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【163 それから】
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それからはすごい盛り上がりだった。
孤児院始まって以来の大騒ぎだったと思う。
メアリーはしばらく固まっていた。
何度か肩を揺すって声をかけて、やっと目を覚ましたように俺の顔を見ると、一気に涙を溢れさせて俺の胸に顔をうずめてきた。
しっかりと両手を背中に回し、思い切り力を込めている。絶対に離れないという強い気持ちが伝わって来る。
泣かれたのは驚いたけど、これは嬉し涙というヤツだろうか。
ジャニスは俺がストレートに告白するのが意外だったのか、うっそー!と、一番大きな声を出して驚いていた。
キャロルは、兄さんかっこいい!と言って褒めてくれた。ちょっと意外だった。
ヤヨイさんは自分の事でもないのに、涙ぐんでハンカチで目元を押さえ感動している。
トロワと子供達は、とにかく叫んでいた。うぉー!とか、すげー!とか、そんな感じでしばらく大声を出していたが、この時ばかりは誰も注意しなかった。
俺も、むしろ静かになられるより、うるさい方がこの時ばかりは助かった。照れ隠しになる。
「ウィッカー・・・よう言った」
「師匠・・・・・」
師匠が俺の肩に手を置いてきた。目を細めて、俺の告白に感心しているかのように頷いている。
師匠にけしかけられたのはやっぱり釈然としない。こういう事は、もう少しデリケートに考えるべきだと思う。
いくら師匠でも、後で一言言ってやろうと思った。
でも、俺の胸に顔をうずめるメアリーを見ると、これで良かったかもと思えてくるので複雑だ。
「メアリー・・・そろそろ落ち着いたか?」
「・・・まだです。まだ落ち着きません。もうしばらくくっつきます」
めずらしく言葉が強い。泣き止んだけど、なかなか離れないメアリーに、どうしようかと思っていると、ヤヨイさんがテーブルの食器を集めキッチンへ運び、ジャニスが子供達を大部屋に連れて行く。
「兄さん、あとは私達で掃除もしておくし、スージーとチコリの事も見ておくから、ごゆっくりね」
キャロルはそう言うと、満面の笑みで俺に手を振り、子供用の大部屋へ入って行った。
まだ10歳なのに、気遣いができるというか、大人びているというか、キャロルはしっかり者だ。
10分は経っただろうか。メアリーはまだ抱き着いていた。
ヤヨイさんは、キッチンで食器洗いをしながら、時折微笑ましいものを見る目を向けて来る。
ジャニスとキャロルは、スージーとチコリを抱っこしながら、チラチラと子供部屋から顔を出して覗いてくる。
トロワは、テーブルを拭きながら、ウィッカー兄ちゃんいつまでイチャついてんだよ?と、なぜか俺にだけ文句を言って来る。
ちなみにメアリーは、ウィッカー様が・・・、と言って、まるで俺が離さないかのようにトロワに返事をしていた。
師匠は、うんうんと頷いて、若いのう、と一人り言ちながら二階に上がって行った。
師匠って、こんな性格だったっけ?
