61 / 1,560
61 生きる道
しおりを挟む
フェンテスは窓枠から体を入れ、空き部屋に降り立つ。
辺りを見渡すがさっき窓を割った後も、誰もこの部屋に来た様子は無かった。
どのくらいの時間が立っただろう。アローヨとの戦闘で予想外の時間を使い、フェンテスに焦りが生まれていた。
とにかく急がなければ・・・すでにアラタが拷問を受けているかもしれない。
部屋の外が騒がしい?
激しく争っている音に気付き、急ぎ足でドアに手をかけ引き開けると、ヴァンとアンカハスがナイフをぶつけ合っていた。
その周りを、隊員達が取り囲んでいる。
「ヴァン!この裏切り者が!」
「目を覚ませアンカハス!本当にこのままでいいのか!」
アラタとの闘いでダメージを受け、体力を消耗していても、今のヴァンには比べるまでもなかった。
力負けしヴァンが膝を着くと、アンカハスは頭上からナイフを振り下ろした。
かろうじて受け止めたが、アンカハスは一層力を込め、防いでいるナイフごとヴァンを斬ろうとする。
「このまま死ね!」
ヴァンが崩れそうになった時、フェンテスがアンカハスのナイフを持つ手を狙い、斬りかかった。
「なに!?」
間一髪、アンカハスはナイフを上げ、フェンテスのナイフを受け止める。
予想外の乱入に、アンカハスはすぐに後ろに飛び退き、ナイフを構え直した。
殺気を込めた視線を、ヴァン、フェンテスと交互に向ける。
「フェンテスさん!?なぜアンカハス副長にナイフを?」
「まさかフェンテスさんも裏切ったのか!?」
「どうする?俺達も手を貸せば・・・」
「駄目だ、アンカハス副長の命令だ。手は出せない」
突然のフェンテスの乱入、そして味方であるはずのアンカハスにナイフを向けた事で、隊員達に動揺が出るが、アンカハスの命令で手を出せない状態だった。
「はぁ・・・はぁ・・・助かったぜ・・・ありがとよ、フェンテス・・・」
「いえ、大丈夫ですか?」
「なんとかな・・・部屋に入ったら・・・アンカハスがいてな、俺を見て・・・だいたいの事を・・・理解したんだろう。すぐに・・・かかってきやがったよ。だが、サシで決着を付けたかったんだろう・・・周りに手を出させないのは・・・助かったぜ・・・」
ヴァンはすでに疲労が隠しきれていない状態だった。息は乱れ、足に来ている。
だが、その鋭く相手を見据える眼光はかつての、憧れだった治安部隊副隊長・ヴァン・エストラーダのままだった。
「ヴァン副長、アラタはどうなってますか?」
「無事だ。・・・あの野郎、マルコスのナイフを真正面から防いでいやがった。素手でマルコスのナイフを受けきってんだぜ?俺の想像以上だ・・・」
「・・・そうでしたか。一先ず無事だったのは良かったです」
フェンテスは驚きを隠せなかった。アラタには何か特別な力があると思っていたが、マルコスのナイフを素手で防いでいると言う。
「マルコス隊長のパワーに、正面からぶつかれるなんて、アイツそこまで強かったんですね」
「あぁ、だが、まだなにかある。アラタには特別な力を感じるんだ」
フェンテスはヴァンの前に出てアンカハスを牽制する。フェンテスのナイフ術を知っているアンカハスは、うかつに攻める事ができず。ヴァンはその間に呼吸を整えていた。
「フェンテス!お前まで裏切るのか!?」
「・・・はい。どのような言葉で取り繕っても裏切りは裏切りです。アンカハスさん・・・俺は今、アローヨさんとも戦ってきました」
「なんだと!?なら、お前がここにいるって事は・・・まさかアローヨを殺ったのか!?」
アンカハスの言葉に、フェンテスは小さく首を振った。
「いいえ・・・俺は負けました。でも、アローヨさんは分かってくれたんです。だからここに来れた・・・アンカハスさん。あなたも分かっているはずです。俺達は間違ったんです。でも、間違いに気づき、やり直す道があるのならば、その道を歩かねばならないんです」
アンカハスはフェンテスの目を真っすぐ見る事ができず、視線を外した。
