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107 リカルドの相談
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夕飯を終えると、カチュアとユーリが片づけと洗い物をするので、俺とリカルドは先に風呂に入っててという事になった。
「悪いな兄ちゃん、一番風呂は俺がもらうぜ」
「分かった分かった。いいから、そんな指を突き付けるなって」
脱衣所でポイポイと服を脱ぎ、無造作に後ろで縛った髪を解くのを見て、ふと気になった事を聞いてみた。
「なぁ、リカルドって、なんでいつもしっかりと装備してんの?」
リカルドは、食事の時は外すが、仕事中はいつも鉄の胸当て、肘から手首までの鉄の腕当て。膝から足首までの鉄の脛当てをいつも付けている。
ジーンも仕事中は国指定の青魔導士のローブを着ているが、それは制服感覚のようなものらしい。
リカルドの場合は、鉄の装備だ。重くて疲れないかと気になっていた。
俺の質問にリカルドは、エメラルドグリーンの瞳でじっと見てくると、真面目な口ぶりで言葉を返してきた。
「・・・俺はハンターだからな。何かあった時に、真っ先に動けるようにしているだけだ。ディーロ兄弟の時も、弓だけもっていち早く行動できたから、屋根に身を隠せたんだ。あんな事めったに無いけど、何かあってから防具を装備してたら初動が遅れるだろ?獲物は待ってくれないんだよ」
そう話すと、リカルドはニカっと歯を見せて笑い、風呂へ入って行った。
意外なくらいしっかりとした考え方を持っている事に、俺はリカルドを見直した。
いつもはふざけた感じだが、行動や備えには合理的な考え方を持っているようだ。
考えてみれば、リカルドだけでなく、レイチェルも常に腰にナイフを1本備えている。
ジーンだって、革のポーチをいつも腰に付けていて、中には魔道具らしい物がいくつも入っていた。
リカルド程ではないが、みんな最低限の備えは常にしているのだ。
「・・・俺もちゃんとしないとな」
リカルドに大事な事を教わった気持ちになり、備えについて本気で考えようとした。
しかし、風呂場のドアが勢いよく開き、リカルドに大声で、兄ちゃん寝間着忘れた!持って来といて!と叫ばれ、なんだかガッカリした。
皆が入浴を終えると22時を過ぎていた。
明日は、レイチェルが今日の謁見の事などをみんなに説明するため、いつもより早く、8時出勤という話しになっている。
そろそろ寝ておいた方がいいだろう。俺は日本にいた時は夜勤中心だったので、朝寝て夜起きるという不規則極まりない生活リズムだったが、この世界では遅くても23時には寝て、7時には起きている。
起きていてもする事が無いというのが大きな理由だが、結果、8時間の睡眠は確保しているので、しっかり健康な生活リズムを送っている。
「アラタ君、今日はもう寝ようか?明日いつもより早いしね」
「うん。そうだな。じゃあ、カチュアとユーリはそっちの部屋で、俺とリカルドはこっちの部屋な」
この家は、ダイニングキッチン以外に、部屋が三つあるが、一部屋は物置のようになっているので、人が寝れるのは実質二部屋しかない。
そして、二部屋の内、一部屋は俺が使っていて、もう一部屋は今はカチュアの部屋になっている。
まだ正式に一緒に暮らしているわけではないが、ほぼ毎日のように来ているので、いつの間にか着替えや小物など、カチュアの荷物が増えて来て、自然とカチュアの部屋になっていた。
「え?兄ちゃん俺と一緒に寝んのか?なんで?カチュアと寝んじゃねぇの?」
リカルドが真顔で言ってくるので、俺も一瞬言葉に詰まってしまう。
「えっとな・・・リカルド、俺がカチュアと同じ部屋だと、お前はユーリと一緒に寝る事になるが、いいのか?」
「え?兄ちゃん何言ってんだよ?ありえねぇだろ?」
「お前自由過ぎんだろ?じゃあ俺と一緒の部屋でいいよな?男同士さ」
「アラタ、なんかアタシが勝手に振られた感じになっている。おかしい」
俺とリカルドの会話を目の前で聞いていたユーリが、俺を睨み付けてきた。
当然脛にも蹴りが入る。
「いてッ!ごめん!待って、悪かったけど、しかたないじゃん?ユーリはリカルドと一緒に寝たい?」
