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【308 黒い雪】
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ブライアン・ビボルは魔法使いとしての実力、指揮官としての能力、どれをとってもロビンにひけを取るものはなかった。
魔法兵団の団長候補として、ロビンと二人切磋琢磨していた。
自信はあった。魔法使いとしての力量は互角だったが、軍を束ねる指揮官としては自分の方が上だ。
自分こそが次の魔法兵団団長だと。
だが、先代の団長が後継として指名したのは、ロビンだった。
なぜ自分ではない!?俺の方が優れているのになぜ!?
今にも掴みかからん勢いで叫び詰め寄るビボルに、先代の団長は怯むことなくその訳を告げた。
「・・・俺の心には怪物が住み着いているんだってな」
少しだけ昔を思い出し、ビボルは自嘲気味に口の端を上げて笑った。
「ビボル様、前線はやや押され気味です。混戦状態ですので、黒魔法使いが援護に入れません。帝国より魔力が温存できていた分、青魔法使いが結界で援護して持ちこたえていますが、やはり体力型は帝国が上手です」
後方で戦局を見ていたビボルに、兵士の一人が報告に入る。
「ちっ、やっぱ近接戦闘は帝国か・・・数も向こうが上、詰められればこうなる事は自明の理だ」
「・・・ビボル様、前線はそう長くは持たないと思われます。いかがいたしますか?」
イスに座りながら、目を隠すように手を当て屈むビボルに、兵士が指示を仰ぐ。
「・・・ふっ、くっくっく」
「ビ、ビボル様?」
ふいに笑い出したビボルに、兵士が怪訝な顔を見せる。
「ロビン・・・約束通り、俺の好きにさせてもらうぜ」
指の隙間から覗いたその目には、殺意と狂気が入り混じった炎が宿っていた。
「優勢だな、このまま押し切れ」
自軍の兵士がカエストゥスを押している様子に、ジャキル・ミラーは満足そうに口の端を上げた。
「フルトン、次の土竜まであとどれくらいかかる?」
「あと20分程かかるかと思います」
「よし、今の状況では、味方まで巻き込むからすぐに撃つ事はないだろうが、準備はしておけよ」
ミラーの言葉にフルトンは頷くと、右手にはめた手袋の感触を確認するように何度か拳を握った。
「この吹雪をカエストゥスの血で赤く染めてやろう」
強い吹雪になり始めた空を見上げる。
これは帝国を勝利に導く吹雪。悪条件での近接戦闘は体力の消耗が激しい。
帝国の兵士はカエストゥスよりも体力がある。
同条件ならば、カエストゥスの方が潰れるのは早い。
「だ、団長!大変です!」
息を切らせた帝国兵が、ミラーの元へ駆けて来る。ただならぬ様子の兵士にミラーは眉をひそめた。
「どうした?」
「ぜ、前線の、へ、兵士達が次々と倒れてるんです!雪に、黒い雪に当てられて!」
「黒い雪だと!?」
カエストゥスと帝国の兵士がぶつかり合う最前線では、帝国の兵士達が血を吐き、喉を掻きむしり苦しみに声を上げながら倒れていく。
「ハーハッハッハッハッ!どうだ!?苦しいか!?苦しいよな!?可哀想だなぁ!でもしかたねぇよな!?お前らが始めた戦争だ!苦しみ抜いて死ぬがいい!」
カエストゥスの剣士隊を下がらせ、たった一人、前線に立つビボルの前には百を超える帝国の死体で埋め尽くされていた。
目を見開き、鼻と口から血を流し、喉に爪を立てて息絶えている姿は、筆舌に尽くしがたい程の苦しみを味わった事をあらわしていた。
「・・・すげぇ・・・」
「じ、事前に聞いてて良かった・・・」
「あぁ・・・あんなの、巻き込まれてたまるかよ)
「しかし・・・あんなの・・・本当に使っていいのか?」
ビボルの攻撃に巻き込まれないよう、事前に決めていた通り後方へ避難した兵士達は、目の前の光景に冷たい汗をかいていた。
「・・・よく団長が許可したな・・・敵とは言っても・・・毒だろ?」
その兵士の視線の先に映るビボルの顔は、まるで殺戮を楽しむかのように笑っていた。
「この雪はカエストゥスの勝利の雪だ」
ビボルはローブの内側から、手の平に治まる程の瓶を取り出す。コルクを取り中に入っている透明の液体を一気に飲み干す。
「・・・ふぅ・・・やっぱ、美味くはねぇな」
空になったビンを足元に放ると、両手を空に向かい突き上げた。
「黒い雪に覆われて死ね」
ビボルの両手から黒い粒子が滲み出ると、吹雪に流されて空に散らされる。
黒い粒子に触れた雪も色を黒く染め、帝国兵は黒い雪にさらされていく。
ビボルの魔道具、魔毒の水
その名の通り、魔力を毒に変える水である。
効果として、一定時間毒の粒子を体から発生させる事ができる。
空気中にその毒の粒子を飛散させる事もできるが、その場合強い風でも吹かなければ、遠くまで飛ばす事はできない。
だが、毒の粒子は水に混ざりやすく、川に流せば瞬く間に川の水を毒に変えてしまう。
そして今は強い吹雪だった。
言うまでも無く、雪にも毒粒子は不着する。
山に吹く白雪は毒を含んだ黒雪と変わり、容赦なく帝国に襲いかかった。
魔法兵団の団長候補として、ロビンと二人切磋琢磨していた。
自信はあった。魔法使いとしての力量は互角だったが、軍を束ねる指揮官としては自分の方が上だ。
自分こそが次の魔法兵団団長だと。
だが、先代の団長が後継として指名したのは、ロビンだった。
なぜ自分ではない!?俺の方が優れているのになぜ!?
