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【351 風の矢】
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「な!?なんだあの爆発は!?」
1,000メートル以上離れているブローグ砦まで揺らす程の巨大な地鳴りに、ペトラは足を取られ尻もちをつきそうになった。
ペトラだけではない。
剣を、魔法をぶつけ合わせ戦っていたカエストゥス軍と帝国軍は、突然起きた大爆発と、足元を揺るがす大地鳴り、そしてこの距離でも届いて来る爆風に転ばされていた。
両国とも、ただその場で揺れが治まるまで耐える事しかできなかった。
一体何が起きた!?
あの場所ではルシアン率いる帝国軍と、エロールの部隊が戦っているのであろう。
炎らしい明かりは見えた。
深紅の鎧の事もあるし、帝国軍が火の精霊の加護を受けている事も分かっている。
しかし、この爆発はなんだ?
これは、まるで・・・
これだけ離れていてもハッキリ分かる巨大なキノコ雲。
一切の生命の存在を許さない程、激しく燃え盛る業火。
「・・・あの日見た、皇帝の・・・光源爆裂弾みたいじゃ、ないか・・・」
恐ろしい光景を目の当たりにし、僅かな時間だが、ペトラは茫然と立ち尽くしてしまっていた。
すぐに、ハッと気づき自軍に号令をかけるが、今攻撃を仕掛けられていたら危なかっただろう。
いけない・・・私はここの指揮官だ!頭を切り替えろ!
さっき、ジョルジュ様とジャニス様も来てくれたんだ・・・
あの二人なら、きっとエロールを助けられる。
私は私の仕事をする。この戦いはこのままいけば十分勝てる。
今は目の前の敵を倒す事だけを考えろ!
心配もある。不安もある。だが、今は自分がやるべき事だけを考える。
一早く戦闘に復帰し、剣を振るうペトラの姿を見て、カエストゥス軍も次々と立ち上がり、攻撃をしかけていく。
ディーン・モズリーを失った帝国軍は、次に序列の高い者が指揮を執っていたが、軍の立て直しに遅れをとり、カエストゥスの猛攻を止めきれずにジリジリと押されていった。
砦前の攻防は決着がついたも同然だった。
「ふん、ルシアンめ、大口叩いておきながら結局このざまか。まぁ、最後に帝国のために命を使った事くらいは認めてやるか」
帝国軍はあらかじめ決めていた通り、青魔法使い達が結界を何十にも重ね張りし、ナパームインパクトから帝国を護りとおして見せた。
「しかし、これほどの威力とはな・・・事前に打ち合わせをしていなければ、とても防ぎきれんぞ。さすが師団長という事か」
そう独り言ちて笑うこの男は、この場でルシアンの次に序列の高い男だった。
これだけの人数がいる以上、決して一枚岩にはなりえない、
特にルシアンのように自意識が高い男では、疎ましく思う者も多くなる。
ここからは俺が指揮を執る番だ。
ナパームインパクトの余波が治まってきた頃合いを見て、片手を挙げて振り払う仕草を見せると、青魔法使い達が結界を解く。
ルシアンがいなくなった瞬間から、この男が次の指揮官だという事は全体の認識だった。
意のままに軍を操れる。
その事実を実感し、男は満足そうに口の端を上げると後ろに向き直り、拳を上げて力の入った言葉を発した。
「聞けい!ルシアン様は帝国軍のために命を張ってナパームインパクトを使われた!戦っていた白魔法使いは、あれほどの手練れならばおそらく敵の指揮官クラス!そしてその後現れた弓を持った男は、史上最強とまで言われるジョルジュ・ワーリントン!女の方はあのジャニスだ!ルシアン様の命と引き換えになったが、この三名を葬れたのは大きいだろう!ここからは俺が指揮を引き継ぎ・・・ウッ!」