それはフェンテスの言葉を肯定すると同意義の行為だった。
「アンカハスさん・・・俺達も罪を償わなければならない。険しい道になるでしょう。でも何事もなかったように、のうのうと生きていくわけにはいきません。これからの生き方次第なんです・・・犯した罪を償う機会があるんです・・・俺はあなたにも後悔したまま生きてほしくない!」
アンカハスは目を伏せた。ナイフを下ろし、俯き、言葉を発する事もしない。
「フェンテス・・・お前、強くなったな・・・」
ヴァンがフェンテスの肩に手を置く。
フェンテスはヴァンに顔を向けると、いえ、とだけ短く答えた。
「アンカハス、お前もこっちへ来い・・・俺達と、また・・・」
問われた言葉に対する答えは首を振る事だけだった。
だが、ヴァンとフェンテスに向ける眼差しは。先ほどまでとは打って変わり、憎しみは消え、全てを受けとめた静かな目をしていた。
「俺は、もう戻る事はできない・・・」
何人拷問し、何人処刑台に送っただろう・・・自分の罪は決して許されるものではない。
「フェンテスの言う通り、俺達は間違えたんだ・・・」
だが、ヴァン、フェンテス・・・お前達はまだやり直せる。だから、ここで俺を・・・
アンカハスがナイフを構える。それを受け、ヴァンが一歩前に出て、ナイフを構えた。
「フェンテス・・・アンカハスとは俺が決着をつける」
ヴァンの表情には覚悟が宿っていた。
揺るがない決心の言葉に、フェンテスは黙って後ろに下がった。
水を打ったような静けさだった。ヴァンにはもう体力は残っていない。だが、アンカハスもこれ以上長引かせるつもりはないだろう。
互いに次が最後になる。誰しもそれを感じ取っていた。
先手はアンカハス。ヴァンの目に汗が入り僅かに目を閉じた隙に、間合いを詰めた。
的の大きい腹を目掛けて、右手のナイフを横に寝かせ、真っ直ぐにを突き刺す。
ヴァンは胴を捻って回避した。急所は外したが、右脇腹をかすったナイフは、そのまま横なぎに振るわれ、ヴァンの腹を抉り取る。
深い・・・腹部に走る激痛に、ヴァンは倒れそうになる。だが、足を踏みしめ自身の持つ右手のナイフに力を込める。左下から右斜め上にナイフを振るうが、アンカハスは軌道を読み切り、軽々とかわす。
今のヴァンのナイフでは、アンカハスに遠く及ばない。
それはヴァンも承知の上だった。
アラタには、アンカハスもヤファイも何とかなる。と話していたが、今の自分の状態では、誰一人止められない事はヴァン自身、よく分かっていた。
自分が勝つには、自分の命と引き換えにする覚悟が無ければならない。
ヴァンは全身でアンカハスにぶつかった。自分の命を守る気はない。体はがら空きで、右手のナイフにだけ力を込めアンカハスの腹部に狙いを付ける。
「ヴァン、貴様!」
刺し違える気だ!
アンカハスは避ける事は可能だった。一歩大きく後ろに飛んでいなせばいい。いかにヴァンの決死の特攻でも、今のアンカハスとの力の差はそれ程大きかった。
だが、アンカハスは前に踏み込んだ。ヴァンだけは、この男だけは正面から決着をつけなければならない!
同じ副隊長として生きたこの男だけは!
ヴァンは治安部隊のアーマーも身に着けてなく、古びた囚人服を着ているだけだ。刺されれば胸でも腹でもどこでも致命傷になる。
対して自分は治安部隊のボディアーマーを身に着けている。ヴァンのナイフを腰に構えた体制は、腹を狙っていると一目で分かった。
左腕のアームガードでヴァンのナイフを弾き、右手のナイフをヴァンの胸に突き立てる。
そうアンカハスは狙いを付けた。
「アンカハスーッ!」
「ヴァンッ!」
ヴァンとアンカハス、二人の叫びが交じり合い決着は訪れた。
アンカハスの読み通り、ヴァンのナイフはアンカハスの腹に真っ直ぐ向かって来た。
アンカハスは左腕のアームガードで、ナイフの腹に狙いを付け弾くと、右手のナイフを逆手に持ち直し、ヴァンの左胸、心臓を目掛けて振り下ろした。
勝った!