今にも掴みかからん勢いで叫び詰め寄るビボルに、先代の団長は怯むことなくその訳を告げた。
「・・・俺の心には怪物が住み着いているんだってな」
少しだけ昔を思い出し、ビボルは自嘲気味に口の端を上げて笑った。
「ビボル様、前線はやや押され気味です。混戦状態ですので、黒魔法使いが援護に入れません。帝国より魔力が温存できていた分、青魔法使いが結界で援護して持ちこたえていますが、やはり体力型は帝国が上手です」
後方で戦局を見ていたビボルに、兵士の一人が報告に入る。
「ちっ、やっぱ近接戦闘は帝国か・・・数も向こうが上、詰められればこうなる事は自明の理だ」
「・・・ビボル様、前線はそう長くは持たないと思われます。いかがいたしますか?」
イスに座りながら、目を隠すように手を当て屈むビボルに、兵士が指示を仰ぐ。
「・・・ふっ、くっくっく」
「ビ、ビボル様?」
ふいに笑い出したビボルに、兵士が怪訝な顔を見せる。
「ロビン・・・約束通り、俺の好きにさせてもらうぜ」
指の隙間から覗いたその目には、殺意と狂気が入り混じった炎が宿っていた。
「優勢だな、このまま押し切れ」
自軍の兵士がカエストゥスを押している様子に、ジャキル・ミラーは満足そうに口の端を上げた。
「フルトン、次の土竜まであとどれくらいかかる?」
「あと20分程かかるかと思います」
「よし、今の状況では、味方まで巻き込むからすぐに撃つ事はないだろうが、準備はしておけよ」
ミラーの言葉にフルトンは頷くと、右手にはめた手袋の感触を確認するように何度か拳を握った。
「この吹雪をカエストゥスの血で赤く染めてやろう」
強い吹雪になり始めた空を見上げる。
これは帝国を勝利に導く吹雪。悪条件での近接戦闘は体力の消耗が激しい。
帝国の兵士はカエストゥスよりも体力がある。
同条件ならば、カエストゥスの方が潰れるのは早い。
「だ、団長!大変です!」
息を切らせた帝国兵が、ミラーの元へ駆けて来る。ただならぬ様子の兵士にミラーは眉をひそめた。
「どうした?」
「ぜ、前線の、へ、兵士達が次々と倒れてるんです!雪に、黒い雪に当てられて!」
「黒い雪だと!?」
カエストゥスと帝国の兵士がぶつかり合う最前線では、帝国の兵士達が血を吐き、喉を掻きむしり苦しみに声を上げながら倒れていく。
「ハーハッハッハッハッ!どうだ!?苦しいか!?苦しいよな!?可哀想だなぁ!でもしかたねぇよな!?お前らが始めた戦争だ!苦しみ抜いて死ぬがいい!」
カエストゥスの剣士隊を下がらせ、たった一人、前線に立つビボルの前には百を超える帝国の死体で埋め尽くされていた。
目を見開き、鼻と口から血を流し、喉に爪を立てて息絶えている姿は、筆舌に尽くしがたい程の苦しみを味わった事をあらわしていた。
「・・・すげぇ・・・」
「じ、事前に聞いてて良かった・・・」
「あぁ・・・あんなの、巻き込まれてたまるかよ)
「しかし・・・あんなの・・・本当に使っていいのか?」
ビボルの攻撃に巻き込まれないよう、事前に決めていた通り後方へ避難した兵士達は、目の前の光景に冷たい汗をかいていた。
「・・・よく団長が許可したな・・・敵とは言っても・・・毒だろ?」
その兵士の視線の先に映るビボルの顔は、まるで殺戮を楽しむかのように笑っていた。
「この雪はカエストゥスの勝利の雪だ」
ビボルはローブの内側から、手の平に治まる程の瓶を取り出す。コルクを取り中に入っている透明の液体を一気に飲み干す。
「・・・ふぅ・・・やっぱ、美味くはねぇな」
空になったビンを足元に放ると、両手を空に向かい突き上げた。
「黒い雪に覆われて死ね」
ビボルの両手から黒い粒子が滲み出ると、吹雪に流されて空に散らされる。
黒い粒子に触れた雪も色を黒く染め、帝国兵は黒い雪にさらされていく。
ビボルの魔道具、魔毒の水
その名の通り、魔力を毒に変える水である。
効果として、一定時間毒の粒子を体から発生させる事ができる。
空気中にその毒の粒子を飛散させる事もできるが、その場合強い風でも吹かなければ、遠くまで飛ばす事はできない。
だが、毒の粒子は水に混ざりやすく、川に流せば瞬く間に川の水を毒に変えてしまう。
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