「おい、みんなが掃除や子守りをしてる中、お前達はなぜ朝から抱き合ってるんだ?」
いつの間にか玄関に立っていたジョルジュが、本当に全く理由が分からないという様子で声をかけてきた事を合図に、メアリーがやっと俺から離れた。
キャロルは約束通りジョルジュが来てくれた事に、とても喜んでいた。
紅茶を入れた後は、広間でチコリを抱っこしてあやしているが、チラチラとジョルジュに目を向けている。
「・・・なるほど、それなら納得だ。メアリー、好きなだけウィッカーにくっついていいぞ」
ジョルジュに事情を説明すると、ジョルジュは紅茶をすすりながら、メアリーに向かって俺にくっつくよう手を向けた。
「おい、なんでそうなるんだ?」
「お前がその気にさせたのだろう?ならば受け入れるべきだ」
俺が紅茶を口にすると、隣に座るメアリーが、とてもにこやかな笑顔でクッキーを俺の口に運ぼうとしてくる。
「おい、ウィッカー、なぜ口を開けない?」
「いや、お前、人前でできるわけないだろ?」
「分かった」
ジョルジュが、本当に全く理由が分からないと言うように聞いてくるので、俺が真面目に返事をすると、ジョルジュはイスごと俺に背を向けた。
「見てなければいいんだな?」
「え?おい、ジョルジュ、お前・・・」
「ウィッカー、食べろ。メアリーの好意を無にするな」
隣に座るメアリーに顔を向けると、メアリーはとてもにこやかな笑顔で俺が口を開けるのを待っていた。
「いやぁ、ウィッカー熱々だね!」
俺がメアリーに、クッキーを食べさせてもらっているところ見ていたジャニスが、何度も肘でつついてくる。
「からかうなよジャニス、それよりさっさと着替えようぜ」
このままジャニスのペースで話しをさせると、いつまでもからかわれそうなので、少し無理やりでも話しを変えた。
「あぁ、大丈夫大丈夫、私はもう終わるから。それにしてもジョルジュも一緒に来るなんてね」
「まぁ、ジョルジュの取り調べは終わってるけど、やっぱり気になるんじゃないか?あの殺し屋の事。死体は城で回収してたから、今ならもう少し詳しい事も分かるかもしれないだろ」
風のマントを羽織り、俺が準備を終えた頃、二階から師匠が降りてきた。
「二人とも、準備はできたかの?」
「はい、俺もジャニスも、丁度終わったところです」
今日は三人とも風のマントを羽織っている。
城へ行くときの正装のようなものだ。
最近は朝が寒くなってきたので、俺もジャニスも、マントの下は長袖にしている。
「もう少し陽が高くなれば温かくなるが、この時間はまだ少し寒いのう。ワシも長袖にして良かった」
師匠もマントの下は、青色の長袖上着だった。
あとはジョルジュだけだなと思い、玄関口で待っていると、キャロルとトロワを連れたジョルジュが、チコリを抱っこして歩いて来た。
「あれ?なんでジョルジュが抱っこしてるの?」
率直に俺が疑問を口にすると、ジョルジュはチコリを高い高いしてから、そっとキャロルに預けた。
チコリはとても機嫌が良く、声を出して笑っている。
キャロルも、ジョルジュからチコリを受け取りながら、お上手ですね、と頬を赤く染めながら見つめて言葉にしていた。
「あぁ、キャロルが抱っこしているのを見て、少し興味が出てな。俺はこのくらい小さい子を抱いた事がないのでな。可愛いものだ」
「ウィッカー兄ちゃんよっか上手いぞ。ジョル兄は。ウィッカー兄ちゃん見習っておけよ」
トロワはジョルジュに尊敬の眼差しを向けた後、なぜか俺に厳しい言葉をぶつけてきた。
「トロワ君、あんまりウィッカー様をいじめないでくださいね」
「あ、メアリーちゃん、いや、これはいじめじゃないよ!励ましてるんだよ!」
メアリーは、トロワの言い訳にクスリと笑うと、俺の前に歩いて来た。
「ウィッカー様、何事もないと思いますが、先日の試合の例もございます。どうかお気をつけください。
私は待つ事しかできませんが、美味しいお食事をご用意してお帰りを待っております」
