異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
306 / 1,560

【305 セインソルボ山の戦い】

しおりを挟む
11月下旬になり、チラチラと雪が降るようになった。

カエストゥス国と帝国の国境沿いにある、セインソルボ山。

標高は6636メートルの独立峰である。
山頂部分が雲に覆われており、切り立った崖のような急斜面が多く、巨大な一枚岩という印象だ。

山裾に構えた拠点は大きなテントが張られている。
テント奥の中央に座する、指揮官ロビン・ファーマーの元へ伝令が届いた。

「団長、偵察からの報告が入りましたのでご報告します。まず指揮官が判明しました。青魔法使いのジャキル・ミラーです」

「む、ヤツか・・・」

指揮官の名を聞き、ロビンは何かを考えるように顎に手を当てた。
ブレンダン曰く、ミラーはブレンダンに匹敵する青魔法使いだという。

事実、ウィッカーの攻撃をことごとく防いだという強力な結界は非常に厄介だった。
ロビンは自分が戦う事になった場合、ミラーはやりにくいと思っていた。

「そして、ついに動きがありました。こちらに向かい進軍しております。体力型を最前列に、黒魔法使いと青魔法使いが後方から援護する陣形です」

「・・・ふん、やっと動いたか。何を準備していたかは知らんが、おかげでこちらも体制を整える事はできた。カエストゥスに喧嘩を売った事を後悔させてやろう」

ロビンはイスから腰を上げると、隣に立つ、ダークグレーの髪をオールバックにまとめた男に顔を向けた。


「ビボル、任せたぞ」

「ふん、やっと出番か。では魔法大国カエストゥスの強さを見せてやろうじゃないか」

青地に深い緑色のパイピングがあしらわれている、カエストゥス国の青魔法使いのローブを羽織っているその男は、ブライアン・ビボル。
今回ロビンの補佐に付いた、青魔法使いであり、ロビンの同期で残っている数少ない男である。


年齢は50歳。身体つきは太っている訳でも痩せ気味でもなく、年相応の標準的なもので、背丈は172cmと高くはないが小さいという程でもなかった。
身体的には目立つところは何も無い。

だが、自分の出番を告げられた時、ビボルのその目にはギラリとした狂気が宿り、少しだけ口の端を上げたその表情は、これからの戦いに喜びすら感じているように見えた。


「ロビン、もう一度だけ確認するぞ。俺に任せるって事は、全て俺の好きにしていいんだよな?」

ビボルはやや見上げる形でロビンにその目を向けた。
ロビンに対して確認という言葉を使っているが、ロビンに向けるその目は、今更否定しないだろうな?と言う強い力がこもっていた。

「無論だ。お前を俺の補佐に付ける事が決まった時点で、お前のやり方は全て了承している。ビボル、あらためて言おう。全てお前の好きにしていい。後始末は俺が引き受ける」

ロビンもまた、ビボルの目を真っ直ぐに見返し、断固たる意志を込めた言葉で返した。
少しの間、隣り合う二人は視線を交わす。

やがてビボルは視線を外すと、ロビンに背を向けテントを後にする。

「・・・ロビン、良いツラになったなぁ。戦争になってやっと昔のお前が戻ってきたか・・・クックック・・・」

ビボルは去り際に少しだけ振り返り、ロビンに言葉を残す。
それは若かりし頃、魔法兵団の仲間にすら恐れられた、ロビンを指した言葉だった。



「・・・戻らねばなるまい。これは戦争だ。一切のあまい感情は捨て去らねばならん」

遠ざかるビボルの背中に向け、ロビンは呟いた。









「撃て!撃ち続けろ!上級魔法はいらん!爆裂弾だ!爆裂弾を絶やす事なく打ち続けるんだ!」

ビボルの号令が飛ぶ。横一線に並び立つ黒魔法兵達、その数は千を数える。
彼らは休むことなく魔法を撃ち続けた。

帝国兵は一瞬たりとも休まずぶつけられる、嵐のような攻撃魔法にさらされていた。

無論、帝国側も青魔法使いが結界を張り凌いで入る。そして、結界は張ったままでも動く事はできる。

だが、千人の魔法使いが休まず撃ち続ける爆裂弾は、進もうとする帝国兵を押し返し、完全にその足を止めていた。


「時間だ!次の一発を最後に第一部隊は後ろへ下がれ!第二部隊は前へ出ろ!」

ビボルの指示で、第一部隊は最後の一発を放つと同時に慣れた動きで、最後尾へ下がった。
代わって前線に出た第二部隊も、入れ替わりの間隙を感じさせない程のスムーズな動きで、魔法を撃ち出す。

「よし!第二部隊はそのまま撃ち続けろ!第三部隊、すぐに出番だぞ!集中して備えておけよ!」


ビボルが大きく声を上げ指示を飛ばすと、後方に待機している第三部隊も、はい!と声を張り上げる。

士気の高さにビボルは満足そうに頷いた。


ビボルは三千人の黒魔法使いを三つの部隊に分け、横一線に並び立たせた。
そして一定の時間で隊を入れ替え、休息を挟ませながら、代わる代わる撃ち続ける。

これは魔力切れを起こさせないようにするためであった。

魔力を瞬時に回復させる道具は無い。
そのため、魔力を回復させるには、その場で動かず休むしかなかった。

短い時間であっても、体を休め呼吸を整えれば随分違ってくる。
ビボルが隊を三つにまで分けたのは、一部隊ができるだけ長く休息を挟めるようにするためだった。


カエストゥスの黒魔法使いによる、爆裂弾の嵐は一向に休むことなく続いている。

しかし、帝国とて結界を張り凌いでいる。完全な膠着状態だった。
だが、それで良かった。ビボルの狙いは帝国兵に結界を使わせ、その場に釘付けにする事にあった。

カエストゥス兵の使用する魔法は、魔力消費の少ない基本とも言える初級魔法の爆裂弾。

帝国兵の使う魔法は、維持しているだけでも大きく魔力を消費し続ける結界魔法。


「あっちの指揮官はジャキル・ミラーだったな。青魔法使いのてめぇなら分かってんだろ?結界は維持しているだけでもどんどん魔力を消費していくんだ。ダメージを受ければ猶更な。三千人分の爆裂弾にいつまで耐えられるかな?」

幾千幾万の爆裂弾を撃ち込み、濛々と爆風が舞う戦場を眺め、ビボルは口の端を持ち上げニヤリと笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

処理中です...