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1553 過去と向き合う時
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「アラやん、硬い顔してどうしたんだ?」
帝国との戦いが始まった。俺達レイジェスは後方で戦況を見ているのだが、ジャレットさんが俺の肩に手を置き、様子を伺うように声をかけて来た。
「あ、ジャレットさん・・・いえ、その・・・うまく言えないんですが・・・」
顔に出ていたらしい。
ここに着いて知ったのだが、今俺達が戦っているのは帝国軍第七師団、つまり村戸さんが率いる軍勢だ。
まだ姿は見えないが、あの中に村戸さんがいるのかと思うと、表現できない感情が胸に湧き上がってくる。
「・・・アラやん、お前の同郷の先輩ってのが、今帝国の第七師団の団長なんだったよな?ムラト・シュウイチだっけ?」
「え、あ・・・はい、そうです。今はデューク・サリバンと名乗っているようですが・・・」
「ああ、そうそう、今はデューク・サリバンだったな・・・ずいぶん仲が良かったんだろ?ニホンにいた頃の話しする時、ムラト・シュウイチと、シンジョウ・ヤヨイって人は恩人だって言ってたもんな?」
「・・・はい、村戸さんと弥生さん、二人がいなければ俺は家で引きこもっていたかもしれません。俺の・・・人生の恩人です」
日本での暮らしを思い出さない日は無かった。
家族の事もだけど、村戸さんと弥生さんは俺のせいでアイツに襲われたんだ。
俺がもっと愛想の良い店員だったら、あの男は行動を起こさなかったのかもしれない。
村戸さんや弥生さんだったら、不満は持たれても帰りに襲われる程の怒りは買わなかったはずだ。
俺があの時レジにいなければ・・・いや、俺がウイニングで働いていなければ・・・・・
「・・・アラやん、あんまり自分を責めてんじゃねぇぞ」
「え?」
「お前ってけっこう顔に出るよな?・・・なぁアラやんよ、ムラト・シュウイチが今帝国にいるのは、自分のせいだって思ってねぇか?」
そう指摘されて、俺は思わず自分の表情を確かめるように顔を触った。
「えっと・・・俺そんなに顔に出てました?」
「付き合いも長くなってきたからな、一発で分かるぜ。なぁアラやんよ・・・ムラト・シュウイチは襲われているお前を助けて死んだ。そんでこっちに来て今帝国にいる。こういう事だよな?」
「・・・はい、村戸さんが亡くなったところは見てませんが、俺と同じ条件でこっちに来たと思いますし、おそらくそうです」
「そうか、自分のせいでって気持ちは理解できるし、助けに入ってくれたんだから感謝もするよな。でもよ・・・・・帝国に入って戦争仕掛けてくんのは別の話しだ」
突然声のトーンが一段低くなり、発した言葉には明確な怒りが込められていた。
「ジャ、ジャレット、さん・・・」
「アラやん、ここまで来て迷ってんじゃねぇぞ?お前が今一番大事にしなきゃならねぇのは誰か、よく考えろ。そんなシケタ面して敵に勝てんのか?一発で殺されるぞ?気を引き締め直せ」
ジャレットさんはぐっと顔を近づけ俺を睨みつける。
そうだ、ジャレットさんはこういう人だ。見た目は完全にギャル男だし、いきなり人に変なアダ名をつけてきたりして、最初は面倒で変な人だと思っていた。
でも仕事は真面目で丁寧だった。
仲間想いだし、レイチェルが抜けた時には中心になって店を回して、本当に頼りになる人だ。
そして優しいからこそ厳しい人だ。
「・・・ジャレットさん、ありがとうございます」
そうだ・・・ここで思い悩んでいたらダメだ。
俺には守るべき人がいるんだ、だから俺は勝たなければならない。
そして俺は、俺の戦いに決着をつけるんだ。
「・・・おう、分かったみてぇだな?良い面構えだ」
「はい、心配かけました。でも、もう大丈夫です。あの、ジャレットさん・・・」
「おう、なんだ?」
戦場で俺が村戸さんと会える確率なんて、どのくらいのものだろう?