「え?アラタ何言ってるの?ありえないでしょ?」
「お前ら息ぴったりじゃん」
再び、鋭い蹴りが俺の脛に食い込み、俺は痛みのあまり脛を押さえて飛び跳ねる事になった。
「じゃあ、明日の朝は焼き魚にするね。おやすみー」
カチュアが小さく手を振りながら、ユーリと一緒に部屋に入って行った。
「しゃーねーなぁー、寂しがり屋な兄ちゃんと一緒に寝てやっか」
「お前、今日は遠慮ねぇな」
二人の姿が見えなくなると、リカルドも俺の部屋に入って来た。
俺はこの世界での荷物らしい荷物はあまり無い。
日本にいた時は、ゲームや漫画本も持っていたが、この世界にそれは無い。
着替えはそれなりに揃えたが、あとはベッドと、トレーニング用の、鉄アレイや縄跳びなんかがあるくらいだ。
6畳程の広さの部屋だが、かなり殺風景と言える。
「・・・うっわぁ~、兄ちゃんの部屋つまんねー・・・」
部屋を見回したリカルドが、気の毒そうに憐れむ目を向けてくる。
「おい!お前今日は本当に遠慮ねぇな!いいだろ別に、欲しい物がねぇんだから」
リカルドは、はいはい、と言いながらさっさとベッドに入ってしまった。
俺も、ドアの横に取り付けている、光を放つ魔道具の発光石に、蓋をして明かりを消すと、用意した予備のマットレスの上に寝転がり、少し厚めのタオルケットを体にかけて目を閉じた。
「・・・なぁ、兄ちゃん、起きてるか?」
「・・・起きてるぞ、どうした?」
発光石を消すと、部屋は真っ暗になる。寝るだけなので、マットレスの上でじっと目を閉じていると、リカルドがベッドの上から声をかけてきた。
「今日の事、大雑把には聞いたけどよ・・・また、戦いになりそうなのか?」
「・・・・・・ハッキリとした敵は見えない。だけど、真実の花次第で、大きな敵が出てくる可能性はある」
すぐに言葉は返って来なかった。
なにか考えているのだろうか、寝返りを打ち、意識して大きく息を吐く音が聞こえてくる。
「・・・・・・そっか、なぁ兄ちゃん・・・ジョルジュ・ワーリントンって知ってるか?」
リカルドが聞いてきた名前に、俺は覚えがまるで無かった。
初めて聞く名だ。
「いや、知らないな。初めて聞くよ。誰だ?」
「なんで知らねぇんだよ?」
「無理言うなよ」
大きな溜息が一つ聞こえ、リカルドが話しだした。
「200年前にカエストゥスにいた弓使いでさ、今でも史上最強の弓使いって言われてるよ。俺の目標だ」
「そうか、凄そうな人だな。リカルドの目標なんだ?」
「あぁ、風を読んで、放った矢を変幻自在に曲げたって話しだ。戦争の時、空中から魔法攻撃してくるブロートンの黒魔法使いを、たった一人で何百人も落としたんだってよ。本当にすげぇよ・・・・・・俺もジョルジュ・ワーリントンみたいになれるかな・・・」
リカルドの言葉は、俺に聞いているんだろうけど、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
「・・・ディーロ兄弟の襲撃の時さ、空飛んでた方、ジャームールって言ったけな、アイツの耳を射抜いただろ?・・・俺、あの時リカルドの事、すげぇなって思ったよ。史上最強の弓使いの称号も、リカルドなら塗り替える事ができるんじゃないかな」
目を閉じたまま、あの時感じた事を素直に話してみた。
ディーロ兄弟が店に襲撃をかけてきた時、リカルドは幻視のマントという、周囲の景色と同化するマントで身を隠し、店の屋根で攻撃のチャンスを伺っていた。
結果、リカルドの放った矢は、ジャームール・ディーロに僅かに躱されたが、その矢は片耳を射貫いていった。
俺がリカルドの弓の腕を見たのはその時が初めてだし、自分で使った事がないから、知識も無いけど、リカルドの腕の凄さは分かったつもりだ。
ベッドが軋み、リカルドが俺に背中を向けた事が、音と空気で分かった。
「・・・兄ちゃん」
「うん、なんだ?」
「おだててもカチュアの飯は独り占めさせねぇぞ」
「・・・寝ろ」
リカルドは、はいはいおやすみ、と軽い調子答えると、それ以上何も話さず、今度こそ眠りについた。
いつもはふざけた調子のリカルドだけど、リカルドは親元を離れて一人暮らしだし、夜、男二人、隣同士に寝る事で、なんとなく心にひっかかっていた事を、気兼ねなく話してみたくなったのかもしれない。
