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255 闇から解き放つ力 ③
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玉座に座るタジーム・ハメイドは、ウィッカーが声をかけても微動だにせず、ただ肘掛けに腕を置き、やや項垂れるような姿勢で腰をかけているだけだった。
ウィッカーも最初の一言以外言葉は発せずに、一歩、また一歩、ゆっくりと足を前に進めて行く。
玉座の間は静かだった。
闇の瘴気はこの玉座の間から放たれている。
だが、降り注ぐ太陽の光は、大きく空いた天井から二人を照らし、温もりさえ与えてくれる。
エンスウィル城は、とうの昔に廃城と化してしまっているが、この一場面だけを見るなら、穏やかささえ垣間見えた。
タジーム・ハメイドまであと数メートルという距離まで近づいて、ウィッカーは足を止めた。
「・・・王子、あの時と全く変わってませんね・・・・・本当に・・・あの時と同じ・・・」
ウィッカーは右手をタジームに向けて出すと、手の平に魔力を集中させた。
「闇に吞まれたままだ」
言葉と同時にウィッカーの手の平から、高密度の魔力が込められた光の球が撃ち放たれる。
光の球がタジームの眼前に迫った時、それまで俯いていたタジームが突如、勢いよく顔を上げた。
そしてその顔は、目も口も全てが深く暗い闇で埋め尽くされていた。
ウィッカーの光の球がタジームの鼻先に触れる瞬間、タジームの目と口から溢れた闇が、まるで獲物を食らう蛇の口のように大きく広がると、一瞬で光の球を包み込み、そして飲み込んだ。
「・・・長くなりそうだな」
ウィッカーはローブを翻(ひるがえ)し、両手を重ね合わせタジームに向ける。
最初に放った光の球より、より強い魔力を込める。
全身を覆う光は輝きを、力強さを増し、空気を震わせていく。
目の前にいる男の力量、自分を滅ぼしえる程の巨大な魔力を感じ取ったのか、タジーム・ハメイドは、いや・・・かつてタジーム・ハメイドだった闇の化身は、ウィッカーを認識したように顔を向けた。
すでにタジーム・ハメイドに意識は無い。生きていると言っていいのかさえ分からない。
闇に呑みこまれた体は、人の意思など無いかのように、直線的で、まるで人形を無理やり動かすような不自然な動きで手足を動かし、玉座から立ち上がった。
目と口から闇を吐き出し続ける闇の化身は、ウィッカーに向けて両手を前に出した。
手の平から闇の瘴気がにじみ出てくると、皮膚が塵のようにボロボロと崩れて風に流れ消えていく。
「もう・・・闇そのもの、なんですね・・・・・」
皮膚が崩れ剥がれ落ちると、そこには闇しかなかった。
黒い煙のようにハッキリとしないが、人の手を形作った闇が、ウィッカーに向け左右両手の十本の指を広げている。
にじみ出て来た闇の瘴気は球状に渦巻き、禍々しい力の塊となっていった。
相対する闇の化身の力の高まりに耐え切れず、足場には亀裂が入り、壁はひび割れて崩れ落ちていく。
「王子・・・200年前は俺と王子に埋める事のできない大きな差がありました。でも、今の俺なら・・・」
ウィッカーの魔力が更に高まり見せ、体を纏う光が部屋中を強く照らす。
闇の化身からにじみ出た黒い瘴気をかき消す程の光の輝きに、闇の化身の体がわずかに硬直する。
その硬直をウィッカーは見逃さなかった。
「天魔光閃!」
ウィッカーの両手から撃ち放たれた光の波動は、闇の化身に防御する暇さえ与えなかった。
「・・・・・中身が変わっても、魔力は王子そのものだ。一撃で終わるわけはないよな」
ウィッカーの放った光の波動は、闇の化身を撃ち貫き、そのまま玉座の後ろの壁に、人の背丈以上の大きな穴を開けていた。
壁に空いた穴の淵は溶けており、ウィッカーの放った天魔光閃の熱量のすさまじさを物語っていた。
だが、玉座のあった場所には、人の形をした黒い煙のようなものが不安定に揺らめきながら立っていた。
頭と思われる部分には表情を読める目、鼻、口など何もなく、ただどこまでも暗く黒い闇がそこにあるだけだった。
「・・・王子の皮が無くなれば本当にただの闇だな。師匠は、黒渦はまるで意思を持っているようだと言っていた。お前が黒渦の本体で意思を持っているなら、俺の言っている事は理解できるか?消してやるからかかってこいよ」
ウィッカーの身体を包む光が強く輝きだす。
闇の化身には肉体が無い。顔が無いから表情も無く、見た目でダメージを確認する事ができない。
だが、対峙するウィッカーには闇の化身の魔力を推し量る事ができた。
天魔光閃をまともに浴びた闇の化身は、明らかに魔力が減っていた。
「200年だ・・・俺は王子を救うため、200年鍛えてきたんだ。今の俺なら、王子にも負けはしない!」
大陸一の黒魔法使いとまで言われたウィッカーだが、200年前はタジームとの間に、人の一生では到底埋める事のできない程の大きな開きがあった。
だが、黒魔法以外に白魔法、青魔法を身に着け、新系統の光魔法を作り出し、研鑽を続けたウィッカーの魔力は、今やタジーム・ハメイドに匹敵、いや超える程に高められていた。
