異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
275 / 1,560

【274 王位継承の儀 ⑦】

しおりを挟む
「ロビン、ドミニク・・・これまでワシに付いて来てくれた事、心から感謝する。これからは、ワシの分までマルコを・・・・・そして、今更ワシが口にできた事ではないが、タジームを・・・・・どうか頼む」

王位継承の儀が終わり、前国王として各国への最後の挨拶も終えた。

ラシーン・ハメイドは月明かりだけが入る自室で、窓から外に目をやりながら、後ろに控えるロビンとドミニクに、国王としての労いと、父親としての願いを言葉にし伝えた。


「もったいないお言葉です。私もドミニクも、陛下にお仕えできた事を、誇りに思っております」

「私も同じ思いです。これからも変わらぬ忠誠心で、マルコ様・タジーム様をお支えしてまいります」

ロビンとドミニクが片膝を付き頭を下げている事を気配で察し、ラシーン・ハメイドはゆっくりと後ろを振り返った。


「・・・タジームは、今日来ておったな。マルコの護衛の仮面の男がそうなのであろう?」


ラシーン・ハメイドの問いかけに、ロビンとドミニクは僅かに体が反応した。そのびくりとした反応を見て、ラシーンは確信を持った。
ロビンとドミニクが、どう言葉を返せばいいか思案していると、ラシーンは返事を待たずに言葉を続けた。


「よい・・・よいのだ。仮面を付けていたので、素顔は見れなかったが、ずいぶんと背が伸びて、逞しく成長した事が知れただけで良かった。それに、空気が穏やかになっていた。ブレンダンの・・・皆のおかげだな。マルコとは関係を修復できそうなのだな?」


「・・・はい。先日、孤児院でお顔を合わせました。タジーム様は、恨んでいないと・・・自分とマルコ様は兄弟だからと口にしておられました。ご安心くださいませ」

王位継承の儀の三日前、マルコはロビンとドミニクを連れて、ブレンダンの孤児院を訪れた。
兄タジームに会うために。

これまで兄が虐げられている事に見向きもしなかった事を謝罪し、もし許されるのならば、また兄弟として関係を築いていけたらという思いからだ。


「そうか・・・・・それが聞けて良かった」

ラシーンは、静かに目を閉じると、再びロビンとドミニクに背を向け、窓から外へ目を向けた。


「・・・今夜はもう休もう。お前達も下がってよいぞ」

ロビンとドミニクは顔を合わせると、国王の言葉通りにしようと立ち上がった。

「それでは、我々は扉の前におりますので、なにかありましたらお声がけくださいませ」

本来であれば、ロビンとドミニクがそこまでしなくていい。
従者を待機させておき、近くの部屋で休養をとっていてもいい。だが、今回はブロートン帝国がなにかをしかけてくる前提で行動しており、実際にロペスが攻撃を受けている。

ラシーンが部屋を出ろと言う以上、部屋からは出なければならないが、扉一枚隔てた通路での待機。
これ以上は譲れない線であった。



「・・・陛下、タジーム様はマルコ様とお会いした日、こうも言われておりました・・・」

退室しようとロビンは扉に手をかけたが、そこで足を止めラシーン・ハメイドに体を向き直した。

王位継承の儀が始まる前に見せた涙

そして今もタジームを頼むと、父として自分達に願いを口した事


ロビンは話すつもりはなかった
だが今日のラシーン・ハメイドは、まるで昔に戻ったように、表情から険が取れている
そしてタジームに対する、確かな愛情が感じられた


陛下、やっと・・・戻られたのですね


ラシーンが振り返るのを待って、ロビンは言葉を続けた


「いつか、父ともう一度・・・笑って話したいな・・・・・と」


ロビンはそのまま一礼すると、ラシーンに目を合わせる事なく扉を開け外へ出た
ドミニクもそれに続き、一礼し退室する




一人、部屋に残ったラシーン
その口から漏れる嗚咽は誰の耳にも届かない

そしてラシーンの懺悔と感謝の念は、今は亡き王妃へ心から送られていた



ルイーゼよ・・・ワシは駄目な父親だった
だが、お前の優しい心はしっかりと二人の息子に受け継がれていたよ

マルコは兄を想い、孤児院に行き謝罪をしたそうだ・・・・・

タジームは、こんな愚かなワシを・・・まだ、父と・・・・・





「父上・・・・・」

ラシーンの嗚咽が治まった頃、軽いノックの後にマルコが部屋に入ってきた。

こんな夜更けにマルコが訪ねてくるのは珍しい。
いや、ラシーンが部屋へ籠るようになってからは、一度も訪れた事は無かった。


「マルコか、どうし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・た」


マルコの手にしたナイフが、ラシーンの腹を深く突き刺していた。

ラシーンは信じられない物を見るように、己の腹に突き刺さったナイフを目にした後、そのナイフを握るマルコに目を向けた。

「マ、マルコ・・・いや・・・・・・ち、が・・・・・・・・・・・・・」

言葉を出そうとすると、喉の奥から言葉の代わりに溢れ出たものが吐き出された。

絨毯を赤く染める液体の上に膝を付き、僅かに残った力でもう一度だけラシーンは首を上に向け、マルコの姿をしたソレを目に映した。


「・・・ち・・・がう・・・・・・・・・・・・・・・」


息子ではない

では誰だ?なにが目的だ?本物のマルコはどうなった?これからこの国は・・・・・・・・・・

力無く前のめりに倒れ伏したラシーンの脳裏には、一瞬の間に様々な疑問や懸念が浮かんだが、最後に頭に思い描いたものは、家族四人で笑い合った短かったけれど、幸せだったあの日々だった。



・・・・・ルイーゼ、迎えに来てくれたんだね・・・・・ありがとう


目を閉じる瞬間
淡く光る透明感のある手がラシーンに差し伸べられた

その手は亡き妻のものだった

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...