言い終わらない内に、男の頭を後ろから鉄の矢が貫いていた。
そのまま一言も発せず、矢に射られた力の流れそのままに倒れ、男は息絶えた。
突然指揮官の男が頭を貫かれ死んだ事で、帝国軍がざわめき出した。
そして、その原因となった男を目にした事で、一層大きな動揺が走る。
「お、おい!あれを見ろ!」
「なっ!?馬鹿な!あの爆発からどうやって!?」
帝国軍の上空数メートルに、ジョルジュ・ワーリントンは風を纏い立っていた。
「・・・このままケリを付けさせてもらおうか」
目に映る一万もの帝国兵に対し、まるで恐れる事も、脅威に感じる様子も見せず、ジョルジュは優雅に見える程の落ち着いた動作で矢をつがえると、次々と撃ち放っていった。
それは一射一射確実に帝国兵の頭を貫いていき、更に貫通した矢が後ろの兵にまで突き刺さるという威力まで見せた。
「くっ!ひ、怯むな!敵はたった一人だぞ!黒魔法使い達で迎撃せよ!」
数十人程殺されたところで、部隊長クラスの兵士が声を上げ指示を出すと、浮足立っていた帝国兵も精神を立て直し、攻勢に転じ始めた。
数百人、いや千人を超える黒魔法使い達が空中に飛び出ると、爆裂弾などの初級魔法を矢継ぎ早に放つ。
「ほぅ・・・大技で来ない分、戦い方を分かってはいるようだな。だが、それだけでは俺には届かないぞ」
ジョルジュはくるりと身を翻すと、帝国兵に背を向け飛び去った。
「逃げるぞ!追え!」
さしものジョルジュ・ワーリントンも、この数に一斉攻撃を受けては引くしかないのだろう。
そう判断し勢い付いた帝国軍黒魔法使い達は、ジョルジュの後を追って飛び出した。
「・・・よし、追ってくるな。向かってくる分は俺が引き受ける。残りは任せたぞ」
樹々が深く生い茂る森の中、一本の枝の上に降り立つ。
空を見上げるが、この闇の中では視覚だけで敵を捉える事は困難である。
ジョルジュは目を閉じた。
「・・・いつも通りだな。風を感じるだけだ」
ジョルジュは目を閉じだまま空に向け、弓を構え矢をつがえる。
全ては風が教えてくれる。
力加減、タイミング、どこに矢を乗せ、どこに撃つ。
「・・・今だ」
ジョルジュの撃ち放った矢は、微かな風切り音と共に吸い込まれるように夜空に消えていく。
「次」
そしてジョルジュが二の矢を構えた時、バキバキと枝をへし折りながら、頭に矢の刺さった帝国兵が落ちて来た。
「・・・八・・・九人・・・こいつらは馬鹿だな。なぜ逃げない?まぁいい・・・俺は射殺すだけだ」
ジョルジュの矢は全て正確に帝国兵の頭を射抜いていた。
空から雨あられのように落ちて来る帝国兵の死体にはまるで目もくれず、単純作業でもするかのように、暗闇の中弓矢で狙いをつけ黙々と撃ち放つ。
ジョルジュの矢で撃ち落とされた兵士が20人を超えた時、帝国の黒魔法使い達も遅れながら対抗手段を講じ始めた。
「くそっ!なんなんだよコイツ!?」
「探そうとするな!この闇の中で、森に入った人間を見つけられるわけがない!」
「森ごと焼き払え!構う事はない!撃ち続ければいずれあたる!」
降り注ぐ爆裂弾は頭上の葉を、目の前の枝を破壊し焼いていく。
「・・・すまない」
ジョルジュは悲し気な顔で謝罪の言葉を口にした。
こうなる事は予想で来ていた。
自分が森に入り見つける事ができなければ、森ごと破壊される事は可能性として十分にあった。
森で育ったジョルジュにとって、自然の破壊は身を切られる思いである。
しかし、たった一人で千人を超える黒魔法使いを相手にし、ジョルジュも手段を選んでいる余裕はなかった。
「戦争が終わったら、俺が必ず元の綺麗な森に戻す」
