異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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【130 川の女性】

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王子が使用した黒渦という魔法は、王子が独自に作り出した魔法だった。
黒魔法に分類されると思うが、師匠は黒渦については、危険視していた。黒渦を発動させてからは、特に王子の様子に注意をして見るようになり、俺達にも王子になにか変わった事があったらすぐ教えるようにと、言いつけられている。


バッタ殲滅後、王子は師匠の回復を待って共に王宮へ入った。
おそらく黒渦に付いての説明を求められているのだろう。

あの時、俺もジャニスも、次々とバッタを飲み込む黒渦に、これでバッタに勝てる、と勝利の事しか頭になかった。
だが、落ち着いた今、思い返してみると、あの魔法がいかに異質かよく分かる。

師匠が一度だけ俺に漏らした言葉だ。


【あれは本当に魔法なのか?】


その言葉は俺の頭にずっと残っている。
王子の黒渦はこれまでの見たどの魔法とも異なった性質だった。

圧倒的な闇の塊。
王子が使いこなしていた事実を見れば、おかしな言葉かもしれないが、あれは人間の力で制御できるものなのだろうか・・・・・・



「ウィッカー、あんたいっつもここにいるね?難しい顔してどうしたのさ?」

孤児院の庭、一本の大木の下で、俺が背中を木にもたれさせ空を眺めていると、ジャニスが玄関から出て声をかけて来た。

「ジャニス・・・・・・王子の黒渦の事を考えていた。あれは・・・何なんだろうな?」

ジャニスは俺の隣に腰を下ろすと、同じように大木に背を預け、空を見上げた。

「分かんないなぁ、あれって何だろね?正直に言うとさ、あんまし良い魔法じゃないと思うんだよね。ハッキリ言って禍々しい。できれば、もう王子にアレは使って欲しくないね」

ジャニスのハッキリとした意見に、俺も同意を示し頷いた。
師匠も同じ考えだろう。
王子の黒渦で首都バンテージが救われた事は間違いない事実だが、あの魔法は危険な匂いがする。
もう使わない方がいいと思う。


「王子と師匠が王宮から帰ってきたら、もう一度話せばいいじゃん?私も王子にハッキリ言ってみるよ、もう黒渦は禁止です!ってさ」

そう言ってジャニスは歯を見せて笑った。
王子相手によく、禁止です、なんて言えるなと感心してしまう。この度胸とハッキリした物言いは、昔から変わらない。

「ジャニスはすごいな。俺にはとてもそうハッキリと言う事はできないよ」

「だって私は王子のお姉ちゃんだからね!弟にそのくらい言ってもいいでしょ?」

「それもそうだな・・・うん。俺もジャニスみたくできたらいいんだけどな・・・」

下を向いて、自信無さ気に頭をかくと、すぐにジャニスがおでこを指ではじいてくる。

「ウィッカー、あんただって王子のお兄ちゃんでしょ?弟にビシっと言ってやんなさいよ?」

「いや、そりゃ・・・そういう気持ちは持ってるけどさ・・・難しいよ」

ジャニスは大きな溜息をつくと、俺の顔に指を突きつけた。

「うじうじしない!ウィッカーはもっと気持ちを強くしっかり持ちなさい!分かった!?」

ビシっとした言葉を浴びせられ、その迫力に気圧され俺は何度も頷いて返事をした。

「う、うん!分かった!そうできるようにするよ!」

「まったく、私はあの結界を張った時、あんたの隣であんたの意地を見てたんだからね?根性あるとこ知ってんだからさ、普段から強い気持ちを見せなさいよ?じゃあ、子供達のミルクの時間だから私戻るね。ちょっと外の空気吸いに出て来ただけだからさ、今キャロル1人で見てるんだ」


孤児院では、まだミルクが必要な1歳の幼児が2人いる。
子供達の中で最年長の女の子、10歳のキャロルと、ジャニスが率先してミルクをあげ、面倒を見ている。同じ10歳の男の子のトロワや、俺もミルクをあげたり、着替えをさせる事もあるが、やはりジャニス達と比べ手際が悪く、泣かれる事も多いので、ジャニスとキャロルがいる時は、任せるようにしている。