アンカハスは勝利を確信した。
だが、ヴァンの行動はアンカハスの予想を上回った。
ヴァンは避ける事も、防ぐ事もせず、更に踏み込み、自らアンカハスのナイフに飛び込んだ。
踏み込んだ分ナイフの狙いは外される。ナイフはヴァンの肩口に突き刺さった。
「なんだと!?」
「オォォォォォッ!」
ヴァンの右拳がアンカハスの顔を正面から打ち抜いた。
背中から倒れたアンカハスは即座に立ち上がろうとしたが、上半身を起こすと同時に、腹部に激痛が走る。
ヴァンは肩に刺さったアンカハスのナイフを抜くと、そのままアンカハスの脇腹に突き刺していた。
「はぁ・・・はぁ・・・アンカハス・・・もう、楽になれ・・・」
「ヴァン・・・」
ヴァンはナイフを抜くと前のめりに倒れた。
腹を切り裂かれ、肩を深く抉られ、激痛と出血で限界はとうに超えていた。
アンカハスは脇腹を刺された痛みで、動くことはできなかったが、意識はあった。
生かされた・・・・・・
ヴァンは自分を殺す事ができた。だが、わざと動けない程度に刺した。
アンカハスの目に涙が浮かぶ。
ヴァンが何を考え、この戦いの中で自分を生かす決断をしたのか・・・
【アンカハス、お前もこっちへ来い・・・俺達と、また・・・】
戦いが終わり、隊員達が自分とヴァンの周りに集まってくる。
「早く医務室から白魔法使いを連れて来い!」
「タオルだ!ありったけのタオルを持ってこい!止血だ!」
「副長!アンカハス副長!大丈夫ですか!」
混乱の中、フェンテスがアンカハスの正面に立った。
「アンカハス副長・・・生きて下さいね・・・」
フェンテスはそれだけ言葉にすると、アンカハスに背を向けた。
目を伏せる。
アンカハスの閉じた目から、涙が一筋流れ落ちた。
なぁ、ヴァン・・・俺でも、まだ罪を償って生きる道があるのかな・・・
分からねぇよ・・・教えてくれよ・・・・・・
辺りを見渡すがさっき窓を割った後も、誰もこの部屋に来た様子は無かった。
どのくらいの時間が立っただろう。アローヨとの戦闘で予想外の時間を使い、フェンテスに焦りが生まれていた。
とにかく急がなければ・・・すでにアラタが拷問を受けているかもしれない。
部屋の外が騒がしい?
激しく争っている音に気付き、急ぎ足でドアに手をかけ引き開けると、ヴァンとアンカハスがナイフをぶつけ合っていた。
その周りを、隊員達が取り囲んでいる。
「ヴァン!この裏切り者が!」
「目を覚ませアンカハス!本当にこのままでいいのか!」
アラタとの闘いでダメージを受け、体力を消耗していても、今のヴァンには比べるまでもなかった。
力負けしヴァンが膝を着くと、アンカハスは頭上からナイフを振り下ろした。
かろうじて受け止めたが、アンカハスは一層力を込め、防いでいるナイフごとヴァンを斬ろうとする。
「このまま死ね!」
ヴァンが崩れそうになった時、フェンテスがアンカハスのナイフを持つ手を狙い、斬りかかった。
「なに!?」
間一髪、アンカハスはナイフを上げ、フェンテスのナイフを受け止める。
予想外の乱入に、アンカハスはすぐに後ろに飛び退き、ナイフを構え直した。
殺気を込めた視線を、ヴァン、フェンテスと交互に向ける。
「フェンテスさん!?なぜアンカハス副長にナイフを?」
「まさかフェンテスさんも裏切ったのか!?」
「どうする?俺達も手を貸せば・・・」
「駄目だ、アンカハス副長の命令だ。手は出せない」
突然のフェンテスの乱入、そして味方であるはずのアンカハスにナイフを向けた事で、隊員達に動揺が出るが、アンカハスの命令で手を出せない状態だった。
「はぁ・・・はぁ・・・助かったぜ・・・ありがとよ、フェンテス・・・」
「いえ、大丈夫ですか?」
「なんとかな・・・部屋に入ったら・・・アンカハスがいてな、俺を見て・・・だいたいの事を・・・理解したんだろう。すぐに・・・かかってきやがったよ。だが、サシで決着を付けたかったんだろう・・・周りに手を出させないのは・・・助かったぜ・・・」
ヴァンはすでに疲労が隠しきれていない状態だった。息は乱れ、足に来ている。
だが、その鋭く相手を見据える眼光はかつての、憧れだった治安部隊副隊長・ヴァン・エストラーダのままだった。
「ヴァン副長、アラタはどうなってますか?」