迫りくる無数の攻撃魔法を枝から飛び降りて回避すると、ジョルジュは森の奥へと走り出した。
「・・・む、矢が尽きたか」
走りながら矢筒に手を入れると、矢が底をついていた事に気付く。
「では、久しぶりにやってみるか」
ジョルジュは弓を置くと、左手を広げて空へ向けた。
そして何も手にしていない右手は、広げた左手から何かを掴み取るように空間を握って引く。
「風の矢だ。受けて見ろ」
それまで右手で掴んでいた見えない何かを離すと、左手の五本の指先から何かが空へと放たれた。
「もっとだ!もっと撃て!あのジョルジュがこの程度で死んだとは思え・・・け、ぷぁっ!」
突然、その魔法使いは額に穴が空いたかと思うと、ぐるりと白目を剥き、そのまま地上へと落下していった。
「な!?お、おい・・・なにが、くぁ・・・」
「うっ・・・」
「はっ、くぁ・・・」
次々と額に穴を空け落下していく帝国兵。
仲間達が正体不明の攻撃を受け倒れていく姿を見て、残った兵達に動揺が広がっていく。
数の上ではまだまだ優位である。
だが、帝国側からは全くジョルジュの姿が見えないが、ジョルジュからの攻撃は恐ろしいほどに正確無比で、確実に額を撃ち抜いて来るのだ。
そして反撃が来ると言う事は、これだけの人数で魔法を撃ち続けてもジョルジュを仕留められないという事。
一瞬前まで隣に立っていた兵が、次の瞬間見えない何かに頭を撃ち抜かれて落下していく。
その恐怖は次々と伝染していく。
とても人間技とは思えないその攻撃に、戦意を喪失し撤退を口にする者まで出始めた。
「威力こそ鉄の矢に劣るが、風の矢は見えんし無限だ。絶対に防ぐことはできんぞ」
帝国兵から感じる風は、焦りと恐れ。
逃げ腰になっている事は、攻撃の緩さから見て取れる。
すでに勝負はついていた。
だが、いかにジョルジュ・ワーリントンが相手とはいえ、たった一人を相手にこれだけの数でかかり、撤退する事はできない。
逃げ腰になり撤退を口にしながらも、中途半端にその場に留まっている。
「逃げるならば逃げる。戦うのならば死ぬ覚悟で来るべきだ。それすら決められんなら、俺に殺されるだけだぞ」
数十分の後、1,000人以上の帝国兵の死体が森の中に転がる事になる。
1,000メートル以上離れているブローグ砦まで揺らす程の巨大な地鳴りに、ペトラは足を取られ尻もちをつきそうになった。
ペトラだけではない。
剣を、魔法をぶつけ合わせ戦っていたカエストゥス軍と帝国軍は、突然起きた大爆発と、足元を揺るがす大地鳴り、そしてこの距離でも届いて来る爆風に転ばされていた。
両国とも、ただその場で揺れが治まるまで耐える事しかできなかった。
一体何が起きた!?
あの場所ではルシアン率いる帝国軍と、エロールの部隊が戦っているのであろう。
炎らしい明かりは見えた。
深紅の鎧の事もあるし、帝国軍が火の精霊の加護を受けている事も分かっている。
しかし、この爆発はなんだ?
これは、まるで・・・
これだけ離れていてもハッキリ分かる巨大なキノコ雲。
一切の生命の存在を許さない程、激しく燃え盛る業火。
「・・・あの日見た、皇帝の・・・光源爆裂弾みたいじゃ、ないか・・・」
恐ろしい光景を目の当たりにし、僅かな時間だが、ペトラは茫然と立ち尽くしてしまっていた。
すぐに、ハッと気づき自軍に号令をかけるが、今攻撃を仕掛けられていたら危なかっただろう。
いけない・・・私はここの指揮官だ!頭を切り替えろ!
さっき、ジョルジュ様とジャニス様も来てくれたんだ・・・
あの二人なら、きっとエロールを助けられる。
私は私の仕事をする。この戦いはこのままいけば十分勝てる。
今は目の前の敵を倒す事だけを考えろ!