「分かってる。大丈夫だから、そんなに心配しないでいいよ」
眉尻を下げ、不安そうに俺を見つめるメアリーに、できるだけ優しく言葉をかけるが、なぜかメアリーは俯いてしまった。
何かおかしな事を言ってしまったのかと、焦っていると、ジャニスが呆れたように溜息を付いた。
「・・・ウィッカー、あんたね、もうちょっと女心ってのを勉強しなさい。こういう時はこうでしょ?」
そう言うとジャニスは、両手で自分の身体を抱きしめて見せた後、俺を指し、その指をそのままメアリーに向けた。
「え!い、いや、ここで!?」
「他にどこでするのよ!?早くしなさい!」
「ウィッカー兄さん、さっきはカッコ良かった!もう一回カッコ良いとこ見たい!」
「ウィッカー、お前は確か見られてると駄目なんだったな?ならば俺は後ろを向くから遠慮するな」
「しょうがねぇなぁ~、ジョル兄がそうすんなら、俺も後ろ向いてやるよ」
みんなの声に押されながら、メアリーに視線を戻すと、メアリーは上目遣いに微笑みながら、両手を胸に当てていた。
「ウィッカー様、どうぞご遠慮なさらずに」
それから俺は、メアリーの気が済むまで抱きしめる事になった。
孤児院始まって以来の大騒ぎだったと思う。
メアリーはしばらく固まっていた。
何度か肩を揺すって声をかけて、やっと目を覚ましたように俺の顔を見ると、一気に涙を溢れさせて俺の胸に顔をうずめてきた。
しっかりと両手を背中に回し、思い切り力を込めている。絶対に離れないという強い気持ちが伝わって来る。
泣かれたのは驚いたけど、これは嬉し涙というヤツだろうか。
ジャニスは俺がストレートに告白するのが意外だったのか、うっそー!と、一番大きな声を出して驚いていた。
キャロルは、兄さんかっこいい!と言って褒めてくれた。ちょっと意外だった。
ヤヨイさんは自分の事でもないのに、涙ぐんでハンカチで目元を押さえ感動している。
トロワと子供達は、とにかく叫んでいた。うぉー!とか、すげー!とか、そんな感じでしばらく大声を出していたが、この時ばかりは誰も注意しなかった。
俺も、むしろ静かになられるより、うるさい方がこの時ばかりは助かった。照れ隠しになる。
「ウィッカー・・・よう言った」
「師匠・・・・・」
師匠が俺の肩に手を置いてきた。目を細めて、俺の告白に感心しているかのように頷いている。
師匠にけしかけられたのはやっぱり釈然としない。こういう事は、もう少しデリケートに考えるべきだと思う。
いくら師匠でも、後で一言言ってやろうと思った。
でも、俺の胸に顔をうずめるメアリーを見ると、これで良かったかもと思えてくるので複雑だ。
「メアリー・・・そろそろ落ち着いたか?」
「・・・まだです。まだ落ち着きません。もうしばらくくっつきます」
めずらしく言葉が強い。泣き止んだけど、なかなか離れないメアリーに、どうしようかと思っていると、ヤヨイさんがテーブルの食器を集めキッチンへ運び、ジャニスが子供達を大部屋に連れて行く。
「兄さん、あとは私達で掃除もしておくし、スージーとチコリの事も見ておくから、ごゆっくりね」
キャロルはそう言うと、満面の笑みで俺に手を振り、子供用の大部屋へ入って行った。
まだ10歳なのに、気遣いができるというか、大人びているというか、キャロルはしっかり者だ。
10分は経っただろうか。メアリーはまだ抱き着いていた。
ヤヨイさんは、キッチンで食器洗いをしながら、時折微笑ましいものを見る目を向けて来る。
ジャニスとキャロルは、スージーとチコリを抱っこしながら、チラチラと子供部屋から顔を出して覗いてくる。
トロワは、テーブルを拭きながら、ウィッカー兄ちゃんいつまでイチャついてんだよ?と、なぜか俺にだけ文句を言って来る。
ちなみにメアリーは、ウィッカー様が・・・、と言って、まるで俺が離さないかのようにトロワに返事をしていた。
師匠は、うんうんと頷いて、若いのう、と一人り言ちながら二階に上がって行った。
師匠って、こんな性格だったっけ?