パウンド・フォーで会った事だって、奇跡としか思えなかった。
それなのに今またこうして、まるで運命のように引き寄せられているように、村戸さん率いる第七師団が現れた。
予感がする・・・俺はきっと村戸さんともう一度会うだろう
そしてその時が、俺と村戸さんの・・・・・・・
「俺、防具担当で良かったです。帰ったら、また仕事教えてくださいね」
「何を言うかと思えば・・・おう、もちろんだ。ビシビシいくからな?」
そう言ってジャレットさんは、俺の胸を軽く叩いて笑った。
絶対に生きて帰ろう、レイジェスへ・・・・・
その時、前方で戦っていた兵士が息を切らして走って来た。
「て、敵の黒魔法使いがぁ・・・っ!」
何かを伝えようと手を伸ばしたその時、突然その兵士の体から強烈な冷気が噴き出した。
アラタとジャレットは反射的に後ろに飛び退き、冷気を躱したが、体から冷気を噴出した兵士は一瞬にして物言わぬ氷の彫像と化していた。
「これは!?」
「チッ、もうここまで入りこんだのか!?アラやん敵だ!警戒しろ!」
ジャレットは腰に下げていた、刃の無い柄を握ると気を込めた。
柄はジャレットの気を吸収し、銀色の光を放つオーラが刃を形作る。魔道具オーラブレードである。
ジャレットが武器を構えた直後、周囲の兵士達を氷漬けにしながら、深紅のローブを纏った女が一人、ゆっくりと歩いて近づいて来た。
自分に向かってくるクインズベリー兵を、片手を振るだけで瞬く間に氷で固めていく。
女の通った後には、左右両側に人の形をした氷の彫像が並び立ち、まるで女の通り道を作っているのかと思わせるような光景だった。
「ふ~・・・クインズベリーって全然大した事ないわね?雑魚ばっかりじゃない?」
背は高く、透き通るような長い水色の髪の女だった。
二重のスッとした青い目には、戦闘中だとは思えない程緊張感が無く、面倒だと言わんばかりに大きな溜息までついた。
「深紅のローブ、幹部クラスか」
ジャレットがオーラブレードの切っ先を向けると、水色の髪の女はまた溜息をついて、ジャレットに目を向けた。
「ふ~・・・あんたは、ちょっとはできるみたいね?」
女はジャレットを品定めするように、頭から爪先にまで目を向けると、腕を組み口の端を少し持ち上げた。
「私は帝国軍第七師団三席、デイジー・シューリッヒ。あんたも氷漬けにしてあげるわ」
凍てつく冷気がジャレットを襲った。
帝国との戦いが始まった。俺達レイジェスは後方で戦況を見ているのだが、ジャレットさんが俺の肩に手を置き、様子を伺うように声をかけて来た。
「あ、ジャレットさん・・・いえ、その・・・うまく言えないんですが・・・」
顔に出ていたらしい。
ここに着いて知ったのだが、今俺達が戦っているのは帝国軍第七師団、つまり村戸さんが率いる軍勢だ。
まだ姿は見えないが、あの中に村戸さんがいるのかと思うと、表現できない感情が胸に湧き上がってくる。
「・・・アラやん、お前の同郷の先輩ってのが、今帝国の第七師団の団長なんだったよな?ムラト・シュウイチだっけ?」
「え、あ・・・はい、そうです。今はデューク・サリバンと名乗っているようですが・・・」
「ああ、そうそう、今はデューク・サリバンだったな・・・ずいぶん仲が良かったんだろ?ニホンにいた頃の話しする時、ムラト・シュウイチと、シンジョウ・ヤヨイって人は恩人だって言ってたもんな?」
「・・・はい、村戸さんと弥生さん、二人がいなければ俺は家で引きこもっていたかもしれません。俺の・・・人生の恩人です」
日本での暮らしを思い出さない日は無かった。
家族の事もだけど、村戸さんと弥生さんは俺のせいでアイツに襲われたんだ。
俺がもっと愛想の良い店員だったら、あの男は行動を起こさなかったのかもしれない。
村戸さんや弥生さんだったら、不満は持たれても帰りに襲われる程の怒りは買わなかったはずだ。
俺があの時レジにいなければ・・・いや、俺がウイニングで働いていなければ・・・・・
「・・・アラやん、あんまり自分を責めてんじゃねぇぞ」
「え?」
「お前ってけっこう顔に出るよな?・・・なぁアラやんよ、ムラト・シュウイチが今帝国にいるのは、自分のせいだって思ってねぇか?」
そう指摘されて、俺は思わず自分の表情を確かめるように顔を触った。
「えっと・・・俺そんなに顔に出てました?」