心配もある。不安もある。だが、今は自分がやるべき事だけを考える。
一早く戦闘に復帰し、剣を振るうペトラの姿を見て、カエストゥス軍も次々と立ち上がり、攻撃をしかけていく。
ディーン・モズリーを失った帝国軍は、次に序列の高い者が指揮を執っていたが、軍の立て直しに遅れをとり、カエストゥスの猛攻を止めきれずにジリジリと押されていった。
砦前の攻防は決着がついたも同然だった。
「ふん、ルシアンめ、大口叩いておきながら結局このざまか。まぁ、最後に帝国のために命を使った事くらいは認めてやるか」
帝国軍はあらかじめ決めていた通り、青魔法使い達が結界を何十にも重ね張りし、ナパームインパクトから帝国を護りとおして見せた。
「しかし、これほどの威力とはな・・・事前に打ち合わせをしていなければ、とても防ぎきれんぞ。さすが師団長という事か」
そう独り言ちて笑うこの男は、この場でルシアンの次に序列の高い男だった。
これだけの人数がいる以上、決して一枚岩にはなりえない、
特にルシアンのように自意識が高い男では、疎ましく思う者も多くなる。
ここからは俺が指揮を執る番だ。
ナパームインパクトの余波が治まってきた頃合いを見て、片手を挙げて振り払う仕草を見せると、青魔法使い達が結界を解く。
ルシアンがいなくなった瞬間から、この男が次の指揮官だという事は全体の認識だった。
意のままに軍を操れる。
その事実を実感し、男は満足そうに口の端を上げると後ろに向き直り、拳を上げて力の入った言葉を発した。
「聞けい!ルシアン様は帝国軍のために命を張ってナパームインパクトを使われた!戦っていた白魔法使いは、あれほどの手練れならばおそらく敵の指揮官クラス!そしてその後現れた弓を持った男は、史上最強とまで言われるジョルジュ・ワーリントン!女の方はあのジャニスだ!ルシアン様の命と引き換えになったが、この三名を葬れたのは大きいだろう!ここからは俺が指揮を引き継ぎ・・・ウッ!」
言い終わらない内に、男の頭を後ろから鉄の矢が貫いていた。
そのまま一言も発せず、矢に射られた力の流れそのままに倒れ、男は息絶えた。
突然指揮官の男が頭を貫かれ死んだ事で、帝国軍がざわめき出した。
そして、その原因となった男を目にした事で、一層大きな動揺が走る。
「お、おい!あれを見ろ!」
「なっ!?馬鹿な!あの爆発からどうやって!?」
帝国軍の上空数メートルに、ジョルジュ・ワーリントンは風を纏い立っていた。
「・・・このままケリを付けさせてもらおうか」
目に映る一万もの帝国兵に対し、まるで恐れる事も、脅威に感じる様子も見せず、ジョルジュは優雅に見える程の落ち着いた動作で矢をつがえると、次々と撃ち放っていった。
それは一射一射確実に帝国兵の頭を貫いていき、更に貫通した矢が後ろの兵にまで突き刺さるという威力まで見せた。
「くっ!ひ、怯むな!敵はたった一人だぞ!黒魔法使い達で迎撃せよ!」
数十人程殺されたところで、部隊長クラスの兵士が声を上げ指示を出すと、浮足立っていた帝国兵も精神を立て直し、攻勢に転じ始めた。
数百人、いや千人を超える黒魔法使い達が空中に飛び出ると、爆裂弾などの初級魔法を矢継ぎ早に放つ。
「ほぅ・・・大技で来ない分、戦い方を分かってはいるようだな。だが、それだけでは俺には届かないぞ」
ジョルジュはくるりと身を翻すと、帝国兵に背を向け飛び去った。
「逃げるぞ!追え!」
さしものジョルジュ・ワーリントンも、この数に一斉攻撃を受けては引くしかないのだろう。
そう判断し勢い付いた帝国軍黒魔法使い達は、ジョルジュの後を追って飛び出した。
「・・・よし、追ってくるな。向かってくる分は俺が引き受ける。残りは任せたぞ」
樹々が深く生い茂る森の中、一本の枝の上に降り立つ。
空を見上げるが、この闇の中では視覚だけで敵を捉える事は困難である。
ジョルジュは目を閉じた。
「・・・いつも通りだな。風を感じるだけだ」
ジョルジュは目を閉じだまま空に向け、弓を構え矢をつがえる。
全ては風が教えてくれる。
力加減、タイミング、どこに矢を乗せ、どこに撃つ。
「・・・今だ」
ジョルジュの撃ち放った矢は、微かな風切り音と共に吸い込まれるように夜空に消えていく。
「次」
そしてジョルジュが二の矢を構えた時、バキバキと枝をへし折りながら、頭に矢の刺さった帝国兵が落ちて来た。
「・・・八・・・九人・・・こいつらは馬鹿だな。なぜ逃げない?まぁいい・・・俺は射殺すだけだ」
ジョルジュの矢は全て正確に帝国兵の頭を射抜いていた。
空から雨あられのように落ちて来る帝国兵の死体にはまるで目もくれず、単純作業でもするかのように、暗闇の中弓矢で狙いをつけ黙々と撃ち放つ。
ジョルジュの矢で撃ち落とされた兵士が20人を超えた時、帝国の黒魔法使い達も遅れながら対抗手段を講じ始めた。
「くそっ!なんなんだよコイツ!?」
「探そうとするな!この闇の中で、森に入った人間を見つけられるわけがない!」
「森ごと焼き払え!構う事はない!撃ち続ければいずれあたる!」
降り注ぐ爆裂弾は頭上の葉を、目の前の枝を破壊し焼いていく。
「・・・すまない」
ジョルジュは悲し気な顔で謝罪の言葉を口にした。
こうなる事は予想で来ていた。
自分が森に入り見つける事ができなければ、森ごと破壊される事は可能性として十分にあった。
森で育ったジョルジュにとって、自然の破壊は身を切られる思いである。
しかし、たった一人で千人を超える黒魔法使いを相手にし、ジョルジュも手段を選んでいる余裕はなかった。
「戦争が終わったら、俺が必ず元の綺麗な森に戻す」
迫りくる無数の攻撃魔法を枝から飛び降りて回避すると、ジョルジュは森の奥へと走り出した。
「・・・む、矢が尽きたか」
走りながら矢筒に手を入れると、矢が底をついていた事に気付く。
「では、久しぶりにやってみるか」
ジョルジュは弓を置くと、左手を広げて空へ向けた。
そして何も手にしていない右手は、広げた左手から何かを掴み取るように空間を握って引く。
「風の矢だ。受けて見ろ」
それまで右手で掴んでいた見えない何かを離すと、左手の五本の指先から何かが空へと放たれた。
「もっとだ!もっと撃て!あのジョルジュがこの程度で死んだとは思え・・・け、ぷぁっ!」
突然、その魔法使いは額に穴が空いたかと思うと、ぐるりと白目を剥き、そのまま地上へと落下していった。
「な!?お、おい・・・なにが、くぁ・・・」
「うっ・・・」
「はっ、くぁ・・・」
次々と額に穴を空け落下していく帝国兵。
仲間達が正体不明の攻撃を受け倒れていく姿を見て、残った兵達に動揺が広がっていく。
数の上ではまだまだ優位である。
だが、帝国側からは全くジョルジュの姿が見えないが、ジョルジュからの攻撃は恐ろしいほどに正確無比で、確実に額を撃ち抜いて来るのだ。
そして反撃が来ると言う事は、これだけの人数で魔法を撃ち続けてもジョルジュを仕留められないという事。
一瞬前まで隣に立っていた兵が、次の瞬間見えない何かに頭を撃ち抜かれて落下していく。
その恐怖は次々と伝染していく。
とても人間技とは思えないその攻撃に、戦意を喪失し撤退を口にする者まで出始めた。
「威力こそ鉄の矢に劣るが、風の矢は見えんし無限だ。絶対に防ぐことはできんぞ」
帝国兵から感じる風は、焦りと恐れ。
逃げ腰になっている事は、攻撃の緩さから見て取れる。
すでに勝負はついていた。
だが、いかにジョルジュ・ワーリントンが相手とはいえ、たった一人を相手にこれだけの数でかかり、撤退する事はできない。
逃げ腰になり撤退を口にしながらも、中途半端にその場に留まっている。
「逃げるならば逃げる。戦うのならば死ぬ覚悟で来るべきだ。それすら決められんなら、俺に殺されるだけだぞ」
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