「無事だ。・・・あの野郎、マルコスのナイフを真正面から防いでいやがった。素手でマルコスのナイフを受けきってんだぜ?俺の想像以上だ・・・」
「・・・そうでしたか。一先ず無事だったのは良かったです」
フェンテスは驚きを隠せなかった。アラタには何か特別な力があると思っていたが、マルコスのナイフを素手で防いでいると言う。
「マルコス隊長のパワーに、正面からぶつかれるなんて、アイツそこまで強かったんですね」
「あぁ、だが、まだなにかある。アラタには特別な力を感じるんだ」
フェンテスはヴァンの前に出てアンカハスを牽制する。フェンテスのナイフ術を知っているアンカハスは、うかつに攻める事ができず。ヴァンはその間に呼吸を整えていた。
「フェンテス!お前まで裏切るのか!?」
「・・・はい。どのような言葉で取り繕っても裏切りは裏切りです。アンカハスさん・・・俺は今、アローヨさんとも戦ってきました」
「なんだと!?なら、お前がここにいるって事は・・・まさかアローヨを殺ったのか!?」
アンカハスの言葉に、フェンテスは小さく首を振った。
「いいえ・・・俺は負けました。でも、アローヨさんは分かってくれたんです。だからここに来れた・・・アンカハスさん。あなたも分かっているはずです。俺達は間違ったんです。でも、間違いに気づき、やり直す道があるのならば、その道を歩かねばならないんです」
アンカハスはフェンテスの目を真っすぐ見る事ができず、視線を外した。
それはフェンテスの言葉を肯定すると同意義の行為だった。
「アンカハスさん・・・俺達も罪を償わなければならない。険しい道になるでしょう。でも何事もなかったように、のうのうと生きていくわけにはいきません。これからの生き方次第なんです・・・犯した罪を償う機会があるんです・・・俺はあなたにも後悔したまま生きてほしくない!」
アンカハスは目を伏せた。ナイフを下ろし、俯き、言葉を発する事もしない。
「フェンテス・・・お前、強くなったな・・・」
ヴァンがフェンテスの肩に手を置く。
フェンテスはヴァンに顔を向けると、いえ、とだけ短く答えた。
「アンカハス、お前もこっちへ来い・・・俺達と、また・・・」
問われた言葉に対する答えは首を振る事だけだった。
だが、ヴァンとフェンテスに向ける眼差しは。先ほどまでとは打って変わり、憎しみは消え、全てを受けとめた静かな目をしていた。
「俺は、もう戻る事はできない・・・」
何人拷問し、何人処刑台に送っただろう・・・自分の罪は決して許されるものではない。
「フェンテスの言う通り、俺達は間違えたんだ・・・」
だが、ヴァン、フェンテス・・・お前達はまだやり直せる。だから、ここで俺を・・・
アンカハスがナイフを構える。それを受け、ヴァンが一歩前に出て、ナイフを構えた。
「フェンテス・・・アンカハスとは俺が決着をつける」
ヴァンの表情には覚悟が宿っていた。
揺るがない決心の言葉に、フェンテスは黙って後ろに下がった。
水を打ったような静けさだった。ヴァンにはもう体力は残っていない。だが、アンカハスもこれ以上長引かせるつもりはないだろう。
互いに次が最後になる。誰しもそれを感じ取っていた。
先手はアンカハス。ヴァンの目に汗が入り僅かに目を閉じた隙に、間合いを詰めた。
的の大きい腹を目掛けて、右手のナイフを横に寝かせ、真っ直ぐにを突き刺す。
ヴァンは胴を捻って回避した。急所は外したが、右脇腹をかすったナイフは、そのまま横なぎに振るわれ、ヴァンの腹を抉り取る。
深い・・・腹部に走る激痛に、ヴァンは倒れそうになる。だが、足を踏みしめ自身の持つ右手のナイフに力を込める。左下から右斜め上にナイフを振るうが、アンカハスは軌道を読み切り、軽々とかわす。
今のヴァンのナイフでは、アンカハスに遠く及ばない。
それはヴァンも承知の上だった。
アラタには、アンカハスもヤファイも何とかなる。と話していたが、今の自分の状態では、誰一人止められない事はヴァン自身、よく分かっていた。
自分が勝つには、自分の命と引き換えにする覚悟が無ければならない。
ヴァンは全身でアンカハスにぶつかった。自分の命を守る気はない。体はがら空きで、右手のナイフにだけ力を込めアンカハスの腹部に狙いを付ける。
「ヴァン、貴様!」
刺し違える気だ!