ジャニスの姿が見えなくなると、俺はまた1人で空を見上げた。

バッタを殲滅させた事で、王子の評価が上がると俺は思っている。
今回、王子と師匠が王宮へ呼ばれ出向いているのは、その功績を称えられるためだと、そう思っている。

だけど、こんなに何日もかかるものだろうか?
もう3日も帰って来ていないし、何の連絡も届かない。

心配だが、師匠が留守の間は、俺とジャニスで孤児院を見るしかない。
それにメアリーも毎日孤児院に通って、食事を作り子供達を見てくれている。
正直、非常に助かっている。
1歳の幼児が2人に、まだまだ育ち盛りの子供が10人以上いるのだ。

俺は料理ができないので、院内の掃除と子供達の遊び相手くらいしかできない。

料理はジャニスとキャロルが作ってくれるが、1歳の幼児へのミルクあげや、着替えはどうしても時間がかかり、タイミングが悪いと食事の準備も大きく遅れてしまう。

でも、メアリーが来てくれるようになり、メアリーが食事を担当し、洗濯も手伝うようになると、目に見えて2人の負担が減ったのだ。

今日も、メアリーが食事を作ってくれている。



「本当に、メアリーが来てくれて助かってるな・・・」
「嬉しいです!」

「うぉっ!びっくりしたぁ・・・いつの間に・・・」

「ウフフ!ウィッカー様は、忘れっぽいところがあるんですね?昨日もお伝えしたじゃないですか?私がウィッカー様のおそばにいるのは当たり前の事ですよ」


いつの間にか俺の隣に座っているメアリーに驚かされる。
2日目なので、昨日よりはショックも少なかったが、突然過ぎるので、もう少しゆっくり来て欲しい。

俺の反応が面白かったのか、メアリーは口元に手を当てておかしそうに笑っている。


「ウィッカー様、私嬉しいです。もっともっと頑張りますね!」

「あ、あぁ、うん。本当に助かってるよ。ありがとう。でも、いいのか?王宮の仕事に戻らなくて?」

メアリーはバッタの1件で、捨て石扱いにされた事で、今後どうするか悩んでいた。
このまま残っても、なにかの時に同じ扱いを受ける事は想像に難くない。

実際、あの時一緒に戦った王宮魔法兵の半数は辞めているのだ。


「・・・まだ、迷ってるんです。私は首都からずっと東の小さな田舎の村の出身です。8歳の時、王宮仕えが決まって、一人でここバンテージに来ました。それから13歳になるまでの5年間は、同じ地方から集まった方達と一緒に共同生活を送ってきたんです。年齢はバラバラでした。
まだ小さかった私は、そこで多くの方にお世話になって、今こうして一人で生活ができるように成長する事ができました。そのお世話になった方の中には、今回の一件で職を辞し、故郷に帰られた方も沢山おります。
私も辞めてしまっていいんでしょうか・・・・・・まだ頑張っている方も沢山おります。私は裏切った事にならないでしょうか?
でも・・・・・・とても怖いのです。またあのような事があったらと考えると。それに、私が辞めて故郷に帰っても、両親を悲しませてしまうのではないかと考えてしまうのです。魔力が低かったので、出世はできませんでしたが、王宮仕えは名誉な事ですから。両親はとても喜んでました。それなのに・・・・・・」


メアリーは顔を伏せてしまった。

王宮仕えの魔法使いは、何も戦いに備える事だけが全てではない。
魔法書の管理。魔道具の開発に伴う素材集めなど、魔力が低くても仕事は沢山ある。

それゆえに、王宮仕えは魔力が低くても、一定の知識を備えていれば、性格が重要視され選ばれる事も多い。

メアリーはここでの働きぶりを見ていても、丁寧できっちりしている事がよく分かる。
きっと、管理能力は高く、王宮でも重宝されていたのではないだろうか?

メアリーのような人材は貴重だ。それをあんな捨て石のような扱いをした事に、俺は怒りを覚えていた。
おそらく魔法兵団の団長の指示ではない。団長はできた人物だ。

もっと上、王子に対して何かと絡んでくるあの男・・・大臣ベン・フィング。
あの男の指示だろう。
あまり考えたくないが、あの男は今回のバッタ殲滅を本当に成功してほしいと思ってたのか?