闇の化身が腕を振るうと、闇の刃がウィッカーに向かい、風を斬り裂き襲い掛かる。
迎え撃つウィッカーも右手を下から上へ振り上げ、光の刃を振り放った。
「王子!今日ここで貴方の魂を解放して見せる!」
光と闇
二つの衝撃がぶつかり合う
ウィッカーも最初の一言以外言葉は発せずに、一歩、また一歩、ゆっくりと足を前に進めて行く。
玉座の間は静かだった。
闇の瘴気はこの玉座の間から放たれている。
だが、降り注ぐ太陽の光は、大きく空いた天井から二人を照らし、温もりさえ与えてくれる。
エンスウィル城は、とうの昔に廃城と化してしまっているが、この一場面だけを見るなら、穏やかささえ垣間見えた。
タジーム・ハメイドまであと数メートルという距離まで近づいて、ウィッカーは足を止めた。
「・・・王子、あの時と全く変わってませんね・・・・・本当に・・・あの時と同じ・・・」
ウィッカーは右手をタジームに向けて出すと、手の平に魔力を集中させた。
「闇に吞まれたままだ」
言葉と同時にウィッカーの手の平から、高密度の魔力が込められた光の球が撃ち放たれる。
光の球がタジームの眼前に迫った時、それまで俯いていたタジームが突如、勢いよく顔を上げた。
そしてその顔は、目も口も全てが深く暗い闇で埋め尽くされていた。
ウィッカーの光の球がタジームの鼻先に触れる瞬間、タジームの目と口から溢れた闇が、まるで獲物を食らう蛇の口のように大きく広がると、一瞬で光の球を包み込み、そして飲み込んだ。
「・・・長くなりそうだな」
ウィッカーはローブを翻(ひるがえ)し、両手を重ね合わせタジームに向ける。
最初に放った光の球より、より強い魔力を込める。
全身を覆う光は輝きを、力強さを増し、空気を震わせていく。
目の前にいる男の力量、自分を滅ぼしえる程の巨大な魔力を感じ取ったのか、タジーム・ハメイドは、いや・・・かつてタジーム・ハメイドだった闇の化身は、ウィッカーを認識したように顔を向けた。
すでにタジーム・ハメイドに意識は無い。生きていると言っていいのかさえ分からない。
闇に呑みこまれた体は、人の意思など無いかのように、直線的で、まるで人形を無理やり動かすような不自然な動きで手足を動かし、玉座から立ち上がった。
目と口から闇を吐き出し続ける闇の化身は、ウィッカーに向けて両手を前に出した。
手の平から闇の瘴気がにじみ出てくると、皮膚が塵のようにボロボロと崩れて風に流れ消えていく。
「もう・・・闇そのもの、なんですね・・・・・」
皮膚が崩れ剥がれ落ちると、そこには闇しかなかった。
黒い煙のようにハッキリとしないが、人の手を形作った闇が、ウィッカーに向け左右両手の十本の指を広げている。
にじみ出て来た闇の瘴気は球状に渦巻き、禍々しい力の塊となっていった。
相対する闇の化身の力の高まりに耐え切れず、足場には亀裂が入り、壁はひび割れて崩れ落ちていく。
「王子・・・200年前は俺と王子に埋める事のできない大きな差がありました。でも、今の俺なら・・・」
ウィッカーの魔力が更に高まり見せ、体を纏う光が部屋中を強く照らす。
闇の化身からにじみ出た黒い瘴気をかき消す程の光の輝きに、闇の化身の体がわずかに硬直する。
その硬直をウィッカーは見逃さなかった。
「天魔光閃!」
ウィッカーの両手から撃ち放たれた光の波動は、闇の化身に防御する暇さえ与えなかった。
「・・・・・中身が変わっても、魔力は王子そのものだ。一撃で終わるわけはないよな」
ウィッカーの放った光の波動は、闇の化身を撃ち貫き、そのまま玉座の後ろの壁に、人の背丈以上の大きな穴を開けていた。
壁に空いた穴の淵は溶けており、ウィッカーの放った天魔光閃の熱量のすさまじさを物語っていた。
だが、玉座のあった場所には、人の形をした黒い煙のようなものが不安定に揺らめきながら立っていた。
頭と思われる部分には表情を読める目、鼻、口など何もなく、ただどこまでも暗く黒い闇がそこにあるだけだった。
「・・・王子の皮が無くなれば本当にただの闇だな。師匠は、黒渦はまるで意思を持っているようだと言っていた。お前が黒渦の本体で意思を持っているなら、俺の言っている事は理解できるか?消してやるからかかってこいよ」
ウィッカーの身体を包む光が強く輝きだす。
闇の化身には肉体が無い。顔が無いから表情も無く、見た目でダメージを確認する事ができない。
だが、対峙するウィッカーには闇の化身の魔力を推し量る事ができた。
天魔光閃をまともに浴びた闇の化身は、明らかに魔力が減っていた。
「200年だ・・・俺は王子を救うため、200年鍛えてきたんだ。今の俺なら、王子にも負けはしない!」
大陸一の黒魔法使いとまで言われたウィッカーだが、200年前はタジームとの間に、人の一生では到底埋める事のできない程の大きな開きがあった。
だが、黒魔法以外に白魔法、青魔法を身に着け、新系統の光魔法を作り出し、研鑽を続けたウィッカーの魔力は、今やタジーム・ハメイドに匹敵、いや超える程に高められていた。
闇の化身が腕を振るうと、闇の刃がウィッカーに向かい、風を斬り裂き襲い掛かる。
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