異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
146 / 1,560

【146 選手入場】

しおりを挟む
「あ、そろそろ始まるぞ」

俺達の話しの区切りがついた頃、闘技場の中央にヒラヒラした煌びやかな衣装を身にまとった男性が現れ、観客に向かい手を振り存在をアピールし始めた。

「パトリックさん、アレなんです?」
ジャニスが首を傾げ、指しながら疑問を口にすると、パトリックさんもあまり興味が無さそうに答えた。

「あぁ、試合開始前の挨拶だな。普通の試合なら闘技場の勤め人がやるんだけど、こういう大きな試合だと、貴族の人が自分を売り込むためにやる事が多いんだ」

「へぇ~、ここで挨拶する事が、自分を売り込む事になるんですか?」

俺が口を挟むと、パトリックさんは肩をすくめて、軽い感じで答えた。

「そうだな。なんせ今日は2万人入る闘技場が満員どころか、立ち見まで出て溢れかえっている。それだけ特別な試合だ。そこで、自分はこんな大きなところで挨拶ができるとアピールできるんだっ。存在を知らしめるには絶好の場だぞ」

言われてみれば、そうかもしれない。
10連覇で無敗のまま引退した師匠と、かつては国内屈指と言われ、今は大臣にまで上り詰めたベン・フィングの試合だ。しかも、両者の関係があまり良くない事は知られている。
そんな試合の場で挨拶をしたとすれば、話しの種にも持ってこいだろう。


しかし、いざ挨拶が始まると、貴族達以外には、かなりどうでもいい事を長々と話しているので、俺もジャニスもパトリックさんも、中央で声を大きくあげる貴族の話しは、右から左に聞き流していた。


「・・・ご清聴ありがとうございました!では、試合をどうぞお楽しみください!」

そう言って、やっと挨拶が終わり、貴族が下がると、オールバックに髪をまとめた、この闘技場の支配人らしき長身の男が現れ、入れ替わりに中央に立った。

大げさな程に体を開き、手を振り上げ、場内の注目を集めると、声や音を増幅させる棒状の魔道具を手に、収容人数2万人の闘技場に響かせる大声を張り上げた。


「闘技場へお集りの皆さん!大変お待たせいたしました!本日は三日前に急遽決まった試合ですが、まさかこんな興味深いカードが組まれるとは、誰が予想できたでしょうか!?それでは只今より選手の入場です!西門からは、もはや生ける伝説!前代未聞の、魔戦トーナメント10連覇という偉業を成した青魔法使い!ブレンダンーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッランデル!」


西門に向け振り上げた手を下ろすと、アーチ上の門から、襟の立ったボタン留めの青い上着と、同色の青いパンツに身を包んだブレンダン師匠がゆっくりと姿を現した。
風の精霊の加護を受けたマントは、魔道具の一種なので身に着けていない。

師匠の登場に、会場のボルテージが一気に盛り上がり、割れんばかりの歓声が沸き起こる。

「あれは、青魔法使いの稽古着じゃないか・・・今更ブレンダン様が着る物じゃないぞ。どういうおつもりだ?」

場内の盛り上がりとは裏腹に、パトリックさんが師匠のいでたちに怪訝な声を漏らす。

「パトリックさん・・・あれは多分・・・」

闘技場の中央にゆっくりと歩を進める師匠に目を向けたまま、ジャニスが口を開いた。

「なんだ?」

「あれは・・・屈辱的な意味がある。稽古着の相手に敗れるって・・・どう思う?」

「あっ・・・」

ジャニスの言葉に、俺もパトリックさんも顔を見合わせ、声を上げた。

そして俺は、応接室での大臣とのやりとりを思い出した。
あの時師匠は、しきりに、ベン・フィングに本物の魔法を見せてもらう、という言葉を使っていた。
対峙するベン・フィングから見れば、稽古着の師匠はまさに稽古をつけてもらう立場に見えるだろう。

だが、稽古をつけるべき相手に敗れれば、大臣が稽古をつけられたように見えるのではないだろうか?

大臣の立場でこれでは、あまりに屈辱だろう。
師匠はここまで考えたうえでの、あの態度だったのだろうか。

師匠が中央で歩と止めると、支配人は再び手を振り高らかに声を上げた。

「東門からは!かつて圧倒的実力を誇りながらも、国家のために一線を退いた義に生きる黒魔法使い!二度と表舞台に出るつもりはなかったが、昨今の若者に本物の魔法を見せるために一日限りの現役復帰!ご存じ!大臣!ベンーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッフィング!」

東門に向け、振り上げた腕をそのまま下ろすと、それを合図に、カエストゥス国大臣、ベン・フィングが姿を現した。

自尊心が強い大臣だが、この時は着飾った衣装ではなく、黒地に深緑色のパイピングをあしらった、カエストゥス国、黒魔法使いのローブ姿だった。

「前口上にちょいちょい疑問を感じるんだけど・・・」

「気が合うなジャニス。俺もだ」

まぁ、大臣の紹介だ。ご機嫌を取りたい気持ちは理解できるが、それでも気に入らないものは気に入らない。
観客に手を振りながら、一歩一歩ゆっくり歩き中央にたどり着くと、師匠に詰め寄るように一歩大きく踏み込んだ。

師匠は、身長が165cmほどの小柄だが、ベン・フィングは横に広いが、意外と縦にも高い。
並ぶと師匠より10cm以上高さがあるように見える。
師匠を見下ろしながら、なにかしら言葉をかけているようだが、10メートル以上離れているここまでは聞こえない。



「フハハハハ、ブレンダンよ、覚悟はできてるか?無謀な挑戦を後悔させてやろう」

「・・・覚悟、ですか?そうですな・・・そう言えば、覚悟は必要でしたな」

自分を見下ろすベン・フィングの言葉に、ブレンダンは顔を上げた。

「ほぅ、物分りがいいな?」

「はい。なにせ、本当に必要ですからな。試合とはいえ、もし大臣を殺してしまったら、さすがに罰を受けるでしょうから」

ブレンダンはベン・フィングの目を真っ直ぐに見たまま、はっきりと告げた。

一瞬、ベン・フィングは自分が何を言われたか頭に入らず、言葉を返せなかったが、すぐに意味を理解しこめかみに青い筋を浮かべると、鼻の頭がくっつくほどに顔を近づけた。

「面白れぇじゃねぇか!やれるもんならやってみろよ!」

「息がかかるので、もう少し離れてもらえませんかな?」

目をそらさず、表情を変えず、あくまでも淡々と言葉を返すブレンダンに、ベン・フィングの怒りは爆発寸前だった。

しかし、二人のやりとりが聞こえない観客達には、試合前に睨み合うパフォーマンスのように映り、一層歓声が増していく。


「場内も盛り上がってきたところで、あらためてルールを説明します!皆さんすでにご存じでしょうが、この試合では、ブレンダン選手は魔道具は使用不可!魔法も結界のみ使用可でございます!
対して大臣は魔道具も黒魔法も全て使用可でございます!勝敗は、どちらかが敗北を認めるか、魔力切れで動けなくなった方の負けとなります!それでは、両者開始線まで離れてください!合図と共に試合開始です!」

ベン・フィングはブレンダンを睨み付けたまま、ゆっくりと体を離すと、ギリギリまで睨んだまま身をひるがえし、数メートル程先の開始線まで下がった。

ブレンダンは対照的に、支配人の言葉を聞くなり、すぐにベン・フィングに背を向け、平然と西側の開始線まで歩いて行った。


支配人は中央から後方へ下がり、巻き添えを食わないように一階の客席に入った。
闘技場では、観客に被害が及ばないように、客席と試合場の境目に王宮仕えの青魔法使いが一定の間隔で待機し、状況を見て、結界を張るようになっている。

ブレンダンとベン・フィング、両者が左右に離れ、開始線に立った事が確認されると、支配人が空に向かい爆裂弾を両手で一発づつ放った。

空中で二発の爆裂弾が接触すると、試合開始を告げる轟音が闘技場に鳴り響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...