こいつも色々考えてんだな・・・
いつしか俺も眠りについていた。
「悪いな兄ちゃん、一番風呂は俺がもらうぜ」
「分かった分かった。いいから、そんな指を突き付けるなって」
脱衣所でポイポイと服を脱ぎ、無造作に後ろで縛った髪を解くのを見て、ふと気になった事を聞いてみた。
「なぁ、リカルドって、なんでいつもしっかりと装備してんの?」
リカルドは、食事の時は外すが、仕事中はいつも鉄の胸当て、肘から手首までの鉄の腕当て。膝から足首までの鉄の脛当てをいつも付けている。
ジーンも仕事中は国指定の青魔導士のローブを着ているが、それは制服感覚のようなものらしい。
リカルドの場合は、鉄の装備だ。重くて疲れないかと気になっていた。
俺の質問にリカルドは、エメラルドグリーンの瞳でじっと見てくると、真面目な口ぶりで言葉を返してきた。
「・・・俺はハンターだからな。何かあった時に、真っ先に動けるようにしているだけだ。ディーロ兄弟の時も、弓だけもっていち早く行動できたから、屋根に身を隠せたんだ。あんな事めったに無いけど、何かあってから防具を装備してたら初動が遅れるだろ?獲物は待ってくれないんだよ」
そう話すと、リカルドはニカっと歯を見せて笑い、風呂へ入って行った。
意外なくらいしっかりとした考え方を持っている事に、俺はリカルドを見直した。
いつもはふざけた感じだが、行動や備えには合理的な考え方を持っているようだ。
考えてみれば、リカルドだけでなく、レイチェルも常に腰にナイフを1本備えている。
ジーンだって、革のポーチをいつも腰に付けていて、中には魔道具らしい物がいくつも入っていた。
リカルド程ではないが、みんな最低限の備えは常にしているのだ。
「・・・俺もちゃんとしないとな」
リカルドに大事な事を教わった気持ちになり、備えについて本気で考えようとした。
しかし、風呂場のドアが勢いよく開き、リカルドに大声で、兄ちゃん寝間着忘れた!持って来といて!と叫ばれ、なんだかガッカリした。
皆が入浴を終えると22時を過ぎていた。
明日は、レイチェルが今日の謁見の事などをみんなに説明するため、いつもより早く、8時出勤という話しになっている。
そろそろ寝ておいた方がいいだろう。俺は日本にいた時は夜勤中心だったので、朝寝て夜起きるという不規則極まりない生活リズムだったが、この世界では遅くても23時には寝て、7時には起きている。
起きていてもする事が無いというのが大きな理由だが、結果、8時間の睡眠は確保しているので、しっかり健康な生活リズムを送っている。
「アラタ君、今日はもう寝ようか?明日いつもより早いしね」
「うん。そうだな。じゃあ、カチュアとユーリはそっちの部屋で、俺とリカルドはこっちの部屋な」
この家は、ダイニングキッチン以外に、部屋が三つあるが、一部屋は物置のようになっているので、人が寝れるのは実質二部屋しかない。
そして、二部屋の内、一部屋は俺が使っていて、もう一部屋は今はカチュアの部屋になっている。
まだ正式に一緒に暮らしているわけではないが、ほぼ毎日のように来ているので、いつの間にか着替えや小物など、カチュアの荷物が増えて来て、自然とカチュアの部屋になっていた。
「え?兄ちゃん俺と一緒に寝んのか?なんで?カチュアと寝んじゃねぇの?」
リカルドが真顔で言ってくるので、俺も一瞬言葉に詰まってしまう。
「えっとな・・・リカルド、俺がカチュアと同じ部屋だと、お前はユーリと一緒に寝る事になるが、いいのか?」
「え?兄ちゃん何言ってんだよ?ありえねぇだろ?」
「お前自由過ぎんだろ?じゃあ俺と一緒の部屋でいいよな?男同士さ」
「アラタ、なんかアタシが勝手に振られた感じになっている。おかしい」
俺とリカルドの会話を目の前で聞いていたユーリが、俺を睨み付けてきた。
当然脛にも蹴りが入る。
「いてッ!ごめん!待って、悪かったけど、しかたないじゃん?ユーリはリカルドと一緒に寝たい?」
「え?アラタ何言ってるの?ありえないでしょ?」
「お前ら息ぴったりじゃん」
再び、鋭い蹴りが俺の脛に食い込み、俺は痛みのあまり脛を押さえて飛び跳ねる事になった。