結果的に成功を収めたが、戦力はほぼ4人。俺と王子とジャニスと師匠だけだ。
集められた100人には、もちろん感謝している。彼らの魔力が無ければ失敗していただろう。
だが、彼らが魔力を分けてくれたのは結果論だ。とても戦力として送り込んできたとは思えない。
国民に対する見せかけ、パフォーマンスだ。

ベン・フィングは国の存続がかかる程の事態に、そんな馬鹿げた行為をする男だ。
きっと、兵士は使い捨ての駒程度の認識なのだろう。

きっと、戦争にでもなれば、また同じように真っ先に捨て石にされるのは間違いないだろう。


【メアリー悩んでたよ。ウィッカーがお嫁にもらえば解決なんだから、さっさと結婚しちゃいなさいよ】


ふいに、ジャニスの言葉が頭に浮かんだが、結婚はちょっと・・・でも何とか力になりたいとは思う。


「・・・辞めてもいいんじゃないか?辞めてここで働けばいいよ。王宮仕えではなくなっても、次の仕事先の上司が、ブレンダン師匠ならメアリーのご両親も安心なんじゃないかな?」

俺の言葉にメアリーは顔を上げたが、まだ眉は下がっており、心配そうな顔をしている。


「・・・ありがとうございます。実は、私も辞める事に気持ちが傾いております。この孤児院ではまだ日が浅いのですが、子供達もみんな可愛いですし、ブレンダン様も温かく迎えてくださいました。タジーム様とはまだ、ご挨拶しかできておりませんが、私の料理を全部食べてくださったのは嬉しかったです。
・・・それに、ここでならウィッカー様のおそばにずっといれます。
ウィッカー様・・・・・・私、本当にこちらでお世話になってもよろしいのでしょうか?」


その眼差しは、ここで働く以上の事を俺に求めてきているように感じた。

それはそうだろう。

俺が王宮での仕事を辞めて、ここで働いたらと進めているのだ。
そして、それに対しての返事で、俺のそばにいれると言っている。
中途半端なはぐらかしはできない。


「・・・メアリー、俺はキミに嘘はつきたくないから、正直に言うけど・・・メアリーの気持ちに、俺が応えられるか、まだよく分からないんだ。だから、ここでキミの気持ちに対して責任を持った返事ができない。でも、ここで働くというのなら、キミがここで働いて良かったと思えるように、できる限りの力になる事は約束するよ」


俺の言葉に、メアリーの表情が明るくなり、神様にでもお祈りするかのように両手を握り、俺に一歩迫ってきた。

「まだ、なんですよね!?私の気持ちに応えられるか、まだ分からないんですよね!?それって、これから先は可能性があるという事ですよね!?」

「え!?あ・・・それは、まぁ・・・うん・・・そうだ、ね」

昨日、メアリーと話して、俺の中で少し気持ちに変化が起きていた。

8歳の時から自分の事を想っていてくれたメアリー。
その純粋な気持ちを聞いて、一瞬だけど、とても愛おしい気持ちになり、メアリーから目が離せなくなった。


あの気持ちを何と言えばいいのだろう・・・・・・・


「嬉しいです!私、きっとウィッカー様を振り向かせて見せます!」

そう言ってメアリーは、いつになく上機嫌で孤児院内に入って行った。

1人残された俺は、そろそろお昼の時間だし、外に遊びに行っている子供達を迎えにでも行こうかと腰を上げた。その時だった。


「ウィッカー兄ちゃーん!大変だー!」

孤児院の外に遊びに出ていたトロワと男の子達が、慌てた様子で走ってきた。

「どうした!?」

小さい子供達は、慌ててばかりで、女の子!女の子!としか言わずに要領が得ないが、10歳のトロワは焦りながらも、きちんと分かるように説明をしてくれた。


「か、川で遊んでたら、女の人が倒れてんの見つけたんだよ!もう真っ白な顔でさ!死んでんのかな!?ウィッカー兄ちゃん来てくれよ!早く早く!」


俺はトロワに腕を引っ張られ、他の子供達には背中を押されながら、孤児院から少し離れた川へ連れて行かれた。




これが、シンジョウ・ヤヨイとの出会いだった
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