「付き合いも長くなってきたからな、一発で分かるぜ。なぁアラやんよ・・・ムラト・シュウイチは襲われているお前を助けて死んだ。そんでこっちに来て今帝国にいる。こういう事だよな?」
「・・・はい、村戸さんが亡くなったところは見てませんが、俺と同じ条件でこっちに来たと思いますし、おそらくそうです」
「そうか、自分のせいでって気持ちは理解できるし、助けに入ってくれたんだから感謝もするよな。でもよ・・・・・帝国に入って戦争仕掛けてくんのは別の話しだ」
突然声のトーンが一段低くなり、発した言葉には明確な怒りが込められていた。
「ジャ、ジャレット、さん・・・」
「アラやん、ここまで来て迷ってんじゃねぇぞ?お前が今一番大事にしなきゃならねぇのは誰か、よく考えろ。そんなシケタ面して敵に勝てんのか?一発で殺されるぞ?気を引き締め直せ」
ジャレットさんはぐっと顔を近づけ俺を睨みつける。
そうだ、ジャレットさんはこういう人だ。見た目は完全にギャル男だし、いきなり人に変なアダ名をつけてきたりして、最初は面倒で変な人だと思っていた。
でも仕事は真面目で丁寧だった。
仲間想いだし、レイチェルが抜けた時には中心になって店を回して、本当に頼りになる人だ。
そして優しいからこそ厳しい人だ。
「・・・ジャレットさん、ありがとうございます」
そうだ・・・ここで思い悩んでいたらダメだ。
俺には守るべき人がいるんだ、だから俺は勝たなければならない。
そして俺は、俺の戦いに決着をつけるんだ。
「・・・おう、分かったみてぇだな?良い面構えだ」
「はい、心配かけました。でも、もう大丈夫です。あの、ジャレットさん・・・」
「おう、なんだ?」
戦場で俺が村戸さんと会える確率なんて、どのくらいのものだろう?
パウンド・フォーで会った事だって、奇跡としか思えなかった。
それなのに今またこうして、まるで運命のように引き寄せられているように、村戸さん率いる第七師団が現れた。
予感がする・・・俺はきっと村戸さんともう一度会うだろう
そしてその時が、俺と村戸さんの・・・・・・・
「俺、防具担当で良かったです。帰ったら、また仕事教えてくださいね」
「何を言うかと思えば・・・おう、もちろんだ。ビシビシいくからな?」
そう言ってジャレットさんは、俺の胸を軽く叩いて笑った。
絶対に生きて帰ろう、レイジェスへ・・・・・
その時、前方で戦っていた兵士が息を切らして走って来た。
「て、敵の黒魔法使いがぁ・・・っ!」
何かを伝えようと手を伸ばしたその時、突然その兵士の体から強烈な冷気が噴き出した。
アラタとジャレットは反射的に後ろに飛び退き、冷気を躱したが、体から冷気を噴出した兵士は一瞬にして物言わぬ氷の彫像と化していた。
「これは!?」
「チッ、もうここまで入りこんだのか!?アラやん敵だ!警戒しろ!」
ジャレットは腰に下げていた、刃の無い柄を握ると気を込めた。
柄はジャレットの気を吸収し、銀色の光を放つオーラが刃を形作る。魔道具オーラブレードである。
ジャレットが武器を構えた直後、周囲の兵士達を氷漬けにしながら、深紅のローブを纏った女が一人、ゆっくりと歩いて近づいて来た。
自分に向かってくるクインズベリー兵を、片手を振るだけで瞬く間に氷で固めていく。
女の通った後には、左右両側に人の形をした氷の彫像が並び立ち、まるで女の通り道を作っているのかと思わせるような光景だった。
「ふ~・・・クインズベリーって全然大した事ないわね?雑魚ばっかりじゃない?」
背は高く、透き通るような長い水色の髪の女だった。
二重のスッとした青い目には、戦闘中だとは思えない程緊張感が無く、面倒だと言わんばかりに大きな溜息までついた。
「深紅のローブ、幹部クラスか」
ジャレットがオーラブレードの切っ先を向けると、水色の髪の女はまた溜息をついて、ジャレットに目を向けた。
「ふ~・・・あんたは、ちょっとはできるみたいね?」
女はジャレットを品定めするように、頭から爪先にまで目を向けると、腕を組み口の端を少し持ち上げた。
「私は帝国軍第七師団三席、デイジー・シューリッヒ。あんたも氷漬けにしてあげるわ」
凍てつく冷気がジャレットを襲った。
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