は反射的に振り返り、両手のダガーナイフを交差させながらその一撃を受けた!
ぶつかり合う金属音が鳴り響く。
私は自分の目の前で光る長剣、そしてその長剣を振り下ろした男を見て目を見張った。
「っ!・・・お前!?」
「チッ、勘のいい女だぜ!」
軽薄な笑みを浮かべるこの男は、たった今私が首を切り裂いて殺したはずのミルコ・カバエルだった。
ギリギリと力を込めて、長剣を押し込もうとしてくる。両手のナイフで受け止めているが、少しでも気を抜けば潰されてしまいそうだ。数秒前まで血を吐き倒れていた男とはとても思えない。
「どういう事だ?手応えはあった、私は確かにお前の首を切った。なぜ生きている?」
「くっくっく、いやぁ~危なかったぜ、本当に死ぬ寸前だった。けど残念!俺はこのとーり生きている!なんでだろうねぇぇぇぇぇ!」
ミルコの赤い目が燃えるように強い光を放つ!
「なッ!?」
突然ミルコの力が強まり、拮抗していた力のせめぎ合いが一気に押し込まれる!
馬鹿な!こいつ、今まで手加減していたというのか!?いや、そんなはずはない、この目だ、この赤い目が光って急に強くなった!この目に秘密があるんだ!
長剣を止める両腕が痺れてきた、くっ!なんだこの重さは!?押し潰されそうだ!
「さっきは舐めた事言ってくれたよなぁ?これでも大した事ねぇか?ぶった斬ってやるぜぇぇぇ!」
ミルコ・カバエルの赤い目がより激しく強い光を放つと、長剣がレイチェルのダガーナイフを弾き飛ばした!
背中と首から血を流し、砂の上で倒れている男を一瞥すると、私は深紅のローブを纏った紫色の髪の女、エディスに向き直った。
「・・・・・」
仲間があっさりと倒された事がよほど衝撃だったのか、エディスは口を開かず、ただ立ったまま無表情で、倒れているミルコをじっと見つめていた。
ナイフに付いた血を砂の上に払い落し、エディスに対して構える。
私とエディスの間には7~8メートル程の距離はあった。この程度の距離なら、私は一歩で詰める事ができる。体力型の私と、魔法使いのエディスの身体能力の差は説明するまでもない。まず私の動きに反応すらできないだろう。だからさっさとこの女の首を斬り飛ばせばいいのだが、実際にはそう簡単な話しでもない。
この女、黒魔法使いか?
私が向き合ったまま仕掛けない理由の一つが、この女の魔法系統が分からないからだ。
この女が一人で私の前に来たのなら、黒魔法使いと考えていいだろう。
しかし体力型の男と二人だった事を考えれば、青か白の可能性も十分にある
どの系統かで戦い方は大きく変わるし、もっとも戦闘に向かない白魔法使いだって、魔道具次第では恐ろしい力を発揮する。だからうかつには仕掛ける事ができない。思いもよらぬ反撃を受ける事があるからだ。
そしてこの女の魔力だ。
体力型の私が肌で感じる程の強い魔力。この女が白、黒、青のどの系統の魔法使いであったとしても、相当な使い手である事は間違いないだろう。
しかしいつまでも睨み合っているわけにはいかない。
攻撃と防御のいくつかのパターンを想定し、ジリっと足を前に出して仕掛けようとしたその時、紫色の髪の魔法使いは、口元に左手を当て、私を見つめながらクスクスと笑い出した。
「・・・何がおかしい?」
少しだけ背筋がザワついた。
この女がずっと黙っているのは、目の前で仲間があっさりと殺されたから、ショックを受けているのかと思っていた。
だが違っていたようだ。嘲笑を浮かべるその顔からは、仲間を思いやる気持ちなど微塵も感じられない。
この女はこの状況を楽しんでいるんだ。
「・・・もういい、死ね」
これ以上この女と関わっても不快なだけだ。この女の系統は分からないし魔道具も不明だが、一瞬で首を刎ねて終わらせてやる。
ぐっと足に力を込め、地面を蹴ろうとしたその時、紫色の髪の魔法使いエディスの目がスッ細められ、右手の親指を自分の首に当てた。
「クスクス、何がおかしいって?そんなの決まってるじゃない?・・・あんたの間抜け面よ!」
カッと目を開くと、エディスは首に当てた右手の親指を真横に引いて、首を掻っ切るマネをして叫んだ!
「ッ!?」
直後、背後に感じた殺気に私は反射的に振り返り、両手のダガーナイフを交差させながらその一撃を受けた!
ぶつかり合う金属音が鳴り響く。
私は自分の目の前で光る長剣、そしてその長剣を振り下ろした男を見て目を見張った。
「っ!・・・お前!?」
「チッ、勘のいい女だぜ!」
軽薄な笑みを浮かべるこの男は、たった今私が首を切り裂いて殺したはずのミルコ・カバエルだった。
ギリギリと力を込めて、長剣を押し込もうとしてくる。両手のナイフで受け止めているが、少しでも気を抜けば潰されてしまいそうだ。数秒前まで血を吐き倒れていた男とはとても思えない。
「どういう事だ?手応えはあった、私は確かにお前の首を切った。なぜ生きている?」
「くっくっく、いやぁ~危なかったぜ、本当に死ぬ寸前だった。けど残念!俺はこのとーり生きている!なんでだろうねぇぇぇぇぇ!」
ミルコの赤い目が燃えるように強い光を放つ!
「なッ!?」
突然ミルコの力が強まり、拮抗していた力のせめぎ合いが一気に押し込まれる!
馬鹿な!こいつ、今まで手加減していたというのか!?いや、そんなはずはない、この目だ、この赤い目が光って急に強くなった!この目に秘密があるんだ!
長剣を止める両腕が痺れてきた、くっ!なんだこの重さは!?押し潰されそうだ!
「さっきは舐めた事言ってくれたよなぁ?これでも大した事ねぇか?ぶった斬ってやるぜぇぇぇ!」
ミルコ・カバエルの赤い目がより激しく強い光を放つと、長剣がレイチェルのダガーナイフを弾き飛ばした!
0
あなたにおすすめの小説
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜
伽羅
ファンタジー
事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。
しかも王子だって!?
けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。
助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。
以前、投稿していた作品を加筆修正しています。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる