異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
136 / 1,560

【136 静かな怒り】

しおりを挟む
カエストゥス国 エンスウェル城

広大な床面積を持ち、城壁に囲まれ、重厚な外観は堅牢な雰囲気を漂わせている。
城郭には、花が咲き誇る美しい庭園が広がり、王室の建物も庭園を囲むように配置されている。

城門から少し離れた場所で馬車を降り、俺とジャニス、師匠の3人はエンスウェル城へ足を向けた。

城門前に立つ番兵は、俺達に気が付くと驚いたように眉を上げた。
昨日の今日で師匠が来たのだ。意外だったのだろう。

「ブレンダン・ランデルと、弟子のウィッカーとジャニスじゃ。大臣ベン・フィングへお繋ぎ願いたい」

ブレンダンの言葉に、番兵は難しい顔をして辺りを見回した後、一歩俺達に近寄り声を小さく話しだした。

「ブレンダン様、タジーム様の件でお越しになられたのですよね?私が口を挟む事ではありませんが、昨日ブレンダン様がお帰りになられた後も、城内はずっとその事で話しが持ち切りになっております。
門番の私の耳に入る程ですから相当なものです。今、大臣へ接触される事は、かえって大臣を刺激してしまうと思いますが・・・」

「ワシも幸せ者じゃのう・・・お主のように気にかけてくれる者がおるとは。ありがとう。じゃが、王子は今たった1人で、孤独に心を苛まれておる事じゃろう。ワシはな、王子を裏切りたくないんじゃ。王子を救えるのはワシらだけじゃ。そのためにも、ベンと話さねばならん。取り次いでもらえんかな?」


「・・・分かりました。出過ぎた事を申しました。お許しください」

「いやいや、謝る事ではなかろう。ワシは嬉しかったぞ。ベンには気を付けておこう」


番兵は一礼すると城内に入り、待機していた連絡係の兵士に用件を伝え戻って来た。

取り次ぎには時間がかかると言う事なので、待っている間、俺達は番兵から昨日師匠が帰った後の事を、詳しく聞いてみた。


やはり、ベン・フィングが中心になり、黒渦の危険性を声高に吹聴して回っていたようだ。
バッタの脅威から首都を護ったという事はまるで無かったような扱いにされ、一歩間違えれば、首都は壊滅していたという主張ばかりで、そのうち、バッタよりも黒渦のせいで首都が危険にさらされたという話しに変わっていったらしい。

ベン・フィングの最も厄介な点は、現在国王陛下を洗脳とも言える状態にしている事である。

そのせいで、ベン・フィングの意見はすんなりと国王陛下に通ってしまう。
貴族達や、王宮仕えの兵士達も、国王陛下を通しての言葉であればと受け入れやすい。

そして、タジーム・ハメイドは、長年に渡り王宮から離れており、身にまとう服も一般人と変わらない物だった。親子と言っても、国王陛下とは何年もまともな会話もできておらず、孤児院に身を寄せている。
その現状が、周囲がタジームを軽んじ、罪人のような扱いをする事にも抵抗を感じない大きな要因になっていた。

話しの整理がついた頃、ベン・フィングへの取り次ぎを得た兵士が戻ってきて、俺達は門の中へ足を入れた。



ブレンダン師匠は元は王宮仕えである。そのため城内の構造は全て頭に入っている。
一線を退き、孤児院を開いて隠遁生活を送っているが、有事の際には城から召集がかかるので、半分現役みたいなものだ。
齢60を超え、頭髪は真っ白になり、身体つきも細くなっているが、足腰はしっかりしているし、その魔力はまだまだ衰え知らずである。

事実、青魔法使いとして、師匠を超える魔法使いはまだ表れていない。

魔力の強さで言えばタジーム王子が、師匠を大きく上回っているが、青魔法使いに限れば、師匠はいまだカエストゥスで一番の使い手なのだ。


先頭を歩く師匠に付いて行き、大臣の待つ応接室へたどり着くと、なぜか師匠はノックもせず、ドアノブにも手をかけず、立ち止まってしまった。


「師匠?」

師匠は応接室のドアの前に立ったまま、黙って俺とジャニスに背を向けている。
声をかけても振り返る事も返事もなかった。だが、その体からにじみ出る殺気が、ベン・フィングに対する怒りを物語っていた。


隣に立つジャニスも、師匠の殺気に気圧され、言葉を発する事ができずにいた。

師匠は青魔法使いだ。
だから、戦闘に使える攻撃魔法は何一つ使えない。

そのため、青魔法使いが戦闘をする場合には、魔道具を使用するしかない。


師匠の魔道具 魔空まくうの枝《えだ》


それは師匠が作り出した、世界に1つだけの魔道具である。

魔空の枝は、樹齢千年を超える霊木の枝を削り作られた。

30cm程度の長さで、枝分かれはしていない。見た目はどこにでもある、ただの1本の枝である。

霊木は魔力を伝えやすい。そこに目を付けた師匠は、霊木そのものが魔力を宿すまで、魔力を流し続けた。
師匠は霊木が魔力宿す可能性は高いと見ていたが、前例が無く、どれだけの時間をかければ宿すのかも分からず、また失敗に終わる可能性ももちろんあった。

だが師匠は1日も休む事なく、毎日何時間も霊木に魔力を流し続けた。

それは先の見えない自分の精神との戦いだった。

徒労に終わるかもしれない。そんな考えは何度も頭をよぎっただろう。
だが、師匠は一言もそんな言葉はもらさず、ただ一心に魔力を流し続けた。

一か月が過ぎ、二ヶ月が過ぎても、枝は何も変化を見せなかった。

師匠が魔力を流し始めて半年が過ぎた頃、枝に変化が起こった。
枝の先が突然燃え上がったのである。

最初、師匠は魔力を流し込んだ事の影響で、火が付いてしまったかと思ったがそうではなかった。

枝は大きく燃え上がったが、その火はすぐに消えてしまった。
そして、枝事態は灰にならず綺麗に原型をとどめていた。枝を持っていた師匠も焼けどを負わなかったのである。

そう、これが霊木が魔力を宿した瞬間だった。

霊木は魔力を宿した事で、元から備わっていた霊気と、新たに宿した魔力とが融合し、その性質を変化させた。

それはあまりに強大な力だった。

霊木が魔力を宿す事で、どのように変化し、どのような力を手にできるのか、それは師匠の予想を大きく超えていた。


俺は師匠が魔空の枝を使用するところを、1度だけ見たことがある。

それは使用者から吸い取る魔力量で威力を変え、その効果を発揮する。

空一面に放出された魔力の凄まじさ。魔空の枝とは、正にこの魔道具にピッタリの名前だった。



「師匠・・・まさか、魔空の枝は使いませんよね?」

殺気をにじませ、ローブの胸の内側に手を忍ばせているのを見て、俺は師匠が魔空の枝を手にしているのを察した。

俺は師匠が、魔空の枝をいつもローブの胸の内に差している事を知っている。


「・・・・・・」

俺の問いかけに、師匠はしばらく黙っていたが、やがて体から発する殺気が治まると、ローブに入れていた手を下におろし、前を向いたまま言葉を発した。


「・・・使わんよ・・・・・・話し合いに来たんじゃからな」


その声色はいつもの優しい師匠のものだった。
だけど、目の前の扉を見ている師匠がどんな表情をしているのか・・・・・

想像ができなかった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...