「じゃあ、明日の朝は焼き魚にするね。おやすみー」
カチュアが小さく手を振りながら、ユーリと一緒に部屋に入って行った。
「しゃーねーなぁー、寂しがり屋な兄ちゃんと一緒に寝てやっか」
「お前、今日は遠慮ねぇな」
二人の姿が見えなくなると、リカルドも俺の部屋に入って来た。
俺はこの世界での荷物らしい荷物はあまり無い。
日本にいた時は、ゲームや漫画本も持っていたが、この世界にそれは無い。
着替えはそれなりに揃えたが、あとはベッドと、トレーニング用の、鉄アレイや縄跳びなんかがあるくらいだ。
6畳程の広さの部屋だが、かなり殺風景と言える。
「・・・うっわぁ~、兄ちゃんの部屋つまんねー・・・」
部屋を見回したリカルドが、気の毒そうに憐れむ目を向けてくる。
「おい!お前今日は本当に遠慮ねぇな!いいだろ別に、欲しい物がねぇんだから」
リカルドは、はいはい、と言いながらさっさとベッドに入ってしまった。
俺も、ドアの横に取り付けている、光を放つ魔道具の発光石に、蓋をして明かりを消すと、用意した予備のマットレスの上に寝転がり、少し厚めのタオルケットを体にかけて目を閉じた。
「・・・なぁ、兄ちゃん、起きてるか?」
「・・・起きてるぞ、どうした?」
発光石を消すと、部屋は真っ暗になる。寝るだけなので、マットレスの上でじっと目を閉じていると、リカルドがベッドの上から声をかけてきた。
「今日の事、大雑把には聞いたけどよ・・・また、戦いになりそうなのか?」
「・・・・・・ハッキリとした敵は見えない。だけど、真実の花次第で、大きな敵が出てくる可能性はある」
すぐに言葉は返って来なかった。
なにか考えているのだろうか、寝返りを打ち、意識して大きく息を吐く音が聞こえてくる。
「・・・・・・そっか、なぁ兄ちゃん・・・ジョルジュ・ワーリントンって知ってるか?」
リカルドが聞いてきた名前に、俺は覚えがまるで無かった。
初めて聞く名だ。
「いや、知らないな。初めて聞くよ。誰だ?」
「なんで知らねぇんだよ?」
「無理言うなよ」
大きな溜息が一つ聞こえ、リカルドが話しだした。
「200年前にカエストゥスにいた弓使いでさ、今でも史上最強の弓使いって言われてるよ。俺の目標だ」
「そうか、凄そうな人だな。リカルドの目標なんだ?」
「あぁ、風を読んで、放った矢を変幻自在に曲げたって話しだ。戦争の時、空中から魔法攻撃してくるブロートンの黒魔法使いを、たった一人で何百人も落としたんだってよ。本当にすげぇよ・・・・・・俺もジョルジュ・ワーリントンみたいになれるかな・・・」
リカルドの言葉は、俺に聞いているんだろうけど、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
「・・・ディーロ兄弟の襲撃の時さ、空飛んでた方、ジャームールって言ったけな、アイツの耳を射抜いただろ?・・・俺、あの時リカルドの事、すげぇなって思ったよ。史上最強の弓使いの称号も、リカルドなら塗り替える事ができるんじゃないかな」
目を閉じたまま、あの時感じた事を素直に話してみた。
ディーロ兄弟が店に襲撃をかけてきた時、リカルドは幻視のマントという、周囲の景色と同化するマントで身を隠し、店の屋根で攻撃のチャンスを伺っていた。
結果、リカルドの放った矢は、ジャームール・ディーロに僅かに躱されたが、その矢は片耳を射貫いていった。
俺がリカルドの弓の腕を見たのはその時が初めてだし、自分で使った事がないから、知識も無いけど、リカルドの腕の凄さは分かったつもりだ。
ベッドが軋み、リカルドが俺に背中を向けた事が、音と空気で分かった。
「・・・兄ちゃん」
「うん、なんだ?」
「おだててもカチュアの飯は独り占めさせねぇぞ」
「・・・寝ろ」
リカルドは、はいはいおやすみ、と軽い調子答えると、それ以上何も話さず、今度こそ眠りについた。
いつもはふざけた調子のリカルドだけど、リカルドは親元を離れて一人暮らしだし、夜、男二人、隣同士に寝る事で、なんとなく心にひっかかっていた事を、気兼ねなく話してみたくなったのかもしれない。
こいつも色々考えてんだな・・・
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