「おい、みんなが掃除や子守りをしてる中、お前達はなぜ朝から抱き合ってるんだ?」
いつの間にか玄関に立っていたジョルジュが、本当に全く理由が分からないという様子で声をかけてきた事を合図に、メアリーがやっと俺から離れた。
キャロルは約束通りジョルジュが来てくれた事に、とても喜んでいた。
紅茶を入れた後は、広間でチコリを抱っこしてあやしているが、チラチラとジョルジュに目を向けている。
「・・・なるほど、それなら納得だ。メアリー、好きなだけウィッカーにくっついていいぞ」
ジョルジュに事情を説明すると、ジョルジュは紅茶をすすりながら、メアリーに向かって俺にくっつくよう手を向けた。
「おい、なんでそうなるんだ?」
「お前がその気にさせたのだろう?ならば受け入れるべきだ」
俺が紅茶を口にすると、隣に座るメアリーが、とてもにこやかな笑顔でクッキーを俺の口に運ぼうとしてくる。
「おい、ウィッカー、なぜ口を開けない?」
「いや、お前、人前でできるわけないだろ?」
「分かった」
ジョルジュが、本当に全く理由が分からないと言うように聞いてくるので、俺が真面目に返事をすると、ジョルジュはイスごと俺に背を向けた。
「見てなければいいんだな?」
「え?おい、ジョルジュ、お前・・・」
「ウィッカー、食べろ。メアリーの好意を無にするな」
隣に座るメアリーに顔を向けると、メアリーはとてもにこやかな笑顔で俺が口を開けるのを待っていた。
「いやぁ、ウィッカー熱々だね!」
俺がメアリーに、クッキーを食べさせてもらっているところ見ていたジャニスが、何度も肘でつついてくる。
「からかうなよジャニス、それよりさっさと着替えようぜ」
このままジャニスのペースで話しをさせると、いつまでもからかわれそうなので、少し無理やりでも話しを変えた。
「あぁ、大丈夫大丈夫、私はもう終わるから。それにしてもジョルジュも一緒に来るなんてね」
「まぁ、ジョルジュの取り調べは終わってるけど、やっぱり気になるんじゃないか?あの殺し屋の事。死体は城で回収してたから、今ならもう少し詳しい事も分かるかもしれないだろ」
風のマントを羽織り、俺が準備を終えた頃、二階から師匠が降りてきた。
「二人とも、準備はできたかの?」
「はい、俺もジャニスも、丁度終わったところです」
今日は三人とも風のマントを羽織っている。
城へ行くときの正装のようなものだ。
最近は朝が寒くなってきたので、俺もジャニスも、マントの下は長袖にしている。
「もう少し陽が高くなれば温かくなるが、この時間はまだ少し寒いのう。ワシも長袖にして良かった」
師匠もマントの下は、青色の長袖上着だった。
あとはジョルジュだけだなと思い、玄関口で待っていると、キャロルとトロワを連れたジョルジュが、チコリを抱っこして歩いて来た。
「あれ?なんでジョルジュが抱っこしてるの?」
率直に俺が疑問を口にすると、ジョルジュはチコリを高い高いしてから、そっとキャロルに預けた。
チコリはとても機嫌が良く、声を出して笑っている。
キャロルも、ジョルジュからチコリを受け取りながら、お上手ですね、と頬を赤く染めながら見つめて言葉にしていた。
「あぁ、キャロルが抱っこしているのを見て、少し興味が出てな。俺はこのくらい小さい子を抱いた事がないのでな。可愛いものだ」
「ウィッカー兄ちゃんよっか上手いぞ。ジョル兄は。ウィッカー兄ちゃん見習っておけよ」
トロワはジョルジュに尊敬の眼差しを向けた後、なぜか俺に厳しい言葉をぶつけてきた。
「トロワ君、あんまりウィッカー様をいじめないでくださいね」
「あ、メアリーちゃん、いや、これはいじめじゃないよ!励ましてるんだよ!」
メアリーは、トロワの言い訳にクスリと笑うと、俺の前に歩いて来た。
「ウィッカー様、何事もないと思いますが、先日の試合の例もございます。どうかお気をつけください。
私は待つ事しかできませんが、美味しいお食事をご用意してお帰りを待っております」
「分かってる。大丈夫だから、そんなに心配しないでいいよ」
眉尻を下げ、不安そうに俺を見つめるメアリーに、できるだけ優しく言葉をかけるが、なぜかメアリーは俯いてしまった。
何かおかしな事を言ってしまったのかと、焦っていると、ジャニスが呆れたように溜息を付いた。
「・・・ウィッカー、あんたね、もうちょっと女心ってのを勉強しなさい。こういう時はこうでしょ?」
そう言うとジャニスは、両手で自分の身体を抱きしめて見せた後、俺を指し、その指をそのままメアリーに向けた。
「え!い、いや、ここで!?」
「他にどこでするのよ!?早くしなさい!」
「ウィッカー兄さん、さっきはカッコ良かった!もう一回カッコ良いとこ見たい!」
「ウィッカー、お前は確か見られてると駄目なんだったな?ならば俺は後ろを向くから遠慮するな」
「しょうがねぇなぁ~、ジョル兄がそうすんなら、俺も後ろ向いてやるよ」
みんなの声に押されながら、メアリーに視線を戻すと、メアリーは上目遣いに微笑みながら、両手を胸に当てていた。
「ウィッカー様、どうぞご遠慮なさらずに」
それから俺は、メアリーの気が済むまで抱きしめる事になった。
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