アンカハスは避ける事は可能だった。一歩大きく後ろに飛んでいなせばいい。いかにヴァンの決死の特攻でも、今のアンカハスとの力の差はそれ程大きかった。
だが、アンカハスは前に踏み込んだ。ヴァンだけは、この男だけは正面から決着をつけなければならない!
同じ副隊長として生きたこの男だけは!
ヴァンは治安部隊のアーマーも身に着けてなく、古びた囚人服を着ているだけだ。刺されれば胸でも腹でもどこでも致命傷になる。
対して自分は治安部隊のボディアーマーを身に着けている。ヴァンのナイフを腰に構えた体制は、腹を狙っていると一目で分かった。
左腕のアームガードでヴァンのナイフを弾き、右手のナイフをヴァンの胸に突き立てる。
そうアンカハスは狙いを付けた。
「アンカハスーッ!」
「ヴァンッ!」
ヴァンとアンカハス、二人の叫びが交じり合い決着は訪れた。
アンカハスの読み通り、ヴァンのナイフはアンカハスの腹に真っ直ぐ向かって来た。
アンカハスは左腕のアームガードで、ナイフの腹に狙いを付け弾くと、右手のナイフを逆手に持ち直し、ヴァンの左胸、心臓を目掛けて振り下ろした。
勝った!
アンカハスは勝利を確信した。
だが、ヴァンの行動はアンカハスの予想を上回った。
ヴァンは避ける事も、防ぐ事もせず、更に踏み込み、自らアンカハスのナイフに飛び込んだ。
踏み込んだ分ナイフの狙いは外される。ナイフはヴァンの肩口に突き刺さった。
「なんだと!?」
「オォォォォォッ!」
ヴァンの右拳がアンカハスの顔を正面から打ち抜いた。
背中から倒れたアンカハスは即座に立ち上がろうとしたが、上半身を起こすと同時に、腹部に激痛が走る。
ヴァンは肩に刺さったアンカハスのナイフを抜くと、そのままアンカハスの脇腹に突き刺していた。
「はぁ・・・はぁ・・・アンカハス・・・もう、楽になれ・・・」
「ヴァン・・・」
ヴァンはナイフを抜くと前のめりに倒れた。
腹を切り裂かれ、肩を深く抉られ、激痛と出血で限界はとうに超えていた。
アンカハスは脇腹を刺された痛みで、動くことはできなかったが、意識はあった。
生かされた・・・・・・
ヴァンは自分を殺す事ができた。だが、わざと動けない程度に刺した。
アンカハスの目に涙が浮かぶ。
ヴァンが何を考え、この戦いの中で自分を生かす決断をしたのか・・・
【アンカハス、お前もこっちへ来い・・・俺達と、また・・・】
戦いが終わり、隊員達が自分とヴァンの周りに集まってくる。
「早く医務室から白魔法使いを連れて来い!」
「タオルだ!ありったけのタオルを持ってこい!止血だ!」
「副長!アンカハス副長!大丈夫ですか!」
混乱の中、フェンテスがアンカハスの正面に立った。
「アンカハス副長・・・生きて下さいね・・・」
フェンテスはそれだけ言葉にすると、アンカハスに背を向けた。
目を伏せる。
アンカハスの閉じた目から、涙が一筋流れ落ちた。
なぁ、ヴァン・・・俺でも、まだ罪を償って生きる道があるのかな・・・
分からねぇよ・・・教えてくれよ・・・・・・
17
あなたにおすすめの小説
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
異世界でカイゼン
soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)
この物語は、よくある「異世界転生」ものです。
ただ
・転生時にチート能力はもらえません
・魔物退治用アイテムももらえません
・そもそも魔物退治はしません
・農業もしません
・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます
そこで主人公はなにをするのか。
改善手法を使った問題解決です。
主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。
そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。
「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」
ということになります。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる